自転車が横断歩道を使って横断する際には、道路交通法38条1項の優先権がないことは知られているのか知られていないのかよくわかりませんが、
道路交通法38条1項は、自転車については、自転車横断帯(自転車の横断の用に供される道路の部分・同法2条1項4号の2)を横断している場合に自転車を優先することを規定したものであって、横断歩道(歩行者の横断の用に供される道路の部分・同法2条1項4号)を横断している場合にまで自転車に優先することを規定しているとまでは解されず
福岡高裁 平成30年1月18日
以前から書いているように、横断歩道がある場所が「交差点」で、しかも優先道路(36条2項)がある場合には過失割合がだいぶ変わります。
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横断歩道と優先道路
優先道路とは交差点内にセンターラインがある場合や車両通行帯がある場合。
2 優先道路(道路標識等により優先道路として指定されているもの及び当該交差点において当該道路における車両の通行を規制する道路標識等による中央線又は車両通行帯が設けられている道路をいう。以下同じ。)
例えばこう。
交差点内にセンターラインがあるので、優先道路がある形ですね。
で。
民事の過失割合を考える上では優先道路の有無はまあまあ大きい。
以下、横断歩道を使って横断した自転車の過失割合。
判決年月日 | 交差点? | 年齢区分 | 自転車過失 |
福岡高裁H30.1.18 | 交差点(優先道路あり) | 高齢者 | 30% |
名古屋地裁 H22.3.19 | 交差点 | – | 20% |
横浜地裁 R1.10.17 | 単路 | – | 15% |
大阪地裁H25.6.27 |
交差点(優先道路あり) | 小学生 | 15% |
東京地裁 H28.11.1 | 交差点(優先道路あり) | – | 30% |
名古屋地裁 H30.9.5 | 交差点(優先道路あり) | – | 15% |
大阪高裁H30.2.16 | 交差点 | 高齢者 | 10% |
名古屋地裁 R4.3.30 | 交差点 | – | 20% |
仙台地裁 H29.5.19 | 交差点 | – | 5% |
で。
比較的最近の判例になりますが、優先道路に該当する南北道路を南進するクルマと、東西道路を東進して横断歩道を使って横断した自転車の事故について、基本過失割合を50:50とし、夜間修正で自転車過失を5%加算、横断歩道を走行したことから自転車過失を5%減算して結局50:50としている判例があります(名古屋地裁 令和4年9月30日)。
他には特段の事情も書いてありませんが、例えば上で書いた福岡高裁判決も高齢者修正して自転車過失が30%なので、高齢者修正がなければ35%~40%くらいか。
なお、横断歩道上だと自転車に減算が掛かる理由は、「歩行者に対する注意義務」が高度に求められる場所だからです。
「横断しようとする歩行者が明らかにいない」と言えないなら大幅に減速する義務がある以上、歩行者に注意すれば自転車にも注意せざるを得ないからですね。
横断歩道での過失割合
民事の過失割合を検討する上では、ほぼ交差点での事故と同様に捉えるので
例えば「横断歩道上を横断する自転車」と「車道を左折するクルマ」の場合、自転車過失は10%程度
しかし交差点内に優先道路の設定がある場合には、
自転車にもそこそこ過失がつきます。
優先道路がある場合は30~50%程度、自転車に過失がつく。
まあ、過失割合なんて状況次第で様々なので、個人的にはあまり重視しません。
クルマが著しい高速度とかなら修正されますし。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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