読者様から「運転レベル向上委員会の解説は間違いではないか?」と質問を頂いたのですが、
運転レベル向上委員会が「優先道路がある交差点」と説明している点ですかね。
運転レベル向上委員会はGoogleマップを元に解説しているので、Googleマップから検討してみます。
優先道路の定義は道路交通法36条2項にある。
この規定を読み解くと、①は滅多にないから置いといて、交差点内にセンターラインか車両通行帯境界線が必要だとわかる。
①道路標識等により優先道路として指定されているもの
②当該交差点において当該道路における車両の通行を規制する道路標識等による中央線が設けられている道路
③当該交差点において当該道路における車両の通行を規制する道路標識等による車両通行帯が設けられている道路
優先道路とは「当該交差点において当該道路における車両の通行を規制する道路標識等による中央線又は車両通行帯が設けられている道路」と規定されており、道路標識等により指定する場合すなわち優先道路となる道路の交差点の手前の地点に「優先道路」の指示標識を設置し、併せてこの道路と交差する道路の交差点の手前に、「前方優先道路・一時停止」の標識を設置して指定するものと、中央線又は車両通行帯境界線が交差点の中まで連続して設けられていることによって直ちに優先道路としての取り扱いを受けるもの、との二つがある。
交通法令実務研究会、「逐条道路交通法」、警察時報社、昭和62年
道路標示(中央線または車両通行帯境界線)による優先道路は、交差点の中まで中央線等が表示されている道路のことをいい
東京地方検察庁交通部研究会、「最新道路交通法事典」、東京法令出版、1974
さて広路車目線でみると、交差点内にセンターラインも車両通行帯境界線もないことは明らかなので、
広路車は左右の見通しがきかない交差点になるから徐行義務(42条1号)を負うことになる。
たぶん、運転レベル向上委員会の人は優先道路の定義を下記のように読み間違えていて、
②当該交差点において当該道路における車両の通行を規制する道路標識等による中央線が設けられている道路
③車両通行帯が設けられている道路
「又は」が何と何を結んでいるか読み取れてないのでは?
「③当該交差点において当該道路における車両の通行を規制する道路標識等による車両通行帯が設けられている道路」なので、当該交差点に車両通行帯の道路標示がなければ優先道路にはならない。
ただしこの場合広路車が負う徐行とは時速10キロ以下とまで解釈するのはムリがあり、時速15キロ程度でも徐行と言えるかと。
こういう事故って広路車と狭路車の両方が過失運転致死傷罪で起訴されることもあり、もちろん量刑で差はつくだろうけど、優先道路の定義を理解してない人は多いのよね。
なお、行政処分は両方ともに出る可能性がある。
ところで、このような事故を民事的に考えたときに、優先道路態様ではなく広狭態様になるかというとケースバイケースです。
というのも、民事責任上では公平の観点から、優先道路ではなくても優先道路態様の基本過失割合を適用することがあるのは各種解説書にある通り。
民事は道路交通法を厳格に解釈する必要はなくて、広狭態様より優先道路態様の方が適切と判断されることもある。
しかし、それは民事責任上の「当てはめ」の問題でしかなく、刑事責任上の概念とはズレが生じる。
ちなみに標識標示主義を採用しているため、
標識標示主義
交通に関する規制は、道路標識または道路標示によつて行なうことを原則とし、道路標識または道路標示による規制が行なわれていない場合に限り法定の規制に従うことをいう。
警視庁通達甲(交.総.法)第115号
昭和46年11月30日https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/about_mpd/johokoukai_portal/kunrei/kunrei_kotsu.files/015.pdf
磨耗により道路標示が消滅した場合には標示の効力を失う。
けど、法に従って(各種解説書を参考にしながら)考えれば、広路車目線では優先道路ではないのは明らかとしか言いようがないんだけど
優先道路の標示(交差点内にセンターラインか車両通行帯境界線)があるのは、徐行義務がなくなるサインなのよね。
逆にいえば交差点内にセンターラインも車両通行帯境界線もないなら、徐行義務があることになる。
「又は」を読み間違えているのでしょうけど、この人は執務資料等を読まないのだろうか?
刑事責任や行政処分を回避するには、優先道路がない以上、徐行することが大事なのは言うまでもない。
現実に取り締まりはしないだろうけど、事故になったなら話は別なのよね。
自分を守るためには広路車もきちんと道路標示をみて徐行することが大事ですが、そもそも優先道路だと仮定しても、過失修正の説明が間違えているのよね…
相手がどうのこうのの前に、自分がきちんとすることが大事。
それは今回のケースでいう狭路車目線でも同じで、一時停止して広路車妨害しないことが大事なのは言うまでもなく。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。



コメント
当該交差点において当該道路における車両の通行を規制する道路標識等による中央線
当該交差点と当該道路の通行規制するのは一時停止だと思います
道路標識等による中央線ってのが理解できません
〜によるで一区切り付いてるのをくっつけてるからおかしくなってると思います
昔、大阪の門真運転免許試験場でオートバイの限定解除しました
その時の今は無き試験コースは一時停止後スラローム、Uターンで一本橋に行きました
一旦停止前は交差点なのでセンターライン無いです
2コースは一本橋終わったら右折で対向とラインがクロスしますが対向に一時停止有るので一本橋の方が優先でした
ローカルルールとは言え運転免許試験場やってるのは警察で道交法無視は無いと思います
コメントありがとうございます。
道路交通法では標識や標示を設置することを「交通規制」と呼ぶため、センターラインを書くことは規制に当たります。
また勘違いされているようですが、優先権がある側を「優先道路」と呼ぶのではありません。
交差点内にセンターラインか車両通行帯境界線がある道路を優先道路と定義しているのでして、この場合、非一時停止側の広路に優先権があることには違いありませんが、優先道路ではないので徐行義務があります。
一旦停止前でなく先です
すみません