こちらの事故。
起訴状から事故当時の状況が見えてきました。男はシートベルトを着用していませんでした。そして、運転支援装置を起動させた上で、靴を履き替えようと助手席の下に置いていたサンダルに左手をのばしました。その際、体は大きく倒れる状態に。右手で握っていたハンドルを急に右に切り、事故を起こしたとされています
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過失運転致死傷罪(上限、拘禁刑7年)で起訴されてますが、このような事故の場合にお決まりの「執行猶予」がつくのか?というところが気になる人が多いのかなと。
結論からいうと、執行猶予はつかない可能性が高い。
理由ですが、今回の事故は死亡者1名、重症者1名という被害の大きさに加え、「ながら運転の末の操作ミス」という悪質性を考えると、判例相場は実刑判決。
要はこの手の事故はながらスマホと同等に捉えるべき悪質性で、運転中に靴を履き替える必要性がないのよね。
ながらスマホは悪質性が高いと評価され、過失犯のうちでも故意犯に近い捉え方をされる。

一例として運転中にゴミ箱に爪切りの爪を捨てるため脇見になり赤信号を看過して事故を起こした名古屋地裁 令和4年11月22日判決がありますが、
執行猶予無しの5年。
量刑が長めな理由は違反歴(ながらスマホ)が複数あり、反省がないという事情を考慮したと考えられる。
道路交通における他者の安全を確保するという自動車運転者が果たすべき最も基本的な責務に対して無頓着な態度、すなわち道路交通に対する規範意識の乏しさが招いた事態といえるから、本件は、近時、非難の厳しい携帯電話等への脇見事案と質的に変わるものではなく、単なる過失とは一線を画す、重過失の範ちゅうに属する事案ともいえる 。
名古屋地裁 令和4年11月22日
爪切りの爪を捨てるため脇見運転したことを「ながらスマホ運転」と質的に変わらないと評価している(この判例は過去にながらスマホで検挙歴があることも踏まえた量刑になった点に注意。ただしそれは執行猶予の有無ではなく刑期で評価されている)。

長いか短いかの量刑はともかくとして、この事案は執行猶予がつかない可能性が高いと言えるでしょう。
刑期が長いか短いかについてはいろいろ思うところはありますが、そもそも。
一般人のほとんどはたとえ一年であろうと自由を拘束されて塀の中で暮らすなんて勘弁だと思う。
問題なのはこのような事故を起こせば執行猶予がつかない可能性が高いことを知っているか?ではなくて、そもそも事故を起こさない「はずだ」という根拠のない自信があるからこうなる。
その意味では、量刑を重くしたとしても抑止力になるかは疑問がある。
結局、量刑を重くしたところでほとんどの人には「自分には関係がないこと」としか捉えないのではないか?と思ってしまうんだけど、
個人的には量刑についてはあまり興味がないです。
というのも、罰金刑だろうと拘禁刑だろうと、やるべき注意義務は何も変わらないのよね。
民事もそうだけど、例えば信号無視して他人を負傷させたとする。
たまたま軽症で100万以下の賠償になることもあれば、重篤な後遺症を残して一億を越えることもある。
やるべきことはどちらも「信号遵守」に変わりないのよね。
起きた結果の大きさは単なる結果論だし、一億超だから注意義務が大きい、100万以下だから注意義務は軽微とはならない。
そう思いません?
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。



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