独自論を語る人って情報を選別しているとしか言いようがないんだけど、
昭和38年3月4日広島高裁判例に「元来道路交通法における駐停車の観念は車輌
の通行を前提とするものであつて、通行し得ない場所における駐停車ということは
予想されないところであり」とあり、専用通行帯を走行できない車輌は、駐停車禁止と解釈すべきです。 https://t.co/mmOvaUtU34— キンゴ (@kin51110) August 4, 2025
国の回答はこちら。
質問第一一二号
安全で快適な自転車通行空間の整備の推進に関する質問主意書
三 自転車専用通行帯内に駐停車する車両を見かけることがあると聞くが、自転車が専用通行帯を通行できず、結果として車道を通行せざるを得ない状況は極めて危険である。米国においては、一般的に自転車を除く車両はバイクレーンを通行できないと認識しているが、自転車専用通行帯を通行して駐停車する車両に対する道路交通法上の解釈について、政府の見解如何。さらに、自転車以外の車両も自転車専用通行帯を通行することが可能との解釈がありうるならば、弱者保護の観点から、交通規則の見直しを検討する必要性について、政府の見解如何。
答弁書第一一二号
内閣参質一八〇第一一二号
平成二十四年五月二十五日自転車専用通行帯が設けられている道路の区間について、都道府県公安委員会が、同法第四条第一項及び第二項の規定に基づき、同法第四十四条の規定による駐停車禁止の交通規制を実施している場合は、当該道路の区間においては、車両は停車し又は駐車してはならず、同法第四十五条第一項の規定による駐車禁止の交通規制を実施している場合は、当該道路の区間においては、車両は駐車してはならないとされている。
警察庁においては、都道府県警察に対し、自転車専用通行帯を指定するに当たっては、自転車専用通行帯を指定する道路の区間における駐車需要、車両の交通量等を勘案しつつ、駐停車禁止又は駐車禁止の交通規制を実施する必要性についても適切に検討するよう指導しているところである。 安全で快適な自転車通行空間の整備の推進に関する質問に対する答弁書:答弁本文:参議院
駐停車禁止の標識又は駐車禁止の標識を立てた場合に駐停車又は駐車が禁止されると答弁している。
つまりこれら標識がないなら法47条に基づき「車道の左側端」に駐停車することになり、普通自転車専用通行帯が車道であることに何ら疑問もなく、歩道の縁石に近接した位置に駐停車することになる(標識がないなら普通自転車専用通行帯に駐停車可能)。
ところでこの人が挙げている広島高裁 昭和38年3月4日判決は、法47条2項(当時は48条1項)でいう「道路の左側端」に歩道を含むか?という争点においての説示です。
17条4項(当時は3項)カッコ書きに「歩道等と車道の区別がある場合は車道」とあることから、47条2項についても「歩道等と車道の区別がある場合は車道の左側端」と読むのが当たり前に思えるところ、
なぜか揉めている。
冒頭の投稿をした人は、なぜこれが論争になっていたのか知らないからおかしな切り抜きをして関係ない事案にまで当て嵌めようとしているのでして、
こういうのを見ていると、きちんと調べることが重要だし、専門書や通達など少なくとも10以上は見て考える癖付けが必要なのかなと思う。
なお17条4項が「歩道等と車道の区別がある場合は車道の左側端に駐停車」と規定する以上、広島高裁判決と今回の事例は前提が異なる。
では今回は宿題を。
法47条2項、17条4項からすれば47条でいう「道路の左側端」とは「歩道等と車道の区別がある場合は車道の左側端」と読むのが正当。
つまり歩道駐停車は禁止されている。
しかし最高裁判所第一小法廷 昭和39年8月13日決定以前は論争があった。
論争の原因はどこにあるのでしょうか?
ところで普通自転車専用通行帯がある場所は駐停車禁止又は駐車禁止又は「駐車方法の指定(白山通りのような)」があるのが通常なので、現実的に一般車両は自転車専用通行帯に駐車できません。
パトカーや選挙カーなど都道府県公安委員会規則により「標識駐停車禁止又は標識駐車禁止」から除外されている車両については、47条に従って「左側端に沿う」自転車専用通行帯に駐車することになる。
この人はずいぶん短絡的だなぁと思うのは、例えば車両通行帯がある道路においては第一通行帯と歩道の間、つまり車両通行帯最外側線の外は原則として通行できない(20条1項)。
ではそのような道路で、駐停車する際には「第一通行帯の中で左側端」に駐停車するの?
違いますよね。
この人は第一通行帯の中で左側端に沿う駐停車、つまり車両通行帯最外側線を越えずに駐停車することが正当で、車道の左側端に沿う駐停車を違法だと解釈するらしい(馬鹿馬鹿しくて話にならない)。
もちろん正解は車両通行帯最外側線にかかわらず、「車道の」左側端に沿う駐停車をすることになる。
広島高裁判決はこの件とは何の関係もないのでして、それは「そもそも論争の原因」を知り判決文を切り抜きせずに読めばわかる話ですが、この人は「普通自転車専用通行帯に駐停車させたくない」という目的ありきで情報操作と解釈をするから目が曇るのよね…
一、道路交通法(以下単に法という)第三章第一七条第三項において「道路(歩道と車道の区別のある道路に要旨>おいては、車道・以下この章において同じ。)」と規定しているのであるから、同法第三章第四八条第一項は、歩道と車道の区別のない道路を除外してみれば、「車輌は、歩道と車道の区別のある道路においては、車道の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないように駐車しなければならない」と規定しているのであつて、同条項は単に車輌の車道上における駐車の方法を規制したに止まらず、広く道路上における駐車の場所と方法とを規制したもので、歩道上の駐車を禁止する趣旨をも包含するものと解すべきことは、前記文理上明白である。のみならず、元来道路交通法における駐停車の観念は車輌の通行を前提とするものであつて、通行し得ない場所における駐停車ということは予想されないところであり、法が第一七条第一項本文において車輌の歩道上通行を禁止している以上、歩道上の駐停車をも否定する趣旨であると解すべきことは寧ろ当然である。
このことは、法が車輌の車道上の駐停車について場所方法に関し各種の規制を設けているのに反し、歩道上の駐停車について何らの規制を設けていないことからみても容易に理解し得る。法第四四条第四五条に駐停車を禁止する場所として歩道が掲げられていないことは、原判決の指摘するとおりであるけれども、それは右の如く車輌の歩道上通行を禁止しているので歩道上に駐停車することを予想していないためと考えられる。従つて車輌が歩道上に駐車することは、車道上における右側駐車、斜め駐車、二重駐車等とともに、車道の左側端に沿わない駐車として、それが他の交通の妨害となるか否かを論ずるまでもなく、法第四八条第一項違反の罪を構成するものというべきである。広島高裁 昭和38年3月4日
メインの「判断理由」を省いて「のみならず」以下を拡大解釈するのはあり得ない暴挙としか。
そもそも条文上は「駐車するときは、歩道と車道の区別があるときは車道の左側端に沿わなければならない」と規定しているのだから、車道である普通自転車専用通行帯を含めた車道と解するのは文理上明らかとしか言いようがないのよ。
政府(警察庁)も標識により駐停車禁止または駐車禁止にしたときには普通自転車専用通行帯に駐車禁止なんだと説明している通り。
そもそも一定の広さの路側帯の駐停車方法は「路側帯の中に入って」駐停車することを指示しているのだし(47条3項)、広島高裁判決がいう「のみならず以下」は既に前提を欠いているのよね。
なお路側帯が新設されたのは昭和46年。
路側帯は軽車両以外の車両の通行を禁止してますが、法は路側帯に入って駐停車することを要求している。
ところでこの手の主張をする人について危惧するのは「○○と解釈すべき」と言いながら根拠を伴わない点。
論理の飛躍で判例を拡張して解釈することは「根拠」ではない。
とりあえず言えるのは、国が示した公式回答とは異なる独自論に過ぎないし、専門書をみてもこの人の解釈通りに書いてあるものは見かけない。
好き勝手に解釈する人が絶えないから道路が危険になっていることくらい自覚したらどうなのか。
というのもこの人「路側帯通行自転車は三灯式信号に従う義務があるか論争」のときも、



赤信号は「停止位置を超えて進行してはならない」
停止位置は「停止線が設けられているときは、その停止線の直前」
自転車は、路側帯に停止線が設けられていないので、進行しても大丈夫。
歩行者も道路を横断していないので大丈夫。 https://t.co/xat9JjEKfj pic.twitter.com/91iXnFbIQn— キンゴ (@kin51110) November 9, 2024
施行令では停止線がない場合は交差点の直前と書いてあるのに、停止線がある場合のみを切り抜きして使っている。
| 信号の種類 | 信号の意味 |
| 青色の灯火 | 三 多通行帯道路等通行原動機付自転車及び軽車両は、直進(右折しようとして右折する地点まで直進し、その地点において右折することを含む。青色の灯火の矢印の項を除き、以下この条において同じ。)をし、又は左折することができること。 |
| 赤色の灯火 | 二 車両等は、停止位置を越えて進行してはならないこと。 |
備考 この表において「停止位置」とは、次に掲げる位置(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前)をいう。
一 交差点(交差点の直近に横断歩道等がある場合においては、その横断歩道等の外側までの道路の部分を含む。以下この表において同じ。)の手前の場所にあつては、交差点の直前
こういうのを「目的ありきで情報操作する人」と言わざるを得ないのでして。
カッコ書きを引用して本文を引用しないのは相当な悪意と言わざるを得ないんだけど、こういうしょーもない手口ばかり使う人が語る解釈なんてあてにならない。
停止位置は「次に掲げる位置をいう」が本文。
自分が気に入らない解釈なら、それが正当な解釈だろうとねじ曲げてしまう悪癖は慎むべき。
自転車専用通行帯に駐停車禁止にしたいなら、自転車道にするのも一つの方法だし、幅員の関係で双方向通行できないなら「自転車一方通行」の規制を掛けることもできる。
しかしそれをしてないということは、都道府県公安委員会規則でいう「標識駐車禁止から除外車両」や停車車両を考慮しているのだと捉えるしかないのよね。
しかし、この界隈の「気に入らない規定はねじ曲げる悪癖」はなんとかならんのか?
法を語るレベルにいない。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。


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