いきなりですが質問です。
一般的に一時停止標識と停止線は近接した位置にありますが、たまに一時停止標識がやたら手前にあり、停止線と離れていることがある。
例えばこれ。

標識と停止線が20m程度離れていたそうな。
離れていた場合に適法な規制なのでしょうか?
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一時停止標識と停止線が離れていた場合
例えばこのような事例がある。
所論は要するに、道路交通法43条により、交通整理の行われていない交差点において、道路標識と道路標示により一時停止を指定するには、標識と標示を同じ場所に設置すべきであり、道路標示が道路標識からはるかに離れた場所に表示された場合その表示は無効と解すべきところ、原判示交差点に表示された道路標示「停止線」は、交差点の直前に設けられた道路標識「一時停止」より約40mも交差点内に入つたところに表示されているから無効といわなければならない。そうだとすれば原判示交差点は、道路標識で一時停止すべきことが指定されているだけで、停止線の道路表示のない場合ということになるから、交差点の直前で一時停止すればよく、被告人も交差点の直前に設けられた道路標識附近で一時停止をしたのである。従つて原判示交差点に設けられた停止線を有効と解し、被告人が交差点の直前で停止しているのに拘らず、停止線の直前で一時停止しなかつたとして、被告人を有罪とした原判決には、法令の解釈適用を誤り、事実を誤認した違法がある、というのである。
名古屋高裁 昭和50年12月10日
正直なところ見取り図がないので意味不明なんですが、一時停止標識は「交差点直前」にあり、停止線は交差点内40m先にあるという事案。
複合交差点かなんかなんですかね?
弁護人の主張は、この場合は「停止線がない一時停止規制」とみなして「交差点直前」で停止すればよく、交差点直前で一時停止した被告人に43条違反は成立しないと主張。
43条は停止線があれば停止線、停止線がなければ交差点直前での一時停止を指示しているのだから、ある意味では真っ当な意見にも思える。
ただし見取り図が欲しいw
では裁判所の判断を。
よつて検討するに、一時停止の交通規制を行う場合使用される道路標識「一時停止」は、交通整理が行われていない交差点又はその手前の直近において、車両等が一時停止すべきことを指定するものであり(道路標識、区画線、及び道路標示に関する命令(昭和35年総理府、建設省令第3号)別表1、番号(330))、道路標示「停止線」は、車両等が停止する場合の位置を示すものである。(同令別表5、番号(203))従つて道路表示「停止線」は、それのみでは交通を規制する効力なく、道路標識「一時停止」と併用されて始めて交通を規制する効力を有することになり、道路標識「一時停止」は、道路標示「停止線」を併用することによつて、より適正な交通規制を行うことができるのである。そしてこのような両者の関係から考えて、標識と標示を併用する場合、道路標示「停止線」が道路標識「一時停止」から離れたところに表示されていて見えない場合には、道路標示を無効と解すべきこと所論のとおりであるが、道路標示が道路標識から見得る範囲内にありさえすれば、たとえある程度離れていても、道路標示は有効と解するのが相当である。本件において、道路標示「停止線」が、道路標識から約40mも交差点内に入つたところに表示されていたこと所論のとおりであるが、当裁判所の検証の結果によれば、道路標識の設置してあるところから、その前方の交差点内に道路標示「停止線」の表示のあるのを見ることができるから、右の道路標示は有効であり、被告人は停止線のところで一時停止をしなければならなかつたのであつて、原判決の法令の適用に所論のような誤りはない。また事実誤認の論旨は、道路標示「停止線」が無効であることを前提とし、原判決の認定していない事実について原判決の事実誤認を主張するものであり、論旨はすべて理由がない。
名古屋高裁 昭和50年12月10日
名古屋高裁は「道路標示が道路標識から見得る範囲内にありさえすれば、たとえある程度離れていても、道路標示は有効」と判断。
なので距離云々というよりも標識の位置から標示を視認できるか?をポイントにしてますが、
見取り図がないから詳しい経緯は不明ですが、この事案については被告人は交差点直前で一時停止したわけだし、「停止線がない一時停止規制」と誤認したという点では刑事責任を問うのはムリがある気がする。
なので判決結果はともかくとして「道路標示が道路標識から見得る範囲内にありさえすれば、たとえある程度離れていても、道路標示は有効」という概念のみを理解しておけばよい。
ただし
規制内容は一見して判別できるように設置するのは当たり前。
ところで、道路交通法施行令7条3項には、公安委員会が道路標識を設置するときは、歩行者、車両又は路面電車がその前方から見やすいように設置しなければならない旨を規定しており、このことに鑑みても、道路標識は、ただ見えさえすればよいというものではなく、歩行者、車両等の運転者が、いかなる通行を規制するのか容易に判別できる方法で設置すべきものであることはいうまでもない。
最高裁判所第二小法廷 昭和41年4月15日
適法な規制でも、適切とは言い難い標識の設置はあるのが実情。
あまり離れていると誤認しやすくなるのよね。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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