そういやこれ。

これの事故現場はここ。
「仮に横断歩道が青信号だった場合」、過失割合ってどうなるの?と質問を頂きました。
Contents
民事の考え方
歩道から横断歩道を通行した自転車は、道路交通法でいうなら「横断」。
歩道から車道を横切って歩道に行くのだから横断であることに疑問はありませんが、民事の考え方って違います。
左折自転車は「狭い道路→広い道路」に進行しようとしていて、横断歩道通行自転車は「広い道路」を通行してます。
なので広狭道路の過失割合をベースにして、さらに横断歩道通行分として「-5%」にするのが民事。
要は広い道路に付属する歩道も含めて「広狭関係」で捉えるので、道路交通法上の優先関係とは逆になります。
道路交通法上の優先関係でいうなら、横断が劣後する(25条の2)。
しかし民事の過失割合を考える上では、広狭関係(36条2項)がベースになる。
一例としてこのような民事判例があります。
自転車が通行していたのは優先道路側の歩道。
クルマは一時停止規制があり、非優先道路から優先道路に進入しようとした。
道路交通法の義務でいうなら、自転車は「横断」(25条の2)になりますし、一時停止規制があるクルマは「優先道路の進行妨害禁止」がありますが、道路交通法上の優先道路とは車道を意味するので歩道通行自転車を対象にはしていない。
けど民事の過失を考える上では、車道通行/歩道通行を分けない。
あくまでも非優先道路から進行しようとする車両は、優先道路(歩道を含む)の進行妨害禁止とみなして過失相殺します。
本件事故は、優先道路に併設された歩道を走行し、本件交差点を直進しようとした原告自転車と非優先道路から優先道路に左折進入するために本件交差点に進入しようとした被告車両との接触事故であるところ、双方に前方、左右の不注視等の過失が認められる。
そして、以上に加え、原告自転車が右側通行であり、被告車両から見て左方から本件交差点に進入してきたこと等に照らせば、本件事故の過失割合につき、原告15%、被告85%と認めるのが相当である。名古屋地裁 平成30年9月5日
右側通行を過失とみなすのはこういう理由。

民事って不注意の程度を争うわけで、厳格に道路交通法通りに解釈しないのでこうなります。
なので冒頭の件は、仮に横断歩道が青信号だった場合過失修正して左折自転車:横断自転車=75~80:20~25くらいだと思いますよ。
赤信号の場合にどう捉えるかは悩ましいですが。
道路交通法の話?民事の話?
道路交通法上の義務の話と、民事の事故態様パターンは大きく異なるわけですが、要は歩道通行自転車だろうと広い道路側が「優先風」に扱われているのが実態。
実態に合わせて過失相殺するのが民事。
だから道路交通法の話をメインにする人と、民事の話をする人が噛み合わなくなるのも当然なのよ。
ちょっと前に書いた内容にしても、刑事、民事、行政で視点が違う。

世間の行動・思考は民事なのよ。
だから道路交通法の義務の話をするとイマイチ噛み合わなくなるのは当然のことになる。
道路交通法上は「横断」だけど、民事の過失相殺をする上では「直進相当」に扱うわけで、違う土俵で話をしても噛み合わないことになりますが、「直進」と捉えると「交差点を逆走」(道路交通法違反)になってしまう。
けどそれを警察が咎めることがないことからも、道路交通法上は「横断」なんですね。
民事の過失を考える上では「直進相当」に捉えるわけですが、要は道路交通法を厳格に解釈するか、実情に合わせて考えるかの違いだと思ったほうがいいのかもしれません。
自転車って車道も歩道も通行できるので、道路交通法通りに解釈すると実情とは合わなくなるからそうなるわけで、根本的に違う土俵なんだと捉えたほうがいいのかもしれません。
そして横断歩道が「赤信号」の件にしても
確かに道路交通法上は信号無視になる。
けどこの交差点/横断歩道の実情を考えると、ほとんどの人は自転車が信号無視だとはわからないし、現に歩行者はガンガン横断している笑。
なので民事の過失相殺をする上では、赤信号無視を大要素には捉えないのではないかと思います。
「青信号vs赤信号」ではなく「信号がないvs赤信号」という要素も含め。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント