ちょっと興味深い記事がありまして、
前夜飲酒し、酒が残っていた状態で運転したとして酒気帯び運転で検挙された。
これについて懲戒免職処分としたものを裁判所が取り消したという事案です。
今回は懲戒免職の話ではありません。
酒気帯び運転罪が「不起訴」になっている件。
報道によると、前日は午後11時までに焼酎の緑茶割りを6、7杯飲み、朝にはアルコールが残っている認識がなかった。
この人は午前11時15分頃に運転中に止められて、1リットル中0・2ミリグラムのアルコールを検出し酒気帯び運転罪で検挙されたと。
基準値をオーバーしているのは証拠上明らかだと思いますが、なぜ不起訴になるか?
三 第六十五条(酒気帯び運転等の禁止)第一項の規定に違反して車両等(自転車以外の軽車両を除く。次号において同じ。)を運転した者で、その運転をした場合において身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあつたもの
要は117条の2の2第1項3号の罪は故意犯の処罰規定で、過失処罰規定はない。
身体にアルコールが残っている認識がなかったなら故意が否定されるので、形式的には酒気帯び運転ですが罪にはならないのよね。
もちろん、「酒が残っているとは思わなかった」と供述すれば故意が否定されるわけではない。
飲酒量、経過時間、社会通念など総合的にみて未必的にせよ身体にアルコールが残っている認識がなかったと考えられるなら、罪には問えないことになる。
12時間経過している点を考えると、検察官は「故意の立証ができない」と考えた可能性が高い。
ところで、不起訴になればお咎め無しで終わるというわけではない。
おそらく運転免許に係る点数は加点されたと思われる。
施行令の規定上、酒気帯び運転で加点するには故意は必要ない。
2 「酒気帯び運転(〇・二五以上)」とは、法第六十五条第一項の規定に違反する行為のうち身体に血液一ミリリットルにつき〇・五ミリグラム以上又は呼気一リットルにつき〇・二五ミリグラム以上のアルコールを保有する状態で運転する行為をいう。
酒気帯び運転については「法65条1項の規定に違反し」になっているのに対し、救護義務違反の加点要件は「法72条1項前段に違反する行為」ではなく「117条1項又は2項の罪に当たる行為」としている。
117条1項又は2項の罪は故意犯の処罰規定だから、故意がない救護義務違反では加点できないことになる。
酒気帯び運転として加点するには故意過失を問わず65条1項に違反したなら可能ですが(もちろん基準値以上)、「アルコールが残っていないと軽信した過失」として酒気帯び運転の加点は可能なのよね。
なお、過失として評価できないなら加点も難しい。
道路交通は三段構えだと思っていて、一定の行為に対する「運転免許のコントロール」、一定の行為に対する刑事処罰(青切符対象なら反則金)、事故を起こしたときの刑事処罰とあり、全部別なのよ。
なお懲戒免職の類似事案として、長野地裁 平成24年11月30日判決(懲戒免職処分の取消)、東京高裁 平成25年5月29日判決(控訴棄却)があります。
事案の概要は、午後11時30分頃まで居酒屋で飲酒し、午前0時前頃に帰宅。翌朝6時30分頃起床すると、貴重品が無いことに気づき、車に乗って探しに出かけたが発見できず、交番に出向き遺失物届を出した。その際、警察官から酒のにおいを指摘され検査を受けたところ、呼気1リットルにつき0.3ミリグラムのアルコールが検知され、酒気帯び運転で検挙されたというもの。
同判決では、過失は軽微とはいえないが故意ではなく、事故を起こしたわけでもなく免職処分は甚だしく過酷であるとして懲戒免職処分を取消している。
なお「過失は軽微とはいえない」としている点に注意。
こういう事案から学べるのは、結局は「飲酒翌日に運転するのは検挙リスクを伴う」こと。
罪にならなかったとしても免許取消や懲戒免職処分になりうるし、処分取消訴訟で勝ったとしても、失う時間は大きいのよね。
ちなみにですが、処分取消自体は妥当と考えます。
免職にするほどの悪質性はないでしょう。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。


コメント
さすがに前日までは禁酒できないわ
飲む量多い人は大変だ
コメントありがとうございます。
まあ、事案の詳細をみれば処分取消は妥当なんですよね。