読者様から質問を頂いたのですが、いわゆるサイクリングロードの話。
サイクリングロードは道路交通法では「歩道と車道の区別がない道路(2条1項1号)」になりますので、歩行者は右側端(もしくは左側端)を通行する義務があります。
歩道ではないので歩行者に違反があれば過失相殺するのか?という話。
基本的には
サイクリングロードは歩道ではないので、歩行者に過失があれば過失相殺することになるのですが、いくつか判例を調べてみた限りでは歩行者に過失を認めてない傾向なのかなという印象です。
民事の過失割合は道路交通法の義務違反がどうというよりも、実情を踏まえた注意義務の大小を比較しているとも言えますが、例えばこちら。
神奈川県の境川サイクリングロードですが、ここは道路法でいう「歩行者自転車専用道路」、道路交通法上は歩道と車道の区別がない道路(2条1項1号)。
自転車は左側通行義務があり、歩行者は原則として右側端通行義務がありますが、
たぶんですが、歩行者がノールックで横に動いた(横断)みたいな状況でもない限りは、歩行者に過失を認めてないんじゃないかと。
仮に歩行者がサイクリングロードの真ん中を歩いていたとしても、自転車側が注意を果たせば容易に事故を回避できるわけで。
自転車側の注意義務のほうがはるかに大きいのですよ。
第十八条
2 車両は、前項の規定により歩道と車道の区別のない道路を通行する場合その他の場合において、歩行者の側方を通過するときは、これとの間に安全な間隔を保ち、又は徐行しなければならない。
狭いサイクリングロードでは「歩行者との間に安全な間隔」を保てないので、事実上徐行になるし。
しかも、自転車側が「通りまーす」などと声を掛ければ済む話なので、仮に事故が起きても歩行者に重過失や故意がないとなかなか厳しい気がします。
実際の判例
テキトーに調べてみた限りでは、2つの判例において両方ともに自転車過失を100%にしています。
1つ目は恐らく「南浅川」(多摩川の先)だと思いますが、上下に分離された河川敷道路にて、
・自転車→下段から上段に向けて右折
・歩行者→上段から下段に向けて通行
一審、二審ともに歩行者の過失を認めていません。
2つ目の判例ですが、こちらは荒川下流だと思われます。
道幅が広いところの夜間。
こちらは歩行者が死亡していますが、やはり過失相殺を認めていません。
自転車が過失100%、前方不注視。
探せば過失相殺した判例はあるとは思いますが、現実的にはほぼ歩道みたいなもん。
自転車側に注意義務があるのは当然かと思います。
なぜ?
以前書いたこちらについて、仮に歩行者扱いだったとしたらどうなるのか?と質問を頂いたのですが、
具体的な事故態様が不明なので、「真ん中辺りでフラフラしてた子供」というのが「最初から真ん中あたりにいたのか」、「ノールック横断的に真ん中あたりに進出したのか」では意味が違うかと。
仮に「最初から真ん中あたりにいた」のであれば、歩行者過失は限りなくゼロ。
「ノールック横断的に真ん中あたりに進出した」としてもせいぜい10~20%くらいじゃないかと思いますが、そもそもサイクリングロードで歩行者と衝突して裁判になるケース自体が少ないと思うのでなんとも言えません。
小児用の車については、そもそもあまり知られていないと思います。
争った事例も少ないですし。
ただまあ、サイクリングロードをかっ飛ばして子供が乗る自転車に衝突というのは、個人的にはあってはならないことだと思いますし、疑わしきは減速するのが基本です。
そもそも、かっ飛ばしたい系の人にはサイクリングロードは向かない気がしますが。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
かっ飛ばしたいなら自動車同様サーキット(競技場)や、レース場へですね。
公道はサーキットではありませんから。
MTBだと「たのしいやまみち」ってお約束(フィールドコード)に「いつも歩行者優先」があるけど、
ロードバイク界隈だと、どんな語呂のがあるのかしら?
コメントありがとうございます。
たぶん、一部の自転車乗りはサイクリングロードを「自転車優先」と勘違いしてましてね…
「歩行者がなぜサイクリングロードを歩くのか?」というセリフを真顔で語る人もいましたし、「遅い奴はサイクリングロードを走るな!迷惑だ!」と語る人もいましたし…