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「視界不良で信号が見えなかった」は、問題点が違う。

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ちょっと前にこのような事故がありました。

14日午後、青森市の小学校付近で、下校中の女子児童が車にはねられました。児童は搬送時、会話ができる状態だったということです。警察は運転していた40代の女を現行犯逮捕しました。

【坂本庸明記者】
「小学生はあちらの横断歩道ではねられました。近所の人によりますと、事故があった時間帯は西日で前が見えづらいことがあるそうです」

警察によりますと、14日午後2時半ごろ、幸畑小学校前の信号機のある横断歩道を渡っていた7歳の女子児童が軽乗用車にはねられました。

女子児童は、青森市内の病院に搬送されましたが、搬送時、会話はできる状態だったということです。

【近くの人】
「ドンっという音がして、キューって急ブレーキの音がしたのですよ。ん?と思って振り返ったら、もうその時は小学生が隣のラーメン屋さんのところまで飛ばされていて」

警察は、軽乗用車を運転していた青森市の40代の女を過失運転致傷の疑いで逮捕しました。

警察の調べに対し、女は「西日が目に入ってまぶしくて、よく見えなかった」などと話しているということです。

警察は、青信号で横断歩道を渡っていた女子児童を、赤信号で走ってきた車がはねたとみて捜査を進めています。

下校中の女児をはねる 40代女を現行犯逮捕 「西日がまぶしくてよく見えなかった」/青森市(ABA青森朝日放送) - Yahoo!ニュース
14日午後、青森市の小学校付近で、下校中の女子児童が車にはねられました。児童は搬送時、会話ができる状態だったということです。警察は運転していた40代の女を現行犯逮捕しました。【坂本庸明記者】「

これについて、西日で眩しいなら視界に応じて停止できる相応の速度に減速して進行する義務があるし、横断歩道の道路標示も視認できないことは考えにくい。
仮に信号が見えなかったならその運転者にとっては「信号がない横断歩道」になるのだから、減速接近&一時停止義務があることになり(38条1項の違反が成立するかは別問題)、結局のところ信号が見えなかったという話はあまり意味がない言い訳なのかと。

読者様
読者様
信号の灯火が確認できず、信号機の存在が認識出来るなら「止まれ」でなく、「最徐行」でいいんですか?
また、明らかに他の交通や横断者が無ければ、全消灯でも一旦停止や徐行しないで通過でも問題ないのでしょうか?
例えば鉄道では信号の全消灯は信号機手前で停止で、霧や降雪等で灯火が確認できない時は、確認できる位置まで徐行(45〜65㌔程度)です。
車と違って鉄道は速度しか制御出来ないうえに、多くの人命を抱えてなので、安全第一は当然ですが、一人で車や自転車に乗る場合でも、周囲の人の命を抱えているつもりで運転したいものです。

理屈の上ではいかなる注意をしても信号を視認できないなら、信号無視したことに過失(不注意)がないので信号無視には当たらないことになりますが、現実にそんなことがあるかと聞かれたらたぶんない。
何らかの不注意があって信号を見落としたとなる。

 

要はその「何らかの不注意」の内容なんですよね。

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視界不良と注意義務

例えばこのような事例があります。
事件は運転免許取消処分の取消請求で、吹雪で視界不良の中、漠然30~40キロで進行して歩行者をはねた。
公安委員会は安全運転義務違反(70条)と「専ら以外」の付加点数を加算し運転免許を取消にしましたが、原告が「安全運転義務違反は成立しない」等と主張して運転免許取消処分を取消しろと求めたもの。

本件は,北海道公安委員会から,平成31年4月4日付けで運転免許を取り消し,同日から1年間を免許を受けることができない期間として指定する処分(以下「本件処分」という。)を受けた原告が,本件処分の理由とされた交通事故について原告に安全運転義務違反はなく,また,本件処分には理由提示の不備の違法があると主張して,被告を相手に,本件処分の取消しを求める事案である。

1 関係法令の定め
別紙「関係法令の定め」のとおりである。
2 前提事実(争いがない事実及び後掲証拠等により容易に認定できる事実)
⑴ 原告は,平成2年3月28日,普通自動車運転免許を取得し,その後,更新を繰り返し,平成29年4月7日,北海道公安委員会から普通自動車運転免許証(有効期間が平成34年6月1日までのもの)を交付された(甲1)。

⑵ 原告は,平成30年2月21日午前0時48分頃,普通乗用自動車(ナンバー略。ダイハツステーションワゴン。以下「本件車両」という。)を運転し,
北海道虻田郡a町字bc番地付近道路をd町方面からe町方面に向かい,遅くとも時速約30kmの速度で進行し,同f番地先路上(以下「本件事故現場」といい,本件事故現場付近の道路〔道道g線〕を「本件道路」という。)において,本件道路左側を本件車両と同一方向に向かって歩行中のAに本件車両左前部を衝突させてAを前方に跳ね飛ばし,その前方を歩行中のBにAを衝突させてA及びBを転倒させ,Aに外傷性くも膜下出血等の傷害を負わせ,これによりAを死亡させたほか,Bに全治84日間を要する右中指末節骨骨折等の傷害を負わせる交通事故(以下「本件事故」という。)を起こした(甲6,乙3)。

北海道公安委員会は,下記の理由により,原告が道路交通法70条の規定に違反したことから同法施行令別表第2の1の表による違反点数が2点となるところ,本件事故が専ら当該行為をした者の不注意によって発生したものである場合以外の人の死亡に係る交通事故であることから,同法施行令別表第2の3の表による違反行為に対する付加点数13点を加えると,累積点数が15点となり,同法施行令38条5項1号イ,別表第3の1の表の第1欄の区分に応じた第6欄(15点から24点まで)に該当したとして,原告に対する意見聴取を経た上で,平成31年4月4日,運転免許取消処分書(甲3。以下「本件処分書」という。)を原告に交付して,同日付けで同法103条1項5号に基づき,運転免許を取り消し,同条7項,同法施行令38条6項2号ホに基づき,運転免許を受けることができない期間を同日から1年間と指定する本件処分をした(乙1)。


原告は,平成30年2月21日午前0時48分頃,本件車両を運転し,激しい吹雪のため前方の見通しが困難な本件道路を進行する際直ちに一時停止又は徐行せずに,進路の安全確認不十分のまま,時速約30~40kmで進行した過失により,折から本件道路左側を同一方向に歩行中のAに気付かぬまま,Aに本件車両左前部を衝突させてAを前方に跳ね飛ばし,その前方を歩行中のBにAを衝突させて転倒させ,よって,Aに外傷性くも膜下出血等,Bに右中指末節骨骨折等の傷害を負わせ,Aを同月24日午前2時22分に死亡させた。

札幌地裁 令和2年8月24日

なお指定最高速度は50キロ、歩車道の区別はありません。

本件事故当時,遅くとも本件車両が本件事故現場から126.9m手前の地点に差し掛かった時点では,降雪や地吹雪により,視界が更に悪化して前方が見えづらく,視線誘導標識すらも見えないほどの状態となり,本件事故が発生するまで,この状況が回復することはなかった(認定事実⑴ウ)。
したがって,車両の運転者には,そのような前方の見通しの状況に応じて,道路側端を歩行している歩行者と安全にすれ違うために徐行するか,徐行によっても歩行者の安全を確保できない場合には一時停止して視界の回復を待つ義務があったというべきであるところ,原告は,本件車両を一時停止又は直ちに停止することができる速度まで減速させることなく,漫然と,遅くとも時速約30kmの速度で進行させ,本件事故を発生させたのであるから,原告には,進路の安全を十分に確認することなく,道路及び交通の状況に応じて,他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転することを怠ったという安全運転義務違反があったといえる。

まあ、そりゃそうだという内容ですが、要は西日で眩しいなら相応の速度に減速して進行する義務があり、相応の速度に減速していれば信号を見落とすことにはならない可能性がある。
さらに減速して注意していても信号を視認できないとしても、横断歩道の道路標示まで見えないことは考えにくいし、横断歩道の道路標示を視認できるなら減速接近&一時停止義務があるのだから、「西日で見えなかった」という言い分は単に「故意に信号無視したわけじゃない」という意味でしかない。
信号無視に至った具体的過失が何なのか?を考えないと、同じように事故を起こすだけなのよ。

 

なので、結局、十分減速していれば信号無視にならなかった可能性が高いとなる。
仮に十分減速していても信号も横断歩道も認識できない状況なら、そもそも進行禁止状態だったのでは?と思ってしまいますが…

ところで

札幌地裁判決は安全運転義務違反が成立するとしながらも、運転免許取消処分は違法だとして処分の取消を認めている。
これはちょっとややこしい事情。

ここで安全運転義務違反を理由としてされた本件処分の根拠規定である道路交通法70条についてみると,同法は,同法16条以下において車両の交通方法を具体的に定め,車両の運転者をしてかかる定めに従って運転すべき義務を課している。しかしながら,車両,道路等の状況によって,運転者に課される運転義務には様々な形態があり,同法各条が規定する具体的な義務規定のみではまかないきれないことから,同法70条は,それを補う趣旨で設けられた抽象的な規定であるということができ,どのような場合にどのような運転をすべき義務が運転者に生じ,どのような場合に安全運転義務違反となるかを定める具体的基準等は見当たらない。
そうすると,個別具体的な事実関係によっては,同条違反であることが示されるだけでは,処分の名宛人である運転者において,自己にどのような運転をすべき義務が生じており,又は,どのような運転行為が安全運転義務違反とされるのかを認識することが困難な場合もあるところ,そのような場合であるにもかかわらず,処分理由が同条違反であるとのみ示されたとすれば,処分の名宛人に対して不服申立ての便宜が与えられたとはいい難い。また,そのような場合であれば,処分をする行政庁においても,具体的な義務内容とその義務違反に当たる行為を認識しないまま処分に至るおそれがあるともいえ,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制する趣旨に反することにもなる。
以上からすれば,個別具体的な事実関係に照らし,同条違反であることが示されるだけでは,処分の名宛人である運転者において,自己にどのような運転をすべき義務が生じており,又は,どのような運転行為が安全運転義務違反とされるのかを認識することが困難な場合において,処分理由として,同条違反であるとしか示されなかったときは,行政手続法14条1項本文が定める理由の提示としては不足すると解するのが相当である。

そこで本件処分の原因となった具体的事実関係に基づいて検討すると,上記⑵のとおり,本件処分においては,本件処分書に違反行為の発生年月日が「平成30年2月21日」,違反行為の種別等が「死亡交通事故」と記載されていることから,原告としては,本件事故の際の自己の運転行為が安全運転義務違反に該当するとされていることは認識可能である。しかしながら,本件事故の態様は,降雪や地吹雪の影響で見通しの悪い状況で,本件車両を進行させた際に,本件事故現場を通行していたAに本件車両を衝突させたというものである。かかる事故態様の下においては,本件事故当時の見通しの悪さの程度がどのようなものであったか(直ちに車両を停車又は徐行させるべき程に見通しが悪い状況だったのか,車両を進行させることは可能な程度の見通しが確保されていたのかなど)が複数考えられるところ,これらは両立し得ない。そして,見通しの悪さの程度に応じて安全運転義務の内容(後続車両の安全な通行のために前方を注視して進行すべ
きだったのか,歩行者のために直ちに停止又は徐行すべきだったのかなど)も複数考えられ,これらも両立し得ない。
すなわち,本件事故に係る事実関係の下においては,処分理由とされ得る具体的な安全運転義務違反行為が複数あり得るのであって,しかも,それら複数の義務違反行為は両立し得ないものといえる。そうすると,本件処分において,安全運転義務違反との処分理由が示されたのみでは,原告において,上記両立し得ない見通し状況及び安全運転義務の内容のうち何を前提として不服申立てをすればよいのかを判断するのは困難であったといえるし,処分行政庁である北海道公安委員会においても,具体的な義務内容とその義務違反に当たる行為を認識しないまま本件処分に至るおそれがあったといわざるを得ない。
したがって,本件処分における理由の提示には,行政手続法14条1項本文に反する違法があるというべきである。

安全運転義務違反は具体的な内容を摘示しないとダメなので、これは公安委員会のチョンボ。
まあ、西日で眩しいという理由なら信号無視したことは結果的な問題と言えますが、信号無視に至った過程にどんな過失があったか考えないと、同じように事故までが繰り返されるのよね。

 

生活道路の法定速度引き下げにしても、本来は生活道路の性質上、歩行者の往来が強く予想される上、見通しが悪い交差点の徐行義務があることからスピードを出しようがないのですが、そこにフォーカスせず法定速度引き下げにのみ焦点を当てているように見えてしまい本質的には意味がないような気がする。

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