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横断歩道を横断しようとする自転車のために停止して追突されたら過失?

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世の中、なかなか不思議な話をし出す人がいるもんだなと思ってビックリしたのですが、読者様に聞いた話。

 

横断歩道を横断待ちしていた自転車のために一時停止したところ、後続車に追突されたそうな。
急ブレーキではなく、徐々に速度を落として静かに停止したそうですが、そこから先が凄い。

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「義務がないのに停止したから過失」

何がビックリしたのかというと、保険屋から

横断歩道を横断しようとする自転車のために一時停止する義務がないのだから(38条1項)、義務もないのに停止した過失がある。

こんな暴論を言われたそうな。
保険屋さんは何が何でも過失をつけたいのかもしれません。

 

まあ、普通に言い返せば大丈夫です。

危険発生を防止するために一時停止したのであるから、法令に基づく一時停止(70条安全運転義務)。
しかも前方不注視で追突した後続車は、仮に歩行者のために一時停止していたとしても追突していたと考えられるし、たまたま自転車だったか歩行者だったかは事故の発生とは無関係。

まあ、普通に0:100になったそうですが、ワンチャン狙いで過失の主張とかよくあるのですかね。

 

横断歩道において自転車のために一時停止する義務はないけど(38条1項)、予見可能な事故は防ぐ義務がある(70条、自動車運転処罰法5条)。
なので必要に応じて一時停止することは法令の範囲なので、ワンチャン狙いとかアホなんですかね。

 

民事は私人同士の契約なので、当事者が納得しているなら自由に過失割合を決めることができますが、下手に了承すると「合意」になるので注意。

 

よく言われる「動いていたから過失」にしても、根拠はありません。
そのうち、「原子レベルで振動していたから過失」とか言い出すアホがいそうな気がしないでもない。

自動車への一時停止義務

道路交通法38条1項は、「横断歩道を横断しようとする自転車」には適用外になりますが、

自転車に乗り横断歩道を横断する者は、この規定による保護は受けません。

 

法の規定が、横断歩道等を横断する歩行者等となっており、横断歩道等の中には自転車横断帯が、歩行者等の中には自転車が含まれまれているところから設問のような疑問を持たれたことと思いますが、法38条1項の保護対象は、横断歩道を横断する歩行者と自転車横断帯を横断する自転車であって、横断歩道を横断する自転車や、自転車横断帯を横断する歩行者を保護する趣旨ではありません。ただし、二輪や三輪の自転車を押して歩いているときは別です。
つまり、あくまでも、法の規定(法12条、法63条の6)に従って横断している者だけを対象にした保護規定です。

 

道路交通法ハンドブック、警察庁交通企画課、p2140、ぎょうせい

 

自転車と横断歩道の関係性。道路交通法38条の判例とケーススタディ。
この記事は過去に書いた判例など、まとめたものになります。 いろんな記事に散らかっている判例をまとめました。 横断歩道と自転車の関係をメインにします。 ○横断歩道を横断する自転車には38条による優先権はない。 ○横断歩道を横断しようとする自転...

 

最近変な解説をやたら見かける。
「13歳未満、70歳以上の自転車には停止義務あり」みたいな。

 

これは誤りでして、「13歳未満、70歳以上」は「普通自転車が歩道を通行できる要件(63条の4第1項2号)」。
あくまでも立場は「自転車」なので、自転車に対する一時停止義務はありません。

 

一時停止義務が生じるのは、「歩行者」扱いになる「6歳未満、16インチ以下、時速8キロ程度まで」の自転車、つまりは「小児用の車」の話です。

自転車の類型に入るものであつても、「小児用の車」にあたれば、これに乗つて進行している者は歩行者とされ

 

福岡高裁 昭和49年5月29日

実際には小児用の車に該当するかしないか見分けは困難なのと、子供の注意能力を考えて停止すべきとは思いますが。

 

「13歳未満、70歳以上の自転車」についてですが、小児用の車に該当しないなら自転車なので38条1項の義務は生じません。
しかし事故回避義務は免れない。

判例 年齢 扱い 38条の義務
福岡高裁 平成30年1月18日 71 自転車
大阪地裁 平成25年6月27日 小学生 自転車
神戸地裁 令和元年9月12日 70 自転車
大阪高裁 平成30年2月16日 高齢者 自転車
福岡高裁 昭和49年5月29日(刑事) 9歳8ヶ月 自転車
東京高裁 昭和52年11月30日 5歳7ヶ月 自転車

小児用の車になるかならないかは結果論だし、小学生の注意能力を考えたら事故回避義務を重視して一時停止したほうがいいと思いますが、「歩行者扱いになる自転車」の話と「歩道通行できる要件を満たした普通自転車」の話を混同しているような。

 

なお、福岡高裁 平成30年1月18日判決は高齢者修正しても自転車過失が30%なので、自転車側も甘く考えないほうがいいと思いますが、

 

自転車と横断歩道の関係性。道路交通法38条の判例とケーススタディ。
この記事は過去に書いた判例など、まとめたものになります。 いろんな記事に散らかっている判例をまとめました。 横断歩道と自転車の関係をメインにします。 ○横断歩道を横断する自転車には38条による優先権はない。 ○横断歩道を横断しようとする自転...

 

横断歩道を自転車が横断しようとしているときに、38条1項の優先権が働かないにせよ事故回避義務は免れないし、「横断しようとする歩行者が明らかにいない」と言えないなら減速接近義務を免れない。
そこまで理解してあとは法令の範囲で安全運転を、としか言えませんよね。

進行道路の制限速度が時速約40キロメートルであることや本件交差点に横断歩道が設置されていることを以前から知っていたものの、交通が閑散であったので気を許し、ぼんやりと遠方を見ており、前方左右を十分に確認しないまま時速約55キロメートルで進行した、というのである。進路前方を横断歩道により横断しようとする歩行者がないことを確認していた訳ではないから、道路交通法38条1項により、横断歩道手前にある停止線の直前で停止することができるような速度で進行するべき義務があったことは明らかである。結果的に、たまたま横断歩道の周辺に歩行者がいなかったからといって、遡って前記義務を免れるものではない。もちろん、同条項による徐行義務は、本件のように自転車横断帯の設置されていない横断歩道を自転車に乗ったまま横断する者に直接向けられたものではない。しかし、だからといって、このような自転車に対しておよそその安全を配慮する必要がないということにはならない。

 

東京高裁 平成22年5月25日

ちなみに自転車が横断歩道を横断中に事故にあった場合の過失割合ですが、正直なところ様々な状況に影響されるので一概には言えません。
交差点右左折車との事故なら自転車過失は10%程度だし、横断歩道が優先道路を横断する形なら自転車過失は45%ですから…

 

自転車の横断歩道通行と優先道路の過失割合。
自転車が横断歩道を使って横断する際には、道路交通法38条1項の優先権がないことは知られているのか知られていないのかよくわかりませんが、 道路交通法38条1項は、自転車については、自転車横断帯(自転車の横断の用に供される道路の部分・同法2条1...

 


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