歩道から横断歩道を横断した自転車(7歳)と左折車の事故(いわゆる左折巻き込み)について解説してますが、
運転レベル向上委員会から引用
判例タイムズ等の実務目安と言いながら、判例タイムズ等とは全く違う過失割合を解説するのがわからない…
この場合、基本過失割合は自転車:左折車=10:90です。
自転車横断帯がある場合は5:95。
児童修正として自転車側に有利に5~10%修正するので、現実的なところは5:95もしくは0:100。
示談交渉では、加害者側が折れて0:100になることもわりと普通。
どちらにせよ自賠責保険内であれば全額支払われる。
民事の基本なんですが、歩道通行自転車も車道通行自転車もひっくるめて「交差点態様」を適用する。
道路交通法上、歩道から横断歩道に行くのは「横断(25条の2)」になりますが、民事はそのようには考えない。
基本過失割合はあくまでも交差点での左折巻き込み態様を適用する。
ところで、運転レベル向上委員会は「親が悪い」という恐ろしい発言までしてますが、7歳の注意能力なんてたかが知れているのでして。
凄まじい結果論の話ばかりしてますが、外見上7歳が乗る自転車が「軽車両」なのか「小児用の車(歩行者)」なのかなんて判別できるわけもなく、判別できない以上は一時停止義務を負うのよね。

そりゃそうですよね。
運転者が判別できない以上は歩行者とみなすしかないのだから。
そもそも、「横断しようとする歩行者」の有無を確認しないと横断歩道を通過できないわけで、歩行者がいないかを確認してないから自転車を巻き込んでしまう。
要はこのタイプの事故は、仮に歩行者だったとしても危険に曝しているわけで、歩行者だったか自転車だったかは結果論の話に過ぎない。
ちなみにヘルメットの有無は過失割合には影響しないのが普通。
本件においては、双方に過失が認められるが、本件事故が横断歩道上の四輪自動車と自転車の事故であること、原告が本件事故当時8歳であったこと、原告が横断歩道の横断を開始する時点で被告自動車が同横断歩道に入っていたと考えられること等の事情を考慮し、原告の過失を10%とするのが相当である。なお、原告は、本件事故当時ヘルメットを装着していなかったと認められるが、児童のヘルメット装着が定着しているとはいえない情勢に照らすと、この事情は過失割合の認定においては影響を及ぼさない。
大阪地裁 令和元年10月31日
児童・幼児の保護責任者に対し、なお、道路交通法63条の11(本件事故当時は平成25年法律43号による改正前の同法63条の10)は、努力義務として、当該児童・幼児のヘルメットの着用を定めているにすぎないし、本件事故当時、児童・幼児の自転車乗車時のヘルメット着用が一般化していたとも認められないから、ヘルメットを着用していなかったことを不利に斟酌すべき過失と評価するのは相当でない。
神戸地裁 平成31年3月27日
そもそもクルマの下敷きになって頭蓋骨骨折した事案について、ヘルメットをかぶっていたら防げたのか?という疑問すらありますが、
不思議なのは、運転レベル向上委員会が主張する過失割合はどこから引っ張ってきたのだろうか。
この手の事故の示談交渉で加害者側が譲歩せざるを得なくなるのは、
②どのみち自賠責保険の範囲内に収まりそうなら、5%も0%もほぼ変わらない(自賠責保険の減額が掛からないので、物損にしか影響しない)。
こういう事情から加害者側がわずかな過失割合を争うメリットはほとんどないのよね。
とはいえ、この手の事故について「親が悪い」と語るほうが問題。
小学生を大人が守るのは当たり前な話だし、親がいくら指導してもその通りに動くわけもないのだから、第三者も含め社会全体で子供を守るのが当たり前だと思うんだけど、
そもそも基本過失割合すら違うし、おかしな解説をして何をしたいのだろう。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。



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