この人はなぜこのようなガセネタを流すのか理解に苦しみますが、
こういう書き方をすると、「自転車だ」と思う人が増えると思います。
「原動機付自転車」と「自転車」まったく違い、前者はオートバイの仲間です。
「普通自転車(ペダル付き電動アシスト自転車)」とは異なりますから、自転車道は通行不可となり、標識にある「自転車を除く」の範囲外になります。
— 都内のメリダパートナーショップ「サイクルショップマティーノ」 Eバイクの試乗車を6台常設 (@mps_mattino) August 15, 2025
この人がリンクを貼っているものは特定小型原付(型式認定取得)。
特定小型原付は自転車道を通行可能。
時速6キロモードにする必要もない。

第十七条
3 特定小型原動機付自転車(原動機付自転車のうち第二条第一項第十号ロに該当するものをいう。以下同じ。)、二輪又は三輪の自転車その他車体の大きさ及び構造が自転車道における他の車両の通行を妨げるおそれのないものとして内閣府令で定める基準に該当する車両(これらの車両で側車付きのもの及び他の車両を牽けん引しているものを除く。)以外の車両は、自転車道を通行してはならない。
「自転車を除く」の補助標識は「普通自転車と特定小型原付を除く」という意味だと標識令に規定されているのだから…
つまり、普通自転車が一方通行規制の対象ではない場合には特定小型原付も一方通行規制の対象ではない。

※この標識は「普通自転車と特定小型原付以外は通行(逆走)禁止」という意味。
道路法でいう「歩行者自転車専用道路(自転車専用道路等)」については、自転車以外の軽車両、特定小型原付、農耕作業車が通行可能。

○道路法施行規則
第四条の十五 法第四十八条の十五第一項の国土交通省令で定める車両は、自転車以外の軽車両(道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第二条第一項第十一号に規定する軽車両をいう。)、特定小型原動機付自転車(同法第十七条第三項に規定する特定小型原動機付自転車をいう。)及び道路運送車両法施行規則(昭和二十六年運輸省令第七十四号)第二条の小型特殊自動車である農耕作業用自動車とする。
特定小型原付のルールって、実は「自転車の欠点」を改善してるのよね。
ナンバーと自賠責保険を必須にしたことで、事故が起きたときにひき逃げされても特定しやすくなる上に、被害者には最低限の補償が用意されている。
最初から青切符を導入した点については、自転車に導入するために実証実験の意味合いがあると考えられる。
そしてスピードリミッターで制御することで他の車両とは違う方面でリスクを低減させたと言えますが、
要は特定小型原付って、車両の保安基準や管理(ナンバーや自賠責保険など)は原付寄り、通行ルールは自転車寄り。
自転車の通行ルールと異なる点は、歩道通行要件くらいなのよ。
普通自転車が歩道通行できる要件には「やむを得ないと認められるとき」があるけど、特定小型原付には「やむを得ないと認められるとき」がない。
特定小型原付が歩道通行できる要件は「自転車通行可」の標識がある場合限定で、しかも時速6キロモードにしなければならない。
そのほか細かい部分を言えば、普通自転車は自転車道がある場合には通行義務があるけど、特定小型原付は通行義務がない(通行自体は可能。17条3項)。
思うんだけど、何かを批判する際には批判対象を正確に理解してからすべきなのでして、ろくに調べもせずに思いつき程度で語るのはご法度だと思う。
ところで特定小型原付の登場を「規制緩和」と捉えて批判する人が多いんだけど、深く考えると特定小型原付の目的は「巷に溢れた違法モペットや違法電動キックボードを売れにくくして、特定小型原付を選ばせたい」のだと思う。
モペットや電動キックボードについては、元々きちんと保安基準を整えナンバーを取得し、自賠責保険に加入してヘルメットをかぶり免許を持っていたら原付(今の一般原付)として合法だった。
しかしインターネット通販で購入してナンバーも取得せずノーヘル無免許で安易に高速度で走るバカが多発した。
この状況に対し「ヘルメットなし!免許なしで合法なんです!」という特定小型原付を創設したことで、違法モペットや違法電動キックボードを選ぶよりも特定小型原付を選ぶほうがメリットがあるよね、として「釣った」。
ノーヘル無免許で合法なんです!(けど時速20キロまでしか出ない)というのは、違法モペットや違法電動キックボードを市場から追い出すための一つの方策と考えられ、現に特定小型原付が登場したことに合わせて、通販会社に対しそれらモペット等の販売に対し圧力をかけた。
要はこれ、「市場に溢れた小型モビリティを特定小型原付に再編したい」→「仮にナンバー未取得やおかしな走り方をする奴がいても時速20キロまでしか出ないからマシ」という話だと思うのよね。
違法モペットさんは平気で時速50キロとか出ちゃうから、無免許ノーヘルマンが乗り回すのは勘弁ですが、特定小型原付なら時速20キロまでしか出ないからまだマシであると。

そういう意味でもほぼ自転車同様の通行ルールになっているのでして…
一方通行規制にしても、「自転車を除く」と書いてあれば自転車同様に特定小型原付が逆走可能だし、自転車道を通行可能にするために、特定小型原付のサイズ要件を普通自転車と同じにした(なぜなら自転車道は狭いから)。
政策としてはかなり興味深い話なのに、正確に理解してから批判する人が少ないのは驚きしかない。
政策の効果が問われるのは数年先と考えられますが、特定小型原付の施行については検討段階で疑問があるのは確かなこと。
例えば実証実験(要免許)から特定小型原付に移行する段階で、警察庁は免許の有無と違反の件数について実験している。
内容はこう。

免許取得者50名と免許を持たない者50名を、電動キックボードで運転免許センターのコースを走らせて違反数をカウントしたもの。
採点項目はこちら。

まずは平均違反行為回数。

「免許あり」の平均違反回数が26.6回、「免許なし」は69.94回。
2.6倍の差がありますが、16歳~17歳については免許の有無で違反回数がさほど変わらないのに対し、「18歳~30代」と60歳以上はなかなかの差が出ている。
採点項目に基づいて点数化したのがこちら。

50人の延べ違反点数の合計は、免許ありが36585点、免許なしが120665点と大きな差があり、具体的違反行為としては「指定場所不停止」(いわゆる一時停止違反)、信号無視、右側通行(逆走)が多い。
これらからすると、免許の有無で違反行為数はだいぶ違うようにみえますが、
運転免許を受けている者、運転免許を受けていない者ともに、指定場所不停止、信号無視、右側通行、右左折方法違反、歩行者保護不停止等の順で点数が高かった。また、違反行為別に見ると、多くの違反では、運転免許を受けている者とそうでない者とで点数にさほど差が見られなかったが、指定場所不停止や信号無視、右側通行などについては、点数の開きが認められた(表4)。このうち、信号無視と右左折方法違反については、二段階右折に対する理解の不足が要因の一つとして考えられる。
③ 結論
②ウの採点結果をみると、運転免許を受けている者と受けていない者との間で、一部の項目を除き、運転者の運転行動に全体的には大きな差はないと言うことができる。
個々の違反行為では大きな差が生じているものもあるが、これらはもっぱら交通ルールに関する知識の差が要因となっているものと考えられる。https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/mobility/interim-houkoku.pdf
警察庁は「一部を除けば免許の有無で違反回数に大差なし」と捉えましたが、一部には大差が出まくっているのでして…
この結論の導き方にはムリがあるし、コーヒー噴き出すレベルとしか言いようがない。
やや急ぎ過ぎた感はあるし、「特定小型原付の登場は違法モペットや違法電動キックボードを駆逐したか」については今後検証されるべきですが、
少なくとも交通ルールについては警察が公式サイトで解説しているのだし、それすら調べずにガセネタを流すのは社会悪なのよ。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。


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