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歩行者の直前横断…回避不可能なのか?

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うわー、という感想しかありませんが…

https://twitter.com/HOSOMI_SHOKAI/status/1641761610300801025

ちょっとだけ解説。

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見ればわかる直前横断

この場合、道路交通法13条1項でいう「直前横断」。

(横断の禁止の場所)
第十三条 歩行者等は、車両等の直前又は直後で道路を横断してはならない。ただし、横断歩道によつて道路を横断するとき、又は信号機の表示する信号若しくは警察官等の手信号等に従つて道路を横断するときは、この限りでない。

直前横断の定義はこちら。

通常走行中の自動車の直前又は直後というのは、その自動車の制動距離(空走時間を含む)付近以内の距離をいうと解される。

 

執務資料道路交通法解説

ただね、これってアレなんですよ。

危険を防止するためやむを得ない場合

道路交通法54条2項には警音器の規定があるじゃないですか。

(警音器の使用等)
第五十四条
2 車両等の運転者は、法令の規定により警音器を鳴らさなければならないこととされている場合を除き、警音器を鳴らしてはならない。ただし、危険を防止するためやむを得ないときは、この限りでない

危険を防止するためやむを得ない場合には警音器を使用しても違反にならないわけですが、逆に、「危険を防止するためやむを得ない場合なのに鳴らさなかったこと」を過失として、業務上過失致死傷罪(今でいう過失運転致死傷罪)で有罪にしている判例ってあるのです。
東京高裁 昭和39年3月18日判決など。

 

この場合、「明らかに」横断しようとしている様子が伺われ、かつ、子供であると認識した場合、自車の方向をきちんと確認してなさそうだと感じたら警音器を鳴らして注意喚起し、「横断しようとする歩行者」の様子を注視しながら事故を回避できる体制にして進行すべき注意義務違反だとされることもある。
そういう判例っていくつかあるし、逆に「横断が予見できなかった」として無罪にしている判例もあります。

判例 歩行者の様子 結果
仙台高裁S46.12.6 交通の頻繁な道路にて、横断しようと佇立していた歩行者(62歳)を前方約17.4m先に発見し警音器を一度吹鳴したものの、直前横断し衝突。 有罪(漠然進行した過失)
大阪高裁S47.7.26 幹線道路の路側帯左側を車両と同方向に歩行する歩行者が、衝突地点8m手前で突如小走りで斜め横断 無罪
大阪高裁S48.10.30 中央分離帯の切れ目から被告人車の方向を向いて横断しようとしていた老人が、被告人車の前方約2.8mの地点で横断し衝突 有罪(中央分離帯の切れ目で発見時に警音器を吹鳴し直ちに減速して注意しながら進行すべき注意義務違反)
東京高裁S39.3.18 時速40キロで進行中、対面歩行してくる8歳(下を向いて歩行)を発見。被告人車の約4.6m手前で横断 有罪(54条2項但し書き「危険を防止するためやむを得ない場合」に該当する)
東京高裁S45.5.25 幅員25mの車道を横断するために、ガードレールの切れ目(街路樹の陰)から小走りで横断。夜間、雨天、酔っぱらい 無罪(横断開始するまでに発見不可能)
東京高裁S45.12.23 電柱の傍に佇立し道路左側を見ていた歩行者が、突如直前横断。バス停の付近。 無罪(横断しようとしていた事実が認められない)

自転車の「ノールック横断」についても、

 

車が自転車を追い越すときに、クラクション(警音器)を鳴らすのは違反なのか?
先日書いた記事で紹介した判例。 自動車運転者が自転車を追い越す場合には、自動車運転者は、まず、先行する自転車の右側を通過しうる十分の余裕があるかどうかを確かめるとともに、あらかじめ警笛を吹鳴するなどして、その自転車乗りに警告を与え、道路の左...

 

フラフラして挙動不審ならいきなり横断することも予見可能だし、警音器を吹鳴して警戒を与えるべき注意義務違反とする判例すらあるわけですが、

https://twitter.com/HOSOMI_SHOKAI/status/1641761610300801025

「横断することは予見不可能」とはちょっと言い難いとしか。
自転車が横断しようとしていた判例でもこう。

自動車の運転者は進路前方の歩道上に自転車が車道に向いているのを発見した場合、自動車の車体が自転車の前方を通過してしまうまで自転車に注目を続け、その動静に対する警戒を続けながら自動車を進行すべき注意義務がある。

 

東京地裁 昭和39年6月15日

歩行者が車道と反対側を向いて会話していたなど「横断する予兆」が全くなかったケースでは無罪にしている判例もありますが、この状況下で予見不可能…とはかなり厳しい気がします。

 

なお、54条2項但し書きは「危険を防止するためやむを得ない場合」であって、「事故を回避するためやむを得ない場合」ではないのでご注意を。

 

警音器と「危険を防止するためやむを得ない場合」。
警音器の問題って、「法律上の話」と「マナー的な話」がごちゃまぜになっている気がする。 警音器と「危険を防止するためやむを得ない場合」 道路交通法54条2項では、危険を防止するためやむを得ない場合は使ってもよい。 2 車両等の運転者は、法令の...

 

横断することが予見可能か?

要は「横断することが予見可能か?」が問題になるわけですが、動画の様子を見て「予見不可能」だと思う人はさすがにいないわけで、歩行者側に直前横断という重大な過失があったにせよ、予見可能ならそれに備えた運転をしろというのが判例の立場かと。

 

理不尽と考えるかどうかは人それぞれかと思うけど、直前横断しないだろと信頼できる状況とは言えないとなりますかね。

 

なお、民事の過失割合については、歩行者側にもそれなりに付きます。
民事責任を負うだけでなく、刑事責任すら負う可能性がある事例なので、注意するしかないかと。
もちろん、直前横断自体は非難されることになりますが。


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