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右直事故で直進車が信号無視か?だいぶ要注意な事例。

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右直事故で直進車の信号無視と考えられますが…

映像は停車していた車の後部ドライブレコーダーがとらえた事故当時の状況。手前側に直進してきた車は右折しようとした車とぶつかり、その後、電柱に衝突していることが確認できる。
また、映像からは「右折信号」が出た後に事故が起きているように見える。

 

【ドラレコ映像】朝ラッシュ時の交差点 右折車と直進車が衝突 5人搬送<仙台・泉区>|ミヤテレNEWS NNN
映像は停車していた車の後部ドライブレコーダーがとらえた事故当時の状況。手前側に直進してきた車は右折しようとした車とぶつかり、その後、電柱に衝突していることが確認できる。 また、映像からは「右折信号」が出た後に事故が起きているように見える。

通常であれば、信号無視した直進車の過失が100%だよねとなりますが、必ずそうなるとは言えないのが日本の民事法です。

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右直事故と信号無視

事故態様としては直進車が赤信号(信号無視)、右折車が右折矢印信号に従っていると思われます。
この前提で直進車に問題があるのは明らかですが、あえて「右折車が責任を問われるか?」について検討してみます。
右折車からすれば信号に従って進行したわけで、とんだとばっちりに感じるのは当然ですし、直進車の信号無視に問題があるのは明らか。

直進車が赤信号無視の前提で考えます。
黄色の可能性もなくはないですが。

刑事責任

まず、刑事責任を考えます。

 

右折車の運転者が過失運転致死傷罪に問われるか?ですが、基本的には「特別な事情がない限り」は信頼の原則が働くため、起訴されないもしくは万が一起訴されても無罪になるかと。

本件の事実関係においては、交差点において、青信号により発進した被告人の車が、赤信号を無視して突入してきた相手方の車と衝突した事案である疑いが濃厚であるところ、原判決は、このような場合においても、被告人としては信号を無視して交差点に進入してくる車両がありうることを予想して左右を注視すべき注意義務があるものとして、被告人の過失を認定したことになるが、自動車運転者としては、特別な事情のないかぎり、そのような交通法規無視の車両のありうることまでも予想すべき業務上の注意義務がないものと解すべきことは、いわゆる信頼の原則に関する当小法廷の昭和40年(あ)第1752号同41年12月20日判決(刑集20巻10号1212頁)が判示しているとおりである。そして、原判決は、他に何ら特別な事情にあたる事実を認定していないにかかわらず、被告人に右の注意義務があることを前提として被告人の過失を認めているのであるから、原判決には、法令の解釈の誤り、審理不尽または重大な事実誤認の疑いがあり、この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであつて、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認める。

 

最高裁判所第三小法廷 昭和43年12月24日

結構勘違いする人がいますが、相手が赤信号だから必ず信頼の原則が働くわけではありません。
「特別な事情」がある場合は別なんだと最高裁が示している通り。

 

ちょっと前に直線オートバイ(被害者)が信号無視して交差点に突入していたことを見落としたまま起訴し、被害者の赤信号無視が発覚した後も起訴を取り消ししなかった事例が炎上してましたが、福岡地裁 令和5年10月27日判決は「被害者が信号無視して交差点に突入することを予見すべき特別な事情」が無いとして信頼の原則を適用し無罪。

 

なお、普通は起訴を取り消しにすべき事案だし、そもそもちゃんと捜査することなく起訴するなと言いたいところ。

⑴ 上記のとおり、被告人は、本件交差点内で一時停止の上、右折待ちをしていた際、対面信号機が赤色表示に変わり、対向車線の第2車両通行帯及び第3車両通行帯の各走行車両が減速するのを確認して、もはや本件交差点内に赤色信号に従わないで進入してくる車両はないと判断して右折を開始した。その当時、本件交差点の信号機は、3秒間全て赤色表示となる、いわゆるクリアランス時間内であり、被告人車両は、対向直進車両の進行を妨害しないよう、その動静を注視すべき一方、その後青色表示となる交差道路の交通を妨害しないために、速やかに右折を完了して本件交差点外に出るべき状況にあった。
このような状況において、被告人が、対面信号機が赤色表示に変わり、対向車線の、被告人車両に近い中央寄りの2つの車両通行帯を走行する車両2台が減速して停止しようとする状況を確認したのであれば、別の対向車両が赤色信号に従わずに本件交差点内に進入しようとするのを現認するなど、相手方が交通上適切な行動をとることを期待できないことを認識し、あるいは認識すべきであったときのような特別の事情のない限り、もはや赤色信号に従わないで本件交差点内に進入してくる対向車両はないと信頼することは許されるというべきである。そして、被告人は、本件事故の直前まで、普通自動二輪車であるB車両を認識していなかった上、道路の状況等から、B車両が、赤色信号に従って停止のため減速する先行車両を追い越して本件交差点内に進入しようとする状況を認識すべきであったともいえないから、上記特別の事情も認められず、検察官主張の注意義務はないというべきである。
⑵ これに対し、検察官は、被告人が右折を開始した時点で、少なくとも対向車線の第2車両通行帯を走行する車両(B車両の先行車両)は停止しておらず、そのために同車両の左側方(被告人車両から見て右側方)の見通しが困難であったから、同車両の左側方から、停止線手前で安全に停止しきれないと判断して本件交差点を通過しようとする対向直進車両があることを予見すべきであったとして、被告人は、第2車両通行帯の走行車両の前面で一時停止するなどして、同車両の左側方を確認する注意義務を負っていたと主張する。
しかしながら、被告人において、対向車線の第2車両通行帯を走行する車両の左側方の見通しが困難であったからといって、道路の状況等から見て、その付近に赤色信号を無視し、停止しようとする先行車両を追い越して本件交差点内に進入してくる車両が存在することを具体的に予測すべき根拠は見当たらないのであって、後続車両を含めもはや本件交差点内に赤色信号に従わないで進入してくる車両はないと信頼してよい状況に変わりない。検察官の主張は、信頼の原則の適用を否定すべき特別の事情に当たらない。

 

福岡地裁  令和5年10月27日

「直進車の赤信号無視」を見落として起訴し無罪の事件、検察官は何を主張したのか?
ちょっと前になりますが、右直事故について直進オートバイが赤信号無視していたことを見逃したまま右折車ドライバーを起訴し、結局無罪(過失運転致傷、報告義務違反)になった判例がありました。 検察官は控訴を断念して無罪が確定しただけでなく、福岡県公...

 

以上が青信号右折車vs赤信号直進車の場合の右折車の刑事責任の原則です。

民事責任

青信号右折車vs赤信号直進車の基本過失割合はこうなります。

青信号右折車 赤信号直進車
0 100

これも勘違いしやすいポイントですが、あくまでも「基本」過失割合です。
民事責任は予見可能な結果を回避しなかったことは過失扱いになりますが、あまり知られていない話として「赤信号無視する直進車が容易に予見可能」なときは右折車にも過失がつきます。

 

例えば比較的最近の事例になりますが、名古屋地裁 令和3年11月26日判決。
「右折矢印信号に従って右折」と「赤信号無視して直進」した車両同士の事故です。

基本的には、赤信号を無視した直進車である被告C車両の一方的過失というべきである。

(中略)

被告Cの指示説明によれば、被告Cが最初に被告Y会社車両を発見した地点は別紙交通事故現場見取図2の②地点、その時の被告Y会社車両はア地点と認められ、その時点で、被告Y会社車両からも対向方向から直進してくる被告C車両の動静を確認することが比較的容易であった状況が窺える(前記アc)のとおり、被告Y会社車両は本件交差点を右折する際、先行車両に追随していた事実があるが、少なくとも、先行車両が本件交差点の中央を右折通過した後は、対向車の動静を確認できる位置関係にあったというべきである。)。そして、前記アb)のとおり、被告Cが衝突直前の同図面の⑤地点で初めてブレーキをかけたことからすると、被告Bは、別紙交通事故現場見取図1の④地点に至る以前に対向方向を確認していれば、被告C車両が相当の速度で本件交差点に進入してくることを認識し得たというべきである。
それにもかかわらず、被告Bは、衝突直前の同地点に至って初めて被告C車両を発見したというのであり、被告Bにも、対向直進車の動静を注視すべき義務に違反した過失があると認められる。

 

名古屋地裁 令和3年11月26日

直進車が信号無視して交差点に突入することが認識できる場合には右折車にも過失がつくことがあります。

 

以前も取り上げたこちら。

直進オートバイが信号無視して交差点に突入していますが、動画の説明にあるように民事過失はこうなったそうな。

赤信号直進オートバイ 右折車
80 20

裁判ではなく示談だと思うのですが、裁判しても10%はつくだろうなと。
対向から「止まる気配がなく」直進するオートバイが見えてますから…

 

そして報道の事故。

 

【ドラレコ映像】朝ラッシュ時の交差点 右折車と直進車が衝突 5人搬送<仙台・泉区>|ミヤテレNEWS NNN
映像は停車していた車の後部ドライブレコーダーがとらえた事故当時の状況。手前側に直進してきた車は右折しようとした車とぶつかり、その後、電柱に衝突していることが確認できる。 また、映像からは「右折信号」が出た後に事故が起きているように見える。

事故のイメージはこんな感じかと思われますが(細部はやや不明)

対向右折車がバスなので、「信号無視しそうな直進車」が死角になって見えない可能性もあるし、見えていた可能性もありますが、死角になっていて見えないなら右折車が「信号無視して直進する車両を予見すべき注意義務」を負うとは考えにくい。
しかし容易に見える関係だった場合、直進車側が「右折車にも過失あり!」と主張する可能性があります。

信号無視する人が悪いのですが

赤信号は進行禁止ですし、信号無視する車両が全面的に悪いと言えますが、若干注意しなければならないのは「対向車が赤信号で停止しないことを容易に予見可能」な場合には、右折車も過失責任を負うことがあります。

 

これを理不尽と思うかは別として、日本の民事法は「予見可能な結果を回避しなかったら過失」。
例えば下記記事で紹介した事例にしても、

 

青信号で横断した自転車と赤信号無視の自転車が衝突。青信号で横断した自転車に過失を認めた理由とは?
世の中にはなかなか不思議な事件がありますが、事件は会議室で起きたわけではなく現場で起きています(古)。 さて、赤信号無視と青信号の自転車同士が衝突した場合、基本過失割合はこうなります。 赤信号無視 青信号 100 0 しかしまあ、必ずしもそ...

 

過失割合はこちら(神戸地裁 令和4年7月7日判決)。

青信号で横断した自転車 赤信号無視自転車
10 90

たまにこういうことが起きますが、これが日本の法律です。
まあ、具体的にどのように処理されるかはわかりませんが、赤信号無視だから必ず100%悪いとはならないのがジャパニーズ過失論であることは覚えておいて損はないかと。

 

様々な判例を過去に挙げてますが、ジャパニーズ過失論では「予見可能」と評価されたら過失認定してくるわけですよ。

 

そして先日挙げた刑事判例ですが、

 

横断歩行者事故と、様々な疑問。横断歩道直近で事故を起こして無罪?
道路交通法38条1項前段は、「当該横断歩道によりその進路の前方を横断しようとする歩行者が明らかにいない場合以外」は減速接近義務を定めていますが、ちょっと疑問に感じる判例もあったりします。 今回はそれについて。 減速接近義務は問題にしない? ...

 

正直なところ、この判例については検察官の主張がイマイチだったんじゃないかと思う。
なぜに減速接近義務を問題にしなかったのか不思議です。

 


コメント

  1. 元MTB乗り より:

    個人的な興味ですが、違反側に対して、違反による事故は予見可能だろうと追求したらどうなるんですかね?遵守側に予見可能性を問うなら違反者にも問わないと公平性に欠けるのではと、素朴な疑問。

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      もちろん直進側は過失運転致死傷罪に問われます。
      信号無視すれば事故発生は予見可能ですから。

      福岡地裁の事例は信号無視した直進側がオートバイ、右折は4輪車でした。
      つまりオートバイがケガをしたものの、4輪車側はケガをしていません。
      過失運転「致死傷」罪なので、他人をケガさせない限りは成り立たないことになります。

      今回の報道については、信号無視した直進車の同乗者(他人)を死亡させてますから、直進側も過失運転致死傷罪に問われます。

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