こちらの続き。

下り坂でスピードが出て飛び出すように横断した自転車に過失があるのは明らかで、
第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない。
25条の2第1項がある以上、横断車両は安全を確認してから横断開始する義務がある。
で、報道では「車道と歩道が交わる交差点」となってますが、道路交通法では車道と歩道が交わっても交差点にはならない。
現場はここだと思われますが、
交差するのは歩道ではなく、「車道と歩道の区別がない道路」に車止めを設置してクルマが進入しないようにしているのだと思う。
ただまあ、あえて「左右の見通しがきかない交差点の徐行義務」(42条1号)としたのは、
クルマが進行するにあたり、交差道路を歩道だと断言できないでしょ。
子供が乗る自転車を「小児用の車」(歩行者)と断定できないから歩行者と考えるしかないのと同じで、少なくともクルマ側からは「歩道」とは断言できない。
だから「交差点」とみなし、「左右の見通しがきかない」のだから徐行義務があると考えることになる。
第四十二条 車両等は、道路標識等により徐行すべきことが指定されている道路の部分を通行する場合及び次に掲げるその他の場合においては、徐行しなければならない。
一 左右の見とおしがきかない交差点に入ろうとし、又は交差点内で左右の見とおしがきかない部分を通行しようとするとき(当該交差点において交通整理が行なわれている場合及び優先道路を通行している場合を除く。)。
少なくともこの時点では「左右の見通しがきかない交差点」でして、
急に徐行にはなれないし、どのみち横断歩道に対する減速接近義務(38条1項)も免れない。
交差点内にセンターラインもないので優先道路ではない。
で、他の報道をみると見通しが悪い交差点だという警察の発表を報じている。

結局のところ、自転車が下り坂でスピードを出して横断したとはいえ、加害車両側が徐行していたなら回避可能だった事故なのか?がポイントになりそうなのよね。
「歩道なのか?」を力説しても意味はなくて、仮に歩道だとしてもそれは結果論。
まあ、歩道だとは解釈できないと思いますが。
自転車が下り坂でスピードを出して横断したなら、自転車の運転方法に問題があるのは当たり前ですが、だからといってクルマ側の過失が消えるわけではない。
結局、「徐行していたか?」「徐行していたなら回避可能性があるのか?」がポイントになりますが、
前回記事に書いたように、最近の過失運転致死傷罪の考え方は、信頼の原則から直ちに予見可能性を否定して無罪にするわけでもなくて、

回避可能性の有無を重視しているように思われる。
この場合だと「徐行していたなら回避可能性があるのか?」が問題になりますが、
わりと大事なのよね。
横断歩道に対する減速接近義務と、左右の見通しがきかない交差点の徐行義務は。
やることをやっていて避けようがない事故だったなら自転車の一方的な過失になり得ますが、この事故ではどうだったのかはわかりません。
そもそも、この横断歩道に接近する車両が負う減速/徐行とは何キロくらいなんだろう。
10キロ程度?

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
交通規制情報をみると、なかなか出鱈目なことしてますね、ここらへん
バイパスに自転車通行止め掛けてるみたいですがぱっと見で標識は見当たらず。
普通自転車歩道通行可が全線にかかってますので側道ではなく歩道と認識してるような?
どちらも1971からのものなので道路構造がかわったのかな?
コメントありがとうございます。
たぶんそんなことだろうと思ってました。
とはいえ、公安委員会の決定を残したまま標識を撤去して規制効力を無くす場合もあるらしく。