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元裁判官が指摘する「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」 。

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大川原化工機事件をきっかけに、元裁判官が勾留要件「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」を検討する論文が報道されている。

https://www.law.nihon-u.ac.jp/lawschool/academic_reserch/pdf/22/02_homu-kenkyu22.pdf

なかなか興味深いのはここ。

条解は,「被告人の不当な働きかけを受けた結果公判廷で異なる証言をして,これが終局的判断を誤らせるおそれがある場合」には,罪証隠滅の実効性が認められるというが,証人が検察官調書と異なる証言をしたときに,同調書が採用されないのは,証言よりも同調書における供述を信用すべき特別の情況(321条1項2号後段)が認められない場合である。終局的判断が誤ったというためには,この相対的特信情況の判断が誤りであることが前提になる。公判裁判所は,そのような脆弱なもので,それを心配して,保釈請求を担当する裁判官等は,保釈を控えるべきであるというのであろうか。しかも,今日,検察庁は,被疑者の取調べを行う際に,取調べの録音・録画をする設備を備えている。重要な証人について,相対的特信情況の立証に不安があれば,検察官は,この設備を活用した参考人の取調べを行い,相反状況が生じた場合には,録音・録画記録媒体の取調べを請求し,それにより再生される取調べや供述の状況に照らして検察官に対する供述が信用性の高いものであることを立証することができるはずである。そのような手段もあるにもかかわらず,相反供述が生じた法廷において,なお相対的特信情況が立証できないような事案であれば,検察官調書の証拠能力を否定した上で行われた終局的判断は正しいものというべきであり,被告人の不当な働きかけを受けた結果,終局的判断が誤ったということにはならないだろう。

被告人を釈放すると,検察官調書の原供述者に不当な働きかけをする可能性があり,その結果,働きかけを受けた者が,公判廷において虚偽の証言を行う可能性があり,そうすると,裁判官が相対的特信情況の判断を誤って終局的判断が誤ったものとなる可能性がある,という多段階にわたる因果の系列において,それぞれの「可能性」がはたして高いものといえるだろうか。それぞれの乏しい可能性を掛け合わせていった結果,釈放された被告人による罪証を隠滅する行為によって終局的判断が誤ったものとなる可能性がどれほどあるというのだろうか。
それにもかかわらず,不同意とされた検察官調書の原供述者たる証人が,公判期日において,検察官調書と異なる供述をして,「終局判断を誤らせるおそれがある」から,それを避けるため,裁判所が,被告人の身柄の拘束を継続することは,比例原則を満たすもので憲法34条の趣旨に反しないといえるのだろうか。

筆者は,裁判官時代,勾留,保釈,その裁判に対する準抗告・抗告等の事件を担当した際,判決の宣告のような重みを感じながら,比例原則を踏まえた処理をしてきたかというと,正直なところ,そうではない。冒頭の二つの冤罪事件で保釈請求を却下した裁判体に自分が入っていたとしても全くおかしくないと感じる。本稿は,その反省の上に立つ。

元裁判官が書いた論文が注目されてますが、あえてちょっと思うこと。
日本は推定無罪が働かない国と揶揄されますが、逮捕、勾留した以上は「悪い奴に違いない」みたいなスタンスで警察も検察も捜査する。
逮捕令状が「自動発券機」と揶揄されるのもそうだし、大川原化工機事件にしても保釈請求を認めなかったのは裁判所なのよね(保釈請求に反対していたのは検察官としても)。

 

メディアにしても「逮捕=悪確定」みたいなスタンスで報道するし、何を勘違いしてるのか「第一当事者と判断したから現行犯逮捕した」などと全く関係ない話をする人まで出てますが、なかなか興味深い論文なので気になる方はどうぞ。

 

大川原化工機事件ってあれだけ身体の状態が悪化していても「罪証隠滅のおそれがある」として保釈請求が棄却されてましたが、日本の話なのか北朝鮮の話なのかすらわからない。

コメント

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