こちらの続きです。
施行令によると、横断歩道を設置する際には「標識及び標示」と規定し、「ただし…できる」としています。
要は基本が「標識及び標示」で、信号がある場合には「標示のみにすることができる」になっているため、信号がある横断歩道に標識を設置することを禁じているわけではない。
つまり信号がある横断歩道に標識を設置することが違法ではないことになる。
第一条の二
3 法第四条第一項の規定により公安委員会が横断歩道又は自転車横断帯(以下「横断歩道等」という。)を設けるときは、道路標識及び道路標示を設置してするものとする。ただし、次の各号に掲げる場合にあつては、それぞれ当該各号に定めるところによることができる。
一 横断歩道等を設けようとする場所に信号機が設置されている場合 道路標示のみを設置すること。
ただし若干疑問なのは、「横断歩道等を設けようとする場所に信号機が設置されている場合」というのは、
①対歩行者信号の話なのか?
②対車道信号の話なのか?
③両方?
どうなるの?
横断歩道等を設けようとする場所に信号機が設置されている場合
例えばよくあるパターンですが、横断歩道には歩行者用押しボタン信号があり、メイン道路には車両用信号もある。
しかし脇道からメイン道路に進入する際には信号がない。
歩行者 | 車両A | 車両B | |
信号 | あり | あり | 無し |
これの場合、施行令でいう「横断歩道等を設けようとする場所に信号機が設置されている場合」と言えるのかは明らかではない。
これについて警察庁の交通規制基準では、このように書いています。
信号機が設置されている場合は、道路標示のみを設置すること(令第1条の2第3項)とされているが、この信号機には、いわゆる1灯式信号機も含まれる。ただし、交差道路の1方向のみに信号機を設置(丁字路の突き当たる道路のみ赤点滅の1灯式信号機を設置)している場合は、対面する信号機のない道路には道路標識を併設すること。
交通規制基準に従うと、以下のどちらかに標識をつけないと違法な横断歩道になる。
この説明からすると、施行令でいう「横断歩道等を設けようとする場所に信号機が設置されている場合」というのは、歩行者に信号があるかないかの話ではなく、対車両向けの信号があるかないかの話なんだと読み取れます。
標識はあくまでも車両に向けているという観点から考えても納得しやすい。
なのでこのように、一方向のみ信号がない場合。
車両A | 車両B | 歩行者X | 歩行者Y | |
信号の有無 | あり | 無し | あり | あり |
車両Bには標識を向けないと横断歩道として成立しないものの、歩行者自体は信号規制があるという状態になります。
わざわざ車両Aにも標識を向ける理由についてはわかりませんが、どのみち歩行者が信号により規制されているかは関係がない。
・施行令でいう「横断歩道等を設けようとする場所に信号機が設置されている場合」とは、横断歩行者に信号があるか?ではなく、横断歩道に接近し通過する車両に信号があるかの話。
ただし実際には
うちの近所にあるこれについては
標識がありません笑。
現実的に、右折する車両は徐行義務があり、問題が起きる可能性が低いから省略しているのか、単に忘れているのかについてはわかりません。
ところでこれ。
管轄署的には「信号規制がある横断歩道」と認めた上で、現実的には赤信号無視する歩行者や自転車がいても注意してないそうな。
実態としてほとんどの人が「信号規制された横断歩道」とは認識してないからあまり問題とは考えていないそうですが、「横断歩道に標識があること」と「横断歩行者や自転車が信号規制されているか」は別問題と捉えるしかないと思います。
結局、脇道から左折する車両には対面信号がない以上、広路に進入する際には注意するし、横断歩道にも注意する。
だから仮に横断歩道を通行する歩行者や自転車が信号無視したとしても、左折車が注意していればめったに事故らないからこういう構造なんだろうと考えられますが、何が恐ろしいかというとほとんどの人がルールを理解して無さそうなこと。
こちらでも挙げたように、一方は「信号がない」、もう一方は「信号がある」と見なして検討している判例を2つ挙げましたが、
このように考えないと、青信号なのに見通しが悪い交差点の徐行義務(42条1号)を負うことになってみたりして意味不明になります。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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