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自転車への側方間隔はどれくらい空けるべき?判例を検討。

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先行する自転車を追い越し、追い抜きするときに、側方間隔が近すぎて怖いという問題があります。
これについて、法律上は側方間隔の具体的規定はありません。

(追越しの方法)
第二十八条
4 前三項の場合においては、追越しをしようとする車両(次条において「後車」という。)反対の方向又は後方からの交通及び前車又は路面電車の前方の交通にも十分に注意し、かつ、前車又は路面電車の速度及び進路並びに道路の状況に応じて、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。

28条4項をざっくりまとめると、「状況を見極めてよろしくやってくれ」というだけ。
自転車と車が言い争いしている動画をSNSでみかけますが、結局のところ

 

・自転車→「あぶねーだろ!」
・車→「当たってないじゃん!文句あるなら警察へ」
・警察→「まあまあ、今後は気をつけてね」

 

以上で終了します。
事故(非接触驚愕事故含む)以外では警察も注意止まり。
判例ではどのようになっているのか検討します。

判例の前に

判例の前に。

 

判例ですが、具体的に事故が起きた判例以外は見たことがありません。
単に危険だったという判例、つまりは道路交通法28条4項の違反についての判例は見たことがない。

 

28条4項は故意犯のみの処罰規定。
過失により危険な追い越しだった場合には70条(安全運転義務)の過失犯として建前上は処罰出来ますが、判例は見たことがない。

 

なので判例を見る際は、あくまでも具体的に事故が発生した事例と考えてよいかと。
つまりは業務上過失致死傷罪や過失運転致死傷罪の判例になります。

 

先に刑事事件の判例をまとめておきます。

裁判所 自転車の動静 車の速度 側方間隔 判決
広島高裁S43.7.19 安定 40キロ 約1m 無罪
東京高裁S45.3.5 安定 30キロ 1~1.5m 無罪
最高裁S60.4.30 不安定 約5キロ 60~70センチ 有罪
高松高裁S42.12.22 傘さし 50キロ 1m 有罪
東京高裁 S48.2.5 原付二種 65キロ 0.3m 有罪
仙台高裁S29.4.15 酒酔い 20キロ 1.3m 不十分
札幌高裁S36.12.21 安定 35キロ 1.5m 無罪
高松高裁S38.6.19 子供載せ 約42センチ 有罪
仙台高裁秋田支部S46.6.1 45キロ 20~40センチ 有罪
白河簡裁S43.6.1 安定 40キロ 70センチ 無罪
大阪地裁S42.11.21 55キロ 1m 有罪
金沢地裁S41.12.16 ややふらつき 30キロ 1m 無罪
広島高裁S32.1.16 安定 10キロ 50センチ 無罪
大阪高裁S44.10.9 酒気帯び蛇行オートバイ 40キロ 1m 有罪

※これらは側方間隔のみで有罪にしたわけではないので、具体的な状況は下記をご覧ください。

刑事の判例

側方間隔等についての概念(広島高裁S43.7.19)

まずは、追い抜き時の側方間隔について、基本的な概念を示した判例から。
ちょっと古い判例で、昭和43年7月19日 広島高裁。

自動車運転者が、先行自転車を追抜く場合には、該自転車の動静に注意し、これと適当な間隔を保持しつつ、安全を確認して進行すべき義務の存することは当然であるが、どの程度の間隔をもつて適当といえるか、又更に警音器を吹鳴して自転車搭乗者に警告を与え或いは減速して追抜きにでるべき義務が存するか否かは、両車の横の間隔その他その際の具体的状況に応じて定まるもので、一律には論じえない

 

昭和43年7月19日 広島高裁

この判例の詳細は後述しますが、多数の判例を見ている限り、概ね以下の要素により必要な側方間隔が決まるとみてよい。

①道路状況
見通しがいいか?交差点近くなど自転車の動きが読みにくい場所なのか?など。
夜間や天候なども。
②先行自転車の動静
ふらつきが見られるか、何らふらつきがなく進行しているか?
自転車が荷物を持ち片手になっているなど、ふらつくことが予見可能か?
③道路幅や対向車の状況など
④先行自転車の速度と、追い抜きする後続車の速度など

ふらついている自転車とまっすぐ進行する自転車では違うし、時速15キロの自転車を20キロで追い抜きするのと、40キロで追い抜きするのでも変わりうる。
なので何ら具体的な基準はありません。

約1mでの追い抜きを無罪とした判例

さっそくですが上で挙げた昭和43年7月19日 広島高裁判決から。
まずは状況をまとめます。

道路状況 直線・平坦で交差点ではなく見通し良好(朝)
自転車の動静 不安定な様子は全くなし。障害物もなし。
車の速度 約40キロにて追い抜き
側方間隔 95センチ以上

イメージはこんな感じ(距離感がおかしい点については苦情を受付していません)。

後続車が追い抜きしているとき、先行自転車(緑)が急ブレーキを掛けたため青自転車が衝突回避のために右に進路変更。
後続車の後フェンダー付近に衝突した事故です。

よつて接するに、自動車運転者が、先行自転車を追抜く場合には、該自転車の動静に注意し、これと適当な間隔を保持しつつ、安全を確認して進行すべき義務の存することは当然であるが、どの程度の間隔をもつて適当といえるか、又更に警音器を吹鳴して自転車搭乗者に警告を与え或いは減速して追抜きにでるべき義務が存するか否かは、両車の横の間隔その他その際の具体的状況に応じて定まるもので、一律には論じえないところ、本件についてこれをみるに、原判決挙示の各証拠によると、被告人は、自動車運転の業務に従事していたものであるが、原判示の日時ごろ、同判示のタンクローリーを運転して、時速約40キロメートルで、広島市(略)の舗装部分(有効幅員9m)左端より1.8ないし2m、中央線より43センチメートルのところを東より西に向けて進行中、前方約30mの同道路舗装部分左端から5、60センチメートル内側の地点を、同方向に向け先行自転車と約3mの間隔をおいて自転車で進行する被害者(年齢28)の姿を認めたものであること、被告人はそのまま直進して被害者の搭乗する自転車を追抜こうとしたのであるが、その際自車の後輪フエンダーが同自転車のハンドル右端に追突し、これがため被害者がその場に自転車もろとも転倒して、原判示の傷害を負つたものであること、同所附近の道路は、直線・平坦なアスフアルト舗装で、同舗装部分左側には幅約16mの非舗装部分があり、見通し良好で、交通瀕繁な場所であること、被告人が被害者の自転車を認めてから、これが追抜きを始めるまでの間、同自転車は先行自転車と前記の間隔をおいて、同道路上の舗装部分左端より約5、60センチメートル辺りを直進しており、被害者は熟練した自転車通勤者でその乗車態度にも不安定な様子は全く認められず、且つその進路上には何らの障碍もなく、分岐または交差する道路もなく進行中の自転車が急に停車または右折するようなことは通常は予想し難い場所であること、被告人は自車および被害者搭乗の自転車がともにそのまま進行すれば、同車に約1mの間隔を保つて、これを安全に追抜きうるものと考え、右追抜きにかかつたものであること被告人が認識、予見したとおりに両車が進行しておれば、右自転車のハンドル右側部分と被告人の車との間には、少くとも95センチメートル以上の間隔があつたと認められること、しかして原判示の追突は、被害者が、急ブレーキをかけた先行自転車との追突を避けようとして、とつさに自車のハンドルを右に切り、先行自転車の右側に出た直後に生じたもので、被告人は、右追突直後、自車の左バックミラーで路上に倒れている被害者の姿を認めたが、追抜開始前においては同人搭乗の自転車が先行自転車の右側に出るような気配も出かかつた状況も目撃していないこと、被告人運転のタンクローリー左側バックミラー辺より同車運転台横附近までの同車左側方の一部は、被告人の運転席からは視覚の達しない、いわゆる死角圏内にあり、その間を同車と約1mの間隔をおいて進行する自転車搭乗者の姿は容易に認めえないこと、その他記録上窺われる被害自転車の転倒位置・状態等からみて、同自転車に被告人運転のタンクローリー後輪フエンダー部分が追突したのは、同自転車が先行自転車への追突を避けようとして、右にハンドルをきつて、急に被告人の車の進行路上に進出したためで、しかもそれは、被告人の運転席からは、容易に認識しえない死角圏内のことであつたと認められるうえ、右のような交通瀕繁な市街地を通行する被害者としては、自車に後続し或いは自車の右側方を通過する多数の車輛のあることは、当然予想警戒すべきであつたと認められるのである。

 

以上認定のような具体的状況のもとでは、被告人が被害自転車を安全に追抜きうるものと考えたことも首肯しうるところであり、且つ被害者搭乗の右自転車追抜き中に、被害自転車の先行自転車が急停車し、ために被害自転車が突如として先行自転車の右側に出て被告人の車の進路上に進出接触する危険のあることまで予見すべきであつたとし、予見義務違反ありとするのは、酷に失するものというべく、かような状況のもとでは、被告人が警音器を吹鳴して被害者に警告を与えず、或いは減速して追抜きの挙に出なかつたとしてもそのことをもつて、直ちに被告人に自動車運転者として責むべき過失ありと断じ、本件事故の刑事責任を問うことは失当としなければならない。

 

昭和43年7月19日 広島高裁

以上の理由から無罪とした判例です。
左側に16mの非舗装部分があるというのはよくわかりませんが、あくまでもこの道路状況、自転車の動静、車の速度など全て含めた状態では約1mの側方間隔での追い抜きは問題なかったとの判断です。

1~1.5mの間隔を空けた追い抜きは正常とした判例(東京高裁S45.3.5)

この判例は昭和45年3月5日 東京高裁。
自転車ではなく原付に対する追い抜きの事故。
詳細がやや不明な点がありますが、こんな感じです。

自転車、原付、車の順で進行していた。
車が先行する原付を1~1.5m空けて追い抜きしようとしたところ、原付が自転車を追い越すために進路変更したことにより起きた事故です。
原付が進路変更したとき、後続車との距離は約4m。

道路状況 不明
原付の動静 追い越し開始以前は不明
車の速度 約30キロにて追い抜き
側方間隔 1~1.5m

原判決は、被告人が原付の右側を追い抜くに当り、同原付の前方及び同車の動静に十分注意し、かつ、その右側に間隔をとり進路の安全を確認しながら進行して、事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのに、これを怠り同人の右側に近接して漠然進行した過失があると認定しているが、被告人は前記の如く原付の右側に、1mないし1.5mの間隔をとって道路センターライン寄りを直進して原付を追い抜こうとしたものであって、まず、この場合の追い抜きの方法としては正常なもので、特にこれを非難すべき筋合は認められない。

 

昭和45年3月5日 東京高裁

この判例では、車の追い抜き方法は問題がないとし、原付が突如割り込むように追い越しのために進路変更したことが原因としています。

大型貨物自動車が60~70センチの側方間隔で追い抜きしたことを、追い抜きを差し控えるべきと判断した判例(最高裁S60.4.30)

この判例は狭い道路において大型貨物車が自転車を追い抜きした事故です。
そもそも、大型貨物車が通行禁止の道路だったこともありますが。

道路状況 幅4mの道路(大型貨物車通行禁止)
自転車の動静 高齢者で左右に揺れて不安定な様子を確認していた
車の速度 約5キロにて追い抜き(警音器を鳴らし、自転車は有蓋側溝上に進路変更)
側方間隔 60~70センチ

事故現場は車道幅員3.38m。

時速50キロで通行し、自転車に対しクラクション。

自転車が有蓋側溝に避譲したので側方間隔60~70センチ、時速5キロで追い抜き。
不安定な状況で倒れた。

時速約40キロメートルで大型貨物自動車(車幅2.47m、車長8.57m)を運転して東進中、前方道路左側を同方向に足踏み二輪自転車で進行している被害者(当時72歳)を発見したこと、その付近は、公安委員会が午前7時から午後7時まで大型貨物自動車の通行を禁止しておる道路であり、道路の幅員が約4mと狭いうえに、同人が老人であつて、やや左右に揺れて不安定な感じがしたことから、被告人はその場での追い抜きを差し控え、二回警音器を吹鳴したのみで、約5mの間隔を保つたまま約50m追従したこと、被告人は、道路左側に接する側溝が有蓋となる部分に差しかかる手前で、再び警音器を吹鳴して、道路左側を走行中の被害者の進路を、道路上から有蓋側溝上に進路変更をさせ、同人の自転車ハンドルの右グリツプの先端と被告人車との間に約60センチメートルの間隔をとつて、その右側を時速約5キロメートルの低速で並進をして追い抜きを開始し、サイドミラーで被害者の様子をうかがいつつ約13.4m進行した時に、それまで被告人車よりも遅い速度で並進しつつあつた被害者が、突然にふらついて被告人車の方に倒れかかつてきたので、直ちに急制動をかけ、約1m進行して停止したこと、被害者がそのようにふらついて倒れかかる直前の時点では、同人の自転車ハンドルの右グリツプの先端と被告人車との間に約70センチメートルの間隔が保たれていたが、被告人は、路上に転倒した被害者の上半身が被告人車の左後輪前のアンダーアングル(防護柵)の下に入りこんできたためにこれを回避することができず、左後輪で被害者の胸部を轢圧し、公訴事実記載のように傷害を負わせ、そのため死亡させた

(中略)

このような側溝の蓋の上を自転車が安全に通行できるとはみられず、ましてその自転車の側方を、大型貨物自動車が60ないし70センチメートルの近接した間隔をとつて追い抜くことは、両側からはさまれた形になり、過度の緊張感を与えることになつて危険であるとみられること、被害者は、前記のとおり被告人から警音器を吹鳴されて道路上から有蓋側溝上に進路を変更させられたのであるが、その地点より約20m東方(進行方向)には、前記ブロツク壁が切れて空地に通ずる広い入口があり、また道路の反対側(南側)は、道路幅を広げた待避所になつており、そこでは安全に追い抜くことができるのであるから、被害者もそのような場所で被告人車を避けようとしていたものとみられ、有蓋側溝上の走行という事態は、同人にとつては、警笛の吹鳴によりやむをえずとつた避譲の措置であつたとみられるところ、被告人としては、その当時、格別急ぐ必要がなかつたのであるから、被害者に対しそのような避譲の措置を無理にとらすことなく、安全な場所に至るまで追い抜きを差し控えることが極めて容易にできたこと、被害者が転倒したのは、被告人車を避けて緩やかに進行していた際に、前記のとおり約2センチメートル高く出ていて、少しぐらついている蓋にハンドルをとられて運転の自由を失い、周章狼狽して自転車を支える余裕もなく、自転車に乗つたまま路上に倒れたことによるものとみられるが、同人のその場所での転倒は、前記のような追い抜きの状況のもとにおいては、普通にありうることとして当然に予測可能であること、以上のような事実が認められる。

 

右認定事実によると、その付近は道路の幅員が狭く、有蓋側溝上に進路を変えて避譲した被害者が、自転車の安定を失つて転倒する危険が十分に予測されたのであり、かつその約20m先には安全に避譲できる場所があつたのであるから、自動車運転者としては、追い抜きを暫時差し控えるべき業務上の注意義務があつたというべきであるところ、被告人は、被害者が転倒する危険を全く予測せず、あえて無理な追い抜きをしたために、側溝の蓋に自転車のハンドルをとられて運転の自由を失い、狼狽して自転車に乗つたまま路上に転倒した被害者を自車左後輪で轢圧し、その結果、同人を死亡させたというのであるから、被告人の右業務上の注意義務違反による本件業務上過失致死の公訴事実は、優に肯認することができるといわねばならない。

 

昭和59年1月24日 高松高裁

なお、最高裁も同判決を是認しています。

 なお、原判決の認定によると、被告人は、大型貨物自動車を運転して本件道路を走行中、先行する被害者運転の自転車を追い抜こうとして警笛を吹鳴したのに対し被害者が道路左側の有蓋側溝上に避譲して走行したので、同人を追い抜くことができるものと思つて追い抜きを始め、自車左側端と被害者の自転車の右ハンドルグリツプとの間に60ないし70センチメートルの間隔をあけて、その右側を徐行し、かつ、被害者の動向をサイドミラー等で確認しつつ、右自転車と並進したところ、被害者は、自転車走行の安定を失い自転車もろとも転倒して、被告人車左後輪に轢圧されたというのであるが、本件道路は大型貨物自動車の通行が禁止されている幅員4m弱の狭隘な道路であり、被害者走行の有蓋側溝に接して民家のブロツク塀が設置されていて、道路左端からブロツク塀までは約90センチメートルの間隔しかなかつたこと、側溝上は、蓋と蓋の間や側溝縁と蓋の間に隙間や高低差があつて自転車の安全走行に適さない状況であつたこと、被害者は72歳の老人であつたことなど原判決の判示する本件の状況下においては、被告人車が追い抜く際に被害者が走行の安定を失い転倒して事故に至る危険が大きいと認められるのであるから、たとえ、同人が被告人車の警笛に応じ避譲して走行していた場合であつても、大型貨物自動車の運転者たる被告人としては、被害者転倒による事故発生の危険を予測して、その追い抜きを差し控えるべき業務上の注意義務があつたというべきであり、これと同旨の見解に立つて被告人の過失を肯認した原判断は正当である。

 

昭和60年4月30日 最高裁判所第一小法廷

冒頭の広島高裁判決でも示されてますが、追い抜き時の側方間隔については「一律に論じ得ない」。
道路状況、先行自転車の動静など様々な要素から検討されること。

 

通行禁止の道路を通りクラクション鳴らして避譲させたとしても、不安定で通行に適さない側溝に、さらに元々不安定な走行を確認していた高齢者なんだから追い抜きするのを差し控えるのは当然だろ!という判例です。

 

「自転車を追い越し、追い抜きすることを差し控えるべき注意義務違反」はいかなるときに認定されたか。
以前書いた内容の続きです。 昭和60年4月30日 最高裁判所第一小法廷決定では、「追い抜きを差し控えるべき業務上の注意義務があつた」としています。 刑法上、「追い越し、追い抜きを差し控えるべき注意義務違反」を認定した判例がどれくらいあるのか...

 

側方間隔1mでも有罪にした判例(高松高裁S42.12.22)

次は高松高裁、昭和42年12月22日判決。
側方間隔が約1mでも有罪にした判例です。

道路状況 見通しのよい昼間
自転車の動静 自転車後部荷台に荷物をつけ、片手に日傘をさし、片手でハンドルをもつて不安定な操縦をしていた
車の速度 大型貨物自動車、時速約50キロ
側方間隔 約1m

一審は無罪にしていますが、高松高裁は有罪にしています。

被害者は、不安定な状態で自転車を片手運転しており、しかも、前記のような坂道を登つていたのであるから、よろけたり、蛇行したりして、他の近接して走行する車両の進行を妨げ、接触事故を起したりする危険性が充分推認でき、現に蛇行するなど不安定な走行状態がみられたのであるうえ、被告人が本件事故現場に至る以前に前記(三)のように自車を道路中央部に寄せていても、(なお、被告人は、センターラインを越えた付近まで自車を寄せて走行し、道路南端と約2.8mの距離を保つていたことを考えると、被害者との間隔保持の点では被告人に注意義務違背があつたものとは解し得ない。)そのまま進行すると被害者を追い越す際の被害者との間隔は約1mしかないことになるのであるから、追い越す以前に警音器を吹鳴し、被害者に後続車のあることを知らしめ、道路左側にできるだけ避譲させるなどして、安全な状態で追い越しができるような態勢をとらしめると共に、自らも減速徐行し、被害者の走行状態に注意して臨機の措置をとり得るよう注意すべき業務上の義務があるものというべきところ、被告人は、前記のように警音器を吹鳴せず、減速徐行しなかったし、前記(三)のように同方向に進行する被害者を前方に発見しながら、前方道路を横断する警察官に気をとられ、再び被害者に目を向けた直後に、被害者が前記(四)のように急に右のハンドルを切つて道路中央に進出して来たためその衝突を避け得なかつたものである以上、被告人の右各業務上の注意義務違背にもとづく本件業務上過失致死の公訴事実は優に肯認できるといわなければならない。

 

昭和42年12月22日 高松高裁

この判例では側方間隔は問題にせず、減速しなかったことと警音器吹鳴義務違反を問題にしています。
警音器吹鳴義務違反というと、道路交通法54条1項の「道路標識がある場所で鳴らさなかったこと」のほか、業務上過失致死傷罪における注意義務としている判例は多数あります。

 

車が自転車を追い越すときに、クラクション(警音器)を鳴らすのは違反なのか?
先日書いた記事で紹介した判例。 自動車運転者が自転車を追い越す場合には、自動車運転者は、まず、先行する自転車の右側を通過しうる十分の余裕があるかどうかを確かめるとともに、あらかじめ警笛を吹鳴するなどして、その自転車乗りに警告を与え、道路の左...

 

判例上、自転車の動静にふらつきが見られる場合には追い抜きにあたり警音器を吹鳴すべき業務上の注意義務を認めている判例はあります(例 東京高裁 昭和55年6月12日など)。

 

明確に先行自転車がふらふらしているなら、かなり側方間隔を空けても自転車がどのような動きをするか予測不能なため警音器の使用を限定的に認めていると考えられますが、客観的な不安定性が見られない場合には否定されます(例 奈良地裁葛城支部 昭和46年8月10日)。

 

まあまあ古い判例なので、側方間隔を問題にしてない点は差し引いて考えたほうがよいかと。

バスが至近距離で自転車を追越しした判例(高松高裁S38.6.19)

バスが自転車を至近距離(約42センチ)で追い越しし起きた事故判例です。

道路状況 約5m幅の橋
自転車の動静 自転車後部に4歳の子を同乗
車の速度 不明
側方間隔 約42センチ

被害者は、被告人の運転するバスが被害者の運転する自転車の右側(自転車の右把手とバスの左側面との至近距離は約42センチ位)に迫って追越しにかかられ、被害者の左側は自転車の左把手から約50センチの間隔で橋の欄干(高さ約80センチ)に遮られて左方に避譲する自由を奪われ、しかも自転車の後部荷台には同時4歳になる次女を乗車させていたことが認められるのであるから、被害者がバスと橋の欄干の間に挟まれ恐怖狼狽の余り自転車の把手操作に動揺を来しやむなく咄嗟に下車の処置を措ったと認めるのが相当であって、かかる場合、被害者に下車しないでそのまま真直ぐ進行を求めることは難きを強いることというべく、被害者が前記所論のような供述をしていることは右認定を妨げるものではない。
およそ、自転車の運転者は歩行者とは異なり、背後から自動車に追い越されもしくは自動車と対向して離合する場合には、自動車の速度とそれとの間隔の如何によっては、周章狼狽して自転車の把手操作を誤ることのあるのは経験上明らかであるのみならず、本件においては被害者は自転車の後部荷台に幼女を同乗させていたこと前記説示のとおりであるから、危険発生の蓋然性がより高度であったことは多言を要しないところである。

 

被告人は、水道橋の橋上左側を前記説示のような状態で自転車を運転して被告人のバスと同一方向に西進している被害者をその20m位手前の地点で現認し、しかも右橋上の幅員は僅か約5mに過ぎない狭い場所であるにもかかわらず、被害者を追越しにかかったことが認められ、元来、自動車の運転に従事する者は通行の人車等に危害を加えないよう交通の安全を保持するため万全の措置を講じつつ自動車の運転をなすべき業務上の注意義務のあることは条理上当然のことであるから、被告人としては、自己の運転するバスをできる限り右側に寄せ(被告人が被害者を追越したときのバスの右側面と水道橋の北側欄干との間隔は、約1mあったことが認められる)、被害者の運転する自転車との間隔を十分保持し、被害者の動静を仔細に注意し、臨機の措置を講じ得るよう減速して交通の安全を確保しながら被害者を追越すべき業務上の注意義務があったというべきである。

 

昭和38年6月19日 高松高裁

かなりの至近距離ですが、左側は橋の欄干、右側はバスに封じられた形ですのでかなり危険な状況です。

側方間隔0.3mで追い抜きした事故(東京高裁 S48.2.5)

この判例は自転車ではなく、原付二種を側方間隔約0.3mで追い抜きした事故。
東京高裁 昭和48年2月5日判決です。

 

当然有罪ですが、ちょっとだけ気になる点があります。
一審の竜ヶ崎簡裁は至近距離の追い抜きにより風圧により平衡を失わせたと認定してますが、東京高裁は原判決を破棄。
二輪車が時速45キロ、追い抜きした普通貨物車が時速65キロでは、側方間隔0.3mでは風圧による平衡喪失は考えられないとしています。

 

その上で、「0.3mの追い抜きにより驚愕狼狽せしめ、心理的動揺からハンドル操作を誤り平衡を失わしめ」として有罪にしています。

 

風圧うんぬんを言うとその立証で無理があるのかもしれません。

至近距離の追い越し、追い抜き(仙台高裁秋田支部S46.6.1)

こちらは判決文の抜粋しかありませんが、20~40センチで追い抜きした判例。

被告人に注意義務懈怠の事実があるか否かについて考えるに、一般に先行する自転車等を追い抜く場合(追越を含む。以下同じ。)、自転車の構造上の不安定をも考慮に入れ、これと接触のないよう安全な速度と方法によって追い抜くべき注意義務のあることはもとよりであるが、右の安全な速度と方法の内容は、道路の巾員、先行車及び追抜車の速度、先行車の避譲の有無及び程度、対向車及び駐停車両の存否等具体的状況によって決すべく、一義的に確定すべきでないところ、前記認定の被告人車の場合のように左側端から1mないし1.2m程度右側のところを進行中、道路左側端から0.8m程度右側を進行中の先行自転車を発見し、これを時速45キロ程度で追い抜くに際しては、先行車の右側方をあまりに至近距離で追い抜けば、自転車の僅かな動揺により或いは追抜車両の接近や風圧等が先行自転車の運転者に与える心理的動揺により、先行自転車が追抜車両の進路を侵す結果に至る危険が予見されるから、右結果を回避するため、先行車と充分な間隔を保持して追い抜くべき注意義務が課せられることが当然であって、本件においても右の注意義務を遵守し、被害車両と充分な間隔(その内容は当審の差戻判決に表示されたように約1m以上の側方間隔を指称すると解すべきである。)を保持して追い抜くかぎり本件衝突の結果は回避しえたと認められる以上、被告人が右注意義務を負うことになんら疑問はない。

 

仙台高裁秋田支部 昭和46年6月1日

蛇行するオートバイを追い越しする場合(大阪高裁S44.10.9)

判例は大阪高裁 昭和44年10月9日。
業務上過失傷害罪の判例です。

 

まずは事故の態様。

被告人は、普通乗用自動車を運転し、時速約30キロメートルで、南進中、その前方を同一方向に被害者運転の自動二輪車が、道路左側をセンターラインに近接して蛇行状態で南進しているのを認めた。そこで、これを追い越そうと考え、その背後を、約4ないし5mほどの距離を保って、約50mぐらい追尾しながら、警音器を二個ずつ、3、4回鳴らしてその避譲を求めたが、被害者は依然として蛇行運転を繰り返し、容易にこれに応ずる気配が認められなかった。
ところで、被告人が警音器を鳴らしおわった直後、被害者が、センターラインより一たん左へ1mぐらい寄ったのを認めたので、被告人は、被害車両において避譲を開始したものと軽信し、同車との間隔を約1mに保持して、同車の右側を安全に追い越し得るものと即断し、その後の被害者の動静に注視せず直ちに時速を40キロメートルぐらいに加速し、右にハンドルを切りつつ、原判示の場所でセンターラインの右側に出た。ところが被害者は被告人のかかる追い越しに気付かず、かえってセンターラインの左約1m寄りから、さらにセンターライン寄りに右に蛇行したため、左側部をセンターラインに接して追い越し並進中の被告人車両の左側後部ドア付近に、自動二輪車右ハンドル右端部が接触、被害者をその付近に転倒せしめ、同人に対し原判決判示の如き傷害を負わせたことが認められ、また被害者の右蛇行運転は、当時同人が酒気を帯びながら運転していたものであることによるものであることが明らかである。

飲酒運転で蛇行しているオートバイを追い越ししようとしたけど、クラクションを何度か鳴らしてオートバイが左側に寄ったと思って加速したところ、蛇行して戻ってきた状況です。

本件事故は、被害者が後続車両に留意しないで、センターライン付近を蛇行進行した酒気帯び運転に、その一因のあることはもちろんであるが、自動車運転者である被告人においても、先行車が異常な蛇行運転を繰り返しているのであるから、かかる運転者が時に不測の行動に出ることを十分配慮し、これを追い越そうとするには特に先行車の動静に十分留意しつつ、安全な間隔を保って追い越すなど、危険の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務を有することはもちろんである。しかるに、被告人は、前記のように警音器を鳴らしおわった直後、被害者が一たん1mぐらいセンターラインから左寄りに離れたからというだけで、その後における同人の動静を引き続き注視せず、同人が自己の警音器の音により避譲したものと軽信し、しかもこの場合先行車との安全な間隔とはいえない僅か1mぐらいの間隔しか見込まないで(右側道路幅員は1.49mであるから、もっとも大幅に間隔を保つことができる。)、その右側を追い越そうとして本件事故を起こしたのであるから、被告人にも右注意義務を尽くさなかった業務上の過失があったものというべきである。

 

大阪高裁 昭和44年10月9日

判例タイムズによると

判例タイムズ284号(昭和48年1月)では、自転車への追い越し時には「おおむね1.5mないし2mあれば十分といえるであろう」としています。

 

この中でいくつか判例が抜粋されています。

 

○昭和29年4月15日 仙台高裁

 

自転車を追越す場合について前車が酒酔い運転であるときは時速20キロで1.3mの側方間隔は不十分とした。

被告人がトラックを運転して時速約25キロで進行中、前方約30mの地点に自転車に乗っていく被害者の後姿を発見したので、時速を約20キロに減じ、警笛を鳴らしたが、避譲する様子もなく道路のほぼ中央を進行していたこと、約5mの距離に接近した際初めて後方を振向いたのでトラックの追進していることを気付いた筈であるのに、僅かに左側に寄ったのみでなおも避譲する気配もなく、そのふらつく様子からみて同人は酒に酔っていることが認められたこと、殊に同乗していた運転助手は被害者の自転車に乗っている様子がふらふらしていたので、運転者の被告人に対し酒に酔っているから危ないなあと話すと、被告人はそうかもしれないなあと答えたこと、以上の各事実が認められ、記録に徴しても右認定に誤りがあることは認められない。

 

ところで、進行中の自転車とその後から進行してくるトラックとの間隔(両者並行した場合の間隔)が1.30m程度の場合には、時速20キロという速度で車体の巨大なトラックが自転車を追越せば、自転車の搭乗者はトラック通過のあおりを喰い、周章して運転を誤り易く、ためにその際自転車をトラックに接触乃至衝突せしめ、その結果人の死傷を惹起することのあることは睹易い道理で、殊に本件の如く自転車の搭乗者が酒に酔っていた場合には右の危険は一層大きいことは勿論であるから、追越すトラック運転者としては警笛を十分鳴らしてトラックの接近乃至通過を熟知せしめるとともに、その自転車が停止又は十分な距離の個所に避譲して前記の危険の発生することがなくなったことを確かめた後に通過するか、さもなくば何時でも接触又は衝突を避け得るように速力を減じ、且つ助手をして自転車搭乗者の動静に注目せしめる等の措置を講じて通過する注意義務のあることは条理上当然であって、(中略)トラックと自転車の間隔を約1.30mにした程度のみを以て事足るものというを得ない。

 

昭和29年4月15日 仙台高裁

 

○昭和36年12月21日 札幌高裁

 

軽自動車を追い越しする際は1.5mの側方間隔があれば足りるとした。

被告人が乗合自動車を運転して軽自動車を追い越す際における両車の間隔は1m50であつたと認められるが、検察官は、かかる場合の安全な間隔とは、数学的に見て接触の危険なき程度をいうのではなく、速度、車体その他具体的事情に基づき狼狽などの心理的動揺による転倒をも考慮にいれて決すべきものであるところ、本件では到底適当な間隔とは認められないと主張する。しかし、本件事故現場は、札幌―千歳間を通ずる一級国道36号線で交通はきわめて頻繁な地点であり(前掲実況見分調書)、かかる道路において35キロの時速で、二人乗りとはいえ時速約30キロの比較的安定した速力で直進中の軽自動車を追い越すことは、現在の自動車交通事情に照らし一般的に交通の安全を害するものとは考えられず、これが非難されることとは到底断じ得ない。追越しにあたり1m50の間隔をおいただけでは、軽自動車や原動機付自転車等の車両にあつては、運転者によりある場合には狼狽し転倒等の危険を招くことが絶対にないとは保し難く、本件事故についてもその疑いがあるが、かかる程度の危険の回避はむしろ追い越される側において、考慮すべきものに属するといわなければならない。要するに、本件追越しの際の間隔自体に関する限り、被告人はなすべきことをなしたということができるのである。

(中略)

同軽自動車は二人乗りであつたとはいえ、前叙の如く時速約30キロの比較的安定した速力で直進中で進路変更のきざしもなく、また原判決認定のとおりその運転には何ら不安定な挙措は見受けられず、かつ本件の道路においては交通は頻繁で追越しもしばしば行なわれるところであつたと推測されるので、このような状況で前述の如く1m50の間隔をもつて追い越す場合、それによつて前後車の衝突ないし接触のあることはもちろん、後車の運転者が心理的動揺を招き転倒の危険があるとは日常一般的に経験する事象とはいい難く(むしろ、軽自動車の運転者としては追越し車の有無についてはみずからもまた十分な警戒心を保つておることが普通とさえいい得る)、したがつて、本件の具体的場合においては、危険発生は予期し難いものとして、なおまた前記法条の趣旨からも、被告人には警音器を吹鳴する必要も義務も存しなかつたというべきである。

 

昭和36年12月21日 札幌高裁

※昭和30年代の判例なので、軽自動車が転倒したという判例です。

民事の判例

民事責任の場合、どんだけ側方間隔を空けていても事故が発生したら過失になります。
過去に取り上げた判例をいくつかピックアップします。

裁判所 自転車の状況 車の速度 側方間隔 車の過失
東京地裁H26.1.16 路側帯から中央線へ進路変更 20キロ 推定2m以上? 70%
東京地裁H27.10.6 非接触 40キロ 1.2m 40%
大阪高裁R1.7.3 非接触 30キロ 0.6m 0%

※過失割合は様々な状況で変わるため、側方間隔が全てではありません。

かなり側方間隔を空けても過失にした判例

こちらで取り上げた判例です。

 

自転車に対する追越しは、側方距離を取っていても過失が大きくなる判例。
自転車を追い越すときには、十分な側方間隔を取り、減速するというのが本来の法律(28条4項)。 今回は十分な側方距離を取っていたのでは?と思う判例です。 自転車を追い越す際に衝突事故 事故の前提です。 ・道路は片側1車線、左右に路側帯あり ・...

 

・道路は片側1車線、左右に路側帯あり
・先行自転車は左路側帯付近を時速約5キロで走行していた
・後続オートバイは、追い抜きのためセンターライン付近を時速約20キロで走行した
・先行自転車が合図もなく急に右に進路を変えたため、後続オートバイと衝突した

つまりはこういう状況。

路側帯とセンターライン付近なので、少なくとも2m以上は空いていたのではないかと思いますし、オートバイも時速20キロ程度なので速いわけでもありません。

本件事故は、先行する自転車と後方から進行した二輪車の事故であるところ、追越ししようとする車両は、前車の進路等に応じて、できる限り安全な速度と方法により進行しなければならない義務があるにもかかわらず(道路交通法28条4項)、被告は、原告車を追い越すに際し、原告車の動静を注視せず、原告車を追い越そうとした過失がある。
他方、自転車は、同一方向に進行し、進路を変えるときには、合図をし、進路変更が終わるまで当該合図を継続しなければならない義務があるにもかかわらず(同法53条1項)、原告は、合図をせず、後方を注視することなく原告車を右方に進路変更させ、被告車の進行を塞いだ過失がある。これらを総合考慮すれば、原告の過失割合を30%、被告の過失割合を70%とするのが相当である。

 

平成26年1月16日 東京地裁

民事責任としては、それなりに側方間隔をとっても後方車の過失が大きくなります。

非接触事故(側方間隔1.2m)

こちらで書いた判例です。

 

自転車追い抜き時に非接触事故の判例。
自転車を追い越し、追い抜きする際には側方間隔が問題になりますが、接触してないものの事故になった判例を。 非接触事故の判例 非接触事故の判例としてますが、事故態様には争いがあります。 判例は東京地裁 平成27年10月6日。 まずは大雑把に状況...

 

側方間隔1.2m、時速約40キロで追い抜きした結果起きた非接触事故ですが、詳しくはリンク先をどうぞ(手抜き感)。

 

そのほか、このような判例もあります。

 

バスが自転車を追い越し後、幅寄せ!という判例。
車道を走るロードバイクにとって、されたくないプレイの一つに、バスが追い越し→バス停に向けて左寄せ→結果的に幅寄せになることがあります。 実際のところ、ロードバイクがガッツリ巻き込まれない限りは「単に危険だった」で終わってしまいますが、きちん...

 

結局のところ

二輪車の追い抜きや追い越し時には、1.5m空けるのがマナーと言われます。
一部自治体では独自の条例で自転車の側方通過するときは1.5m空けるようにとしています。

 

判例をみても、明確な基準があるわけでもありません。
要は追い越しされる先行自転車の動静や道路状況次第。
年齢も関係するので、先行自転車が不安定なのを認めたら1.3mでも不十分とされるし(昭和29年4月15日 仙台高裁)、十分減速して5キロくらいでも高齢者でしかも不安定な側溝上を通行していたら追い抜きを控えるべき注意義務があるとしています(昭和60年4月30日 最高裁)。
側方間隔があれば問題ないわけでもなく、減速も必要になります。

 

民事責任としては、時速20キロに減速し、側方間隔が推定2m以上空いていたとしても、事故が起きた以上は追い越し違反だとしてかなりの過失になりうる(平成26年1月16日 東京地裁)。
側方間隔1.2mでも非接触事故が起きた場合には賠償責任がありますし(平成27年10月6日 東京地裁)。

 

自転車が後方確認せずに進路変更したり、横断開始することにも当然問題はあります。
しかし、後方車のほうが過失は大きくなるわけで、自分自身を守るためにも十分な側方間隔と減速はマストと言えるかと。

 

側方間隔1.2m空けて追い抜きしても非接触事故が起きた判例はありますから、自転車との速度差も注意して減速と側方間隔をお願いしたいところです。

 

ノールックで進路変更する自転車については、自転車乗りとしても脅威だし迷惑です。
後方確認する気がないなら、せめてミラーつけて欲しいけど。
ノールックで歩道→車道に出る自転車とか、なんとかならないのかな。

 

個人的には法により「最低側方間隔」を定めるべきと考えますが、この手の話が議論されているようには見えません。
というよりも、本来は現行法の中でも取り締まりは可能だと思うけど、事実上、事故が起きた場合以外は問題にされていない。

先日の判例についてちょっと補足。
先日挙げた判例なんですが、 ちょっと補足。 なぜ車道ロードバイクにも5割の過失が付いたか まず、事故の前提から。 ・原告(ロードバイク)は車道を通行していた。 ・被告(自転車)は歩道を通行していた。 ・歩道には配電ボックスがあり、被告の身長...

 

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道路交通執務研究会(編集), 野下 文生 原著(その他)




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