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幼児等通行妨害禁止とは…

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なんかまたおかしな解説をしてますが、幼児等通行妨害禁止規定(71条2号)。

運転レベル向上委員会より

関係ない部分を省略します。

(運転者の遵守事項)
第七十一条
二 監護者が付き添わない児童若しくは幼児が歩行しているときは、一時停止し、又は徐行して、その通行又は歩行を妨げないようにすること。

歩道が広く一時停止や徐行の必要性はないとしながらも、通行又は歩行を妨げたのだから違反が成立するという内容で解説している。

 

これは支離滅裂にも程があるというか、

(運転者の遵守事項)
第七十一条
二 監護者が付き添わない児童若しくは幼児が歩行しているときは、一時停止し、又は徐行して、その通行又は歩行を妨げないようにすること。

この規定を解釈するとこうなる。

この規定の内容は昭和38年改正以前の71条3号(現38条1項)と同じ。

 

○昭和35年

(運転者の遵守事項)
第七十一条
三 歩行者が横断歩道を通行しているときは、一時停止し、又は徐行して、その通行を妨げないようにすること

通行又は歩行を妨げないための方法として一時停止又は徐行の選択的義務を課しているのだから、「一時停止や徐行の必要はない」(71条2号の義務がない場面)と自ら説明しながらも71条2号の違反になるというのは支離滅裂すぎる。

 

下記のように分解したほうが分かりやすくなるかも。

(運転者の遵守事項)
第七十一条
二 監護者が付き添わない児童若しくは幼児が歩行しているときは、一時停止して、その通行又は歩行を妨げないようにすること。

「又は」

(運転者の遵守事項)
第七十一条
二 監護者が付き添わない児童若しくは幼児が歩行しているときは、徐行して、その通行又は歩行を妨げないようにすること。

この規定はいうまでもなく幼児等の動きが不測な者との事故を未然に防止するためにあるのだから、通行又は歩行を妨げる可能性がある場合に、車両に予め一時停止又は徐行の義務を課して事故発生を防ぐもの。
このように歩道が広く、歩道上の車道寄りには植栽帯があり歩行者との間隔が十分確保される幹線道路で幼児等通行妨害禁止義務違反が成立するとなると、そもそもこのような道路の歩道上に監護者を伴わない小学生が歩いていたときには一時停止又は徐行する義務を負っていたことになるわけで、

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このような道路にて、歩道に「監護者を伴わない小学生」が歩いていたときに、「事故発生とは関係なく」一時停止又は徐行の義務があると解釈する人はいない。
71条2号の解釈を間違っているし、そもそも関係ないのよね。

 

これが仮にですよ。
小学生が「横断しようとしていた」(横断予見性)のであれば話は別。

 

この人の話って、起きた結果から逆算して法律を強引に当てはめているだけで(そもそも一時停止や徐行の必要性はなかったと解説しながら71条2号の違反が成立するというのは矛盾している)、道路交通法の概念は違うのよね。
複数車線の幹線道路で歩道の幅員も十分あり、歩道の車道寄りには植栽帯があることから、第1車線を通行する車両と歩道通行者の間には十分な側方間隔が保たれる。
71条2号を問題にするなら、その状況において、監護者を伴わない小学生が歩いていたときに一時停止又は徐行(71条2号)をすべきだったか?の話になる。

 

だって要件に当てはまるケースについて二者択一の義務を課していて、結果的に妨げなかったからという理由で、遡って一時停止又は徐行の義務がなくなるわけではないのだから。
それを「必要性はない」としながら違反が成立するとはいったい…

 

なお、事案はだいぶ違うもののこのような判例がある。

原判決の挙示する証拠によれば、被告人は、原判示(もつとも、本件起訴状記載の公訴事実を引用。)のとおり、普通乗用自動車を運転して、本件事故現場付近道路(幅員約7m)に時速約40キロでさしかかつた際、前方約60mの地点左側に、被害者ほか一名(被害者の兄当時10才であつたA)の児童が遊んでいるのを見かけ、同兄弟の右側を通過しようとしたのであるが、このような場合、自動車運転者としては、警音器を吹鳴してこれに注意を与えるなり、同人らの不測の行動に備えて、何時でも停止あるいは避譲できる程度に減速徐行する等の適切な措置を講ずべき業務上当然の注意義務があるのにこれを怠り、同人らの動静に細心の注意を払わず、ただ時速約25キロに減速したのみで、漫然進行をつづけた過失により、僅か約5mの至近距離に迫つたとき、それまで自己の運転する車両に背を向けていて、全くこれに気付かなかつた被害者が、いきなり右斜め前方にかけ出したのを認め、急遽右にハンドルを切り、かつ、制動をかけたが間に合わず、遂に自己車両の左側前部を被害者に衝突させて同人を前方にはねとばし、本件事故を発生させたことが明瞭である。そして、原判決によれば、原審弁護人の主張に対する判断として、原判決は、「被害者が、当時僅か7才の幼児であつたために、自動車による交通の危険の有無を判断する能力を十分具有し、それに従つて自己の行動を制し得る者とは必ずしも考えられず、時には本能的に自己の遊びにかまけて、異状な行動に出る危険性を多分に有するものと認められ云々」と説示し、更に、「被害者が、被告人の走行車を認めてそのまま静止し、何人もその安全であることを信頼し得る状態にあつたものが、不意に突然車の直前に走り出で、または物の陰から急に車の前面にとび出したという類いのものではいなこと明らか云々」とも説示していることは所論のとおりであるが、なお、「当時被告人が、原判示のような注意義務さえ尽せば、被害者も被告人車両に気付き、本件事故の発生を未然に防止し得たと思われる」旨、よくその具体的事実に即して記述していることをうかがい得るであるから、これを目して、「原判決は、一般論に依拠し、それ以上に現場の状況についての具体的事実を検討することなく弁護人の主張を排斥した」旨非難する論旨は、その主張自体において首尾一貫せず、あるいは原判決を正解しないものといわなければならない。のみならず、所論のいわゆる「信頼の原則」なるものは、近時高速度交通機関や医療行為その他の社会的効用の高い危険業務が拡大するにつれて意識にのぼり、その注意義務の負担に合理的限度を設けることを要請されるにいたつた結果、これらの危険業務に携わる者に課せられるべき刑罰法令上の注意義務の具体的内容を定める基本原則として、次第に容認されつつあるものであり、右のような沿革上、その多くは、鉄道職員または医療関係者などのように共同して危険防止にあたり、協力関係にある者相互間の、事故防止のために負担すべき注意義務について論ぜられているのである。されば、本件のように自動車交通事故のなかでも、特に車両相互の関係でもない、ただ、無心に路上ないしその付近で遊ぶ頑是ない幼児に対する関係の事案においては、もともとこれを適用し難い要素が存するのであつて、すなわち、この原則が適用されるためには、何よりもまず、その前提として、行為者たる被告人にとつて、信頼されるべき他の交通関係者たる本件被害者の危険回避措置を期待し得る状況がなければならなかつたにかかわらず、本件においては、何らそのような状況は見当らず、よしんば所論のように、本件被害者が、かねて学校ないし家庭で、道路交通の安全に関する特別の教育をほどこされ、あるいは道路における通行や遊戯につき再三の注意を受けていたとしても、また、これまで本件に事故現場付近路上で、交通の妨害にわたる挙動に出で、運転手などから叱責されるようなことがあつたとしても、本件当時、これらの事実を未だ確知する由もなかつた被告人としては、世上よく「子どもを見たら赤信号と思え。」といわれているのに、本件被害者が、それゆえに道路の交通秩序を守り、自動車の交通による危険の有無をよく理解して行動する能力があるものと考え、本件事故回避の措置に出るべきものと期待し得るはずもなかつたわけである。とにかく本件は、既に約60mの手前から被害者らの遊んでいるのを望見した被告人が、特にそのうちの被害者は背を向けて被告人車両の進行に全く気付かぬままの状態であつたのであるから、容易に不測の行動に出ることを予想されたにもかかわらず、ほんの一挙手一投足の労を惜しみ、警音器を吹鳴する等の注意義務を怠つたことが主因となつて発生した事故と認められるのであつて、いわゆる「信頼の原則」を適用すべき余地は全く存しないこと明らかである。所論指摘の当高等裁判所の二つの判例も、事案を異にし、いずれも本件に適切といい難いから、被告人の本件過失責任を否定し、原判決の事実誤認を主張する論旨は、採るを得ない。

東京高裁 昭和42年9月21日

「幅員7mの道路」で被害者が「遊んでいた」ことを60m手前で確認しながらも、時速40→25キロに減速した程度で漠然進行したことを過失としてますが、警音器を吹鳴して警告するか、不測な事態に備えるため徐行すべきだったとしている。
ただまあ、今回の報道にある事故は歩車道の区別がある幹線道路なのであって、事案が違う。

 

けど気になるのは、運転レベル向上委員会の話って「結果的に事故ったから違反」みたいな主張が多いこと。
それは交通安全とは何ら関係ない処罰願望や、法律とは関係ない「叩き」の話でしかなくて、71条2号を問題にするのであれば歩道にいる小学生を視認可能になった時点で同義務(一時停止又は徐行)を負うか?が問題になるのに、事故詳細は不明ながらも事故に至った結果を以て違反と捉えている。

 

その発想だと「同種事故を防ぐ」ことには繋がらないのよね。
飛び出しについて回避可能性があったかの話であれば、ちゃんと前をみて急ブレーキを掛けたかの問題でしかないけど、71条2号の目的は「飛び出しなど予測つかない行動をする児童の保護」なので、問題になるのは「このような幹線道路の歩道に小学生が歩いていたときに、車両運転者は前方注視以外に一時停止又は徐行すべきだったのか?」なのだから。

 

当事者目線で、見える範囲でどういう義務を負ったかを考えないと、法とは関係ない加害者叩きにしかならんのよ。

 

例えばこのように、植栽帯がある歩道を小学生のみが歩いていたときに、

反対車線通行車はともかくとして、直近車線を通行する車両には「一時停止又は徐行」(71条2頃)があるのか?
飛び出しなど不測な動きをする者を保護する趣旨なので、実際に飛び出してきた「後」の話ではなく、飛び出す「前」の話なのね。

 

ちなみに71条2号に関する判例は少ない中、小学生が被害者になる事故はまあまあある。
なお、帽子が飛んだタイミングと被害者が飛び出したタイミングは不明なので、わからないものはわからない。

 

いったい彼は何を勘違いしているのだろう。

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