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左方優先はあまり重視されてない。

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ちょっと前に左方の左折車と右方の直進車の事故について、道路交通法上は左方優先(36条1項1号)ですが、民事過失相殺上は左方優先をほとんど反映してないと書きましたが

左方優先は「直進」の場合のみで、左方車が左折の場合には当てはまらないか?
以前、左方優先について同幅員で優先道路(交差点内にセンターラインあり)がない場合、左方車が左折の場合であっても左方優先が適用されると書きましたが、下記弁護士サイトを理由に、「左方車が左折の場合には左方優先は働かない」と主張する人がいるらしい...

左方からの左折の場合には、直進の場合とは異なり、他の車両の進路上に進路変更していくため、他者の進路を妨害する度合いが大きいこと、また左折車Aが左折を終え、加速し、直進車Bと等速度になるまでには時間がかかること、さらに、実際の運転慣行としても、交差道路から直進車Bが接近してきた場合には、左折車Aは直進車Bに道を譲るのが通常であることに照らすと、直進車同士の場合よりも左方優先を制限的に解するのが妥当と考えられる。

別冊判例タイムズ38号

なぜこうなるかは判例タイムズに書いてあるけど、要は民事の過失相殺は「違反割合」ではなく「過失割合」なので過失(不注意)の程度を比較考量する。
なので実情に合わせてモディファイさせてますが、そもそも左方優先って大要素ではない。

 

一例として熊本地裁 昭和63年8月9日。
十字路における出会い頭事故で、双方直進です。

原告(左方車) 被告(右方車)
道路幅員 3.6m 3.3m
通行状況 東から西へ比較的低速で進行するについて、右方の交差道路の見通しがきかないのに、徐行して安全を確認することなく、そのまま交差点に進入し交差点内で被告車と衝突する直前まで被告車の存在に気づかなかつた 北から南へ進行するに際し、左方の見通しがきかないのに、徐行して安全を確認することなく、低速で交差点に進入したところ、原告車が交差道路を左(東)から進行して交差点に進入して来るのを認め、急制動したが及ばず、被告車の前部中央附近を原告車の右側前ドアの前部附近に衝突させ、その場に停止したが、原告車はそのままやや左斜前方寄りに進行して、交差点南西角のブロツク塀に車体の左側面を衝突させて停止した
過失割合 40 60

基本過失割合通りの判例ですが、裁判所の判示はこちら。

本件事故発生については、原被告双方に、見とおしの悪い交差点を通行するについて徐行義務を怠り(道交法42条)、交差道路を通行する車両の有無を確認して、安全な速度と方法で進行しなかつた不注意がある(同法36条4項)ことが明らかであるが、被告の進路はより狭い道路であるから、交差点前で一時停止をする等一層の注意運転が望まれること及び座席の位置からして左方道路の車両をより早く確認できることを考慮し、過失割合は原告4に対し被告が6とするのが相当である(なお、道交法36条1項1号の規定は、交通整理の行われていない交差点を通行する車両等の先順位(すなわち、どちらの車両が先に交差点を通過するか)を定めたものであつて、そのまま直ちに、本件の如き交差点内における出会頭の衝突の場合における、双方の過失割合の判定基準となるものではない。)。

熊本地裁 昭和63年8月9日

さて。
左方優先という優先原則があるにもかかわらず、民事過失割合はほぼ五分五分です。
なぜかというと、メインディッシュは徐行義務だから。

 

左右の見通しが悪い交差点に進入しようとする車両からすると、交差道路から進入してくる車両があるか、交差道路から進入してくる車両が左から来るか右から来るか、もしくは車両ではなく歩行者なのか(38条の2では「横断歩道がない交差点での歩行者優先を規定している」)はわからないのだから、

 

左方車と衝突したのは結果論です。
左方車優先を遵守しようとしたら徐行してない限り不可能なんですよ。

 

そしてそれは左方の原告車にしても同じで、たまたま右方から進入車がいたから結果的優先権があるけど、左右の見通しが悪いのだから、左方から進入車があるか右方から進入車があるかは結果論。

横断歩道で歩行者優先を遵守しようとするには、相応に減速していたから遵守できるわけでして、無減速接近したらそもそも一時停止できるわけがない。

 

徐行していたからはじめて左方優先が適用されるのであって、徐行してないのに左方優先も何もないわけ。
メインディッシュがなんなのか?という話になる。
そういう理由から左方優先は民事過失割合ではほとんど重視されてないし、刑事においても問題となる過失は徐行の有無であって左方優先ではない。

 

けど世間の支配的思考は「どっちが優先か?」ですよね…
結果論で語る人が多いけど、だから事故るのよ。

 

結果論で考える人はなかなかヤバくて、例えばこれ。

幼児等通行妨害禁止とは…
なんかまたおかしな解説をしてますが、幼児等通行妨害禁止規定(71条2号)。運転レベル向上委員会より関係ない部分を省略します。(運転者の遵守事項)第七十一条二 監護者が付き添わない児童若しくは幼児が歩行しているときは、一時停止し、又は徐行して...

幼児等通行妨害禁止義務は、幼児等の注意能力が劣ることから、

(運転者の遵守事項)
第七十一条
二 監護者が付き添わない児童若しくは幼児が歩行しているときは、一時停止し、又は徐行して、その通行又は歩行を妨げないようにすること。

不測な事故を防止するために、幼児等を発見し通行を妨げる可能性がある場合に予め徐行又は一時停止することを求める。
「クルマは急に止まれない」という当たり前な物理法則に対応した規定です。

単に「その通行を妨げてはならない」と規定する場合と異なり、その歩行を妨げるおそれがあるときは、徐行か一時停止することを要する。

浅野信二郎ら、「交通実務教本 事例中心」、警察時報社、1968

ところが結果論の思考回路だと「徐行や一時停止の必要はなかったけど結果的に妨げたから71条2号の違反」という支離滅裂な話をしてしまう。
結果的に妨げないために徐行や一時停止を求めているのに、いったいどういう思考回路なのやら。

 

左方優先にしても、他者を優先するためには、もしくは自分が優先権を得るためには徐行してないと不可能なので、徐行せずに左方優先を主張するというのは、「痴漢したけど妊娠しなかったからいいじゃないか」レベルの思考なのよね。

 

なんか違うかも笑。

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