自転車が歩道で事故を起こして、さらに逃亡したらしい。

下り坂とは言え、「歩道に立っていた女性と衝突」だし見通しが悪いわけではないので自転車が著しい前方不注視だったのではないかと思われますが、ちょっと不思議なのはこの歩道には「普通自転車通行指定部分」がある。
普通自転車通行指定部分は白線と自転車マーク(路面標示)のみで成立しますが、一応は道路交通法上、歩行者は普通自転車通行指定部分をできるだけ避けて通行するように努めなければならないとしている。
第十条
3 前項の規定により歩道を通行する歩行者等は、普通自転車通行指定部分(第六十三条の四第二項に規定する普通自転車通行指定部分をいう。第十七条の二第二項において同じ。)があるときは、当該普通自転車通行指定部分をできるだけ避けて通行するように努めなければならない。
では事故になったときに10条3項を理由に過失相殺するかというとそれはまた別問題でして、歩行者が普通自転車通行指定部分を通行していたからといって即座に過失相殺事由とはしていない。
特に今回のように「歩道に立っていた(自転車の進路に直前進入したわけではない)」+「見通しがいい直線」+「被害者が高齢者」であることを考えると、過失相殺事由にはならない可能性が高そう。
被疑者が発見されたなら、重過失傷害罪と救護義務違反の併合罪として起訴されることになると思われますが、問題なのは被疑者が見つからなかった場合。
自転車による事故は自賠法の対象ではないため、加害者不詳だと政府保障事業による補填もない。
ところがややこしいことに、違法モペットが同じ事故を起こした場合には、加害者が不詳、もしくは加害者が自賠責保険に未加入でも政府保障事業により被害者には「自賠責保険相当」の支払いがあるという…
ちなみに普通自転車通行指定部分を通行する際には必ずしも徐行である必要はないにしろ、現実には18条2項の問題があるから徐行義務を負うことが多いと思われる。
第十八条
2 車両は、前項の規定により歩道と車道の区別のない道路を通行する場合その他の場合において、歩行者の側方を通過するときは、これとの間に安全な間隔を保ち、又は徐行しなければならない。
田舎道ではなく街中のようだし、防犯カメラの解析を進めていると思いますが、自転車の場合は被疑者の特定がやや困難なのよね。
ちゃんと前を見て運転しないとダメだし、ましてや逃げちゃダメとしか言えない。
最近こういう話についてやたらと人身傷害特約をプッシュする人がいますが、あれは保険屋の宣伝なんですかね?
事故を起こさないことが重点的になるべきところ、保険屋のCMみたいになっていますが…
この場合だと「ちゃんと前をみて安全確保しろ」。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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