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「警察官の供述は不自然」としてシートベルト装着義務違反が取消に。

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今回ちょっと取り上げる事案はこれ。

シートベルトを着けていたのに警察官の見間違いで検挙され、運転免許証の区分を「優良運転者」ではなく「一般運転者」とする処分を受けたとして、福岡県みやま市の男性(65)が県を相手取り、「優良」とするよう求めた訴訟が福岡地裁であり、林史高裁判長は22日、男性側の訴えを認める判決を言い渡した。

判決によると、男性は2020年5月3日昼、同市内の国道交差点を軽貨物車で左折した際、柳川署の警部補と巡査が乗ったパトカーに停止を求められた。巡査が男性に声をかけた際、男性はシートベルトを着けていたが、署員2人は装着義務違反があった、と説明。男性は「納得ができない」などと申し入れ、点数切符への署名・押印を拒んだが、県警運転免許管理課は違反登録をし、県公安委員会は21年3月、男性の免許区分を一般運転者とする処分をした。

林裁判長は、男性の車のシートベルトの構造や色、天気などを踏まえ「警察官らは装着していないと誤認した可能性がある」と判断。警部補が21年7月になって「男性が慌てて着けているのを確認した」などと、男性の供述調書には書かれていない説明を始めたことについては「供述に変遷があり、内容にも不自然さがある」と指摘。違反行為を認めるに足りる的確な証拠はない、と結論づけた

シートベルト違反検挙「警察官の供述は不自然」福岡県敗訴 福岡地裁(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース
シートベルトを着けていたのに警察官の見間違いで検挙され、運転免許証の区分を「優良運転者」ではなく「一般運転者」とする処分を受けたとして、福岡県みやま市の男性(65)が県を相手取り、「優良」とするよ

ところで結構勘違いしやすいポイント。

管理人
管理人
違反点数を取消しろ!という行政訴訟は可能でしょうか?
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「違反点数を取消しろ!」という訴訟は提起できない

勘違いしやすいポイントですが、「違反点数を取消しろ!」という裁判を起こすと、不適法な訴えだとして「却下」の判決になります。
今回の裁判は「違反点数を取消しろ!」ではなく、「ゴールド免許を交付しろ!」が裁判の内容。

 

なぜ「違反点数を取消しろ!」という裁判ができないかというと、行政訴訟法上、「加点行為」は行政処分ではないと見なされるからです。
行政訴訟法上の「処分取消請求訴訟」には「加点行為取消請求訴訟」が含まれない。

 

一例を。

第二 事案の概要
本件は、京都府警察の交通違反取締り担当の警察官が、原告を現行犯逮捕し、引き続きその身柄を拘束したことは違法であり、また、被告京都府公安委員会(以下「被告委員会」という。)が、原告に対し法施行令所定の累積点数を2点加算する措置をとったこと(以下「本体措置」という。)は、違法な行政処分であるとして、原告が、被告委員会に対して本件措置の取消しを、被告京都府に対して、国家賠償法に基づき慰謝料の支払を、それぞれ求めた事案である。

京都地裁 平成13年8月24日

違反点数の取消を求めた事案。
「違反点数を取消しろ!」については「却下」、国家賠償請求は「棄却」になっています。

1 行政事件訴訟法にいう行政庁の処分とは、法令に基づく行為のすべてを意味するものではなく、行政庁が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいうものと解する(最判昭和39年10月29日・民集18巻8号1809頁参照)。
2 法は、自動車運転等の禁止の命令(法75条の2)、免許の取消し及び停止(法103条2項)、仮免許の取消し及び停止(法106条の2)等の各規定において、「政令で定める基準」に従うものと規定しており、法施行令は、上記各規定における「政令で定める基準」として、法、法施行令及び法に基づく処分に違反する行為を「違反行為」とし、個々の違反行
為に所定の点数を付することとする累積点数制度を用いている。
しかし、同施行令の規定の仕方は、いずれも「違反行為をした場合において、その累積点数が別表…に掲げる点数に該当することとなったとき」というように、上記の各行政処分につき、累積点数それ自体を要件とはせずに、一定の点数に該当する個々の違反行為の存在自体を要件とした文言になっており、累積点数が一定の点数に達することが上記の各行政処分の要件となるものではないと解される。
また、法や法施行令によっても、累積点数を加算する行為については、これをその都度当該運転者に対して一般的に通知することとはされておらず、他の法令の規定に照らしても、このような通知の制度は設けられていないと解される。このことは、累積点数を加算する行為が当該運転者によって不服申立手続や訴訟で争われることを法が予定していないことを窺わせるものといえる。
3 このようにみてくると、累積点数を加算する措置は、公安委員会において各処分要件が整ったかどうかを画一的にチェックするための内部処理のための制度であって、それ自体は、国民の権利義務に何らの影響を与えるものではなく、したがって、行政処分には該当しないものと解するのが相当である。
4 原告は、累積点数加算の段階で行政処分性を認めてこれを訴訟で争えるように解しないと、その後の免許証の更新の際、優良運転者として有効期間5年の免許証の交付を受けられない不利益を被るなど、非常に不合理であると主張する。
しかし、優良運転者の認定基準は、法施行令33条の7により、各号に定める日前5年間において違反行為又は法施行令別表第2の2に掲げる行為をしたことがないこととされており、やはり累積点数が加算されたという事実が要件とされていない。優良運転者に該当する者が免許証の更新の申請に対して有効期間3年の免許証の交付を受けた場合には、その者は、この免許証の交付は、有効期間5年の免許証の交付を受ける法的利益を侵害するものであるとして、抗告訴訟を提起することもできるものと解するのが相当である。
また、免許取消し等の処分を受けた者は、当該処分直近の違反行為のみならず、それ以前の、公安委員会が累積点数算定の根拠としたすべての違反行為の存在を争うことができ、その場合、それらの違反行為についての第一次的な立証責任は公安委員会が負うこと、累積点数算定の基礎となる違反行為は、最後の違反行為があったとされる日を起算日とする過去3年以内
における違反行為に限られること(累積点数の定義については法施行令33条の2第1項1号イ参照。)からすれば、免許取消し等の処分を受けるまで累積点数の加算の当否を争えないものと解したとしても、必ずしも不合理とはいえない。
いずれにしても、原告の上記主張は採用できない。

京都地裁 平成13年8月24日

加点行為の取消は、裁判を起こすことができません。
行政訴訟法上、提訴できるのはこれ。

・その違反によって、ゴールド免許から格下げになった場合(ゴールド免許交付請求訴訟)
・その違反によって、免許停止又は取消になった場合(免許停止/取消処分取消請求訴訟)

要はこの事件は、訴え自体は「ゴールド免許を交付しろ!」。
「ゴールド免許を交付しろ!」と主張する中身として「シートベルトしていただろが!どこが違反じゃ!」になる。

客観的に優良運転者の要件を満たす者であれば優良運転者である旨の記載のある免許証を交付して行う更新処分を受ける法律上の地位を有することが肯定される以上,一般運転者として扱われ上記記載のない免許証を交付されて免許証の更新処分を受けた者は,上記の法律上の地位を否定されたことを理由として,これを回復するため,同更新処分の取消しを求める訴えの利益を有するというべきものである。

最高裁判所第二小法廷 平成21年2月27日

つまり、元々ゴールドじゃない人は「ゴールド免許を交付しろ!」という裁判をできません。

若干珍しい気がする

行政訴訟で原告が勝訴する確率は10%以下なので、だいぶ頑張ったのだろうと思われますが、まず間違いなく県は控訴するでしょう。
解釈の争いではなく事実の争いなのでさすがに最高裁まで争うことはないでしょうけど。

 

けど、警察が余計な陳述をして墓穴を掘ったかのような報道にも見えます。
原告からすると許しがたい暴挙だと思ったから提訴したのでしょうけど、この手の裁判は掛ける手間と得る利益のバランスが取れてない。

 

シートベルトをしていても「付けてないだろ」とイチャモン付けてくる事例があるわけだし、さらにその違反に納得いかずに闘うには相当な労力が必要。
警察がおかしな解釈をしたり、おかしな取り締まりをする事例は多々ありますが、そういえばこれ。

38条2項は対向車の停止でも義務があるか?と警察に聞いてみたら意外過ぎる結果に陥る。
道路交通法38条2項は、横断歩道手前に停止車両があるときには、歩行者の有無に関わらず一時停止する規定。 2 車両等は、横断歩道等(当該車両等が通過する際に信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等により当該横断歩道等による歩行者等の横断が禁...

一つは警視庁ですが、もう1つは福岡県警です笑。
こうやって頑張って行政訴訟を闘う人は凄いなと思うけど、道路交通法違反は争う場所が限られていて、「ゴールド免許交付請求訴訟」か「免許停止(取消)処分の取消請求訴訟」くらいしか実質的に争う場所はありません。

 

マニアックなところだと、なぜかこのように起訴された事案もありますが、

なぜ?赤信号無視で最高裁まで?
以前取り上げたこちらの判例について質問を頂いたのですが、 ちょっと分かりにくいのかな、この判例。 被告人は「信号無視はしてない!」と裁判で争ったわけではありません。 争ったのはなに? まずは事件の概要。 (1) 被告人は,平成27年7月12...

軽微な違反は争う意気込みを見せても不起訴。
行政訴訟は提起できないケースも多い。
元々ゴールドじゃない人は、イチャモン取締りについて争う場所がないケースもあり得るので、普段から違反してないことは大事なのよね。

 

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