こちらで取り上げた件ですが、
電動自転車側の一時停止を無視しての走行。
ノーヘル&イヤホン走行での運転手の末路。
便利だけど何かあった時のリスクは大です。
覚悟を持って乗りましょう。#モペット #フル電動 pic.twitter.com/0Cu74a6Tr1— ❤️LOVE NISSAN AURA❤️ (@lovenissanaura) August 2, 2024
優先道路がなく、左右の見通しが悪いので徐行義務(42条1号)。
第四十二条
車両等は、道路標識等により徐行すべきことが指定されている道路の部分を通行する場合及び次に掲げるその他の場合においては、徐行しなければならない。
一 左右の見とおしがきかない交差点に入ろうとし、又は交差点内で左右の見とおしがきかない部分を通行しようとするとき(当該交差点において交通整理が行なわれている場合及び優先道路を通行している場合を除く。)。
そもそも「優先道路」を勘違いしている人が多いので、「優先権がある道路」と思っている人が多い。
優先道路の定義はこれ。
交差点内にセンターラインか車両通行帯がある道路を優先道路と定義している。
ただまあ、若干分かりにくいので解説書から引用。
優先道路とは「当該交差点において当該道路における車両の通行を規制する道路標識等による中央線又は車両通行帯が設けられている道路」と規定されており、道路標識等により指定する場合すなわち優先道路となる道路の交差点の手前の地点に「優先道路」の指示標識を設置し、併せてこの道路と交差する道路の交差点の手前に、「前方優先道路・一時停止」の標識を設置して指定するものと、中央線又は車両通行帯境界線が交差点の中まで連続して設けられていることによって直ちに優先道路としての取り扱いを受けるもの、との二つがある。
交通法令実務研究会、「逐条道路交通法」、警察時報社、昭和62年
道路標示(中央線または車両通行帯境界線)による優先道路は、交差点の中まで中央線等が表示されている道路のことをいい
東京地方検察庁交通部研究会、「最新道路交通法事典」、東京法令出版、1974
※優先道路の定義は昭和46年改正以降は変更なし
「交差点内まで」センターラインか車両通行帯がある道路を優先道路という。
なので下記は「優先道路がない交差点」なのは明らか。
電動自転車側の一時停止を無視しての走行。
ノーヘル&イヤホン走行での運転手の末路。
便利だけど何かあった時のリスクは大です。
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優先道路がなく、左右の見通しが効かないなら徐行義務(42条1号)。
第四十二条 車両等は、道路標識等により徐行すべきことが指定されている道路の部分を通行する場合及び次に掲げるその他の場合においては、徐行しなければならない。
一 左右の見とおしがきかない交差点に入ろうとし、又は交差点内で左右の見とおしがきかない部分を通行しようとするとき(当該交差点において交通整理が行なわれている場合及び優先道路を通行している場合を除く。)。
優先道路だと若干誤解を生むから「有線道路」にしたほうがいいのかも。
交差点内にセンターラインか車両通行帯の「線」がある道路、つまり「有線」の道路なんだと明確にし、非有線道路を「無線道路」と呼べば分かりやすくなるような。
線がないのだからむしろ分かりやすくなる。
左右の見通しが悪い交差点の徐行義務については、車両同士の関係だけじゃなく歩行者の安全も考慮しているのだと最高裁判所第三小法廷 昭和43年7月16日判決等で示されてますが、38条の2(横断歩道がない交差点の歩行者優先)を担保するために徐行義務を課しているという説もある。
なのでかなり重要なのよね。
日本の刑法って「どっちが悪いか?」という概念ではなくて、「被告人に悪があるか?」で判断されます。
被害者がどんだけ悪でも、被告人にわずかでも悪があれば有罪。
他人がどんだけ悪でも、自分の悪は消えないのだから、自分の悪に集中した方がいい気がします。
ちなみに、自転車同士の事故ですが、一方が「一時不停止」、一方が「徐行義務違反」の衝突事故。
一時不停止側の自転車がケガをしたことから、「徐行義務違反」の自転車が重過失致傷罪で有罪が確定しています。
重過失致傷は多くが罰金刑の略式なので、判例として表に出ませんが、民事判例の中で「有罪が確定した」と記述があるものもしばしばみかけます。
そもそも「優先道路」の定義について共通理解がないのだから、その先にある徐行義務に目がいく人が少ない。
「一時停止しなかったチャリカスが一方的に悪いよ!」とならないのは、双方に違反があるからに他ならないのですが…
それこそこんな判例もあります。
・東西道路に一時停止規制
・交差点の全方向にブロック塀があり見通しは悪い
・南北道路の制限速度は40キロ
・道路幅は同程度
被告人車(青)は一時停止規制に従い一時停止した後、左方道路の見通しが悪いため徐行前進。
左方道路から進行してくる車との距離が約37mだったことから進行したところ、北進する車の速度が速く衝突した事故です。
被告人車は同乗者に怪我をさせたとのことで業務上過失傷害罪に問われています。
最高裁は以下の理由から信頼の原則を適用。
ところで、右交差点は、交通整理の行なわれていない、左右の見とおしの悪い交差点であり、東西道路と南北道路の幅員はほほ等しく、かつ、南北道路は優先道路ではないから、A車のように南北道路を北進して交差点に進入しようとする車両は、東西道路に一時停止の標識があつたとしても、本件当時施行の道路交通法42条に従い、交差点において徐行しなければならないのである(最高裁昭和43年7月16日第三小法廷判決・刑集22巻7号813頁参照。)。
しかるに、原判決の確定した事実によれば、Aは、制限速度を超えた時速約50キロメートルで進行し、交差点手前約20. 5メートルに至り、初めて被告人車を発見し、急制動の措置をとつたが間にあわず、交差点内で被告人車に衝突したというものであつて、本件事故は、主としてAの法規違反による重大な過失によつて生じたものというべきであり、このことは、原判決も認めているところである。
しかし、進んで、原判決が説示しているように、被告人にも過失があつたかどうかを検討してみると、本件のように交通整理の行なわれていない、見とおしの悪い交差点で、交差する双方の道路の幅員がほぼ等しいような場合において、一時停止の標識に従つて停止線上で一時停止した車両が発進進行しようとする際には、自動車運転者としては、特別な事情がないかぎり、これと交差する道路から交差点に進入しようとする他の車両が交通法規を守り、交差点で徐行することを信頼して運転すれば足りるのであつて、本件A車のように、あえて交通法規に違反し、高速度で交差点に進入しようとする車両のありうることまでも予想してこれと交差する道路の交通の安全を確認し、もつて事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務はないものと解するのが相当である。最高裁判所第三小法廷 昭和48年12月25日
非一時停止側に優先通行権が認められるのは、法規に従って徐行(優先道路がない場合)した場合なんですよね。
つまり冒頭の動画については、一時不停止のモペットに優先通行権があるわけもないし、徐行義務違反の撮影車にも優先通行権があるわけじゃない。
まあ、優先道路の概念がいまだ周知されていない日本では、自分の違反を棚にあげて他人の違反を非難することが横行しますが…
そもそも、徐行義務から「優先道路の場合」を除外したことには理由があります。
昭和35年道路交通法では、交通整理が行われてない見とおしが悪い交差点は全て徐行と定めていた。
しかし最高裁は現36条2項に該当するケース(優先道路、広路車)は42条1号の除外事由とみなすべきと判断(43.7.16)。
これを受けて警察庁が昭和46年に法改正をし、優先道路の定義を変え、優先道路の場合のみを徐行義務の除外とし、広路通行車の徐行義務は免除しなかった。
今回の改正により、道路標識等により優先道路と指定されている道路のほかに、「当該交差点において当該道路における車両の通行を規制する道路標識等による中央線又は車両通行帯が設けられている道路」を新たに優先道路とすることにした。その趣旨は、交差点において一方の道路に道路標識等によって中央線または車両通行帯が連続して設けられている場合には、その道路のほうが重要性があると認められるのが一般的であるから、このような道路を優先道路とすることによって、交差点における交通方法の合理化を図ることとしたものである。
この結果、交差点において中央線または車両通行帯が連続して設けられている道路を通行している車両等については、交差点およびその手前の30m以内の部分での追越しの禁止(第30条第3号)および見とおしがきかない交差点における徐行義務(第42条第1号)は、適用されないことになる。
なお、交差道路より幅員が明らかに広い道路を通行している車両等については、これらの義務の適用は、除外されない。「道路交通法の一部を改正する法律」(警察庁交通企画課)、月刊交通、東京法令出版、1971年8月
なんで「交差点内に」センターラインまたは車両通行帯としているかというと、優先道路の概念は優先道路通行車のみならず非優先道路から優先道路に進入する車両にも関わるから。
非優先道路から優先道路に進入する車両は、優先道路通行車の進行妨害禁止としているので非優先道路側からも「交差道路が優先道路」だと容易に判別できないと話にならない。
優先道路通行車は徐行義務が免除されるので、双方ともに理解できる内容=「交差点内に」センターラインまたは車両通行帯としている。
交差点内にセンターラインまたは車両通行帯があれば、どちらの立場でも容易に判別できますから…
このような立法による解決を経て、それ以前に示した解釈は無効だと確認されています。
上告趣意は、判例違反をいうが、所論のうち、原判決が昭和42年(あ)第211号同43年7月16日第三小法廷判決・刑集22巻7号813頁に違反するという点については、右判決は昭和46年法律第98号による改正前の道路交通法36条、42条について示された解釈であつて本件の先例とはなり得ないものであり、その余の引用にかかる判例は本件とは事案を異にして適切でなく、いずれも適法な上告理由にあたらない。
最高裁判所第二小法廷 昭和52年2月7日
道路交通法42条によれば、車両等が同条1号にいう「左右の見とおしがきかない交差点」に入ろうとする場合には、当該交差点において交通整理が行われているとき及び優先道路を通行しているときを除き、徐行しなければならないのであつて、右車両等の進行している道路がそれと交差する道路に比して幅員が明らかに広いときであつても、徐行義務は免除されないものと解するのが相当である。
最高裁判所第二小法廷 昭和63年4月28日
「一時停止しなかったモペットが悪いだろ!」と主張できるのは、法規に従って通行した場合だけなのよね。
どちらの過失が大きいかについては言うまでもなく一時不停止側ですが、刑事司法には過失相殺がないので徐行義務違反で有罪になりますから…
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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