交通事故について、刑事(業務上過失致死傷、過失運転致死傷)で有罪になったものの、民事では無過失が認められるなんてことはめったにありませんが、
「実はあります」
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刑事は有罪、民事は無過失
判例は横浜地裁 昭和43年9月4日。
判例タイムズ229号282ページに掲載されています。
事故態様は歩行者が横断歩道が付近にあるにもかかわらず横断歩道外を斜め横断して起きた事故について、運転者は通行区分を遵守し、徐行義務や前方注視義務など道路交通法所定の義務を果たしていたとして民事責任は無過失を認定。
なお被告は金二万円の罰金刑が確定していることは<証拠略>により認められるが、それのみによって被告の過失を断定し前記認定を拘束することはできない。
横浜地裁 昭和43年9月4日
運転者は自賠法3条但し書きから無過失とし、民事損害賠償責任は免責。
まあまあ珍しい事例とも言えますが、そもそも刑事と民事はそれぞれ別に事実認定から過失の検討がなされるわけで、
所論は本件事故に関する刑事判決を云為するが右判決の内容が如何ようにもあれ、原審としてこれに一致する判断をしなければならない筋合はなく、また右判決と一致しない事実認定をするについて第一審判決の説明以上の場面を附け加えなければならないわけもない。
最高裁判所第一小法廷 昭和34年11月26日
刑事と民事では全く違う事実認定になることはあり得ます。
下記なんて、刑事の認定は「自転車がクルマを追い抜き」ですが、民事の認定は「クルマが自転車を追い抜き」ですから。
どっちが正しい…とも言えないのよね。
ただし刑事は過失認定の基準が厳しくなるので、刑事で有罪だけど民事で無過失というのは、かなり珍しい事例なんじゃないかと思います。
ところで
「自転車が一時不停止で交差点に進入して事故ったときに、非一時停止側にも過失がつくのはおかしい」という意見を頂いたのですが、
そういう「基本過失割合」って、非一時停止側にも違反があることを前提にしているので、例えば見通しが悪い交差点であれば徐行義務ですよね。
徐行義務を果たしていても回避不可能な事故であれば、過失割合はだいぶ変わるかと思いますが…
参考までに、一時不停止自転車とクルマが衝突した事故について、クルマの無過失を認めた判例もなくはないです。
秋田地裁大曲支部S51.5.18判決は、自転車が赤点滅無視、クルマが黄色点滅で衝突した事故について、クルマの無過失を認めています。
見通しが悪い交差点で徐行義務を果たし、それでも一時不停止自転車と衝突不可避なら過失はほとんどつかないと思いますが、要は徐行義務を果たしてなかったから過失認定されるわけだし。
もちろん、だからといって一時不停止が許されるわけではありません。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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