正直、この「ハイパー安易な考え方」だけはどうにも理解に苦しむ。
遠慮なく行きます。
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優先されないことと事故回避義務は別
あのね、
予見不可能&回避不可能な場合を除けば、過失運転致死傷(自転車なら過失致死傷)に問われるのは当たり前。
この判例で理解できるかな?
このように信号待ちしていて、
先行自転車が左折したから後続車が左折。
しかし自転車は左折してすぐに横断歩道上を進行して事故に。
道路交通法12条1項は横断歩道がある場所での横断歩道による歩行者の横断を、また、同法63条の6は自転車横断帯がある場所での自転車横断帯による自転車の横断義務をそれぞれ定めているので、横断者が右の義務を守り、かつ青色信号に従って横断する限り、接近してくる車両に対し優先権が認められることになるのであるが(道路交通法38条1項)、本件のように附近に自転車横断帯がない場所で自転車に乗ったまま道路横断のために横断歩道を進行することについては、これを容認又は禁止する明文の規定は置かれていないのであるから、本件被害者としては横断歩道を横断するにあたっては自転車から降りてこれを押して歩いて渡るのでない限り、接近する車両に対し道交法上当然に優先権を主張できる立場にはないわけであり、従って、自転車を運転したままの速度で横断歩道を横断していた被害者にも落度があったことは否定できないところであり、被害者としては接近して来る被告車に対して十分な配慮を欠いたうらみがあるといわなければならない。しかしながら自転車に乗って交差点を左折して来た者が自転車を運転したまま青色信号に従って横断歩道を横断することは日常しばしば行われているところであって、この場合が、信号を守り正しい横断の仕方に従って自転車から降りてこれを押して横断歩道上を横断する場合や横断歩道の側端に寄って道路を左から右に横切って自転車を運転したまま通行する場合に比べて、横断歩道に接近する車両にとって特段に横断者の発見に困難を来すわけのものではないのであるから、自動車の運転者としては右のいずれの場合においても、事故の発生を未然に防ぐためには、ひとしく横断者の動静に注意をはらうべきことは当然であるのみならず、自転車の進路についてもどの方向に進行するかはにわかに速断することは許されないのであるから、被告人としては、被害者の自転車が同交差点の左側端に添いその出口に設けられた横断歩道附近まで進行したからといって、そのまま左折進行を続けて◯✕方向に進んでいくものと軽信することなく、同所横断歩道を信号に従い左から右に横断に転ずる場合のあることをも予測して、その動静を注視するとともに、自車の死角の関係からその姿を視認できなくなった場合には右横断歩道の直前で徐行又は一時停止して右自転車の安全を確認すべき注意義務があるものといわなければならない。
昭和56年6月10日 東京高裁
当たり前だけど、自転車に優先権がないことは事故を起こしてもいい理由にはならんぞ?
過失運転致死傷の「過失」とは、予見可能なことを回避しなかったことを意味しますが、理屈の上では道路交通法違反がなくても過失運転致死傷罪は成立します。
ほとんどの場合は安全運転義務違反(前方不注視)が関係しますが。
横断歩道を赤信号で横断する歩行者は38条による優先権はないけど、だからといって衝突していい理由にはならない(安全運転義務)。
以前「200m手前で信号無視横断歩行者ガー!」とか言ってた人がいた気がするけど、それは安全運転義務の問題な。
別の例。
道路交通法37条は適法に交差点に進入する直進車を優先させる規定。
直進車の速度超過が著しい場合には優先権がないと解釈されてますが、猛スピードで直進する車両を発見していたら、右折車は右折待機するでしょ。
「猛スピードの直進車には優先権はない!」と言い張って突っ込む?
さらに別の例。
こんな感じで赤信号無視&逆走してくる自転車がいたとしても、正常に左折しようとする車両には事故回避義務があるから、やるべき回避行動を取らずに事故を起こせば有罪ね。
ちなみにこの記事で触れた民事の判例では、順走自転車が過失傷害罪で略式起訴され有罪が確定したと書いてありました。
これでも触れたけど、逆走自転車と衝突し、順走自転車も書類送検されてるなんてことは「普通」。
夜間車道を酔っ払って歩く歩行者は「通行区分違反」を犯して車両の通行を妨害してますが、だからといって衝突してもいい理由にはならんでしょ。
遠慮なく行きます。
優先権がないことは、安全運転義務まで消し去るわけじゃないよ?
この安易な思考回路だけはどうにも理解に苦しむ。
理解不能
時々、どういう思考回路になるとその結論に達するのかさっぱりわからない理論を繰り出す人がいて困惑しますが、例えばこれ。
歩行者が赤信号無視して横断開始したとして、車両には38条の義務はない。
しかし安全運転義務はあるのだから、事故を回避する義務があるのは言うまでもなく。
どこのバカが、全力で衝突しにいくんだろ。
別の例。
この場合、優先道路を進行しているのは赤車両だから青自転車は優先道路の進行妨害をしていることになる。
けど、優先道路だからと言って事故回避義務まで消し去るわけもない。
逆走自転車が前方に見えたとして、回避できる余地があるのに至近距離を通過してビビらせたり、わざとハイビームで攻撃してもいい理由にはならん。
これもそうだけど、逆走自転車が妨害してきたから衝突してもいい理由にはならんでしょ。
一体どういう思考回路に陥ると、このような考え方になるのかわからないけど、物事を分けて考える能力に難があるとしか。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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