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JAFの横断歩道調査は、事故防止と関係するのか?

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毎年のようにJAFが横断歩道での一時停止率を発表しています。
長野県が毎回のように1位になりますが、じゃあ長野県は横断歩行者妨害による事故が少ないのか?という話になりますよね。

 

それについて見ていきます。

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長野県と新潟県の比較

比較的人口が近い、長野県と新潟県で比較してみます。

長野県 新潟県
人口(R4年8月) 2,007,347 2,129,722
一時停止率(R5) 84.4% 23.2%
一時停止率(R4) 82.9% 25.7%

人口差は約10万人。
一時停止率についてはJAFの2023年調査から引用しましたが、約3.6倍の差があります。

 

これだけ一時停止率に差があるなら、新潟県は長野県よりも「横断歩行者妨害による事故」が多い…のかというと、それはまた別問題です。

 

◯令和4年中の長野県の交通事故について、違反別統計。

https://www.pref.nagano.lg.jp/police/toukei/koutsu/documents/r412-7ihan.pdf

 

◯令和4年中の新潟県の交通事故について、違反別統計。

https://www.pref.niigata.lg.jp/uploaded/attachment/359668.pdf

 

長野県 新潟県
人口(R4年8月) 2,007,347 2,129,722
一時停止率(R5) 84.4% 23.2%
一時停止率(R4) 82.9% 25.7%
歩行者妨害事故(死亡者) 246(2) 204(2)

うーん…コメントしにくい。
なお、ちょっと前に話題になった「コンビニにブレスケアを買いに行ったけど、ひき逃げ無罪」の件は、そもそもは横断歩道を横断した被害者と衝突した事故なので横断歩行者妨害に該当するはず。
場所は長野県になります。
具体的な速度は忘れましたが、とんでもないスピードで横断歩行者に衝突したはずですが…長野県…

 

「ひき逃げ無罪」、東京高裁はなぜ飲酒運転発覚回避でコンビニに行ったのに無罪にしたのか?
ちょっと前に、横断歩道を横断中の歩行者をはねた後、被害者の捜索よりも自身の飲酒運転発覚を回避するためにブレスケアを購入するためコンビニに向かった被告人に対して無罪(道路交通法違反、救護義務違反)とした件が報道されましたが 東京高裁はなぜ救護...

 

なお、ひき逃げ(救護義務違反)については最高裁に上告したので、最高裁が判断することになります。

JAFの調査の意義

JAFの調査って、このような条件で行われています。

調査場所
センターラインのある片側1車線道路で、原則として、調査場所の前後5m以内に十字路および丁字路交差点がない箇所で、道路幅員が片側2.75m~3.5m、交通量が3~8台/分(目安)とし、制限速度が時速40~60km程度の箇所

調査対象
横断歩行者側の車線を走行する自家用自動車、自家用トラック(白ナンバー)

 

信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査(2023年調査結果)
「信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査(2023年調査結果)」についてご案内します。

交差点付近の横断歩道を除外し、調査対象としては横断歩行者側の車線のみとしている。

 

ここで疑問。
交差点付近ではない横断歩道の場合、だいたいは見通しがそれなりにいい場所です。

 

実際の事故判例を見ていて感じるのは、正確な統計は持ち合わせていませんがこういう事故態様が多い気がするのです。

 

◯いわゆる左折巻き込みや、右折時の確認不足

◯対向車線の渋滞、見通しが悪い交差点

 

東京高裁 昭和42年2月10日

 

東京高裁 昭和46年5月31日

大阪高裁 昭和54年11月22日

 

横断歩道右側が死角の場合における注意義務。
こちらの件。 大阪高裁 昭和54年11月22日判決を詳しく!とメール頂いたのですが、以前書いた気がする笑。 結構大事な判例なので、もう一度。 対向車線が渋滞 まずは概略から。 対向車線が渋滞で横断歩道を塞ぐ形で停止車両があります。 横断歩道...

 

交差点付近の横断歩道を調査対象にしていないので、左折巻き込みや右折時確認不足の横断歩行者妨害はカウントされていない。
交差点付近の横断歩道は調査対象にしていないので、
見通しが悪い交差点(減速接近義務が強く要請される場面)がカウントされていない。
そして対向車線を調査対象にしていないので、対向車線の渋滞停止(減速接近義務がかなり強く要請される場面)もカウントされていない。

 

事故に直結しやすい場面が調査対象ではないのです。

 

見通しがいい単路の横断歩道って、歩行者からしても見通しがよい。
つまり、車両が停止しないことを視認しやすいから、歩行者側も自衛が働きやすいはず。

 

ところが問題なのはこういう場面。

減速接近義務(38条1項前段)が強く要請される場面、つまり事実上最徐行義務がある場面で最徐行せずに進行して歩行者と衝突みたいなタイプの判例ってまあまあ多い気がするのですが、調査の対象ではない。

 

このようなタイプの事故は、減速接近義務をかなりしっかりしてないと停止できません。
つまり大事なのは、現に横断しようとする歩行者がいるかいないかわからない場合の減速接近義務のほう。

本件交通事故現場は前記のとおり交通整理の行われていない交差点で左右の見通しのきかないところであるから、道路交通法42条により徐行すべきことももとよりであるが、この点は公訴事実に鑑み論外とするも、この交差点の東側に接して横断歩道が設けられてある以上、歩行者がこの横断歩道によって被告人の進路前方を横切ることは当然予測すべき事柄に属し、更に対向自動車が連続して渋滞停車しその一部が横断歩道にもかかっていたという特殊な状況に加えて、それらの車両の間に完全に姿を没する程小柄な児童が、車両の間から小走りで突如現われたという状況のもとにおいても、一方において、道路交通法13条1項は歩行者に対し、車両等の直前又は直後で横断するという極めて危険発生の虞が多い横断歩道すら、横断歩道による限りは容認しているのに対し、他方において、運転者には道路交通法71条3号により、右歩行者のために横断歩道の直前で一時停止しかつその通行を妨げないようにすべきことになっているのであるから、たとえ歩行者が渋滞車両の間から飛び出して来たとしても、そしてそれが実際に往々にしてあり得ることであろうと或は偶然稀有のことであろうと、運転者にはそのような歩行者の通行を妨げないように横断歩道の直前で直ちに一時停止できるような方法と速度で運転する注意義務が要請されるといわざるをえず、もとより右の如き渋滞車両の間隙から突然に飛び出すような歩行者の横断方法が不注意として咎められることのあるのはいうまでもないが、歩行者に責められるべき過失があることを故に、運転者に右注意義務が免ぜられるものでないことは勿論である。
しからば、被告人は本件横断歩道を通過する際に、右側に渋滞して停車していた自動車の間から横断歩道によって突然にでも被告人の進路前方に現われるやもはかり難い歩行者のありうることを思に致して前方左右を注視すると共に、かかる場合に備えて横断歩道の直前において一時停止することができる程度に減速徐行すべき注意義務があることは多言を要しないところであって、原判決がこのような最徐行を義務付けることは過当であるとしたのは、判決に影響を及ぼすこと明らかな根本的且つ重大な事実誤認であって、この点において既に論旨は理由があり原判決は破棄を免れない。

 

昭和42年2月10日 東京高裁

もちろん、見通しがいい単路の横断歩道で一時停止しない車両なら、見通しが悪い横断歩道ならなおさら停止しないことが普通なので、まずは見通しがいい単路からという考え方もできます。
しかし、減速接近義務が強く要請される場面できちんと一時停止できたか?が問題になるべきなんじゃないかと思うわけで、要は横断歩行者の有無に関係なく減速接近義務を果たしたか?を問題にするほうが事故防止になるのではなかろうか?

減速接近義務の意味

減速接近義務(38条1項前段)は昭和46年改正で登場したものですが、改正以前から業務上過失致死傷判例では普通に示されてきた概念です(東京高裁 昭和42年2月10日判決等)。

(横断歩道等における歩行者等の優先)
第三十八条 車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という。)に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。

あえて昭和46年に減速接近義務を新設した理由は、横断歩行者の有無に関係なく減速接近義務違反のみで取締りを可能にするためです。

車両等が横断歩道に接近する場合の義務に違反した場合には、それだけで第38条第1項の違反となる。また、横断歩道の直前で停止できるような速度で進行してきた車両等が、横断歩道の直前で一時停止し、かつ、歩行者の通行を妨げないようにする義務に違反した場合も同様である。

 

道路交通法の一部を改正する法律(警察庁交通企画課)、月刊交通、道路交通法研究会、東京法令出版、昭和46年8月

一時停止義務が直接的には事故防止になるのは間違いないとしても、事故につながりやすい「見通しが悪い横断歩道での減速接近義務」や「対向車線の渋滞停止における減速接近義務」、「右左折時の確認義務」のほうが事故に直結しやすいのではないかと考えますが、それらはJAFの調査対象ではありません。

 

まずは単路の横断歩道で一時停止することが大事なのかもしれませんが、おそらくはそういう場面は歩行者側も自衛しやすいわけで、真の一時停止率はまた別なんじゃないかと思うわけです。

 

そういうわけで、一時停止違反よりも減速接近義務違反の取締りを強化した方がいい方向に向かう気がしますが、減速接近義務違反は立証しにくいのか取締りしてないように思えます。
減速接近義務違反については横断歩行者がいなくても成立するわけで、減速接近義務違反の取締りのほうが必要なんじゃないかと思いますが。


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