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✕「自転車に幅寄せする」、○「道路の左側端に寄せる」

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これ自体は正しい解説なのですが(ただし例外あり)、

ちょっと気になることがありまして。

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自転車に対して幅寄せするわけではない

だいぶ前に流れてきて、おかしな内容だなと思ってしまったのですが、

「自転車に対して幅寄せ」と、「道路の左側端に寄せること」はまるで違うはずなのに、動画の内容が混同してませんかね?
動画でビックリしている演技って、こういうタイプの話でしょ。

 

○被せるように左側端に寄せる(進路変更禁止違反、26条の2第2項)

○自転車に急ブレーキを掛けさせるような危険な車間距離において左側端に寄せる(進路変更禁止違反、26条の2第2項)

こんな危険プレイをされたら事故るリスクがあるのは当然で、34条1項でいう「あらかじめできる限り道路の左側端に寄って」とは

自転車との距離が十分あり、自転車に急ブレーキを強いないような話。
「自転車に対して幅寄せ」ではなく、「道路の左側端に寄せる」が正解ですが、この人が驚いている「幅寄せ」って自転車に対して幅寄せしている話ですよね…

要は法規に従った左折前の「できる限り左側端に寄せる」とは、自転車に危険性を感じさせない話。
「進路」とは車線の話ではなく、車体の幅を意味します。

「進路」とは、当該車両の幅に相当する道路の部分であり、車両(自転車を含む。)は、他の車両通行帯に進行方向を変える場合のみならず、同一車両通行帯内であっても、みだりに進路を変更することは禁止されている(道路交通法26条の2第1項)。

 

福岡高裁 令和2年12月8日

「進路」とは、道路を進行している車両について、その車両が左右に方向を変えないで直進した場合におけるその車両の幅に相当する道路の部分、いいかえるならばその車両が道路の状況に即して近い将来において進行するであろう道路上のコースのことである。

 

宮崎清文、注解道路交通法、立花書房、1966

進路変更する際は、自転車に危険性を感じさせる進路変更は禁止されているわけでしてね。

(進路の変更の禁止)
第二十六条の二
2 車両は、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない。

動画で演技している「ビックリ!」は、「自転車に対する幅寄せ」。
適切に左側端に寄せている車両のさらに左側からすり抜けする自転車についてはアホだなぁとしか思いませんが、「自転車に対する幅寄せ(違法)」と「左折前に道路の左側端に寄せ、その際自転車に危険性を感じさせない(適法)」の話がごちゃごちゃになっているようにしか見えなくて。

なぜ左折前に「できる限り」左側端に寄せるか?

左折前に「できる限り」左側端に寄せる理由は、主に二点と言われます。

 

①左折合図のみならず、左折前に左側端に寄せることで周囲に「左折するよ」と知らせる
②二輪車の巻き込み防止

 

道路交通法は、本件被告人車のように、交差点等で左折しようとする車両の運転者に対し、左折の合図をすること及びあらかじめその前からできる限り道路の左側に寄り、かつ、徐行することを要求している(道交法34条1項、53条、同法施行令21条)。これは、直進しようとする後続車両がその右側を追い抜けるようにするとともに、できる限りその左側に車両が入りこんでくる余地をなくしておくことにより、円滑に左折できるようにするためであると思われる。したがつて、左折しようとする車両が十分に道路の左側に寄らないため、他の車両が自己の車両と道路左端との中間に入り込むおそれがある場合には、前示道路交通法所定の注意義務のほか、さらに左後方の安全を確認すべき注意義務があるが、十分に道路左端に寄り、通常自車の左側に車両が入りこむ余地がないと考えられるような場合には、あえて左後方の安全を確認すべき注意義務があるものとは解せられない。

 

昭和45年6月16日 名古屋高裁

問題なのは左側端に寄せると左折不可能に陥る大型車がいるわけで、

https://twitter.com/xxhajixxx/status/1781436848562483563

「左側端に寄って」だと、左側端に寄れない大型車が左折不可能に陥るから「できる限り」としている。

「できる限り道路の左側端に寄り」とは

(イ)「できる限り」とは
その場の状況に応じ、他に支障のない範囲で可能な限り、行えばよいとの趣旨である<同旨 法総研125ページ 横井・木宮175ページ>。
左側に車両等が連続していたり、停車中の車両等があって、あらかじめ道路の左側に寄れなかった場合には、たとえ直進の位置から左折進行したとしても、本項の違反とはならないことになる<横井・木宮175ページ>。

東京地方検察庁交通部研究会、「最新道路交通法事典」、東京法令出版、1974

なのでこの大型車は、この状態が「できる限り左側端に寄って」になります。

 

けど左側端に寄れる余地があるのに寄らずに左折することもアウト。

 

参考事例として、福岡高裁宮崎支部 昭和47年12月12日。
まず事故概要。

先行するクルマは交差点の40m手前で「ルームミラー」で後方確認し、後続車がないことから側溝まで約1.9mのところに寄せて時速15キロに減速。

そんな状況の中、オートバイが時速30キロで先行車に追い付き、4、5mの距離を保ち様子見。

交差点直前で先行車の左折合図に「気がついて」、急制動したものの間に合わず衝突した事故です。

道路交通法34条1項が交差点における左折車に所謂左寄せ義務を課した所以は、原判決の説示するとおりで、その車両が左折しようとするものであることを同法53条で命ぜられた左折の合図をするだけでなく、その車両の準備的な行動自体により他の車両等に一層よく認識させようとするためであることは明らかなところ、前示被告人の車の長さ、本件交差点の角切りなど考慮に容れれば、技術的にA路進行中にその左側端に車を寄せることを困難ならしめる事情は証拠上全く認められないのである。そうすれば原審公判廷において通常A路の左側端まで1mの間隔をとっておけばゆうに本件交差点を左折しうると自認している被告人が、本件交差点に進入するまで約40mの距離を、何らの支障もなく、もっと左に寄せうるのにA路の左側溝まで自車の車幅を越える約1.9mもの間隔を保持したまま直進した以上、その間に他の車両が自車とA路左側端の中間に入りこむおそれのあることは交通常識上当然に予想すべきであり、そのため自車左側ならびに左後方に対する安全確認をつくした後でなければ、本件交差点において、容易に左に転把すべきでなかったといわざるをえない。
ところで、被告人が二回にわたり車内バックミラーにより後方確認したことは前記のとおりであるが、該ミラーの映写範囲は後部の窓をとおすもので、窓両側の車体部分により死角を生ずるものであることは、敢て実験実測を経るものではなく、被告人自身原審公判廷においてこれを肯認自覚しているのであるから、自車左側ならびに左後方に対する確認は、道路運送車両の保安基準44条が示すように、運転者席において左の外側線上後方50mの間にある障害物を確認できるために設置を義務づけられている車外サイドミラーによらなければ充分でないのに、被告人がこれを利用した事跡は全くない。もとより被害者も後続車の運転者として一般的に前車の動静に注意を払い、これが左折合図をして減速したときは、これとの接触を避けるべく適宜徐行等の措置に出づべき義務があることはいうまでもないが、前記の如く約40mの長さにわたって道路左側溝まで約1.9mの間隔を保持し、左に寄るなど左折の準備態勢を示さずに直進し続ける被告人の車を見て、そのまま本件交差点を直進通過するものと思いこんだのは無理からぬとことであるから、被害者に対し、被告人の左折合図に早く気づかなかった落度は責めうるにせよ、道路交通法34条5項に違反する無謀運転であると決めつけるのは失当であり、ましてやかかる落度を根拠にして、自ら可能なる左寄せ義務をつくさず、未だ適切な左折準備態勢に入っていなかったことを論外におき、いわゆる信頼の原則に逃避して過失責任から免脱することの許されないことは、原判決の正当に説示するとおりである。論旨指摘の最高裁判所の判決は技術的に左寄せ進行が困難な状況のもとにおいて、できる限り道路の左側によって徐行している先行車と無謀運転とされてもやむを得ない後続車の運転者との衝突事故に関するもので、本件とは事案を異にしている

 

福岡高裁宮崎支部 昭和47年12月12日

ただまあ普通は自転車の立場としても、先行車の左折合図に注意し、左折合図をしている左側から追い抜きすべきではないですが、冒頭の動画の内容って危険な「自転車に対する幅寄せ」の演技をしているようで、

こんな危険プレイされたら事故るし、こういうプレイをされたら逃げ場がないので困るのですが…
左折前の幅寄せって、「自転車に対して幅寄せ」じゃなくて、「自転車に危険性を感じさせないことを確認してから道路の左側端に寄せる」が正解。

適法に左折前左側端寄せをした場合、自転車が驚く要素がないはずなのに…
クルマを運転するときは「自転車の立場を考えて」、自転車を運転するときは「クルマの立場を考えて」乗れば、危険プレイになることはほとんどないと思うのですが…
なぜ争いになるのか謎。

 

そして「左折前に自転車レーンに寄せて左折する」という話が、なぜか「自転車に幅寄せする」に変わる人がいるのも不思議。
自転車相手に幅寄せするんじゃなくて、自転車に危険性を感じさせないときに「道路」に幅寄せするのよ。

 

まあ、こういうルールをみてもきちんと理解してない人が多い以上、他人に期待して自転車に乗るなんてムリがあるような気がするけど。


コメント

  1. きゃばりーのらんぱんて より:

    最後の「ルールをみてもきちんと理解してない人が多い以上、他人に期待して自転車に乗るなんてムリがある」に同感です。

    ルールを知っているけど守らない人も沢山居ます。

    自分で出来る限りの防衛して、相手の出方に依存しない方法を考えるしかないですね。

    イーチャリティーのおっちゃんもフザケた様子の動画に仕上げてるのですが、モノは考えようだよって言ってるだけだとは思います。

    • roadbikenavi roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      他人に期待して良かったことなんてあまりないので、見知らぬ他人には全く期待しないほうがいいですね。
      すみません、このYouTuberは全く誰なのか知らなかったのですが、イーチャリなんですね。

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