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私人による「交通規制」。

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ちょっとこれに追記します。

 

「交通規制」の話。
先日書いたこちらなのですが そもそもの話として書きますと、読者様数名から「あるYouTuberの内容は間違いですよね?」と質問を頂いてまして。 チラっと見ましたが、YouTuberの方が勘違いしているようです。 「交通規制」の意味 先日書い...

 

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私人による「交通規制」

要は法令上の「交通規制」と一般用語の「交通規制」の意味が必ずしも一致しないから分かりにくいわけですが、道路交通法上の「交通規制」は公安委員会、警察署長、警察官にしか認められていない。
だからこうなる。

道路左側 対向車線
報道されている呼び方 警察による交通規制 大会主催者による自主規制
一般向けに行う事前の告知 交通規制 交通規制
法令上の呼び方 交通規制 道路使用許可(4号許可)
根拠法 法5条1項、令3条の2第1項 法77条1項4号

道路交通法上の「通行止め規制」は仮に通行止めを突破した車両がいたら違反(犯罪)になりますが、道路使用許可を得た者が行う「自主規制」(77条3項)は、仮に突破した車両がいても違反にはならないことになります。

 

ただし結局のところ、私人が行う「通行止め」にしてもほとんどの車両は「従うことが期待される」。
わざわざ「突破」する人はいないのよ。

 

道路工事でおっちゃんが止めるのも、みんな従いますよね。
「法令上の交通規制権限」を与えなくても事実上問題ないからそういう運用なんだろうけど、法令上の交通規制と自主規制が違うということは理解できるかと。

 

それにしても、自主規制とやらもだいぶいい加減に見えますけどね…

ガードマンの方がいらっしゃいまして、なんか、なんかされてるみたいなんですよね。ちょっと止まって声を掛けまして、これ行けるんですか?ったら「行けるよ」って言うからそのまま、登ってきました。そうしましたらちょうどツールド北海道23ていう自転車競技が開催されていたみたいで、上の方からものすごいスピードで自転車が降りてまいりました。交通規制はですね、片側だけの交通規制ということで、まあ、こっちのほうは、山に登って行くほうは解放されて自由に走れると。まあ下りのほうは規制されているということでした。

 

ツールド北海道2023 上富良野→吹上温泉R291号 登り車線規制なし 怖かった

どういうレベルのお仕事なのか疑われます。

 

ところで。

私人による交通規制と信頼の原則

全然違う話になりますが、私人による交通規制に他の車両が従うことを信頼してもいいのか?という問題があります。

 

このような判例があります。

被告人は自動車運転の業務に従事している者であるが、昭和44年9月29日午後3時30分ごろ、土砂を積載した大型貨物自動車を運転して名濃バイパス方面(東方)から江南市a方面へ向け時速約50キロメートルで進行し、愛知県丹羽郡b町大字c字de番地先の交通整理の行なわれていない右方(北方)道路への見とおしのきかない交差点の手前にさしかかり直進しようとしたが、徐行および右側道路に対する安全確認の各義務を怠り同一速度で同交差点に進入しようとした過失により、同交差点の手前約4.7mの地点において、おりから右側道路の北方にあるA組作業現場から、土砂を積載するため同交差点左方(南方)道路方面へ向け、A組作業員Bの赤旗による停止の合図を無視して時速約25キロメートルで同交差点に進入してきたC(当時55才)の運転する大型貨物自動車を右前方約19.3mの距離に発見し、急停車の措置をとるとともにハンドルを左に切つたが間に合わず、同車の前部に自車の右前部を衝突させ、右Cを路上に転落させ、よつて同人に全治8ケ月18日間の頭蓋骨々折、頭蓋内出血の各傷害を負わせた。

 

最高裁判所第一小法廷 昭和48年3月22日

信号がなく見通しが悪い交差点を通行する際に、交差道路に私人による赤旗(停止)の合図を出しているのをみてそのまま通行したところ、私人の交通整理を無視して突っ込んできた車両と衝突。

 

信号がなく見通しが悪い交差点なので、原判決は「徐行義務違反(42条)による過失」として有罪にしたものです。
私人による交通整理は道路交通法上は効力がなく、交通規制とは認められない

 

最高裁は「私人の交通整理を信頼してよい」として無罪にしています。

 しかしながら、右Bによる交通規制が、道路交通法42条にいう交通整理にあたらないことは、原判決の判示するとおりであるが、右Bが北方から本件交差点に進入する車輛に対し赤旗により停止の合図をしていたものである以上、東方から同交差点に進入する車輛の運転者としては、北方から進行してくる車輛の運転者が右Bの停止の合図に従うことを信頼してよいのであつて、北方から進行してくる車輛の運転者が右Bの停止の合図を無視し同交差点に進入してくることまでを予想して徐行しなければならない業務上の注意義務はないものと解するのが相当である。
本件記録によると、被告人は本件事故当日大型貨物自動車を運転してたびたび東西道路を往復し、本件交差点の西北角で右Bらが北方から同交差点に進入してくる車輛に対し赤旗と白旗で交通規制をしているのを知つていたものであるが、本件事故の際、被告人は東西道路の東方から前記自動車を運転して時速約50キロメートルで進行し、同交差点の約15m手前の地点(南方道路の入口を規準とする。Cの進行してきた北方道路の入口からは20m以上手前であると認められる。)において、同交差点の西北角でBが赤旗を上げ北方からの車輛を停止させようとしているのを認め、北方からの車輛は右Bの停止の合図に従つて同交差点の手前で停止するものと考え、アクセルペダルから足を離しただけでそのまま進行したところ、同交差点の手前約4.7mの地点において、北方道路からCの運転する大型貨物自動車が、右Bの停止の合図を無視し時速約25キロメートルで同交差点に進入してくるのを約19.3mの距離に発見し、急停車の措置をとるとともにハンドルを左に切つたが間に合わず、同車の前部に自車の右前部を衝突させたものであることが認められる。
そうすると、被告人が、北方から進行してくる車輛の運転者が右Bの停止の合図に従い本件交差点の手前で停止するであろうと信頼したことは相当であつて、同交差点で徐行しなかつたことを被告人の過失とすることはできないものというべきである。

 

最高裁判所第一小法廷 昭和48年3月22日

私人による交通規制に他の車両が従うことを信頼して進行してもよい、という判例です。
なお、似たような事例では、

私人による交通規制が行われている場合に、自動車運転者が右規制に従つていさえすれば必ず過失が否定されるということにならないのは当然である。しかし、私人による交通規制であつても、これを信頼して進行したため過失が否定される場合があることは、最高裁判所の判例(昭和48年3月22日第一小法廷判決・刑集27巻2号240頁)も認めるところであつて、結局、当該私人による交通規制の趣旨・目的、同人に課せられた任務・役割、同人が現実に行つていた規制の方法及びこれを前提とした当該場所における現実の交通状況等にかんがみ、これが自動車運転者にとつて信頼に値するものであると認められるときは、右規制に従つて進行する自動車運転者にとつて、本来同人に課せられている注意義務が軽減又は免除されることがあると解すべき

 

大阪高裁 昭和62年5月1日

私人による交通規制であれば必ず信頼できるというわけではなく、具体的な状況次第で考える問題です。

 

結局のところ、ツールド北海道の対向車線側の「自主規制」は私人による交通規制で、道路交通法上は規制効力がないものになりますが、余裕でスルーさせていたように「とても信頼できないお粗末なもの」。

 

選手の実際の心境はわかりませんが、チーム右京が参加しなかった理由は「自主規制が信頼に値しない」というところでしょう。

 

もちろん意味合いとしては、集団落車回避や接触など不意な状況などにより対向車線に出ざるを得ない場合をイメージしての話だと思われます。

 

じゃあ警備員をしっかりさせればいいのか?というと、結局はその方針で失敗した以上は両側に警察署長規制を敷いて信頼できる警察官にガッチリ通行止めさせる以外には厳しいと思うのよ。

 

チーム、選手が「自主規制を信頼できないお粗末な状況」があったわけだから。

 

ただまあ、用語の意味を理解しないままおかしな方向に批判するのも違うと思う。
自主規制という理由は単に法令上の交通規制ではないからという意味でしかないのは明らかですが、道路使用許可を得た者が交通法規上の効力がある交通規制ができなくても、効力がない交通規制は可能だし、一般車両は私人の交通規制に従うことが期待される。
だからきちんとやらないと意味がないのに、実態はザルだった。

 

「落車、事故の危険リスクを伴う」

「大幅な改善が必要」

A4判の内部資料には、強い文言が並ぶ。

資料をつくったのは、日本自転車競技連盟(JCF)の専門部会「ロード部会」。昨年6月「ツール・ド・北海道協会」に対してレースで事故が起きる危険性を指摘したものだ。

 

「事故起きるリスク伴う」ツール・ド・北海道、いかせなかった指摘:朝日新聞デジタル
「落車、事故の危険リスクを伴う」 「大幅な改善が必要」 A4判の内部資料には、強い文言が並ぶ。 資料をつくったのは、日本自転車競技連盟(JCF)の専門部会「ロード部会」。昨年6月、「ツール・ド・北海…

じゃあザルだった自主規制をしっかりやれば解決…というよりも、一年以上前から指摘されていてもザルだったわけなので、「きちんとやろう!」では変わらないと思うのよ。

 


コメント

  1. エスケープ より:

    現場で接する感覚ですが、警備員の方個人に、高度な判断を伴う警察官並みの交通規制を求めるのは、色々な意味で非現実的と感じます。
    では警察官の交通規制をとなるのですが、よほど公益性の高いイベントや社会的に認知され既得権のあるイベント(初詣や各種祭り、駅伝、マラソン競技など)でないと、利益を見込むイベントで公益(多数の移動の自由)を制限し警察に警備を丸投げすることは難しい。
    結局、クローズドでない以上、参加者は危険を引き受ける覚悟で競技に臨むことになるのではと思いました。

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      参加者がリスクを負うのは根本的に失敗だと思います。確かに警察が全て規制するのはなかなか難しいですが、そこを目指さないとダメだと感じました。

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