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死角から飛び出た「ひょっこり原付」を回避可能なのか?

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ちょっと前にこれが報道されてましたが、何か類似の判例があったよな…とずっと考えてまして。

動画のケースは優先道路の進行妨害事案になりますが、確かにそこからひょっこりされたら回避は難しいし、原付が注意すべき話でしかないのですが、似て非なる事例で優先道路を通行していた車両が有罪になった判例があるのですよ。

 

世の中は理不尽とも言えますが。

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ひょっこり飛び出て右折

判例は東京高裁 昭和50年12月11日(業務上過失致死罪)。
事故の態様です。
加害者、被害者ともに2輪車。

動画との違いを挙げておきます。

動画 東京高裁
現場 交差点 私有地通路との交点
状況 左側車両が停止した 予め2台の駐車車両がいた
被害2輪車の挙動 交差点右折(優先道路の進行妨害) 道路外から右折(正常な交通の妨害禁止)

どちらも車道を通行する車両の妨害禁止になるのですが、東京高裁は得意の「予見可能」を発動して信頼の原則を否定。

しかして、原審で取調べた関係各証拠によれば、被告人は自動二輪車を運転し、新潟市ab番地先県道(幅員7.25mで道路中央部分に白破線のセンターラインが設けられている)上センターラインの左側部分(以下進行車線という)を三菱ガス化学方面より国道7号線方面に向け進行中、進路左側の同番地土建会社甲組正門通路から県道に進入し、対向車線に入るため被告人の進行車線を右斜めに横断中であつた被害者乙運転の原動機付自転車と、右正門前県道上において衝突したことが認められる(被害者の甲組正門通路から県道上への進出が交差点内への進入ではなく単なる横断であることは、右正門から甲家の屋敷内に通ずる幅員約4mの通路が道路交通法2条1項1号にいう道路に当たらない旨原判決が正当に説示したところから明らかである)。したがつてこの場合、原則的には所論のとおり、車両を運転して県道を横断しようとする者は、歩行者または他の車両等の正常な交通を妨害しないようにする安全確認義務を負う(道路交通法25条の2第1項参照)のであつて、県道上を進行する被告人としては、特段の事情がない限り、横断車両が右安全確認義務を遵守することを信頼して自車を運転すれば足り、この義務を怠つてその進行車線を横断しようとする車両のあり得ることまで予想すべき注意義務はないものといえるであろう。
しかしながら、本件においては、原審で取調べた各証拠並びに当審で取調べた検証調書及び証人丙の尋問調書を総合すれば、以下の事実が認められる。すなわち、被告人が自動二輪車を運転して県道上を前示甲組正門付近に差しかかつた際、同正門手前の進行車線左側端に正門の方から普通貨物自動車(パネル車)、大型貨物自動車(8トン車)の順序で2台の車両が相接して駐車していたこと(2台の車両の順序については、もし認定とは逆の順序で駐車していたとすると、実況見分ないし原審及び当審の検証の際における被告人の指示説明どおり、被告人が「2」地点において「A」地点の被害車両を最初に発見することができるためには、大型貨物自動車は極端に道路左側端に寄つて駐車していたとみなければならず、不合理である)、被告人は同正門手前で右駐車車両を認めたが、そのまま進行すればこれに追突することは確実であり、またこれに遮ぎられて同正門前はもとより進行車線前方の道路状況を見とおすことは全く不可能であつたこと、そこで被告人は、漸次、自車の速度を従前の時速約60キロメートルから45ないし50キロメートルに減速するとともに、自車をほぼセンターライン寄りに移行させて自車の進路を変更したうえ、駐車車両の右側方を通過しようとしたところ、大型貨物自動車の右後方(前示「2」地点)において、前方23.3m位の地点(前示「A」地点)に、甲組正門通路から県道に進入し、前示のように、被告人の進行車線を右斜めに横断中であつた被害者乙運転の原動機付自転車を発見し、急拠、ハンドルをやや右に切ると同時に、急制動したが間に合わず、自車を右原動機付自転車に衝突せしめたこと、被告人は自動二輪車等を運転して同所をしばしば進行していたもので、前示駐車車両の前方に甲組正門及び同正門から甲家屋敷内に通ずる通路があり、仕事関係の車両または歩行者が、日頃、同正門を通つて通路から県道に出たり、県道から通路に入つたりしているのを知つていたことが認められる。そして、同正門通路から被告人の進行車線を横断しようとする者にとつても、右のように、同正門右側に相接した2台の駐車車両があると、横断の際は歩行者または他の車両等の正常な交通を妨害しないようにする安全確認義務を負うとはいえ、被告人において駐車車両に遮ぎられて、同正門前はもとより進行車線前方を見とおすことが不可能であつたと同様、横断開始に先き立ち同正門通路のところに車両を停止させた位置から右方の交通の安全を確認することは、駐車車両に遮ぎられて全く困難であつたから、右車両の中には、右方の交通の安全を確認するため、同正門から県道内に横断を開始し、被告人の進行車線上、駐車車両に妨げられずに右方を見とおせる地点まで進出する車両のあり得ることはもちろん、その際、右方の交通の安全を十分確認することなく、漫然、横断を開始し、駐車車両の陰から、突如、対向車線に入ろうとする車両(本件被害車両がその例であることは原審で取調べた各証拠から明らかである)のあり得ることも、現在のわが国の道路交通の実情からいつてあながち否定できないところである。しかも、被告人は同正門から県道に出入する車両等のあり得ることを知つていたというのであるから、これら車両の中には、右で説示した本件被害車両のごとき車両のあり得ることも十分予見可能であつたはずであり、且つ、被告人が、警音器吹鳴義務はともかく、原判示の減速徐行義務を尽しておれば、本件衝突を回避することも十分可能であつたと思われる。したがつて、以上の諸事情のもとでは、駐車車両の側方を通過しようとする被告人において、横断車両が、横断開始に先き立ち、前示安全確認義務を尽すであろうことをあてにしても、右信頼は社会的に相当であるとは認められない。
右諸事情は、前示信頼の原則の採用を否定すべき特段の事情に当たるというべきである。論旨は理由がない。

 

東京高裁  昭和50年12月11日

道路外から横断(右折進入)する車両が25条の2第1項に従うことはもちろんだけど、駐車車両に遮られて視認できないことや、駐車車両の陰から漠然横断する車両は予見可能だとし、道路外から右折進入する車両との関係性で信頼の原則を否定し有罪としています。

東京高裁判決のように予め駐車していた車両のケースと、今回の動画のように第1車線を走行していた車両が停止したケースという違いはありますが、車道を普通に進行していただけの2輪車が有罪。

 

まあ、道路外から右折する車両にしても交差点を右折する車両にしても、右折進行する側がはるかに大きな注意義務を負うべきとしか言いようがないのですが、死角から飛び出たひょっこりさんを予見して進行する注意義務があるという話になる。

 

死角なんだから何が飛び出てくるかわからないし、何も飛び出てこない可能性もありますが、こういうケースで左側車両が停止した理由が実は「子供が飛び出した」という可能性もあるわけで、なかなかややこしい。

どこまで予見する注意義務があるのか?

どこまで予見して注意すべき義務があるのか?については、正直難しい話。
「マンホールから突如歩行者が飛び出してくる可能性を予見しろ!」と言われたらだいぶ無理があるし、信頼の原則というのは予見すべき範囲に制限を掛けるもの。

 

ひょっこりさんをケアすべき注意義務を認めて有罪にした判例もありますが、理不尽といえば理不尽だし、現実といえば現実。
ワケわからんトラブルに巻き込まれないようにするには、死角は要注意としか言えませんね。

 

まあ、「ひょっこりするな」が最もシンプルな解決だと思うし、誰かがひょっこりした結果、周りの交通者は難易度が著しく高まるというのが実情なんですが。


コメント

  1. 山中和彦 より:

    これ、amazonでおそらく同じ商品が、価格違いで出てきたり、キャッチコピーが違うので出てきたりしますね。
    その中で、「ドライブレコーダー」と謳ったものもありましたので、録画機能もあるようです。しかし、リアだけ録画するのも何か片手落ちです。前のカメラも付ければ良いのに。
    前後撮影が出来る自転車用ドラレコで、リアのカメラだけモニターに出せるようになれば、使い勝手も、良くなるかと思います。

    • roadbikenavi roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      やたら似たものが出てきますが、モノは同じなんじゃないかと思ってました。

  2. 山中和彦 より:

    これは車の方がつらいですね。
    動画に出てくる交通事故鑑定人は、ミニバイク7:クルマ3と言ってますが、せめて9:1くらいにして欲しい。
    ノールックで、バイクから見て、左折か直進ならまだしも、(ブレーキ踏めば回避可能性が高い)
    右折しようとして、クルマに正面からぶつかってきてるし、
    ということは、右折で反対車線を通過しようとしてるということになりますし。
    こんな自分に向かって来るのを回避は難しいでしょう。

    • roadbikenavi roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      過失割合は30%は行かないと思うのですが、世の中意外と理不尽ですからね…

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