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自転車による横断歩行者妨害事故は「重過失」傷害罪なのか?

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ちょっと前になりますが、自転車が横断歩道を横断中の歩行者に衝突した事故がありましたよね。

 

自転車も横断歩道では一時停止義務。
国会議員が起こした事故ということで大々的に取り上げてますが、 捜査関係者によりますと、自転車に乗っていた井出庸生文部科学副大臣(45)が、横断歩道を渡っていた60代女性と衝突したということです。 もちろん自転車だろうと道路交通法38条1項の...

 

これ、重過失傷害罪で書類送検されたそうな。

今月、東京 千代田区で、井出庸生文部科学副大臣が自転車で横断歩道を歩いていた60代の女性と接触し、女性が軽いけがをした事故で、警視庁は、ブレーキ操作の遅れが事故につながったとして、31日までに井出氏を重過失傷害の疑いで書類送検しました。

 

井出庸生文部科学副大臣を書類送検 自転車で女性と接触の事故 | NHK
【NHK】今月、東京 千代田区で、井出庸生文部科学副大臣が自転車で横断歩道を歩いていた60代の女性と接触し、女性が軽いけがをした事…

この書類送検の件を知らなかったのですが、読者様からこの報道を教えて頂きまして。

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重過失傷害罪

(業務上過失致死傷等)
第211条
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする

重過失致死傷罪は刑法211条後段。
自転車の場合は自動車運転処罰法の適用がないので、過失致死傷(刑法209条)、重過失致死傷(刑法211条後段)、業務上過失致死傷(刑法211条前段)のどれかになりますが、重過失とは以下を意味します。

刑法209条、210条が通常の過失により死傷の結果を発生させた場合の規定であるのに対し、同法211条後段は重大な過失により右と同じ死傷の結果を発生させた場合に前2条に比し刑を加重する規定であり、右にいう重大な過失とは、注意義務違反の程度が著しい場合、すなわち、わずかな注意を払うことにより結果の発生を容易に回避しえたのに、これを怠つて結果を発生させた場合をいい、その要件として、発生した結果が重大であることあるいは結果の発生すべき可能性が大であつたことは必ずしも必要としないと解するのが相当である。

 

東京高裁 昭和57年8月10日

で。
そもそもの話でいうと「起訴」したわけではなくて、捜査結果を検察に送っただけなので、検察がどうするかは別問題。
例えばこちら。

 

逆走自転車と衝突した自転車が安全運転義務違反&重過失致傷!?
以前から逆走自転車問題については何度も書いてますが、逆走自転車との距離があるときには、左端に寄せて停止して待ったほうがいいよと書いてきました。 今回の判例は逆走自転車と順走自転車の衝突です。 順走自転車が犯罪? 判例は東京地裁 令和3年7月...

 

逆走自転車と衝突した順走自転車が重過失傷害罪で書類送検されてますが、検察は過失傷害罪に変更した上で不起訴。
不起訴になる理由としては過失傷害罪は親告罪なので、被害者が告訴してないなら自動的に不起訴になります。

 

順走自転車が逆走自転車に衝突した件を「重過失傷害罪」で書類送検するくらいなので、書類送検の内容が何なのかはあまり関係ないんだと思う。

 

ただし、ウーバーイーツの自転車が横断歩道を横断中の歩行者に衝突した事故について、業務上過失致死罪の成立を認めた判決が比較的最近ありましたので、業務上過失致死傷と同等の重過失傷害罪を適用する気なのかもしれません。

 

個人的には、重過失でいいと思うけど。

(罪となるべき事実)
被告人は、ロードバイク型の自転車による有償の食品配達業を営み、走行速度を上げて歩合制の配達報酬等を効率的に得ようとしていた者であるが、令和3年4月17日午後7時5分頃、食品を配達するため、業務として前記自転車を運転し、東京都板橋区[以下省略]の道路をa方面からb方面に向かい時速約20ないし25キロメートルで進行中、同所先の交通整理の行われていない丁字路交差点入口に設けられた横断歩道に差し掛かった際、自車には前照灯の装備がない上、折からの降雨により眼鏡に雨滴が付着するなどし、前方左右が見えにくい状態になっていたのであるから、適宜減速した上、一層前方左右を注視し、同横断歩道による横断歩行者の有無及びその安全を確認しながら進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、減速することなく、かつ、前方左右を注視せず、同横断歩道による横断歩行者の有無及びその安全を確認しないまま漫然前記速度で進行した過失により、折から左方から右方に横断歩行中のA(当時78歳)を左前方約4.5メートルの地点に認め、急制動の措置を講じたが間に合わず、同人に自車を衝突させて同人を路上に転倒させ、よって、同人に外傷性頭蓋内損傷の傷害を負わせ、同月19日午後8時28分頃、東京都荒川区[以下省略]所在の病院において、同人を前記傷害により死亡させた。

(量刑の理由)

1 本件は、判示の食品配達業を営んでいた被告人が、自転車を運転中、交通整理の行われていない丁字路交差点入り口の横断歩道に差し掛かった際、速度調節及び前方左右注視の業務上の注意義務を怠り、折から同横断歩道を歩行中の被害者に自車を衝突させて死亡させた事案である。
2 被告人は、夜間降雨があった中、前照灯の装備がなく、眼鏡に雨滴が付着して前方左右が見えにくい状態にあったにもかかわらず、時速約20ないし25キロメートルという自転車としては相応に高速度のまま、横断歩道による横断歩行者の有無及びその安全を確認しないままに走行したために本件を惹起した。被告人は、高速走行可能なロードバイク型の自転車を運転するなどして、走行速度を上げて歩合制の配達報酬等を継続的に効率よく得ようと食品配達業に従事しており、そのような業務者の負う基本的な注意義務に違反したものであって、その過失は重い。

 

東京地裁 令和4年2月18日

なお、重過失致死傷の成立には傷害の程度は関係ありません。

重大な過失

重大な過失とは、

注意義務違反の程度が著しい場合、すなわち、わずかな注意を払うことにより結果の発生を容易に回避しえたのに、これを怠つて結果を発生させた場合

 

東京高裁 昭和57年8月10日

となりますが、この判例は自転車が赤信号を時速10キロで無視し、横断歩道を青信号で横断した歩行者に衝突した事故。
その他、「歩行者横断禁止」の規制があるのに横断し、オートバイを転倒させた死亡事故について、

歩行者を重過失致死罪にしていたりするので、今回の横断歩道の件にしても重過失傷害罪になる可能性はあります。

 

「歩行者横断禁止」を破って横断し、有罪になるケース。
道路交通法では「歩行者横断禁止」という規制があります。 このルール、罰則はありません。 (横断の禁止の場所) 第十三条 2 歩行者等は、道路標識等によりその横断が禁止されている道路の部分においては、道路を横断してはならない。 罰則がないもの...

 

まあ、全力で示談して誠意を見せて不起訴狙いの一筆をもらうというのがよくあるパターンでしょうけど、本当の誠意って事故を起こさないことなんでしょうね。

 

何かが起きてからあたふたするよりも、何も起こさない努力のほうが大事。

 


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