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大型車の左折巻き込みと、責任。

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以前もこれをどこかで取り上げた気がしますが、

これをどう考えるか?

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大型車の左折巻き込みと責任

これの元ネタはこちらですが、撮影車(大型車)は警察の捜査の結果

 

「撮影車には何ら非がない」

 

として解散してるのよね。
要はこういうこと。

・だいぶ手前から左ウインカーを出していた
・「できる限り」左側端に寄っていた
・左折直前にサイドミラーで巻き込み確認をし、後続車がいないことを確認していた
・それにもかかわらず、高速度で突っ込んできた

強いていうなら、巻き込み確認を左折寸前に再度すべきでしょうけど、後続車の一方的な過失と警察は判断しているのよ。

 

以前も書いたけど、「できる限り左側端に寄って」の意味を勘違いする人も多い。

「できる限り道路の左側端に寄り」とは

(イ)「できる限り」とは
その場の状況に応じ、他に支障のない範囲で可能な限り、行えばよいとの趣旨である<同旨 法総研125ページ 横井・木宮175ページ>。
左側に車両等が連続していたり、停車中の車両等があって、あらかじめ道路の左側に寄れなかった場合には、たとえ直進の位置から左折進行したとしても、本項の違反とはならないことになる<横井・木宮175ページ>。

東京地方検察庁交通部研究会、「最新道路交通法事典」、東京法令出版、1974

大型車の場合、左側端に寄ると物理的に左折不可能に陥る場合があり、左折先が狭路の場合や、左折先が鋭角の場合には左側端に寄ると物理的に左折できない。

できない場合を除外する意味で「できる限り」とつけているので、大型車にとって「できる限り左側端に寄って」がむしろ右になることもありうる。

その後続車は合図車妨害禁止義務がありますが(34条6項)、結構勘違いする人が多いのは、義務の発生と違反の成立は必ずしも同義にならないこと。

(左折又は右折)
第三十四条
6 左折又は右折しようとする車両が、前各項の規定により、それぞれ道路の左側端、中央又は右側端に寄ろうとして手又は方向指示器による合図をした場合においては、その後方にある車両は、その速度又は方向を急に変更しなければならないこととなる場合を除き、当該合図をした車両の進路の変更を妨げてはならない

よく言われるのは「左折は進路変更に含まれないのだから、左折を妨げても違反にならないだろ!」みたいなやつ。
これは根本的に誤認していると思っていて、後続車からすると先行車が「進路変更目的」で合図を出したのか、「左折目的」で合図を出したのかわかるわけもない。

先行車と十分な距離があり、先行車が合図を出した以上はそのような理由から左から追い抜きできないわけで、結果的に違反が成立するかしないかの話じゃないのよね。
進路変更だったなら妨害して違反、左折だったなら妨害しても違反にならないみたいな結果論の話をしているのではないので。

 

「直進優先」になるのは「その速度又は方向を急に変更しなければならないこととなる場合」。
なぜか「直進優先」ばかりを強調する人がいてびっくりしますが…

 

例えば、このような場合には直進優先になります。
先行車が信号待ち停止中に既に左側に進入していたケース。

道路交通法34条によつて運転者に要求されているあらかじめ左折の前からできるかぎり道路の左側に寄らなければならないということにも運転技術上の限界があるため、被告人は自車の左側が道路の左側端から約1mの地点まで車を寄せるにとどめて進行し、赤信号によつて交差点の手前で約30秒の間一時停止したものであること、この運転方法は技術的にやむをえないところであるけれども、車幅は2.46mであるから、これによつて車両はかろうじて道路の中央線内に保持できるわけであるとともに、自車の左側1mの間に軽車両や原動機付自転車が進入してくる余地を残していたものであること、右位置において左折に入る場合においても一旦ハンドルをやや右にきりついでハンドルを左にきりかえして道路一杯になつて大曲りしなければ左折できない状況であつたことを認めることができる。そして、本件の足踏自転車が何時交差点の手前に進入してきたか、被告人車両との先後関係は記録上必ずしも明確でないところであるけれども、被告人が交差点の手前で一時停止するまでには先行車両を認めていないことに徴すると足踏自転車は被告人の車両が一時停止してから発進するまで約30秒の間に後ろから進入してきたものと推認されるところ、被告人は平素の運転経験から自車前部の左側部分に相当大きな死角(その状況は当裁判所の事実の取調としての検証調書のとおりである。)が存することは熟知していたのであり、しかもその停止時間が約30秒に及んでいるのであるから、その間に後ろから軽車両等が被告人車両の左側に進入しその死角にかくれることは十分予想されるところで、運転助手を同乗させていない本件のような場合は、右一時停止中は絶えず左側のバツクミラーを注視するなどして後ろから進入してくる軽車両等が死角にかくれる以前においてこれを捕捉し、これとの接触・衝突を回避するため適宜の措置をとりつつ発進、左折する業務上の注意義務があるのであつて、単に方向指示器をもつて自車の進路を示し、発進直前においてバツクミラーを一瞥するだけでは足らないものと解すべきである。
なぜならば、左折の方向指示をしたからといつて、後ろから進入してくる直進車両や左折車両が交差点に進入するのを防ぐことができないばかりでなく、後進してきた軽車両等か被告人車両の左側から進めの信号に従つて直進しもしくは左折することは交通法規上なんらさまたげないところであり、この場合はむしろ被告人車両のほうでまず左側の車両に道を譲るべきものと解されるからである。

 

昭和46年2月8日 東京高裁

 

適切な左折動作に入った後に信頼の原則を適用した最高裁判例との整合性が問題になりますが、以下のようにしています。

この点に関しては、昭和43年(あ)第483号同45年3月31日最高裁判所第三小法廷判決が、本件ときわめて類似した事案において、「本件のように技術的に道路左端に寄つて進行することが困難なため、他の車両が自己の車両と道路左端との中間に入りこむおそれがある場合にも、道路交通法規所定の左折の合図をし、かつ、できる限り道路の左側に寄つて徐行をし、更に後写鏡を見て後続車両の有無を確認したうえ左折を開始すれば足り、それ以上に、たとえば、車両の右側にある運転席を離れて車体の左側に寄り、その側窓から首を出す等して左後方のいわゆる死角にある他車両の有無を確認するまでの義務があるとは解せられない」として一、二審の有罪判決を破棄し、無罪を言い渡しているところである。そこで右判例の事案における事実関係と本件の事実関係と対比検討してみると、前者は車幅1.65mの普通貨物自動車であるのに対し、後者は2.46mの車幅を有する前記のような長大かつ車高の高い大型貨物自動車であるから、したがつて死角の大きさにも著しい相違があると推測されること、前者は信号まちのため瞬時停止したに過ぎないのに対し、後者は信号まちのため約30秒間停止したものであるから、その間に後進の軽車両等が進入してくる可能性はより大きいといえること、したがつてバツクミラーによつて後ろから進入してくる軽車両等を死角に達するまでに発見して適切な措置をとる必要性がより大きいことにおいて事実関係に差異があると認められる。そして、以上の諸点と、本件のような長大な車両と軽車両とが同じ路面を通行する場合において、両者が接触すれば被害を被むるのは必らず軽車両側であることに思いをいたせば、本件の場合長大かつ死角の大きい車両の運転者に死角に入る以前において他の車両を発見する業務上の注意義務を課することは、公平の観念に照らしても均衡を失するものとはいえず、所論いわゆる信頼の原則に副わないものではなく、また前記第三小法廷の判例に反するものでもないと判断される。したがつて、原判決が安全確認の義務を怠つたとする判断は結局正当であるから、この点の論旨は理由がない。

 

昭和46年2月8日 東京高裁

事案によって変わるのに、「直進優先」ばかり強調する人をみると心配になるのですが…

後続2輪車との距離 後続2輪車の速度 優先
大阪高裁昭和50年11月13日 14m 30キロ 先行左折車優先
東京高裁 昭和50年10月8日 30mかそれ以下 45キロ 後続2輪車優先
東京高裁 昭和50年2月8日 既に左側端に入り込んでいた 不明 後続2輪車優先
最高裁判所第二小法廷昭和46年6月25日 60m以上手前で自転車を追い抜き 左折車優先

 

民事では

一般的に左折巻き込み事故の場合、巻き込んだ左折車の過失が大きいことになります。
普通車で左側端に寄れる余地があるのに寄らず確認不十分で左折すれば、左折車の過失が大きいのは当然。

 

しかし、後続二輪車の過失を100%にした判例も普通にあるのよ。
例えばこう。

左折巻き込み、後続二輪車の過失を100%にした事例。
左折巻き込み事故の場合、左折車の過失が70~90%程度になることが普通ですが、必ずそうなるわけではありません。 後続二輪車に過失90%とした判例もあります。 今回は後続二輪車の過失を100%とした判例を。 左折巻き込み事故 判例は東京地裁 ...

道路外の駐車場に入るために左折しようとしてましたが、第1車線には駐車車両あり。
第2車線から左ウインカーで合図。

減速し左後方を確認したところ、第1車線を通行するバイクを見つけたので誤解を生まないように一度ウインカーを消し、先にバイクを行かせた。

改めて左ウインカーを出し、左後方を確認したところ何ら通行している二輪車がいなかったので左折を開始したところ、時速10キロかそれ以下の速度で左折中に、後続二輪車と衝突した事故です。

衝突部位は左折車の後部中央から右端付近、二輪車の前部。
後続二輪車は衝突を避けるためにブレーキと右にハンドルを切った形です。

 

過失割合はこちら。

左折車 後続二輪車
0 100

本件は、そもそも、被告が上記間隙に進入したために原告車の左折時に被告車の前部ないし右側部と原告車の左前角ないし左側部が接触したという事案ではなく、前記認定のとおり、原告車が、左折進行開始後、その車両前部や左側部が被告車と接触することなく上記間隙を完全に越えたにもかかわらず、その後に、被告車の前部が原告車の後部に衝突したものであることに照らすと、原告が原告車をできる限り左側端に寄せなかった過失と本件事故の発生との間に相当因果関係は認められないというべきである。

 

東京地裁 平成29年1月13日

比較的最近の東京高裁の判例(一審はさいたま地裁川越支部)でも、大型車が狭路に左折するために第1通行帯から第2通行帯に移動してから左折した事故について、後続原付の過失を100%にしたものがあります。
ただし、ほとんどの場合は先行左折車の確認不十分が問題になるので、マレな事例とも言えますが。

 

「直進優先」みたいな覚え方をすると、必ずしもそうはなってないケースを見落とすからきちんと理解したほうが良さそう。


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