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ひき逃げにおいて「けがをしているとは思わなかった」は通用するのか?

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横断歩行者妨害による事故を起こして、そのまま立ち去った男がひき逃げの容疑で逮捕されたようです。

静岡県掛川市の交差点で乗用車を運転し、女子中学生(14)と接触し、現場から逃走した疑いで1月28日、派遣社員の男が逮捕されました。

(中略)

警察によりますと、男は27日午前8時頃、掛川市大池の交差点で乗用車を運転し、横断歩道を渡っていた女子中学生(14)と接触し、その場から立ち去った疑いがもたれています。

警察によりますと、乗用車の左のミラー周辺が女子中学生の右肩にぶつかったとみられていて、女子中学生は右のさ骨を折る重傷です。

女子中学生の話では接触の後、運転手の男が「大丈夫か?」と声を掛け、そのまま車で走り去ったということです。

男は警察の調べに「けがをしたとは思わなかった」と容疑を一部、否認しているということです。

「大丈夫か?」声かけるも逃走か 女子中学生が交差点で車と接触し重傷 ひき逃げ容疑で64歳の男を逮捕=静岡・掛川市【続報】(静岡放送(SBS)) - Yahoo!ニュース
静岡県掛川市の交差点で乗用車を運転し、女子中学生(14)と接触し、現場から逃走した疑いで1月28日、派遣社員の男が逮捕されました。 逮捕されたのは掛川市上西郷の派遣社員の男(64)です。 警察に

救護義務違反(72条1項前段)は故意犯の処罰規定しかないため被害者がケガをしたことを認識してなかったなら救護義務違反が成立しませんが、「大丈夫か?」と声をかけたように被害者がケガした可能性を認識していたわけで、否認しても意味がない気がしますが…

 

未必的に認識していたならそれで故意は成立します。
一例↓

救護措置義務における具体的な措置の態様については、負傷の程度によっておのずから程度の差異をもたらすことあるは格別、いやしくも交通事故において負傷の事実が発生し、かつ、これを運転者等において(未必的にせよ)認識した以上は、負傷の程度いかんにかかわりなく、該運転者等は、これが事故のために相応の措置を講ずるべき義務があるものと解するのが相当であり、該運転者等において、右負傷の程度が軽微であるとかあるいは負傷者自ら受傷後の措置をとりうるものと判断し、なんらの措置を講ずることなく事故現場を立ち去るがごときは到底許されないものというべきである。

 

東京高裁 昭和43年12月25日

この判例は「道路交通法第72条第1項前段の規定は、被害者の負傷が軽微で社会通念上ことさら運転者等の助けをかりなくても負傷者において進退に不自由なく、年令、健康状態等からみて受傷後の措置を充分とりうるものと認められ、救護の必要なしと判断して格別の措置をとることなく現場を立ち去ったときは、後日予想外の傷害があったことが判明しても救護義務違反の責を問われるべきものではない。」と主張する弁護人を一蹴。

その他ではこのような事例があります。
クルマの追突事故ですが、被害者が事故当時に重大なケガだと気づいてなくても、追突事故で頸椎捻挫しやすいのは誰でも知っているだろとして未必の故意があったと認定。

尤も右被害者等は本件事故発生当時にあつては前記の如き重大な傷害を受けたことに気付いていなかったことが窺われるが(被害者の各供述調書)本件事故の態様は、原判決認定の如く、時速約40キロで運転していた被告人が前方注視を怠った結果、交差点直前に一時停止している被害車を約4.4mに接近して始めて発見し、急制動したが及ばず追突したものであり、この種事故にあつては前記の如き傷害(頸椎捻挫)を生じ易いことは公知の事実であるから、被告人としては直ちに停車して傷害の有無を確める義務があるものと解すべきであり、且被告人がこのような措置を執り直ちに被害者等に医師の診断を受けしむる等の措置を執つていれば(少なくとも被害者は衝突時に首に衝撃を受けたことを認めている)被害者等の傷害の程度が原判示よりも軽減されたであろうことは推察に難くないのに拘らず(更に警察官に事故の報告をしておれば、警察官において被害者等に直ちに医師の診断を受けるよう指示したであろう)敢えてこのような措置を執ることなく被害車を放置して逃げ去った以上、被告人には未必の故意があったものと認めざるを得ない。

 

大阪高裁 昭和44年11月4日

そもそも、冒頭の事故については横断歩行者妨害なので、ちょっと前に書いたようにほとんどの横断歩行者妨害事故は「減速接近義務を怠った過失」でしょう。
そこにまず問題がありますが、事故を起こした以上は余計な罪(ひき逃げ)を加重させてどうすんだ?と疑問しかありませんが…

 

しかもだいたいは無理筋になる「けがをしたとは思わなかった」という供述…
「大丈夫か?」と声をかけたそうですし、否認しても…

 

鎖骨骨折で「けがをしたとは思わなかった」はだいぶ無理筋ですが、そもそもの話。

減速接近していればほとんどの場合事故にはならないはずなんですよね。
事故現場と思われるのはこちらですが、

 

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横断歩道付近の見通しは良好…
ちょっと思ったのですが、この横断歩道について北→南方向にはダイヤマークがありますが、南→北にはダイヤマークがないように見える。
ただしこの交差点、そもそも「優先道路(交差点内にセンターライン)がない」、「左右の見通し」が効かない交差点なので徐行義務があると解釈するのでしょうか?

(徐行すべき場所)
第四十二条 車両等は、道路標識等により徐行すべきことが指定されている道路の部分を通行する場合及び次に掲げるその他の場合においては、徐行しなければならない
一 左右の見とおしがきかない交差点に入ろうとし、又は交差点内で左右の見とおしがきかない部分を通行しようとするとき(当該交差点において交通整理が行なわれている場合及び優先道路を通行している場合を除く。)。

左右の見通しとは一説によると50mなんて言われたりしますが…
なお、ダイヤマークが仮になくても38条の義務には影響しないと考えられます。

 

逃げなければ横断歩行者妨害(38条1項)、過失運転致傷ですが、逃げれば救護・報告義務違反がプラスに。
まあ、減速接近して横断歩道の左右を注視していれば何もなかったものと思われるので、逃げた云々よりもまずは減速接近義務を問題にする必要がありますね。

車両等の運転者はどのような状況があれば右の速度調節義務を負うものであろうか。それは、その際の道路およびその周辺ないし車両通行の状況、道路付近にいる歩行者の状況等により具体的、個々的に考えられるべきものであるけれども、一般的にいうならば、交通整理の行なわれていない横断歩道においては歩行者は強い優先権を有し、たとえ車両等がその横断歩道に近づいてきていてもこれを横断して差支えないものであり、これを車両等の運転者の側からみれば、一時停止しなければならぬ状況の発生をあらかじめ明確に予知することは困難な関係にあるわけであるから、車両等の運転者としては、一時停止を必要とする状況の発生がいやしくも予想されうる状態のもとにおいては、その状況がいつ発生するかわからないことを念頭に置いてこれに備え速度を調節すべきであり、いいかえるならば、速度調節を必要としないのは、そのような状況発生の蓋然性が認められない場合すなわち自車が横断歩道の手前に接近した際にその横断歩道の進路左側部分を横断し、又は横断しようとする歩行者のないであろうことが明らかな場合に限るというべきである。
このことは、横断歩道直前における一時停止義務の場合とを区別して考うべきであつて、右の一時停止義務は歩行者が現に「横断し、又は横断しようとしているとき」に発生すると解すべきこと道路交通法38条1項の規定上明らかであるのに対し(検察官の控訴趣意中に、横断歩行者の有無が明確でない場合にも一時停止義務があると主張する部分があるが、この点は採用しがたい。)、この速度調節義務は事前のことであり将来発生するかもしれない状況に対処するためのものであるから、その状況の発生しないであろうことが明確な場合に限つてその義務がないとされるのである。

 

東京高裁 昭和46年5月31日

道路交通法38条1項に規定する「横断歩道の直前で停止することができるような速度で進行しなければならない。」との注意義務は、急制動等の非常措置をとつてでも横断歩道の手前で停止することさえできる速度であればよいというようなものではなく、不測の事故を惹起するおそれのあるような急制動を講ずるまでもなく安全に停止し得るようあらかじめ十分に減速徐行することをも要するとする趣旨のものであり、したがつて、時速25キロメートルでは11m以上手前で制動すれば横断歩道上の歩行者との衝突が回避し得るからといつて右の速度で進行したことをもつて右の注意義務を尽したことにはならない、と主張する。

(中略)

横断歩道直前で直ちに停止できるような速度に減速する義務は、いわゆる急制動で停止できる限度までの減速でよいという趣旨ではなく、もつと安全・確実に停止できるような速度にまで減速すべき義務をいつていることは所論のとおりである。

 

大阪高裁 昭和56年11月24日

減速接近していればほとんどの場合事故にはならないのですが…


コメント

  1. カモがネギしょってる より:

    大丈夫か?と確認して反応を見た結果、大丈夫と判断したって事はないのでしょうか?

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      どの程度の衝撃で衝突したのかにもよりますが、相応の衝撃であれば相応のケガをしている可能性が高いわけで、「大丈夫か?」と確認したところで救護義務を免れないというのが解釈ですね。

      被害者が強硬に「救急車を呼ぶな」と言った場合などはまた変わりますが…

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