ロードバイクに乗っていてマジ勘弁なのが右直事故。
事故に至らなくても、対向右折車がジリジリとスタートしだすのも怖いのでやめて欲しいのですが。
道路交通法上、当たり前ですが直進車優先です。
ですが事故が起きた場合には直進車も過失として評価されるのが現実です。
どのような点を注意義務違反として過失にするのでしょうか。
右直事故と判例
自転車の判例ではないのですが、ロードバイクの場合には一定速度以上で進行している場合にはオートバイや原付に近いものとみられがちなので、直進オートバイと対向右折車の判例から。
判例は平成29年10月24日京都地裁。
本件は、信号機により交通整理の行われている交差点において、同一道路を対向方向から進行してきた、右折四輪車と直進単車の衝突事故であり、両車両とも青信号で交差点に進入してきた事案であって、加害車は、本件交差点で右折するに際しては、交差点を直進する車両の安全を確認し、その進行を妨害してはならない義務を負うところ、安全確認義務を怠って、被害車の進行を妨害した過失があり、他方、被害者にも、本件交差点に進入するに際しては、反対方向から進行してきて右折する車両に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない義務を負うところ、右折中の加害車が被害車前方を横切らないものと軽信し、減速等せずに本件交差点に進入しようとした過失がある。以上のような加害者と被害者の過失内容、程度を比較考慮すると、過失割合は被害者15:加害者85と認めるのが相当である。
他方、被害者は、前記道路構造から過失は全て加害者にあると主張するが、西行車線を直進している車両の側からも右折して中央分離帯を徐行進行している車両に気づくことができる道路構造であり、現に被害者は加害車に気づいていたというのであるから、右折進入車に注意して、できる限り安全な速度と方法で進行することが求められているのであって(道路交通法36条4項)、特段減速等することなく進行した被害者にも一定の過失があるといわざるを得ない。
平成29年10月24日 京都地裁
当たり前ですが、直進車が優先です。
それと同時に直進車にも一定の注意義務を課しています。
第三十六条
4 車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、当該交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両等、反対方向から進行してきて右折する車両等及び当該交差点又はその直近で道路を横断する歩行者に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。
この場合だと右折四輪車がジリジリと徐行進行し始めていた以上、直進車にも「できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない」として減速するなどの措置が求められるという話です。
なお、36条4項については一般的な注意義務を課しているだけなので、あくまでも37条の義務が優先します。
右折車両の注意義務について案ずるに、道路交通法第37条は、「車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し……ようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない」旨定めているから、右折車としては対向直進車両の有無・動静を十分確かめ対向直進車両の進行を妨害することにならないことを確認したうえ、右折しなければならない注意義務を負つているものであり、一方、同法第36条第4項は、「車両等は、交差点に入ろうと……するときは、当該交差点の状況に応じ、……反対方向から進行してきて右折する車両等……に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない」旨定めているから、直進車においても右折車両等に対する安全運転義務を負つているので、右両規定の関係が問題となるわけであるが、右第37条の規定する右折車の注意義務は、所論のとおり、第36条第4項の規定する安全運転義務に優先するものであり、直進車両は右折車両に優先するものと解するのが相当である。
東京高裁 昭和51年6月14日
37条は優先権を規定してますが、直進車に速度超過があるとしても、直進車の動静に注意し進行妨害してはならないこととされています。
なお、原判決が認定したところによると、被告人は、午後11時55分ころ、普通乗用自動車を運転し、原判示交差点を東から北へ右折しようとして青信号に従つて同交差点に進入し、同交差点で一時停止し、直進車の通行が途切れたとき西方を見たところ、被告人車より約53メートル西方に、青信号に従い同交差点に向つて進行中の対向車を認めたが、同車の通過に先だつて右折することができるものと判断し、低速度で発進進行したところ、右直進対向車が指定最高速度(時速40キロメートル)を時速10ないし20キロメートル超過する時速50ないし60キロメートルの速度で進行してきたため、被告人車と直進対向車が衝突し、被告人車の乗客に原判示傷害を負わせたというのであり、右のような原判示の事実関係のもとでは、被告人には直進対向車が指定最高速度を時速10ないし20キロメートル程度超過して走行していることを予測したうえで、右折の際の安全を確認すべき注意義務があるとした原判断は、相当である。
最高裁第二小法廷 昭和52年12月7日
右直事故というと、「大津園児事故」が思い出されます。
右折車が対向直進車に衝突し、直進車がふっ飛んで歩道にいた園児に当たるという痛ましい事件ですが、右折車についても起訴すべきというご遺族の主張は棄却されています。
右折車の女性(55)は自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)の罪などに問われ、禁錮4年6カ月の判決が確定した。
直進車の女性(65)は同法違反容疑で書類送検されたが、大津地検は、速度超過や前方不注視もなく「刑事責任に問える過失は認めがたい」として不起訴処分(嫌疑不十分)とした。遺族らは昨年5月、女性の不起訴処分を不服として大津検察審査会に審査を申し立てたが同年12月、審査会は「不起訴相当」と議決した。
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二輪車の速度感
自転車の場合注意なのは、先行車が何らの理由により停止している場合。
対向右折車からすると完全な死角になる以上、かなり減速して様子を見ながら進行する必要がある。
対向二輪車の速度感は掴みづらいというのが定説なので、直進自転車と対向右折車の事故や事故未遂は残念ながらよく聞きます。
ロードバイクの場合、事故に遭ったときに時速30キロ以上で交差点進入している場合には「高速度進入」として過失にするのが一般的です。
高速度進入自体が過失というよりも、自転車としてみられるのではなく原付やオートバイに近い存在として評価されるというほうが適切かもしれません。
夜間に限らずフロントライトを使うとか、夜間は特にダブルライトにするなど被視認性を高めることも重要だし、交差点進入前には減速して様子を見ながら交差点に進入することも大事かと。
右折車分離信号になっている交差点は、ある意味では安心。
◯✕の早曲がりとか、クソみたいなローカルルールを適用した走行をする地域もありますが、37条は故意犯のみを処罰する規定なので、早曲がりみたいなプレイは即座に切符を切って頂きたく。
早い漢は情けない奴というのが、共通認識ですから。
右折車は、直進車や左折車が行くまで発車禁止です。
早い奴はダメな奴。
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2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
これって、直進側が赤信号になった直後に進行して右折車(右折矢印信号)と衝突した場合も、直進優先になるのでしょうか?
コメントありがとうございます。
赤信号になった直後は、まだ直進優先です。
しかし赤信号で停止できるにも関わらず信号無視する車両については優先ではないと思われます。