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大分「時速194キロ事故」は進行制御困難高速度を認定、通行妨害目的は否定。

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大分の時速194キロ事故の判決公判があり、危険運転致死罪の成立を認め懲役8年としましたが、重要なのはこの危険運転致死罪の中身。

 

検察官は「進行制御困難高速度」(処罰法2条2号)と「通行妨害目的」(同4号)が成立すると主張してましたが、

(危険運転致死傷)
第二条次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

裁判所の認定は進行制御困難高速度は成立するとし、通行妨害目的は否定。

大分の194キロ死亡事故判決で、大分地裁は危険運転致死罪の要件のうち「制御困難な高速度」だったと認定する一方、「妨害目的」だったとは認めなかった

194キロ制御困難認定、妨害目的は認めず(共同通信) - Yahoo!ニュース
大分の194キロ死亡事故判決で、大分地裁は危険運転致死罪の要件のうち「制御困難な高速度」だったと認定する一方、「妨害目的」だったとは認めなかった。

4号の構成要件からして右直事故に当てはめるのは違和感がありましたが、進行制御困難高速度を認定したのは大きい。
この件については以前書いたけど、

大分194キロ事故と、進行制御困難高速度危険運転。名古屋高裁判決と違う理由。
大分の194キロ直進車事故(被害者は右折車)について公判が始まってますが、この件は危険運転致死罪(進行制御困難高速度、通行妨害目的)を主位的訴因とし、予備的に過失運転致死罪で起訴。「通行妨害目的」の解釈は前回示しましたが、進行制御困難高速度...

従来の判例、例えば名古屋高裁令和3年2月12日と決定的に違うのは、名古屋高裁判例は検察官が「進行している他の車両に対する制御困難高速度」を主張して失敗しているのに対し、今回の大分地裁については報道を見る限り、「道路に対する制御困難高速度」を主張していたこと。

 

処罰法2条2号でいう「その進行を制御」とは、あくまでも道路やコースを逸脱するような危険な高速度を意味し、他の通行車両を避けられずに起こした事故を含まないとしてきました。
大分地裁判決の報道を見る限り、「道路の凹凸などから、時速194キロでは制御困難」「時速194キロでは視野が狭くなり制御困難」という形の主張をしていたので、名古屋高裁判決において検察官が主張した内容とは理論構成が違う。

 

詳しくは判決文を見ないとわかりませんが…
ただまあ、わりと危機だなと思っているのは、このような著しい高速度の直進車でも「右折より直進優先」だと思っている人がチラホラいること。

道路交通法37条の直進車優先と判例。直進車が暴走しても直進優先?
ちょっと前にも書いたのですが、まとめておきます。第三十七条 車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。※直進車が違法走行した事例をメインに...

著しい高速度の直進車は優先権がないし、右折する際は「特別な事情がない限り」直進車が交通法規を遵守して進行してくることを信頼してよいが20キロ程度の速度超過は予見可能、というのが確立しているわけで、時速194キロの直進車は優先権を主張できる立場にない。
まあ、危険運転致死の成立には右直事故であることは関係なく、進行制御困難な高速度を認めるかの問題ですが、この件は裁判員裁判なので裁判官と裁判員の合計の過半数が危険運転致死が成立するとしたら有罪になる。
控訴審がどう判断するかは別問題ですが、あくまで道路の状況に対して進行制御困難な高速度と認めたと思われるので、名古屋高裁判例とは根本的な論点が違うのかと。

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