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自転車が下り坂の脇道から横断して事故。

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自転車は横断歩道を横断することはできますが、「正常な交通を妨害するおそれがあるときは横断禁止」(25条の2第1項)なので無確認横断はダメなのよね。

ところでこの場合に運転者は過失運転致傷の被疑者になりますが、東京地裁 昭和47年8月12日判決を理由に信頼の原則…とはならなくて、

自転車の運転者が道路を横断するにあたつて横断歩道を利用する場合には、自転車に乗つたまま疾走し、飛び出すような型で横断歩道を通行することは厳にしてはならないというべきであつて、自動車運転者はこのような無暴な横断者はないものと信頼して運転すれば足りる。

東京地裁 昭和47年8月12日

昭和の時代には信頼の原則から直ちに予見可能性を否定して無罪にする傾向にありましたが、最高裁判所第二小法廷 平成15年1月24日あたりからは「減速していたとして回避可能だったか?」、つまり回避可能性を重視する傾向にあるとも言われる。
この判例は左右の見通しがきかない交差点で徐行義務を怠って進行したところに、交差道路から著しい高速度の車両が一時不停止で突っ込んできた事故。

かなり似たような事故の最高裁判所第三小法廷 昭和48年5月22日判決では信頼の原則から予見可能性を否定してますが、

本件被告人のように、自車と対面する信号機が黄色の燈火の点滅を表示しており、交差道路上の交通に対面する信号機が赤色の燈火の点滅を表示している交差点に進入しようとする自動車運転者としては、特段の事情がない本件では、交差道路から交差点に接近してくる車両があつても、その運転者において右信号に従い一時停止およびこれに伴なう事故回避のための適切な行動をするものとして信頼して運転すれば足り、それ以上に、本件Aのようにあえて法規に違反して一時停止をすることなく高速度で交差点を突破しようとする車両のありうることまで予想した周到な安全確認をすべき業務上の注意義務を負うものでなく当時被告人が道路交通法42条所定の徐行義務を懈怠していたとしても、それはこのことに影響を及ぼさないと解するのが相当である。

最高裁判所第三小法廷 昭和48年5月22日

最高裁判所第二小法廷 平成15年1月24日判決は「徐行していたとして回避可能性に疑問」として無罪に。

被告人が時速10ないし15キロメートルに減速して交差点内に進入していたとしても,上記の急制動の措置を講ずるまでの時間を考えると,被告人車が衝突地点の手前で停止することができ,衝突を回避することができたものと断定することは,困難であるといわざるを得ない。
そして,他に特段の証拠がない本件においては,被告人車が本件交差点手前で時速10ないし15キロメートルに減速して交差道路の安全を確認していれば,A車との衝突を回避することが可能であったという事実については,合理的な疑いを容れる余地があるというべきである。
以上のとおり,本件においては,公訴事実の証明が十分でないといわざるを得ず,業務上過失致死傷罪の成立を認めて被告人を罰金40万円に処した第1審判決及びこれを維持した原判決は,事実を誤認して法令の解釈適用を誤ったものとして,いずれも破棄を免れない。

 

最高裁判所第二小法廷 平成15年1月24日

最近の傾向をみても直ちに信頼の原則から予見可能性を否定していないので、運転レベル向上委員会が主張する「昭和47年東京地裁判決は今も重要判例」というのは彼のみの独自見解でして。

運転レベル向上委員会は判例の改竄をやめるべき。
運転レベル向上委員会が何度も判例の内容を改竄して解説している話は以前も指摘してますが、全く違う事故態様にして解説したり、「被告人の右折方法は道路交通法違反」と書いてあるのに「右折方法は適切でした」と解説したり、懲役22年の確定判決を「懲役6...

若干疑問なのは今回の事故現場は「左右の見通しがきかない交差点」扱いで徐行義務(42条1号)を負っていたのでは?というところ。
もちろんその場合、横断自転車側も同じく徐行義務を負う

 

自転車はノールック横断禁止(25条の2第1項)、クルマは減速接近義務(38条1項前段)になりますが、

進行道路の制限速度が時速約40キロメートルであることや本件交差点に横断歩道が設置されていることを以前から知っていたものの、交通が閑散であったので気を許し、ぼんやりと遠方を見ており、前方左右を十分に確認しないまま時速約55キロメートルで進行した、というのである。進路前方を横断歩道により横断しようとする歩行者がないことを確認していた訳ではないから、道路交通法38条1項により、横断歩道手前にある停止線の直前で停止することができるような速度で進行するべき義務があったことは明らかである。結果的に、たまたま横断歩道の周辺に歩行者がいなかったからといって、遡って前記義務を免れるものではない。もちろん、同条項による徐行義務は、本件のように自転車横断帯の設置されていない横断歩道を自転車に乗ったまま横断する者に直接向けられたものではない。しかし、だからといって、このような自転車に対しておよそその安全を配慮する必要がないということにはならない。

東京高裁 平成22年5月25日

減速接近していたか、減速接近していたとしたら回避可能性があったか次第になりそう。
結局、相手がどんだけ悪くても自分の過失を打ち消すことにはなりませんが、重要判例でもなんでもない判例を重視するのもいかがなものかと。

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