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「できる限り」の意味を混同すると間違いの元。

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いきなりですが質問です。

 

・「左側端に寄る」
・「できる限り左側端に寄る」

 

この2つを比較したときに、正しいのはどれでしょうか?

①「できる限り左側端に寄る」のほうがさらに左側を意味する。
②「左側端に寄る」のほうがさらに左側を意味する。
③「できる限り左側端に寄る」と「左側端に寄る」は同じである。
④「できる限り左側端に寄る」と「左側端に寄る」は基本的には同じ位置になるが、「できる限り左側端に寄る」の場合には左側端に寄れない状況の時は可能な範囲で左側端に寄ればいい

さて、正解はどれ?

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「できる限り」の意味

これが話題になってますが、

追い抜きに関する規定は、「自動車が自転車の右側を通過する場合、十分な間隔がない時、自動車は間隔に応じた安全な速度で進行する」よう義務づける。同じ状況で自転車には「できる限り道路の左側端に寄って通行する」義務を課す。

「十分な間隔」や「安全な速度」の具体的数値は法令では規定せず、今後検討して目安を定めて示す。間隔は1~1・5メートルが基本になるという。速度については、自転車は通常時速20キロくらいで走ることが多く、追い抜く車はそれを5~10キロ上回る速度が目安になるという。

 

自転車追い抜き時、車に罰則付き義務 ながら運転禁止 道交法改正へ:朝日新聞デジタル
警察庁は21日、道路交通法の改正原案をまとめた。車が自転車を追い抜く際、「間隔に応じた安全な速度」で進行する義務を車の運転者に罰則付きで課す新たな規定を盛り込む。自転車の交通違反に、青切符を受けて反…

道路交通法でいう「できる限り」とは何なのでしょうか?
解説書から引用します。

「できる限り」とは、道路や交通の状況等に鑑み支障のない範囲における可能な限度を意味する。

 

木宮高彦、詳解道路交通法、有斐閣ブックス、1977、p90

例えば左折の規定では「できる限り左側端に寄って」とありますが、大型車は左側端に寄ると左折出来なくなるし、交差点手前で道路工事をしていたら左側端に寄れない。

 

左折の規定を「左側端に寄って」にすると、必ずこうしないと違法になりますが、

「できる限り左側端に寄って」と規定することで、左側端に寄れない事情がある場合には可能な範囲で左側端に寄ればいいことになる。

「できる限り」と付けずに「左側端に寄って」だと、左折不可能に陥るケースがあるから「できる限り」とつけることで左側端に寄れない場合を緩和しているわけ。

 

一番分かりやすいのは駐停車の規定ですが、停車は「できる限り左側端」、駐車は「左側端」。

(停車又は駐車の方法)
第四十七条 車両は、人の乗降又は貨物の積卸しのため停車するときはできる限り道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければならない。
2 車両は、駐車するときは道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければならない。
停車 駐車
できる限り左側端 左側端

なぜこう規定しているかの理由はこれ。

 

停車の説明

なお、「できる限り」としたのは、本来は左側端にぴったり寄るのが望ましいが、道路工事その他障害物のため左側端に寄ることが不可能な場合を考慮したからである。

 

宮崎清文、条解道路交通法、立花書房、1961(昭和36年)

駐車の説明

本項においては、停車の場合と異なり、「できる限り」という言葉が用いられていない。したがって、車両は、駐車しようとするときには、かならず道路の左側端に寄らなければならぬことになる

 

宮崎清文、条解道路交通法、立花書房、1961(昭和36年)

要は「できる限り」とつけることで「道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない」という除外規定を設けたのと同じになります。

 

「左側端に寄って」よりも「できる限り左側端に寄って」のほうがさらに左側であるかのような誤解につながりますが、

違います。
「左側端に寄って」と「できる限り左側端に寄って」は位置は同じですが、「できる限り」とつけることにより左側端に寄れない場合には「可能な範囲で左側端に寄れば」問題ないとする。

 

つまり正解は④です。

①「できる限り左側端に寄る」のほうがさらに左側を意味する。
②「左側端に寄る」のほうがさらに左側を意味する。
③「できる限り左側端に寄る」と「左側端に寄る」は同じである。

④「できる限り左側端に寄る」と「左側端に寄る」は基本的には同じ位置になるが、「できる限り左側端に寄る」の場合には左側端に寄れない状況の時は可能な範囲で左側端に寄ればいい。

18条1項にもただし書きとして「道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない」とありますが、これがあるから道路工事や路面の荒れなどがある場合には左側端寄り通行義務が除外される。

「できる限り左側端に寄って」の意味は、同じく道路工事や路面の荒れなど左側端に寄れない事情がある場合には「可能な範囲で左側端に寄ればいい」となるわけ。

 

「できる限り」の意味を勘違いすると、間違いの元。

つまり報道内容は

再び報道内容に戻りますが、

追い抜きに関する規定は、「自動車が自転車の右側を通過する場合、十分な間隔がない時、自動車は間隔に応じた安全な速度で進行する」よう義務づける。同じ状況で自転車には「できる限り道路の左側端に寄って通行する」義務を課す。

「十分な間隔」や「安全な速度」の具体的数値は法令では規定せず、今後検討して目安を定めて示す。間隔は1~1・5メートルが基本になるという。速度については、自転車は通常時速20キロくらいで走ることが多く、追い抜く車はそれを5~10キロ上回る速度が目安になるという。

 

自転車追い抜き時、車に罰則付き義務 ながら運転禁止 道交法改正へ:朝日新聞デジタル
警察庁は21日、道路交通法の改正原案をまとめた。車が自転車を追い抜く際、「間隔に応じた安全な速度」で進行する義務を車の運転者に罰則付きで課す新たな規定を盛り込む。自転車の交通違反に、青切符を受けて反…

「できる限り道路の左側端に寄って通行する」としている部分を仮に「道路の左側端に寄って通行する」とした場合、何があっても左側端に寄ってないと違反になってしまうわけで、道路工事があろうが、路面の荒れがあろうが、左側端寄りしか走れなくなる。
除外規定を設けるために「できる限り」とつけるわけで、意味を勘違いするととんでもないことが起きますが…

 

「できる限り」とついていることにより、追いつかれた後にも路面の荒れや道路工事など左側端に寄れない事情があるなら可能な範囲で左側端に寄れば済むので、このように左側端を避けて通行できます。

「できる限り」とついていることでこれが可能になりますが、「できる限り」がついてないと路面の荒れがあろうが左側端寄り以外を通行出来なくなり不合理。

 

けど「できる限り」の意味を勘違いして、「左側端に寄って」よりも「できる限り左側端に寄って」のほうがさらに左側だと思い込んでいる人が多い。
例えば「追いつかれた車両の義務」(27条2項)には「できる限り道路の左側端に寄って」とありますが、緊急車両の優先(40条2項)には「できる限り」がついていない。

(緊急自動車の優先)
第四十条
2 前項以外の場所において、緊急自動車が接近してきたときは、車両は、道路の左側に寄つて、これに進路を譲らなければならない。

「緊急車両の優先」と「追いつかれた車両の義務」ではこのように「できる限り」の有無が違いますが、要は緊急車両のときは問答無用に左側に寄らないと違反、追いつかれた車両の義務では「できる限り」なので道路状況次第で「可能な範囲で」寄れば済む。

緊急車両の優先(40条2項) 追いつかれた車両の義務(27条2項)
条文 道路の左側に寄つて、これに進路を譲らなければならない。 できる限り道路の左側端に寄つてこれに進路を譲らなければならない

※緊急車両の優先が「左側端」ではなく「左側」にしている理由はいまいち判然としませんが、昭和39年改正以前は追いつかれた車両の義務も「左側端」ではなく「左側」でした。
なお「左側」には「左側端」を含むと解釈されている以上、大差ないと思われる。

 

なぜ「停車と駐車」、「緊急車両と追いつかれた車両」で「できる限り」の差をつけているかというと、「できる限り」の意味は「可能な範囲で」と読み替えて緩和しているからです。

 

もし「できる限り」のほうが「さらに左側」だというなら、緊急車両より追いつかれた車両のほうがさらに左側端に寄る義務があるかのようになってしまいますが、それがいかにバカげているかは普通に考えればわかるかと。

 

だからこちらで書いたように、

 

自転車に「追いつかれた車両の義務」が新設されても、18条1項の通りに通行していれば関係ない。
これの件。 追い抜きに関する規定は、「自動車が自転車の右側を通過する場合、十分な間隔がない時、自動車は間隔に応じた安全な速度で進行する」よう義務づける。同じ状況で自転車には「できる限り道路の左側端に寄って通行する」義務を課す。 「十分な間隔...

 

18条1項でいう「左側端に寄って、ただし道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない」と、27条2項でいう「できる限り左側端に寄って」は意味が同じ。
18条1項を遵守している分には関係ないと言えます。

 

間違っても新設される規定から「できる限り」を省いたら、とんでもないことが起きます。

 

「できる限り左側端に寄って」と「左側端に寄って」は同じ位置になるが、「できる限り左側端」の場合には道路状況次第で寄れない場合には可能な範囲で寄ればいいという意味。

ここは間違いやすいポイントです。


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