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高校生自転車部事故は、なぜ賠償責任を認めたか?

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昨年ですが、このような報道があったのを覚えていますでしょうか?

判決によると、男性は北稜高自転車競技部員だった2015年5月10日、練習で滋賀県内の国道の下り坂を走行。カーブを曲がりきれず、ガードレールに衝突したはずみで側溝に転落し、歩くことができなくなるなどの後遺障害を負った。

 

判決理由で松山裁判長は、当時高校1年だった男性は上級生と一緒に走行していたが、上級生らと比べて技量が不足しており、同じ速度で走行すれば事故が起きる可能性を顧問教諭は予見できたと指摘。男性を上級生らと同行させないことや、普段より遅い速度で走ることを特別に指導するなど、注意義務があったにもかかわらず怠ったと結論づけた。

 

部活動中の自転車事故で歩行不能に 京都府に7400万円の損害賠償命じる 注意義務違反|社会|地域のニュース|京都新聞
京都府立北稜高(左京区)自転車競技部の練習中の事故で歩行不能になったのは、高校側に注意義務違反があったなどとして、元部員の男性(23)と家…

この件は何度か取り上げました。

自転車競技部の練習中の事故。京都府に約7400万の賠償判決。
約7400万の賠償命令だそうな。 判決によると、男性は北稜高自転車競技部員だった2015年5月10日、練習で滋賀県内の国道の下り坂を走行。カーブを曲がりきれず、ガードレールに衝突したはずみで側溝に転落し、歩くことができなくなるなどの後遺障害...
高校生の自転車部事故と、問題点。
先日の記事についてご意見を頂いたのですが。 今回の件、これでますます実走練習が減ることを懸念します 総ての部員に対して 顧問、監督が常についていて指示できるわけではないのが自転車ロードレースだと思います 行きつけのショップの店長(オーナー)...
自転車部事故、その後の控訴。
ちょっと前に、自転車部での練習中に起きた事故について損害賠償を認めた判決が出てましたが、その後の報道でも京都府が控訴したとありました。 約7300万の損害賠償を認めた判決とありましたが、詳しい中身はわかりません。 府議会によると 一応、府議...

控訴審の判決がどうなったのかはわかりませんが、一審判決文から何を問題にしたのか確認します。

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一審が問題にしたポイント

まず当時の報道を確認します。

判決によると、男性は北稜高自転車競技部員だった2015年5月10日、練習で滋賀県内の国道の下り坂を走行。カーブを曲がりきれず、ガードレールに衝突したはずみで側溝に転落し、歩くことができなくなるなどの後遺障害を負った。

 

判決理由で松山裁判長は、当時高校1年だった男性は上級生と一緒に走行していたが、上級生らと比べて技量が不足しており、同じ速度で走行すれば事故が起きる可能性を顧問教諭は予見できたと指摘。男性を上級生らと同行させないことや、普段より遅い速度で走ることを特別に指導するなど、注意義務があったにもかかわらず怠ったと結論づけた。

 

部活動中の自転車事故で歩行不能に 京都府に7400万円の損害賠償命じる 注意義務違反|社会|地域のニュース|京都新聞
京都府立北稜高(左京区)自転車競技部の練習中の事故で歩行不能になったのは、高校側に注意義務違反があったなどとして、元部員の男性(23)と家…

別の報道。

松山裁判長は、「男性は初心者で、競技用自転車の操作には慣れていなかった」と指摘。転倒の可能性を予見できたとし、「教諭は、上級生らと走行させることに伴う特別な指導を行わなかった」と述べた。

 

部活中のけがで後遺障害、京都府に7400万円賠償命令…顧問の注意義務違反認める
【読売新聞】 京都府立北稜高の自転車競技部の活動中に側溝に転落して後遺障害を負ったとして、部員だった男性らが府に計約1億7390万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が9日、京都地裁であった。松山昇平裁判長は、顧問の教諭の注意義務違反を認

入部間もない初心者を上級生と一緒に走らせたことに顧問の注意義務違反を認定したように読み取れます。

 

さて、判決文から。
この事件は報道にある点について、国家賠償法1条1項により、京都府に賠償責任を追及したもの。
国賠法では公務員本人が賠償責任を負うのではなく、自治体が賠償責任を負います。

第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる

まずは前提事実から。

ア 本件事故発生までの主な公道での練習状況

原告Aを含む1年生は、入部後、往復約15㎞から35㎞のコースを5回走行し、4月29日には丙トンネル南側までの往復約42㎞のコースを走行した。その後も、往復約35㎞のコースを4回走行し、5月9
日には、己方面までの往復約55㎞のコースを走行した。
(イ) 1年生は、4月29日と5月9日の練習で本件カーブを含む下り坂を走行したが、D教諭は、走行前に「ここからの下りは練習ではない、下りるだけ。」、「自転車に負荷を掛けないで足を回すだけ。」などと指導し、1年生はそれに従い速度を出さずに本件事故現場を含む下り坂を走行した。

イ 本件事故当日の経過
5月10日、1年生5人、2年生2人、3年生3人の合計10人で、丁方面への往復約90㎞のコースを走行する予定で、午前9時頃、C高校を出発した。往路においては、庚峠(丙峠の南側)まで、1年生は2
年生が伴走して走行し、庚峠から丙峠までは、上級生らのグループが先行し、1年生のグループはその後を走行したところ、原告Aは、高校に入学するまでサッカーのクラブチームに属しており、筋力や持久力に優
れていたため、1年生の中では抜きん出て速く上り坂を走行することができた。

その後、上級生らのグループと1年生のグループは、丁の道の駅までの緩やかな下り坂をそれぞれ走行した。1年生が丁の道の駅に到着して休憩している間、上級生らはその先の戊まで走行し、同日午前11時頃、1年生と合流した。
a 丁の道の駅において、D教諭は、原告Aの往路における走行を見て、原告Aを除く1年生を先に出発させ、原告Aを上級生らの最後尾で走行させるよう指示した。同日午後0時頃、原告Aを含む後発グループが休憩地である本件駐車場に到着した。
b 原告Aは、本件駐車場に到着するまでの走行において上級生に付いていくのが精一杯であったこと、前日もこれまでより長距離の練習であったことから、相当の疲労を感じていた。
本件駐車場に到着後、D教諭は、原告Aには上級生に付いていくことができたことを褒めた。また、上級生らは強い1年生が入ってきたなと感じている様子であった。
部員らが同所において軽食を摂った後、D教諭は、部員らに対し、「ここからの下りは練習ではない、下りるだけ。」などと指導し、原告Aを引き続き上級生らとともに走行するよう指示した。

このとき、D教諭は、原告Aに対して上級生らに合わせて走行する必要はないと指導する、上級生らに対して原告Aがグループに加わることから普段よりゆっくり走行するよう指導するなど、原告Aを上級生らとともに走行させることに伴う特別な指導は行わなかった。また、入部から本件事故に至るまで、D教諭から原告Aに対して、本件カーブのような急な下り坂の中のヘアピンカーブを曲がる際の走行に関する技術的指導はされなかった。

(ウ)原告Aは、先ほどの走行と同様に、上級生らの最後尾を走行しようとしたが、靴の紐がほどけたGから先に行くよう言われたため、上級生4人に続いて出発した。原告Aの前を走行していた3人は、丙トンネルを抜けた先の本件道路の直線部分を、それぞれ自動車1台分程度の距離を空けて時速約50㎞(普段の走行どおりの速度)で走行し(先頭の2年生はそれよりやや速く走行した。)、原告Aは、上級生らに付いていかなければ迷惑がかかると考えて、先行自転車のタイヤを見ながら同じ速度で追走した。
原告Aの前を走行していた3人は、本件カーブの数十m前から断続的に設置されている減速帯が開始する辺りで時速約30㎞程度まで減速して本件カーブを曲がった。原告Aは、先行自転車に合わせて走行すれば本件カーブを曲がることができると考えており、先行自転車との距離が詰まったときにブレーキを掛けようとしたが、減速することができないまま、本件カーブのガードレールに衝突し、側溝に転落した。

ウ 本件道路の状況
本件道路は、制限速度が時速40㎞であり、丙トンネルを抜けた直後に道路脇に「速度注意」と記載された看板があり、制限速度の道路標識が二つ続き、路面の「急カーブ注意 速度落せ」という表示とともに減速帯が敷設され、本件カーブに至る。本件道路の勾配は約10%であり(制限速度時速40㎞の普通道路の最大縦断勾配は10%である。道路構造令20条)、本件カーブの半径は35mである

被害者は初心者ですが、練習をみて顧問としては強い一年生だと評価し、ほかの一年生とは異なり上級者と一緒に走行させたという話。
休憩を挟んで「ここからの下りは練習ではない、下るだけ」と指示したものの、下りの走行について特別な指示はしておらず、下りのコーナリングについて技術的指導もしていなかった。

原告Aに対して上級生らに合わせて走行する必要はないと指導する、上級生らに対して原告Aがグループに加わることから普段よりゆっくり走行するよう指導するなど、原告Aを上級生らとともに走行させることに伴う特別な指導は行わなかった。また、入部から本件事故に至るまで、D教諭から原告Aに対して、本件カーブのような急な下り坂の中のヘアピンカーブを曲がる際の走行に関する技術的指導はされなかった。

しかし原告としては先輩に迷惑を掛けないようについていこうとし、下り勾配10%のヘアピンカーブで事故が起きたわけです。

 

争点になっているのは、このように上級者と一緒に走行させるにあたり顧問に注意義務違反があったと認めるかどうか。

(ア)被告は、D教諭が、4月29日、5月9日及び本件事故当日、1年生が本件道路を下る前に、本件道路は練習ではないことだけでなく、それぞれのペースでゆっくり走行するよう指導していた旨の主張をし、D教諭もこれに沿う証言をする。
しかし、本件道路を含むコースを1年以上月3回程度の頻度で走行していたGが、D教諭からの普段の指導の内容について、本件道路は練習ではなく、自転車に負荷を掛けないで足を回すだけ(休憩)であると聞いた明確な記憶を有している一方で、スピードを上げすぎないようにするといった指導を受けた記憶がない旨証言していることからすれば、D教諭がそれぞれのペースでゆっくり走行するよう指導していたとは認め難く、D教諭の上記証言は採用することができない。
被告は、上記イ cに関し、D教諭は、本件駐車場での休憩の際、①原告Aに対しては、上級生らの速度に追い付こうと思わないよう指導し、②上級生ら(特に、G及びH)に対しては、1年生の原告Aがグル
ープに加わることから普段より相当ゆっくり走行するよう指導したと主張し、D教諭もこれに沿う証言をする。D教諭は、本件事故からさほど期間の経過していない平成27年7月までに行われた聞き取り調査の際
にも同旨の発言をしていることがうかがわれるし、保険会社からの照会に対してD教諭からの聞き取りを基に平成28年3月に作成した回答書(乙9)にも同旨の記載がある。
しかし、上記①について、原告Aが上級生らに付いて行かないでよかったのであれば、原告Aを敢えて上級生と同じグループで走行させる必要性が見当たらない。D教諭は、1年生5人を1つのグループにすると、全体として列が長くなりすぎ、自動車が追い越しをする際に危険が生じるおそれがあると考えたと証言するが、1年生が本件道路を1つのグループで走行したことが本件事故までに2回あったが、その際にD教諭が証言するような危険が生じていたと認めるに足りる証拠はない。また、原告Aが上級生らに付いていかなければ迷惑がかかると考えたのも、D教諭から上級生らの速度に追い付こうと思わないよう指導を受けていなかったからと考えるのが自然である。
また、上記②について、仮に上級生ら(特に、G及びH)に対して1年生の原告Aがグループに加わることから普段より相当ゆっくり走行するよう指導したのであれば、G及びH(D教諭は、特に面倒見の良いG
及びHの目を見て指導したと証言している〔証人D32、37頁〕。)がその旨記憶していないとは考えにくいところ、G及びHはそのような指導を受けていない旨の証言をしている(G16、25頁、H6頁。)。さらに、上記指導が行われたのであれば、原告Aの前を走行していた3人が時速約50㎞で走行するとは考え難い(D教諭は、「ゆっくり」という表現について、時速約20~30㎞を想定していたと証言している〔証人D40頁〕。)。そうすると、上記指導も行われなかったと見るのが自然である。
以上によれば、D教諭の上記証言は採用することができない。

⑵ D教諭の予見可能性について
ア 前記認定のとおり、原告Aの前を走行していた上級生らは、上級生らが行っていた普段の走行どおりの速度又はそれより速い速度で本件道路及び本件カーブを走行していたのであって、原告Aを配慮を要する相手ではないと考えていたとみるほかないところ、指導経験が豊富なD教諭にとって、1年生の中から抜擢された原告Aに対して上級生らがこのような考えを持つことは容易に想定できることであった。
そして、原告Aは、本件駐車場を出発する前にD教諭から上級生に付いて行くことができたことを褒められたのであるから、下り坂も上級生に付いて行こうという意欲を持つことも容易に想定できることであった。
実際に、D教諭は、原告Aが上級生らの最後尾を走行すれば、上級生らを追いかける危険があると認識していた
(証人D29頁)。
したがって、D教諭においては、本件道路において原告Aを上級生らとともに走行させれば、上級生らが普段と同じ速度で走行し、原告Aが上級生らに合わせて同じ速度で走行することを予見することができたと認
められる。

イ 原告Aは、本件道路の直線部分を上級生3人に続いて同程度の速度で走行していたところ、前を走行していた上級生らと同じタイミングでブレーキを掛けて減速したが、本件カーブを曲がりきることができなかった。
競技用自転車は、通常の自転車と比較してタイヤが細く、ブレーキを掛けた際の制動力が劣るところ(乙3・35頁)、原告Aは、本件事故当時、自転車競技部に入部してから1か月程度しか経過していない初心者で、競技用自転車の操作には慣れていなかったし、本件カーブを走行した経験は2回あったものの、速度を出して走行するのは初めであったのであるから、原告Aは、上級生らと比較して、本件カーブを走行する技量が不足していたし、どの程度の速度であれば自己の制御できる範囲であるのか、どの辺りでどの程度の力でブレーキを掛ければ本件カーブを曲がることができるのかといった感覚をおよそ持ち合わせていなかったと認められる(実際、原告Aは上級生に合わせてブレーキを掛ける必要を感じるまで特段の危険を感じていなかった。)。
そうすると、原告Aが上級生らと同じ速度で本件道路から本件カーブを走行すれば、走行を制御することができない事態に陥る危険があることは容易に想定できることであった。
したがって、D教諭は、原告Aが上級生らに合わせて走行すれば、本件カーブを曲がりきることができずに転倒等してしまう可能性があることを予見することができた
と認められる。

⑶ 原告Aを上級生らとともに走行させることに伴う特別な指導を行うべき注意義務について
上記のとおり、D教諭は、本件道路において原告Aを上級生らとともに走行させれば、原告Aが上級生らに合わせて走行し、本件カーブを曲がりきることができずに転倒等してしまう可能性があることを予見することができたのであるから、本件駐車場を出発するに際し、①原告Aに対し、上級生らに合わせて走行する必要はないと指導する、②上級生らに対し、原告Aがグループに加わることから自分たちの普段の練習より遅い速度で走行するよう指導するなど、原告Aを上級生らとともに走行させることに伴う特別な指導を行うべき注意義務を負っていたと認められる。
しかるに、D教諭は、部員らに対し、「ここからの下りは練習ではない、下りるだけ。」などと指導したものの、原告Aを上級生らとともに走行させることに伴う特別な指導を行わなかったのであるから、D教諭には上記義務の違反があった。

京都地裁 令和5年2月9日

以上の理由から顧問に注意義務違反を認定。
なおこの事件、過失相殺を認めなかったため被害者の過失は認定されていません。

被告が過失相殺事由として主張するところは次のとおりいずれも採用することができない。

(1) 原告Aが転倒しない速度を維持しなかったなどとの主張については、原告Aは転倒しない速度について指導されたことはなく、余裕のある状況の下で徐々に速度を上げて下り坂を走行するなど転倒しない速度の感覚をつかむ練習をする機会も与えられていなかったのであるから、原告Aが転倒しない速度を維持できなかったことをもって過失とみることはできない。

(2) 原告Aが車間距離を詰める必要があると道路交通法に違反した認識を有していたとの主張については、原告Aが道路交通法についての指導を受けたと認めるに足りる証拠はなく、上記の点をもって原告Aの過失とみることはできない。

(3) 原告Aが相当の疲労を感じていたことをD教諭に申告しなかったとの主張については、原告Aが相当の疲労を感じていたことが本件事故の原因となったと認めるに足りる的確な証拠はない。原告A作成の陳述書には、本件カーブにさしかかった際の状況について「手が疲れていたためか、路面の凹凸があったためか、そもそも速度がすでに出すぎていたためか、速度はなかなか落ちませんでした。」と記載しており(甲33)、速度を下げることができなかったことの考え得る原因の一つとして疲労を挙げるが、可能性の一つとして挙げられているものにすぎない。また、本件事故当日と前日は、それまでより長距離の練習であった上、本件駐車場に至るまで原告Aは上級生と同じグループで走行していたという状況から、本件駐車場を出発する際に原告Aに相当の疲労があったことは申告がなくてもD教諭にとって明らかであったといえる。
したがって、原告Aが疲労を申告しなかったことをもって過失とみることはできない。

なので原告が主張した損害のうち、損害として認定されなかった部分と保険による既払い分を除けば被告(京都府)の責任として100%認定されています。

 

で。
一審では約7400万の賠償命令が出てますが(保険による既払い約4500万を控除して約7400万)、京都府は控訴。
大阪高裁は9000万での和解案を提示し、和解した模様。

府立北稜高(京都市左京区)の自転車競技部の活動中に転倒し、後遺症を負った元生徒の男性と父親が府に損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、府は男性側と和解し、和解金9000万円を支払う方針を決めた。府議会12月定例会に関連議案を提出する。

府、和解金9000万円支払いへ 北稜高生、部活中事故で後遺症 /京都 | 毎日新聞
府立北稜高(京都市左京区)の自転車競技部の活動中に転倒し、後遺症を負った元生徒の男性と父親が府に損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、府は男性側と和解し、和解金9000万円を支払う方針を決めた。府議会12月定例会に関連議案を提出する。

京都府議会の議事録を見ると原案可決になっているので、和解金9000万で事件は終結した模様。

どう見るか?

この件、公道で練習するなという話でもないし、顧問が常時監督しろという話でもなくて、要は初心者の一年生を「強い」と見込んで上級者と一緒に練習させた際の指導が問題になったわけです。
いくら「この下りは練習ではない」といっても、先輩についていこうと無理をするリスクは予見可能だよねという話になるわけで、しかも初心者なのだから十分な技術があるわけでもない。
さらにほかの一年生は別枠で先に下らせていた。
初心者を練習に参加させ、上級生と一緒に走らせるにあたり注意義務違反があったと認定されていますが、ざっくりいえば初心者なのに配慮が足りなかった結果、起きてしまった事故という話になります。

 

こういう事故って、例えば「下り坂で曲がりきれずに事故」という側面だけを見ると大学生の事故とも共通点がありますが、

大学生の事故。ブレーキが制御できないというのは、ロードバイクとしては最も危険な行為である。
昨年ですが、東京都立大学の自転車部の新歓イベントで、新入生がお亡くなりになるという悲しい事故があったのをご存じでしょうか? こういう事故ってホント悲しいよなと思いつつ、たまたまいろいろ調べている段階で事故について中間報告として発表してあるこ...

内容はだいぶ違う。
大学生の事故については、当初の報道内容が情報不足だったせいもあり様々な憶測を呼んでましたが…

 

今回取り上げた判決が、高校自転車部のあり方に影響するのかはわかりませんが、私が知る限り高校自転車部の練習って初心者にはだいぶ配慮しているはずで、注意喚起するきっかけになるでしょうけど萎縮させるものではないと思う。
過度に判決を捉えると、極論に走り「公道練習すべきではない」みたいになることもありますが、判決内容は「公道練習するにあたり初心者への配慮(注意義務)がどこまでなされるべきか?」です。

 

保険により約4500万の支払いを受けているとはいえ、障害を負った状況からしても被害者としてそれでは足りないから国賠訴訟するしかないわけですが、この判例は裁判所ホームページにもあります。
気になる方は全文をどうぞ。
あと、こういう事故について個人や組織を責めたがる人もいますが、それは単に訴訟上の話であって第三者的には「事故をどうやって防げたか?」のほうが大事。

 

一般サイクリストとしては、下りでは特に自分が制御できる範囲のスピードで走ろうとしか言えないよね。
下りのコーナリングは十分な減速が大事。
これが大原則。
一般サイクリストが単独走行していても、制御不能な速度で突っ込めば同じように事故になるのだから。

 

そういや以前何かで見た事例ですが、初心者の練習会を開催したショップが、いきなり時速40キロで走り出して初心者を置き去りにしたと。
責任感が皆無なショップもあるんだなと衝撃を受けましたが、ムリして付いていく必要もないので自分のペースで走りましょう。


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