追いつかれた車両の義務と車両通行帯の有無について質問を頂いたのですが、これはよくありがちな話。

車両通行帯の有無は見分けがつかないのにどうやって判断するのでしょうか。
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追いつかれた車両の義務と車両通行帯の有無
確かに27条2項は車両通行帯がある場合を除外しています。
第二十七条
2 車両(乗合自動車及びトロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、最高速度が高い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路の右側端。以下この項において同じ。)との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合においては、第十八条第一項の規定にかかわらず、できる限り道路の左側端に寄つてこれに進路を譲らなければならない。最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合において、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。
なので理屈の上では片側二車線の「車両通行帯がない道路」でも追いつかれた車両の義務があることになる。
これってわりとシンプルな話をすると、車両通行帯がある場合には第一通行帯の通行義務(20条1項)があるので、
やるべきことは車両通行帯の有無で何も変わらないですね。
20条1項を適用するか、27条2項を適用するかは警察の問題でしかないので、分けて考える理由がないのでは?
そして第一車線に戻ろうとしても、第一車線に通行車両がいて戻れない場合。
車両通行帯がある場合には、20条3項の「道路の状況その他の事情によりやむを得ないとき」に該当する。
「道路の状況その他の事情によりやむを得ないとき」とは,その車両が通行すべき車両通行帯が道路の損壊,道路工事等のため通行することができない場合等をいうが,追越しのため,その直近の右側の車両通行帯を通行して追越しを終わり,元の車両通行帯に戻ろうとする場合において,元の車両通行帯を通行している車両が多く,戻れないまま変更した車両通行帯を通行することも,「その他の事情によりやむを得ないとき」に当たるものと解される。
横浜地裁 平成21年12月14日
車両通行帯がない場合には27条2項の「できる限り左側端に寄って」が適用になりますが、「できる限り」とはできない事情がある場合を除外する意味なので、
第一車線に戻れないなら、第二車線のまま通行することが「できる限り左側端に寄って」ですね。
要は車両通行帯の有無は取り締まる側の問題でしかなくて、運転者には関係ない話。
車両通行帯あり | 車両通行帯なし | |
適用条文 | 20条1項/3項 | 27条2項 |
義務 | 第一通行帯の通行義務 | 左側端に寄って進路を譲る |
除外事由 | 道路の状況その他の事情によりやむを得ないとき(20条3項) | 道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がある場合/左側端に寄れない物理的事情がある場合 |
運転者にとっては何も変わらないのだから、一般市民が分けて考える必要性を見いだせないのですが…
そもそもの誤解
何条を適用するかは取り締まる側の問題でしかなくて、運転者にとっては何も変わらないように思うので分けて考える理由がよくわからないです。
要はこの手の話って、除外事由の解釈や「できる限り」の意味を取り違えてしまう人がいるからややこしいけど、第一車線に戻ろうにも通行車両がいたら戻れないのは当たり前。
まさか第一車線の通行車両と通行車両の隙間に割り込むような危険プレイをしろ、なんて話でもない。
道路交通法って、適用条文が違うだけで中身は同じケースがまあまああるし、専門書は取り締まる側の視点になっているからなおさら勘違いしやすいのかと。
18条1項(左側寄り通行)と20条1項(第一通行帯)にしても実質的に同じなわけで、分けて考える必要が薄い。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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