運転レベル向上委員会の情報処理については以前から問題があることを指摘してますが、
運転者が逮捕されてないことから、クルマの信号が青だった可能性が高いと主張している。
もはや何を言ってるのか疑いますが、例えばこちら。

青信号の交差点を通過しようとした運転者が赤信号無視の横断歩行者と衝突した事故について、現行犯逮捕している。
しかも防犯カメラ映像で、被害者が自殺を図った疑いがあることを確認してから(なお過失運転致死罪は無罪で確定している。この件は「前方注視と制限速度遵守していれば事故は防げた」と検察官が主張したものの、要するにクルマが赤信号無視して横断歩道上に佇立していた被害者がクルマの進行に合わせて飛び出したならたとえクルマが低速であっても衝突するのだから、自殺の疑いがある以上回避可能性が認められないことになる)。
逆に池袋暴走事故については、運転者は赤信号無視して高速度で死亡事故を起こしましたが、現行犯逮捕も令状逮捕も行われなかった。
なお、過失運転致死傷罪で有罪になり、執行猶予がつかず収監されたのは皆さんご存知の通り。
これらの事実、現実から言えるのは、逮捕というのは「どっちが悪いか」なんて観点でするのではなく、あくまで法律に則り、証拠隠滅や逃亡のおそれがある場合にしているということ。
なお、下記事案では現行犯逮捕の違法性「も」争うようですが、

正直なところ、逮捕要件が「証拠隠滅や逃亡のおそれがある場合」である以上、被害者が自殺を図った疑いがあるにしても逮捕要件とはあまり関係がないと思う。
逮捕要件については、いわゆる令状逮捕について逃亡や証拠隠滅のおそれがあるときだと規定されてますが(刑事訴訟規則143条の3)
第百四十三条の三
逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない。
現行犯逮捕については規定がない。
しかし現行犯逮捕の場合も令状逮捕と同じく逃亡や証拠隠滅のおそれがないと逮捕要件を満たさないとするのが通説。
現行犯逮捕においても逮捕の必要性(逃亡または罪証隠滅のおそれ)が要件となるか否かについて検討するに、刑事訴訟法及び同規則には、逮捕の必要性を現行犯逮捕の要件とする旨の明文の規定が存しないことは、控訴人主張のとおりであるが、現行犯逮捕も人の身体の自由を拘束する強制処分であるから、その要件はできる限り厳格に解すべきであつて、通常逮捕の場合と同様、逮捕の必要性をその要件と解するのが相当である。
大阪高裁 昭和60年12月28日
※なおこの判例では現行犯逮捕の要件を満たさない違法な逮捕だったしている。
現行犯逮捕についても令状逮捕と同じく逃亡又は証拠隠滅のおそれがあるときに限定され、しかも現行犯逮捕の要件を満たさないのに逮捕した場合には国家賠償請求訴訟を提起されかねない。
「違法な逮捕」として訴えられたら負けるリスクすらあるのが現行犯逮捕なのに、ワケわからん独自解釈で現行犯逮捕しているわけがないじゃんね…
運転レベル向上委員会の人って先に結論を決めて、結論ありきで情報を集めるからこういう間違いが起きているのだと思う。
たまたま「被害者が赤信号、容疑者が青信号」のケースで現行犯逮捕しなかった事案を集めてきて、それを理由に「現行犯逮捕しなかったからクルマが青信号だった可能性が高い」と語るのは論理の飛躍でしかなく、現に「クルマが青信号/被害者が赤信号無視」でも現行犯逮捕した実例なんて普通にある。
持論に都合よく情報を探すからこういう間違いが起きてしまう。
なお歩行者が赤信号無視であっても、過失運転致死傷罪は成立しうる。
そして逮捕要件は過失の大小ではない。
「逮捕されてない」→「クルマが青信号だった可能性が高い」というのは、論理的におかしいのよね。
なぜなら「そのような視点で逮捕するわけではない」から。
法律も実務も理解してないからこういう解説をしてしまうのだろうけど、こういうYouTuberを規制することが必要なのではなかろうか。
運転レベル向上委員会の問題点は、持論に都合が悪い情報をシャットアウトして都合がいい情報のみにするところだと思う。
ちょっと前に書いたこちらにしても、

他人の主張内容を、持論に都合がいいように改変してますが、持論に都合が悪い話は取り上げない、もしくは改変しちゃうのよね…
現行犯逮捕の要件を知らないと、現行犯逮捕しなかった事案について「中国人だから」とか「神奈川県警の忖度」などとありもしない誹謗中傷を始めてしまう。

リンク先記事で現行犯逮捕しなかった理由はシンプルで、「容疑者が救急搬送されたから」に過ぎない。
しかし現行犯逮捕の要件も知らない人は陰謀論に走る。
過去にこのような重大な間違いをしておきながらいまだ反省も学習もないのは驚きしかないが、世の中を正しく理解しようとする人と、正しく理解しようとしない人では差が出るのよね。
現行犯逮捕の要件なんて多くの人は池袋暴走事故の件で学んだと思うけど、学べなかった人は相変わらず陰謀論に走るという典型例なのかもしれない。
そして、「現行犯逮捕=悪確定」みたいな風潮こそ改められなければならないと思う。
逆説的に「現行犯逮捕されてない=悪くない」と誤った考えに陥る人を誘発している。
これらから言えるのは、正しく理解することが大事だということ。
運転レベル向上委員会については、数々の判例改竄やら何をしたいのかわからないけど、そもそも運転レベル向上委員会が取り上げた事故については、詳細は全くわからないのよね。
わからないものを解説するなんて不可能なのよ。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。


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