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日本と海外における「過失」の考え方の違い。

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ちょっと興味深い記事がありました。

No charges brought against Regent’s Park cyclist after high-speed crash in which pensioner was killed while crossing road
Coroner’s inquest told by Met officer that speed limits do not apply to cyclists

内容をざっくりまとめるとこう。
・事故現場は公園内
・公園内には制限速度20マイル(約32キロ)が指定されているが、自転車には適用されない
・加害者(自転車)は25~39マイル(40~62キロ)で公園内を周回していた
・被害者は犬の散歩をしながら、歩行者用島に渡るため横断
・被害者の横断は直前横断で、加害自転車の前に出たときに両者の距離は2メートルしかなかった
・事故が起きたが、自転車には速度規制が適用されないことから不起訴に

警視庁のロパファゾ・ブンゴ巡査部長は、事件の検討により、自転車が自動車の法定速度を超えて走行し、制限速度に該当しない事例については「訴追を可能にするような犯罪行為はなかった」と判断されたと法廷で述べた。自転車は機械的に推進されず、速度計を取り付ける必要がないためです。

警察官は、「機械推進車両は実際に走行している速度を識別する能力がある」が、自転車はほとんどの場合それができないと説明した。

リージェンツ・パークやウィンザー・グレート・パークのほかロンドンの他の多くの公園を管理するロイヤル・パークスは、公園内に掲示されている制限速度が自動車にのみ適用されることを以前に認めた。

No charges brought against Regent’s Park cyclist after high-speed crash in which pensioner was killed while crossing road
Coroner’s inquest told by Met officer that speed limits do not apply to cyclists

要は自転車には公園内の速度規制が適用されないことから、自転車に速度超過違反はない。
従って不起訴になった、という話。

 

以前から気になっていたのですが、日本でいう「過失」と海外でいう「過失」って必ずしも同じ意味ではありません。
日本でいう「過失」とは不注意のことで、予見可能なことを回避しなければ過失。

 

確かフランスなんかもそうだけど、海外では過失=交通法規違反と捉えているように思える。
日本でいう過失とは意味が違う。

道路交通取締法が自動車を操縦する者に対し特定の義務を課しその違反に対して罰則を規定したのは行政的に道路交通の安全を確保せんとする趣旨に出たもので刑法211条に規定する業務上の注意義務とは別個の見地に立脚したものであるから道路交通取締法又は同法に基づく命令に違反した事実がないからといって被告人に過失がないとはいえない。

 

東京高裁 昭和32年3月26日

さてリンク先の内容について、日本で同じ事故が起きた場合はどうなるかですが、

 

歩道を歩いている歩行者が車道に向いているとか、横断しようとしている雰囲気(左右をキョロキョロしている等)があれば「横断することが予見可能」になる。
そして「横断することが予見可能」なので、自転車は減速して衝突を回避すべき注意義務が生まれ、注意義務を果たさずに漠然進行して衝突すると「過失致死罪」が成立します。

 

似たような判例はいくつもあります。

歩行者の直前横断と、運転者の注意義務。
だいぶ前にこれを取り上げましたが、 以前書いたように、この場合は誰が見ても子供が横断しようとしていて、しかも道路左側を気にしているけど右側を気にしていない。 なので運転者は直ちに警音器を吹鳴して自車が迫っていることを注意喚起し、減速徐行して...
歩行者の直前横断…回避不可能なのか?
うわー、という感想しかありませんが… ちょっとだけ解説。 見ればわかる直前横断 この場合、道路交通法13条1項でいう「直前横断」。 (横断の禁止の場所) 第十三条 歩行者等は、車両等の直前又は直後で道路を横断してはならない。ただし、横断歩道...

ところが、リンク先の内容は「自転車には速度超過違反が成立しない」ことを理由に不起訴。
おそらく、イギリスでは過失=交通法規違反と捉えた概念なんじゃないかと。

 

自転車運転者に落ち度はなかったと結論付けたそうですが、横断歩行者が直前横断したことが問題としたのですかね。

 

以前、国ごとの過失論を調べたことがあるのですが、例えばこちら。

自転車レーンに歩行者が進入し、衝突している。
日本だと自転車運転者は前方不注視で漠然進行して衝突した過失になり、過失傷害罪で有罪になります(たたし過失傷害罪は親告罪)。
オランダだと、自転車レーンに歩行者が不注意で進入したとして自転車運転者に過失はない…みたいな考え方なんですかね。

 

国ごとの過失論は違うので一律に比較することはできませんが、どっちが好ましいかはまた別問題でしょうね。
民事の「過失」についても、国ごとにビミョーにニュアンスが違いますし。


コメント

  1. shtakah より:

     イギリス(連合王国)の1988年道路交通法(Road Traffic Act 1988)(https://www.legislation.gov.uk/ukpga/1988/52/contents))の「Part 1 Principal Road Safety Provisions」の「Cycling offences and cycling racing」では,犯罪(guilty of an offence)となる自転車の運転として,「28.Dangerous cycling」(A person who rides a cycle on a road dangerously),「29.Careless, and inconsiderate, cycling」(a person rides a cycle on a road without due care and attention, or without reasonable consideration for other persons using the road),「Cycling when under influence of drink or drugs」等が挙げられていますが,これらに対する刑罰は,同法では定められておらず,1988年交通犯罪者法(Road Traffic Offenders Act 1988(https://www.legislation.gov.uk/ukpga/1988/53/contents))33条(Fine and Imprisonment),別表2(SHEDULE 2(Prosecution and Punishment of Offences))のPart 1(OFFENCES UNDER THE TRAFFIC ACTS)で定められています。なお,同別表にある「level 3 on the standard scale.」,「level 4 on the standard scale.」というものは,1982年刑事司法法(Criminal Justice Act 1982(https://www.legislation.gov.uk/ukpga/1982/48/contents))37条(The standard scale of fines for summary offences.)で定められているようです。
     以上のほかに,自転車の運転による死傷については,車両等(any carriage or vehicle)の故意又は激しい運転(wanton or furious driving)によって身体的危害を与えた者に当たるときは,1861年人身に対する犯罪法(Offences Against the Person Act 1861(https://www.legislation.gov.uk/ukpga/Vict/24-25/100/contents))35条(Drivers of carriages injuring persons by furious driving)により,2年以下の拘禁刑に処せられます。例えば,roadbikenavi様引用の記事の末尾当たりで紹介されている2017年8月の判決に係る自転車(フロントブレーキのない固定輪の自転車)による歩行者の死亡事故では,運転者(Charlie Alliston)は,故殺(Manslaughter(同法5条))については無罪となったものの,同法35条によって18か月の拘禁刑を言い渡されたようです。

    • roadbikenavi roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      やはり日本とはまるで考え方が違うような印象です。
      ちょっと前にフランスの法律を調べたときも、「許しがたい過失」に信号無視が含まれないとありビックリしました。

  2. shtakah より:

     イギリスの1988年道路交通法では,道路又は公共の場所における「機械力で推進する乗物」の運転による致死傷については,危険運転致死罪(1条)・同致傷罪(1A条),不注意・身勝手運転致死罪(2B条)・同致傷罪(2C条)等が定められており,これらの罪の刑罰は,1988年交通犯罪者法33条,別表2で定められています。
     危険運転致死罪における「危険運転」の意義については,2A条で定められており,不注意・身勝手運転致死罪等における「不注意・身勝手運転」の意義については,3ZA条で定められています。
     1988年道路交通法において、道路又は公共の場所における自転車の運転による致死傷については,上記の危険運転致死罪,危険運転致傷罪,不注意・身勝手運転致死罪等に相当する罪の定めはありません。
     なお,イギリスには、日本の過失運転致死傷罪(自動車運転処罰法)や過失傷害罪・過失致死罪(刑法)に相当するような,車両の運転その他の行為による過失の致死傷を一般的に処罰する法令はないようです。

    • roadbikenavi roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      海外では刑罰より民事に力を入れているのかなと思うこともありますが、やはり過失による致死傷の考え方はだいぶ違うようですね。
      ありがとうございます。

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