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自転車に「追いつかれた車両の義務」が新設されても、18条1項の通りに通行していれば関係ない。

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これの件。

追い抜きに関する規定は、「自動車が自転車の右側を通過する場合、十分な間隔がない時、自動車は間隔に応じた安全な速度で進行する」よう義務づける。同じ状況で自転車には「できる限り道路の左側端に寄って通行する」義務を課す。

「十分な間隔」や「安全な速度」の具体的数値は法令では規定せず、今後検討して目安を定めて示す。間隔は1~1・5メートルが基本になるという。速度については、自転車は通常時速20キロくらいで走ることが多く、追い抜く車はそれを5~10キロ上回る速度が目安になるという。

 

自転車追い抜き時、車に罰則付き義務 ながら運転禁止 道交法改正へ:朝日新聞デジタル
警察庁は21日、道路交通法の改正原案をまとめた。車が自転車を追い抜く際、「間隔に応じた安全な速度」で進行する義務を車の運転者に罰則付きで課す新たな規定を盛り込む。自転車の交通違反に、青切符を受けて反…

正確には条文を見ないとわかりませんが、以前から書いているように18条1項(左側端寄り通行義務)を遵守している分には関係ないかと。

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そもそも追いつかれた車両の義務の歴史

以前から書いているように、18条1項でいう「左側端に寄って、ただし道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない」と、27条2項でいう「できる限り左側端に寄って」は意味が同じ。

「できる限り」とは、「可能な範囲で」という意味です。従って道路状況で左側端に寄れない場合を除外する意味。

 

「できる限り」左側端。
こちらの記事について。 確かに左側→左側端となり、「できる限り」が付属してます。 「できる限り」 以前どこかで書いた記憶がありますが、 「左側端に寄って」 「できる限り左側端に寄って」 この差はなんなのか?という話になります。 これ、一番分...

 

「できる限り」の解釈を間違うと意味不明になりますが、駐停車の規定で停車は「できる限り左側端」と規定し(47条1項)、駐車は「左側端」と規定(2項)している理由は以下の解釈になる(解説者の宮崎氏は道路交通法を作った警察庁の人)。

 

(停車又は駐車の方法)
第四十七条 車両は、人の乗降又は貨物の積卸しのため停車するときはできる限り道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければならない。
2 車両は、駐車するときは道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければならない。

停車の説明

なお、「できる限り」としたのは、本来は左側端にぴったり寄るのが望ましいが、道路工事その他障害物のため左側端に寄ることが不可能な場合を考慮したからである。

 

宮崎清文、条解道路交通法、立花書房、1961(昭和36年)

駐車の説明

本項においては、停車の場合と異なり、「できる限り」という言葉が用いられていない。したがって、車両は、駐車しようとするときには、かならず道路の左側端に寄らなければならぬことになる

 

宮崎清文、条解道路交通法、立花書房、1961(昭和36年)

 

「できる限り」=「ただし道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない」と考えたほうが分かりやすいかと。

 

つまり、18条1項に基づいて左側端寄り通行をしている自転車は、同時に「できる限り左側端に寄って」でもあるので、18条1項を遵守している分には関係ないでしょう。

 

これは何度も書いてますが、現在の追いつかれた車両の義務(27条)は軽車両について除外と考えられますが(政令で定める最高速度がない)、昭和39年道路交通法改正以前は軽車両も対象でした。

 

◯昭和35年道路交通法

(通行の優先順位)
第十八条 車両相互の間の通行の優先順位は、次の順序による。
一 自動車(自動二輪車及び軽自動車を除く。)及びトロリーバス
二 自動二輪車及び軽自動車
三 原動機付自転車
四 軽車両
(進路を譲る義務)
第二十七条 車両(道路運送法第三条第二項第一号に掲げる一般乗合旅客自動車運送事業又は同条第三項第一号に掲げる特定旅客自動車運送事業の用に供する自動車(以下「乗合自動車」という。)及びトロリーバスを除く。)は、車両通行区分帯の設けられた道路を通行する場合を除き、第十八条に規定する通行の優先順位(以下「優先順位」という。)が先である車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合においては、道路の左側に寄つてこれに進路を譲らなければならない。優先順位が同じであるか又は後である車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合において、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。

それを昭和39年改正時に「通行の優先順位」(旧18条)を削除し、27条を「通行の優先順位」から「政令で定める最高速度」の優劣に変更していますが、なぜ昭和39年を境に27条の対象から対象外になったかというと、

昭和39年改正以前は軽車両の並進が禁止されていなかった。
自転車にも「追いつかれた車両の義務」を課さないと、並進自転車はずっと道を塞ぎますよね。

 

しかし昭和39年改正で軽車両の並進が禁止された。
そして元々、軽車両は「左側端に寄って」通行する義務があるわけで、現在の18条1項(左側端寄り通行義務)を果たしている分には「常時譲っている」となる。

 

こういう歴史から軽車両が「追いつかれた車両の義務」から除外されていると考えられるので、既存の法規に従って左側端寄り通行をしている分には関係ないでしょう。

 

そもそも、左側端寄り通行には除外規定があり、

(左側寄り通行等)
第十八条 車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び一般原動機付自転車(原動機付自転車のうち第二条第一項第十号イに該当するものをいう。以下同じ。)にあつては道路の左側に寄つて、特定小型原動機付自転車及び軽車両(以下「特定小型原動機付自転車等」という。)にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、第二十五条第二項若しくは第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央若しくは右側端に寄るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない

追い越しをするときと、道路状況等でやむを得ない場合は左側端寄り通行から除外されます。

要は報道に出ているこれ。

同じ状況で自転車には「できる限り道路の左側端に寄って通行する」義務を課す。

今までもおかしな位置を通行していたら違反でしたが、

18条1項は罰則がない。
新しく課された「追いつかれた車両の義務」については、18条1項を遵守せずに追いつかれた場合に罰則が設けられるのだと思われ、18条1項に基づいて左側端寄り通行をしている分にはそもそも関係ないでしょう。

 

ちなみに現行法の「追いつかれた車両の義務」(27条)については、日弁連の解説書(民事訴訟のバイブル)でこのように記載されています。

四輪車同士の事故においては、道交法27条1項違反が修正要素とされている。
この点、自転車には道交法22条1項の規定に基づく「最高速度」の定めはなく、同法の適用があるかについては疑問があるところであり、同様の修正要素を定めることは妥当ではないと考えた。

※37
道交法27条2項は、車両は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、最高速度が高い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路の右側端。以下この項において同じ。)との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合においては、第18条1項の規定にかかわらず、できる限り道路の左側端に寄つてこれに進路を譲らなければならないとし、最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合において、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。
この点、自転車には最高速度の法定はないこと、先行車が後続車を認識できるのは後続車が並走状態に入ってからであることが多いと考えられることからは、避譲措置をとらないことをもって先行車の過失ととらえ、過失を加重することは妥当ではない。

 

日弁連交通事故センター東京支部編、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」、公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部、令和5年、下巻p198

自転車にも「追いつかれた車両の義務」の創設されるとして、そもそもミラー装備義務がない自転車はいかなる方法で「追いつかれたことの認識」をするのかやや疑問が残ります。

しかし、18条1項を遵守して左側端寄り通行をしている分にはそもそも関係ないでしょう。

若干の疑問が

そうなると「どこまで寄っていたら左側端寄り通行と言えるのか?」が問題にはなり得ますが、そもそも18条1項に罰則がない理由としては、どこまでが左側端寄り(軽車両)なのか、どこまでが左側寄り(クルマや原付)なのかが道路状況等に左右されて一概には言えないという問題から、罰則がない。

第1項の規定の違反行為については、罰則が設けられていない。これは、この規定による通行区分は、道路一般についての車両の通行区分の基本的な原則を定めたものであり、また、道路の状況によっては、道路の左側端又は左側といってもそれらの部分がはっきりしない場合もあるので、罰則をもって強制することは必ずしも適当ではないと考えられるからである。(従前の通行区分の基本的原則を定めた旧第19条の規定についても、ほぼ同様の理由により、同じく罰則が設けられていなかった。)。

 

道路交通法研究会 注解道路交通法【第5版】、立花書房

左側端に寄りすぎても危険だし、道路状況等に左右されて一概には言えない。
結局、新しく新設されるというこれについては、

追い抜きに関する規定は、「自動車が自転車の右側を通過する場合、十分な間隔がない時、自動車は間隔に応じた安全な速度で進行する」よう義務づける。同じ状況で自転車には「できる限り道路の左側端に寄って通行する」義務を課す。

「十分な間隔」や「安全な速度」の具体的数値は法令では規定せず、今後検討して目安を定めて示す。間隔は1~1・5メートルが基本になるという。速度については、自転車は通常時速20キロくらいで走ることが多く、追い抜く車はそれを5~10キロ上回る速度が目安になるという。

 

自転車追い抜き時、車に罰則付き義務 ながら運転禁止 道交法改正へ:朝日新聞デジタル
警察庁は21日、道路交通法の改正原案をまとめた。車が自転車を追い抜く際、「間隔に応じた安全な速度」で進行する義務を車の運転者に罰則付きで課す新たな規定を盛り込む。自転車の交通違反に、青切符を受けて反…

こういうあからさまなな場合くらいしか適用されない気がします。

あと凄く不思議なんですが、これのどこが「真ん中寄り」なんですかね?

まあ、スピーカーで挑発して逃げる姿を見るにお察し感がありますが。

 

なので、報道にある「進路避譲義務」については、既存の法規に従って通行している自転車には何ら関係無さそうです。
詳しくは改正法案を見ないとわかりませんが、そもそも昭和39年改正で何が起きたかを考えれば、27条2項と18条1項の関係性が理解できるかと。

 

追いつかれた車両の義務や「できる限り」の解釈って、歴史から検討してみていくと分かりやすい。
「並進禁止にしたから追いつかれた車両の義務が必要なくなった」と考えれば全てが繋がるわけで、逆にいえば並進が禁止されてない特定小型原付には「追いつかれた車両の義務」が必要なんですよね。
そして今回の「自転車に対する進路避譲義務」にしても、事実上は18条1項に対する罰則条項と考えれば理解しやすいと思いますが、正確なところは条文が発表されるのを待つしかありません。

 

関連する条文を統合的に捉えることが大事。
それよりも、報道内容がかなりまずいと思いますが…

 

自転車を追い越し・追い抜きする際の「側方間隔案」、大失敗に終わる予感。
既に警察庁の有識者会議の内容は書いてますが、 有識者会議の内容には書いてない内容が報道されています。 追い抜きに関する規定は、「自動車が自転車の右側を通過する場合、十分な間隔がない時、自動車は間隔に応じた安全な速度で進行する」よう義務づける...

 

きちんと読めばわかるように、側方間隔を義務付けしてないのよ。
速度差が小さいなら至近距離通過を容認していることになるけど大丈夫なのかこれ。


コメント

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