こちらの件。
この反則者がいう内容に比べると、警察の説明は辻褄が合わないし不合理に思える。
要は「反則者が一時停止中に自転車が横断歩道を使って反則者の前を通過した」なら、「自転車がブレーキを掛けなければ事故リスクがあった」とはならない上に、そもそも自転車について語る必要がないことになる。
ところでこの反則者の言い分をベースに考えたときに、警察が自主的に違反切符を取り消ししたり、証拠改竄を認めるわけもない。
そうなると裁判しかないけど、一番の問題は裁判が困難なところ。
行政訴訟法でいう「処分取消訴訟」(3条2項)という形態がありますが、同法でいう「行政処分」には「違反切符を交付すること」を含まない。
1 行政事件訴訟法にいう行政庁の処分とは、法令に基づく行為のすべてを意味するものではなく、行政庁が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいうものと解する(最判昭和39年10月29日・民集18巻8号1809頁参照)。
2 法は、自動車運転等の禁止の命令(法75条の2)、免許の取消し及び停止(法103条2項)、仮免許の取消し及び停止(法106条の2)等の各規定において、「政令で定める基準」に従うものと規定しており、法施行令は、上記各規定における「政令で定める基準」として、法、法施行令及び法に基づく処分に違反する行為を「違反行為」とし、個々の違反行為に所定の点数を付することとする累積点数制度を用いている。
しかし、同施行令の規定の仕方は、いずれも「違反行為をした場合において、その累積点数が別表…に掲げる点数に該当することとなったとき」というように、上記の各行政処分につき、累積点数それ自体を要件とはせずに、一定の点数に該当する個々の違反行為の存在自体を要件とした文言になっており、累積点数が一定の点数に達することが上記の各行政処分の要件となるものではないと解される。
また、法や法施行令によっても、累積点数を加算する行為については、これをその都度当該運転者に対して一般的に通知することとはされておらず、他の法令の規定に照らしても、このような通知の制度は設けられていないと解される。このことは、累積点数を加算する行為が当該運転者によって不服申立手続や訴訟で争われることを法が予定していないことを窺わせるものといえる。
3 このようにみてくると、累積点数を加算する措置は、公安委員会において各処分要件が整ったかどうかを画一的にチェックするための内部処理のための制度であって、それ自体は、国民の権利義務に何らの影響を与えるものではなく、したがって、行政処分には該当しないものと解するのが相当である。
4 原告は、累積点数加算の段階で行政処分性を認めてこれを訴訟で争えるように解しないと、その後の免許証の更新の際、優良運転者として有効期間5年の免許証の交付を受けられない不利益を被るなど、非常に不合理であると主張する。
しかし、優良運転者の認定基準は、法施行令33条の7により、各号に定める日前5年間において違反行為又は法施行令別表第2の2に掲げる行為をしたことがないこととされており、やはり累積点数が加算されたという事実が要件とされていない。優良運転者に該当する者が免許証の更新の申請に対して有効期間3年の免許証の交付を受けた場合には、その者は、この免許証の交付は、有効期間5年の免許証の交付を受ける法的利益を侵害するものであるとして、抗告訴訟を提起することもできるものと解するのが相当である。
また、免許取消し等の処分を受けた者は、当該処分直近の違反行為のみならず、それ以前の、公安委員会が累積点数算定の根拠としたすべての違反行為の存在を争うことができ、その場合、それらの違反行為についての第一次的な立証責任は公安委員会が負うこと、累積点数算定の基礎となる違反行為は、最後の違反行為があったとされる日を起算日とする過去3年以内
における違反行為に限られること(累積点数の定義については法施行令33条の2第1項1号イ参照。)からすれば、免許取消し等の処分を受けるまで累積点数の加算の当否を争えないものと解したとしても、必ずしも不合理とはいえない。
いずれにしても、原告の上記主張は採用できない。京都地裁 平成13年8月24日
※同種の判断は多数あり。
そうすると「当該反則行為によりゴールド免許から格下げになった場合」か「当該反則行為により免停か免許取消になった場合」じゃないと処分取消訴訟は提起できない。
| 処分取消訴訟 | 国家賠償請求訴訟 | |
| 提起できる条件 | ①当該反則行為によりゴールド免許から格下げされた
②当該反則行為により免停か免許取消になった |
公務員の故意又は過失により不利益を受けた場合 |
| 立証責任 | 違反事実について行政(警察)が立証する | 訴えを起こす人が警察官の故意又は過失を立証する |
| その他 | 当該反則行為以外にも違反があれば①は不可能 | ドラレコがない以上立証は困難 |
国家賠償請求訴訟だと、要するに警察官がウソの書類を作成したことを立証するしかなく、ドラレコがない以上立証は困難(しかも論点が「賠償義務があるか」になってしまう)。
処分取消請求訴訟は、既にゴールドではないならムリだし、他に違反があるそうなので、この違反が取消になったとしてもゴールドに戻らないのだからムリなのよ。
そして反則金を納付済みなので、起訴されて刑事訴訟で争う選択肢もない。
道路交通法違反の青切符って、実は争う「場所」が事実上無いに等しいのよね。
ところで、「横断歩道を横断する/しようとする自転車」は38条1項の対象ではないことは明らかですが、

なぜかこれを間違える警察官はそれなりにいる。
親方であるはずの警察庁が言っているにもかかわらず。
自転車に乗り横断歩道を横断する者は、この規定による保護は受けません。
法の規定が、横断歩道等を横断する歩行者等となっており、横断歩道等の中には自転車横断帯が、歩行者等の中には自転車が含まれまれているところから設問のような疑問を持たれたことと思いますが、法38条1項の保護対象は、横断歩道を横断する歩行者と自転車横断帯を横断する自転車であって、横断歩道を横断する自転車や、自転車横断帯を横断する歩行者を保護する趣旨ではありません。ただし、二輪や三輪の自転車を押して歩いているときは別です。
つまり、あくまでも、法の規定(法12条、法63条の6)に従って横断している者だけを対象にした保護規定です。
道路交通法ハンドブック、警察庁交通企画課、p2140、ぎょうせい
要はこの規定の趣旨は、横断義務に照応したもの。
昭和53年以前は自転車横断帯がないので、昭和53年以前の38条1項には自転車横断帯も自転車も書いておらず、横断歩道ー歩行者の関係しか書いていない。
その時代の立法趣旨がこれ。
注解道路交通法(1966年)にはこのように説明があります。
「横断歩道」とは、元来、歩行者の安全を図るための施設であり、また、それゆえこそ、歩行者は第12条第2項により、横断歩道のある場所の附近においては、その横断について道路を横断すべきことが義務づけられるわけであるから、これに対しては、車両等の運転者に対しても、歩行者が横断歩道により道路の左側部分を横断し、または横断しようとしているときには、その通行を妨げてはならない義務を課しておかないと、横断歩道を設置した意味が失われてしまうことになる。
注解道路交通法、宮崎清文、立花書房、1966
※当時の第12条第2項は現在の12条1項。
横断歩道を作って、歩行者に横断歩道を使う義務(付近にある場合)を定めた。
歩行者に横断歩道を使う義務を定めたのに、何ら優先保護されないなら誰も使わなくなる。
そうすると歩行者は好き勝手に横断し始めて横断歩道の意味がなくなります。
なので飴と鞭なのです。
「使うなら優先だよ!」という話。
昭和53年に自転車横断帯を新設し、自転車横断帯を使って横断する義務(63条の6、7)を規定した。
自転車横断帯を使う義務を課したのに優先されないなら意味がないので、それに伴い「自転車横断帯ー自転車」の関係を38条1項に追加しただけなのよね。
道路交通法38条1項は、「横断歩道又は自転車横断帯(以下・・・「横断歩道等」という)に接近する場合には当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下・・・「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。」と規定しているが、これは、自転車については、同法63条の6において、自転車の自転車横断帯による横断義務を定めていることに照応するものであって、自転車が、自転車横断帯の設けられていない交差点の横断歩道上を走行して横断する場合には当てはまらない
大阪地裁 平成25年6月27日
横断義務に照応した優先権を規定したのが38条1項。
しかし取り締まりする警察官でも知らない人はわりといるのが現実。
ちょっと前に、普通自転車専用通行帯を塞がない形での駐車を披露した警察官がいましたが、
パトカーが自転車レーンを避けて路駐をしてたので、警官の方に「こちらの停め方が正しい方法ですか?」と尋ねたところ、「前方の車の停め方が正しいと思われがちですが、本当はこちらが正解なんです」と教えていただいた。
だけど直感的には抵抗があるw pic.twitter.com/4spFPLyQv3— 最速配信研究会山崎大輔 制約理論と待ち行列理論による技術経営アドバイザリとエンジニア起業相談 (@yamaz) August 2, 2025

警察官ですらこういった間違いを起こす。
残念ながらこれが現実だし、路側帯通行自転車が従うべき信号にしても、普通に間違えるのよね。

藤吉弁護士もちょっと前に、38条の解釈を間違えた後に訂正してましたが、間違えることが悪なのではなくて、間違いを認めないのが悪だと思う。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。


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