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自転車の並走禁止とその範囲。

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こちらの記事についてコメントを頂いたのですが、

 

自転車の並走と違反。それ本当に違反ですか?
日本の道路交通法では、自転車が並走することは禁止されています。 (軽車両の並進の禁止) 第十九条 軽車両は、軽車両が並進することとなる場合においては、他の軽車両と並進してはならない。 このルール、やや誤解を生んでいます。 この自転車は違反?...

 

読者様
読者様
歩道並進不可と思っていました。19条は走行場所について書いて無いので、道交法対象の場所は並進可標識が無ければすべて不可ではないでしょうか?(ちなみに、歩道並進中の自転車警官に注意したら謝られました)

これについて。

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自転車の並走禁止とその範囲

この規定の解釈。

(軽車両の並進の禁止)
第十九条 軽車両は、軽車両が並進することとなる場合においては、他の軽車両と並進してはならない。

歩道上で自転車が並走しても違反にはなりません。
理由はこれ。

 

17条4項

道路(歩道等と車道の区別のある道路においては、車道。以下第九節の二までにおいて同じ。)

17条4項で「歩道等と車道の区別がある場合は車道」とし、第9節の2(51条の16)まで同じだと書いてある以上、19条はこのように読み替えるのですよ。

(軽車両の並進の禁止)
第十九条 軽車両は、道路(歩道等と車道の区別がある道路においては、車道)で軽車両が並進することとなる場合においては、他の軽車両と並進してはならない。

そうじゃないと、意味がわからないルールが頻発します。

 

一例。

(追越しの方法)
第二十八条 車両は、他の車両を追い越そうとするときは、その追い越されようとする車両(以下この節において「前車」という。)の右側を通行しなければならない。

「道路において」と読み替えないと、歩道上で自転車が自転車を追い越しする際に、左側追い越ししたら違反になりますか、そんな話は聞いたことないでしょ。

 

とりあえず19条の解釈については執務資料道路交通法解説(東京法令出版)にそのように書いてあるのですが、解釈として妥当でしょう。
なお、歩道を通行する自転車は

(普通自転車の歩道通行)
第六十三条の四
2 前項の場合において、普通自転車は、当該歩道の中央から車道寄りの部分(道路標識等により普通自転車が通行すべき部分として指定された部分(以下この項において「普通自転車通行指定部分」という。)があるときは、当該普通自転車通行指定部分)を徐行しなければならず、また、普通自転車の進行が歩行者の通行を妨げることとなるときは、一時停止しなければならない。ただし、普通自転車通行指定部分については、当該普通自転車通行指定部分を通行し、又は通行しようとする歩行者がないときは、歩道の状況に応じた安全な速度と方法で進行することができる。

歩道の中央から車道寄りを通行するルール。
これに抵触する場合には並走すると違反になりますし、並走が歩行者の通行を妨げることは許されません。

 

こちら。

これは歩道上での並走なので19条違反にはなりませんが、「歩道の中央から車道寄り」を通行する義務があるので63条の4第2項の違反。
歩道での並走自体が違反なのではなく、「歩道の中央から車道寄り」を通行するためには並走不可能な歩道幅ということですね。
仮に広い歩道であれば、「歩道の中央から車道寄り」である限りは並走が違反になるとは言えません。

 

19条が規制しているのは車道、もしくは歩道も路側帯もない道路の話。
そう解釈しないと、車道通行自転車と歩道通行自転車が並走しても違反になりますが、別の通行区分にいる両者を規制する理由がない。

並走禁止の法意

並走禁止のルールは昭和39年道路交通法改正時に新設されましたが、ジュネーブ条約加入がきっかけです。
まだこの時代には、自転車が歩道を通行することは許されていません(解禁は昭和45年)。

 

昭和39年改正ってもう一つ自転車に関するルールが変更されていますが、現行27条(追いつかれた車両の義務)は「政令で定める最高速度の優劣」で決めるわけで、現行規定では軽車両が対象にはなっていません。

 

追いつかれた車両の義務って、昭和39年以前は自転車も対象でした。

 

○昭和39年

(進路を譲る義務)
第二十七条
車両(道路運送法第 三条第二項第一号に掲げる一般乗合旅客自動車運送事業又は同条第三項第一号に掲げる特定旅客自動車運送事業の用に供する自動車(以下「乗合自動車」という。)及びトロリーバスを除く。)は、車両通行区分帯の設けられた道路を通行する場合を除き、第十八条に規定する通行の優先順位(以下「優先順位」という。)が先である車両に追いつかれ、か つ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合においては、道路の左側に寄つてこれに進路を譲らなければならない。優先順位が同じであるか又は後である車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合において、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引 き続き進行しようとするときも、同様とする。
(通行の優先順位)
第十八条 車両相互の間の通行の 優先順位は、次の順序による。
一 自動車(自動二輪車及び軽 自動車を除く。)及びトロリーバス
二 自動二輪車及び軽自動車
三 原動機付自転車
四 軽車両

昭和39年以前には並走禁止のルールがなく、自転車も追いつかれた車両の義務の対象。
つまり、こうなります。

これが昭和39年以前の自転車のルール。
昭和39年改正後は、自転車は「追いつかれた車両の義務」から除外した上で並走を禁止にした。

 

追いつかれた車両の義務についても当然車道での話なので、並走禁止についても車道での話と解釈することが合理的でしょう。

 

自転車が「追いつかれた車両の義務」から除外しても、

18条1項 27条2項
軽車両にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。ただし、…道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。 できる限り道路の左側端に寄つてこれに進路を譲らなければならない。

「できる限り」というのは客観的可能な限度を意味するので、「道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない」と同じ意味になります。
18条1項に従って通行する分には常に27条2項を満たしているし、並走を禁止にしたのでさらに「追いつかれた車両の義務」を課す理由がない。

 

特定小型原付については並走が禁止されていないけど、追いつかれた車両の義務の対象。

 

特定小型原付と追いつかれた車両の義務の話。
特定小型原付は「政令で定める最高速度」が規定されているので、自転車と異なり27条(追いつかれた車両の義務)の対象になります。 自転車と同じく左側端寄り通行になりますが、自転車と特定小型原付の差はこれ。 自転車 特定小型原付 並走禁止(19条...

 

追いつかれた車両の義務を課す代わりに並走を許すか、並走を禁止する代わりに追いつかれた車両の義務から除外するかの違いでしかないので、実質的には大差ないのよね。

 

追いつかれまくる状況なら、結局は並走できないので。

 

追いつかれた車両の義務は、車両同士の追い越し時の危険を避けるためのルールなのだから、歩道上では当然関係ない。
そういう経緯からも、歩道上で自転車が並走することを禁止する理由がないし、ましてや車道と歩道等の間で並走する自転車がいても、歩道等は関係ない。

 

だからこれが違反にはならないのよ。

路側帯と車道での並走なので19条の違反が成立しない。

 

自転車と特定小型原付の並走ルールってなかなか興味深いところでして、特定小型原付は並走が禁止されていないけど進路避譲義務の対象。
自転車は進路避譲義務が課されてないけど、並走禁止。

 

実質的には大差ない気がしますが、昭和39年になぜ並走を禁止し、なぜ進路避譲義務から除外したのか考えていけば、全部辻褄が合うのよ。
進路避譲義務を課す必要がない理由にしても、18条1項と19条に従って通行する分には常に譲っているわけで、それ以上譲るものはなにもない。

 

ちなみに「自転車の並走を認めろ勢」の人がいますが、簡単な話。
自転車について政令で最高速度を定めて進路避譲義務の対象にし、昭和39年以前に戻せば済む。
ジュネーブ条約上は、自転車だろうと進路避譲義務から除外していないわけだし。

 

そういう交渉なら警察庁もまだ聞く耳を持つだろうけど、集団で並走してクラクション鳴らされて喜んで「並走を認めろ」と言ったところで、認めるわけがないじゃんね笑。

 

だから「なぜ並走を禁止にしたのか?」という分析から始めないと対策すら浮かばないわけで、だからこういう人は「薄っぺらい」としか評価してないのよ。

 

意図を読めない人は大変だよなあ。
なんだかこの人、時々支離滅裂な認定をしては持論を展開するのがお好きなようですが、 ブログ記事を全部読めば、「何でもかんでも法律の範囲内でしか考えられない人間」ではないよ笑。 余裕で法律に従わないことを推奨する記事とかありますが、一部だけしか...

 

交渉の方法にしても様々あるわけだし。
横断歩道を廃止し歩道橋を作りまくった昭和40年代に住民が取った交渉とは、全国各地で相次いだ行政訴訟でしたね。
強制的に話し合いのテーブルにつける力業とも言えますが、ほとんどの訴訟は「請求却下」。
良くても「請求棄却」、つまりは住民側の敗訴ですが、しかし国の方針は転換せざるを得なくなったのも事実。

 

まさか住民側が力業で横断歩道を勝手に描いたわけではない。
違法な手段では国が動きませんし。

 

話が逸れましたが、19条は「道路において」と読み替えることになるので、そういう解釈になります。
ただまあ、分かりにくいことは確かです。
条文そのまま読むと、例えば38条1項だって「横断歩道を通行する自転車も優先」かのように読めなくもないし、37条(右折車劣後)にしても赤信号無視した直進車が優先するかのようなとんでもない間違いを犯しかねないけど、そんなわけはない。

 

条文をそのまま読んだらわからないルールは、道路交通法以外にも多いのですよ。
だから私も、ある法律のたった5文字の解釈を巡り行政訴訟せざるを得ない状況になったりしたわけですが、ひたすら立法当時の考え方を探るしかなく、しかも行政側が発狂して最高裁に上告したりメチャクチャにされるわけですが、法律が分かりにくいのは道路交通法に限らず日本の特徴です。

・17条4項「道路(歩道等と車道の区別のある道路においては、車道。以下第九節の二までにおいて同じ。)」の影響から、19条は「道路において」と読み替える。
・並走禁止が規定された昭和39年は、まだ自転車の歩道通行が解禁されておらず、路側帯も存在しない時代。
・「並走禁止規定の新設」と「進路避譲義務からの解除」は昭和39年に同時に改正された。


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