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被害者赤信号無視で無罪の事件、これはいったい…

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こちらの続きです。

 

赤信号の横断歩道、中学生死亡事故は無罪に。
ちょっと前から注目していた事件なのですが、このような事故がありまして。 本日判決公判でした。 2022年7月、札幌市中央区の交差点で、横断歩道上にいた女子中学生(当時13)を車でひいて死なせたとして、過失運転致死の罪に問われていた男性(72...

 

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60m手前で被害者を視認できた?

ちょっと気になる内容で、

 

被害者が赤信号の横断歩道上で立ち止まった後に飛び出した」という報道もある点。

これに関係する詳細が報道されました。

判決は、事故当時の状況について、車は遅くとも時速約84キロで走行していた▽男性が中学生を視認できたのは衝突地点から約60・1メートル手前だった――と認定。中学生が自殺を図った疑いを否定できないとした上で、「車両側の信号機は青で、被害者が車の接近を認識していたことなどから、被害者が中央線手前で立ち止まるはずであると判断するのが合理的。前方を注視していても車線上に飛び出してくることを予見できなかった疑いを排斥できない」と指摘した。

一方、時速50キロの指定速度を超えた走行に対しては「非難に値する」とした

男性は22年12月、同法違反(過失致死)の罪で略式起訴。札幌簡裁が罰金20万円の略式命令を出したが、男性は不服として正式裁判になった。

中学生死亡事故、運転手に無罪 札幌地裁「回避できぬ疑い残る」(毎日新聞) - Yahoo!ニュース
札幌市中央区の交差点で2022年7月、女子中学生を車ではねて死亡させたとして、自動車運転処罰法違反(過失致死)の罪に問われた札幌市西区の男性被告(72)に対し、札幌地裁(井下田英樹裁判長)は23日

参考までに、摩擦係数0.7、反応時間を1.0sにした場合の停止距離(空走距離+制動距離)はこちら。

時速50キロ(指定最高速度) 時速85キロ
27.95m 64.25m

摩擦係数0.7、反応時間を1.2sにした場合の停止距離(空走距離+制動距離)はこちら。

時速50キロ(指定最高速度) 時速85キロ
30.73m 68.97m

※ABSの場合を除く

 

「男性が中学生を視認できたのは衝突地点から約60・1メートル手前だった」と認定されたそうですが、被告人がこの時点で視認「した」のかはわかりません。
あくまでも客観的に「視認できた」地点。
そして視認可能な約60.1m手前では、被害者が横断歩道上にいたという話かと思うのですが、実際の位置関係はわかりません。

 

客観的に視認可能とされた60.1m手前で被告人が視認していても、時速84キロだと既に停止できない可能性が高くなりますが、指定最高速度の50キロであれば停止可能。

 

ただし

被害者が車の接近を認識していたことなどから、被害者が中央線手前で立ち止まるはずであると判断するのが合理的

とあるわけで、要は札幌地裁は「被害者が被告人車を視認していて、さらに赤信号なんだから、被害者がセンターラインを越えずに立ち止まってやり過ごすことを信頼してもよい」みたいな話にしたのでしょうか??

前方を注視していても車線上に飛び出してくることを予見できなかった疑いを排斥できない」と指摘した。

うーむ…「被害者が赤信号の横断歩道上で立ち止まった後に飛び出した」という報道もあるので、立ち止まったことからそれ以上横断を継続しないと信頼してもよいみたいな話なんかな?
詳しくはわかりません。

 

信頼の原則

一応、何度か挙げているように「特別な事情がない限り」は信号無視する車両や歩行者を予見する注意義務はありません。

本件の事実関係においては、交差点において、青信号により発進した被告人の車が、赤信号を無視して突入してきた相手方の車と衝突した事案である疑いが濃厚であるところ、原判決は、このような場合においても、被告人としては信号を無視して交差点に進入してくる車両がありうることを予想して左右を注視すべき注意義務があるものとして、被告人の過失を認定したことになるが、自動車運転者としては、特別な事情のないかぎり、そのような交通法規無視の車両のありうることまでも予想すべき業務上の注意義務がないものと解すべきことは、いわゆる信頼の原則に関する当小法廷の昭和40年(あ)第1752号同41年12月20日判決(刑集20巻10号1212頁)が判示しているとおりである。そして、原判決は、他に何ら特別な事情にあたる事実を認定していないにかかわらず、被告人に右の注意義務があることを前提として被告人の過失を認めているのであるから、原判決には、法令の解釈の誤り、審理不尽または重大な事実誤認の疑いがあり、この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであつて、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認める。

 

最高裁判所第三小法廷 昭和43年12月24日

勘違いする人もいるけど「特別な事情がある場合は別」。
事実として、東京高裁 昭和59年3月13日判決は赤信号無視した歩行者に対し前方注視していれば事故の回避は可能として有罪にしています。↓

 

本件は、被告人が深夜(略)普通乗用自動車を運転し、車道幅員約12mで片側一車線の歩車道の区別のある道路を時速約40キロメートルで走行中、本件交差点にさしかかり、青色信号に従い右交差点を直進しようとした際、酔余赤色信号を無視して交差点内中央付近を右から左へ横断歩行していた本件被害者2名を約13ないし14m先に初めて発見し制動措置をとることができないまま自車前部を両名に衝突させたことが明らかであり、これに反する証拠は存在しないところ、本件交差点出口南側横断歩道の左側に街路灯があるため、交差点手前の停止線から40m手前(本件衝突地点からは約51.4m)の地点から本件衝突地点付近に佇立する人物を視認できる状態にあり、しかも被害者の服装は、一名が白色上衣、白色ズボン、他の一名が白色ズボンであったから、被告人は通常の注意を払って前方を見ておけば、十分に被害者らを発見することができたと認められる。なるほど、被告人車の進路前方右側は左側に比べて若干暗くなっているけれども、(証拠等)によれば、被告人が最初に被害者らを発見した段階では、すでに被害者らは交差点中心よりも若干左側部分に入っており、しかも同人らは普通の速度で歩行していたと認められるから、前記見通し状況のもとで、被告人が本件の際被害者らを発見する以前に同人らを発見することは十分に可能であったと認められる。

 

そして、本件が発生したのは深夜であって、交通量も極めて少ない時間であったこと、本件事故時には被告人車に先行する車両や対向してくる車両もなかったし、本件道路が飲食店等の並ぶ商店街を通るものであること、その他前記本件道路状況等に徴すると、交通教育が相当社会に浸透しているとさいえ、未だ本件被害者のように酔余信号に違反して交差点内を横断歩行する行為に出る者が全くないものともいいがたく、したがって、本件において、被告人が本件交差点内に歩行者が存することを予見できなかったとはいえないし、また、車両運転者が歩行者に対し信号表示を看過して横断歩行することはないとまで信頼して走行することは未だ許されないというべきである。

 

東京高裁 昭和59年3月13日

逆に大阪高裁 昭和63年7月7日判決は前方注視していても赤信号無視する歩行者との事故回避は不可能として無罪。

赤信号の横断歩道、中学生死亡事故は無罪に。
ちょっと前から注目していた事件なのですが、このような事故がありまして。 本日判決公判でした。 2022年7月、札幌市中央区の交差点で、横断歩道上にいた女子中学生(当時13)を車でひいて死なせたとして、過失運転致死の罪に問われていた男性(72...

判決理由は詳しくわかりませんが、内容次第では検察官が控訴するかもしれませんね。

 

ただまあ、時速84キロですから…

一方、時速50キロの指定速度を超えた走行に対しては「非難に値する」とした

実際問題、過失運転致死が無罪だとしても、速度超過の罪(道路交通法違反)は成立します。
過失運転致死で起訴された事件だから「非難」としかなりませんが、こんなスピードで走るのはマジで危険。
そして、報道からすると「横断歩道上で立ち止まった」ことから、被害者がそれ以上横断を継続しないと信頼して…という話なのかなと思いますが、そうであれば控訴した場合は判断が変わりうるのかもしれませんね。

 

報道からすると、若干疑問が残るというか。

コメント

  1. 山中和彦 より:

    これは、運転者側の弁護士氏がかなり優秀で、自転車側の弁護士氏が(被害者なんだからと)甘く見てた、で、差が付いたような気もします。
    自殺しようとしてたかどうか、なんて、亡くなった本人しか分からないのに、【引用:女子中学生が通っていた精神科医への聴き取り、証拠として提出された防犯カメラの映像などから「自死のために飛び出してきた可能性を否定できない」と認定。】となってるので、そのへんの証拠固めを、運転者側の弁護士がしっかりやった、ということですね。
    おそらく民事だと、時速84kmがあるので100:0にはならないでしょうけれども、この刑事の判決が、責任割合に影響しそうな気もします。

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      被害者は自転車ではなく歩行者のようです。
      若干気になるのは歩行者が横断歩道上で立ち止まったという点ですが、その時点での注意義務を否定したのかもしれません。

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