だいぶ前に書いた半分ネタ記事があるのですが、
自転車が法令上の合図(手信号、法53条)を遵守することは100%不可能です。
手が2本しかない人類がどうやって左折合図と徐行合図を「継続」しながらハンドル操作するのかわかりません。
ちょっと自信がないのですが、質問を頂きました。
自転車に取り付けたウインカーは「合図」になるか?
自転車の合図についての質問です。
これまでも合図履行義務を最大限守るため、交差点を右左折する際は曲がり終わるまで合図を継続するほか、停止中などは両手で合図を行ってきました。しかし人の腕は通常2本しかないのに最大で3種類の合図を同時に出さなければならない(*1)ため、合図履行義務を完全に守っているとは言い難いでしょう。そこで、同時に合図に使用する腕を最大1本に減らすために自転車用のウインカーを制作しているのですが、自転車に設けられた方向指示器は右左折等の合図として有効でしょうか?
制動灯や後退灯とは異なり、方向指示器については「車両の保安基準に関する規定に定める」ものに限るような条文は見当たりませんでしたので、自転車用に制作したウインカーも有効な合図になりうると考えていますが、これを肯定・否定するような情報があればご教授いただけると幸いです。
(ちなみに方向指示器は最低でも一般原付の保安基準を満たすようなものを設けるつもりです)*1: 例えば、交差点を右折するときに
右折: 右折の合図
交差点の側端に沿う: 左進路変更の合図
徐行: 徐行の合図
の3種類
これ、先に補足。
令21条の合図の方法ですが、「方向指示器」については保安基準云々が書いてなくて、制動灯(ブレーキランプ)については「保安基準により」と書いてある。
つまり、制動灯(ブレーキランプ)については「手信号」or「保安基準による制動灯」の二者択一。
しかし方向指示器については「手信号」or「方向指示器」なわけで、「保安基準による方向指示器」ではないのです。
そもそも二輪の自転車については、道路運送車両法上は軽車両ではないため、保安基準が関係しません。
道路運送車両法施行令
第一条 道路運送車両法(以下「法」という。)第二条第四項の軽車両は、馬車、牛車、馬そり、荷車、人力車、三輪自転車(側車付の二輪自転車を含む。)及びリヤカーをいう。
これらを踏まえると、自転車に何らかの方向指示器を取り付けて一般的に方向指示器と認められる程度のモノであれば、正規の合図(法53条)として認められるような気がするのですが、ぶっちゃけ自信無し!
ただまあそもそも、自転車の合図履行義務って取締り対象じゃないわけで、その意味では何でもいいような気がします。
制動灯(ブレーキランプ)については、自転車が道路運送車両法に関係しない以上、手信号以外は法定合図とはなりません。
ウインカーについてはいろいろ調べてみたのですが、そもそもマニアック過ぎてわかりませんでした。
自転車の合図履行義務
ちょっと前に自転車同士の事故判例でこんなの挙げましたが、
横断歩道を歩いて渡るために停止したら、後続自転車が衝突した事故。
ブレーキランプ等のない自転車の特性を踏まえ、後方から走行してくる車両の有無や動静に注意をし、停止する際に合図をするなどすべきだった
東京地裁 令和3年8月2日
このような理由から先行自転車に20%の過失を認定してますが、ぶっちゃけビミョーな判例だなあと。
しかし現実に過失相殺する判例があるとなると、自転車もそろそろ法定の制動灯があってもいい気がする。
止まるためにブレーキレバーを握るのに、片手で合図を出すなんてそもそも矛盾してますし。
自転車の合図不履行は時々過失認定されるのが現実です。
個人的には左右のブラケットにウインカーのスイッチがあれば非常に便利な気がしますが、以前導入したウインカーは使いやすいとまでは言い難い。
特定小型原付って、自転車のダメな点をあらかたカバーしてますよね。
ウインカーや制動灯が標準装備されているし、歩道で徐行しない自転車への当てつけかのように「モードによる強制徐行」がついてます。
昭和ならともかく、なんで令和になっても自転車が手信号なのか意味がわかりませんが、
結局、法令通りに自転車が合図を出すなんて誰一人不可能なワケ。
いっそのこと合図履行義務から自転車を除外するか、令和なんだし手信号ではなくウインカーを標準装備するかなど考えるべきだと思うのですが、自転車のルールを曖昧に運用してきたツケみたいなもんだと思うのです。
ということであまり自信はありませんが、自転車に取り付ける場合、たぶんこうなります。
・制動灯は法令上「合図」にはならず、手信号が必要
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
ウインカーについては以前県警本部に確認を取ったんですが、バイクや車と違い取付義務が無いため、使用したとしても【合図】としては認められず、ただ左側の黄色いライトが点滅しているだけになる…とのことでした
他の県警がどういう判断なのかまではわかりませんが…
コメントありがとうございます。
その意見もわからなくはないのですが、条文上はそうとも言いきれないように感じてまして…ややこしいですよね。
この前の並走の記事で書かれてましたけど、執務資料の著者は警察ではないから…みたいなことや、このウインカーの件も警察はこう言うけど、条文上はそうとも言い切れないみたいになっちゃうと正解はこれ!みたいなのが無いってことですよね…
コメントありがとうございます。
厳密にいえば執務資料の著者は元大分県警の警察署長なんですが、確かに怪しい記述はいくつもあります。
ただまあ、正解が不明というのが日本の法律のステキなところですよね笑。