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ひき逃げを危険運転致死傷罪に入れるべきという主張は、ムリがある。

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救護義務違反(ひき逃げ)を危険運転致死傷罪の類型に加えるべきだ!という意見を見かけるのですが、

 

個人的には感情論としか見ていない。
というのも、危険運転致死傷罪はこのような構造になっている。

自動車運転死傷処罰法第二条の危険運転致死傷罪につきましては、故意に危険な自動車の運転行為を行い、よって、すなわち、その運転行為の結果として人を死傷させた者を、その運転行為の実質的危険性に照らし、暴行により人を死傷させた傷害罪や傷害致死罪に準じて重い処罰の対象とするものでありますこのように、危険運転致死傷罪は、自動車の運転行為自体の危険性、悪質性に着目した罪であります。
他方で、いわゆるひき逃げにつきましては、事故後の行為でありまして、運転行為そのものではないということを踏まえると、ひき逃げ自体を運転行為の一部として評価をして危険運転致死傷罪の一類型とすることについては慎重な検討を要すると言わざるを得ないと考えております。

第219回国会 衆議院 内閣委員会 第2号 令和7年11月19日

傷害致死、暴行致傷に準じた法構造になっており、暴行や傷害に関する部分を具体的に類型化し限定列挙したもの。

この罪におきましては、危険な運転行為あるいはあおり運転行為というような形で一般的、包括的な要件とするのではなく、死傷事犯の実態等に照らし、重大な死傷事犯となる危険が類型的に極めて高い行為であって、暴行による傷害、傷害致死に準じた重い法定刑により処罰すべきものと認められる運転行為の類型を個別に限定列挙しております。このように個別に運転行為の類型を列挙する方式については、構成要件をより明確にすることができるものと考えております。

第201回国会 参議院 法務委員会 第11号 令和2年6月4日

事故を起こすリスクが極めて高い悪質な行為と、ひき逃げによるリスクはその危険性の方向が異なるのだし、それを一緒にするのは法秩序、法体系からしてもビミョー。
さらにいえば、処罰法2条に9号を新設し「救護義務違反(道路交通法72条1項前段)」と規定したときに、過失運転致死傷罪が成立しないケース(一例でいうと信号無視の歩行者と衝突し回避可能性がない場合)でも、危険運転致死傷罪が成立するという不可解な状況にも陥る。

 

そもそも処罰法2条は「よって」として因果関係を求めるのだから、救護義務違反「によって」他人が負傷したり死亡することはない。
あくまでも事故に「よって」他人が死傷するのであってね。

 

救護義務違反の法定刑を引き上げて、悪質性が高い場合に過失運転致死傷罪との併合罪により危険運転致死傷罪に近い量刑を実現するというならまだわからなくもない。

 

もし危険運転致死傷罪の枠組みに入れたとしたら、例えばこういうのはどうする?
信号待ちで停止中に後続車が追突してきた。
自分自身のケガは大したことなかったが、ミラーで見る限り後続車のドライバーは大怪我している。

 

これについて、追突された側に過失運転致死傷罪が成立しないのは言うまでもないけど、面倒だからと逃走したときに、危険運転致死傷罪が成立することにしていいのか?
暴行や傷害に匹敵する悪質性があるのだろうか?

 

そしてもう1つ。
危険運転致死傷罪と過失運転致死傷罪を対比させて、過失運転致死傷罪が「危険行為ではない」と捉えるから話がおかしくなっているようにすら見える。
過失運転致死傷罪であっても、その過失内容自体は危険行為であることに変わりない。
しかし判決文の認定を読むことなく、名前が「過失運転致死傷罪」だから危険行為ではないみたいに勘違いしてないか?

 

危険運転致死傷罪は、危険行為のうち極悪なものを類型化したと捉えるべきで、危険運転致死傷罪に該当しないからといって危険行為ではなかったとは言えないのよ。
しかしSNSでの話をみると、名前に固執した発想にすら見えてしまう。

 

危険運転致死傷罪という枠組みに入れなくても法定刑の引き上げはできるのだし、危険運転致死傷罪の枠組みに入れるべきという主張は「法定刑の引き上げ効果」が欲しいのか、「危険」という名前が欲しいのか、何回みてもわからない。

 

過失運転致死傷罪に救護義務違反を併合罪として別に捉えることが最もスマートで混乱が起きないわけですが、そもそも「危険運転致死傷罪に入れるべき」という話の「目的」があやふやなんじゃなかろうか?

 

より重く処罰すべきというなら、危険運転致死傷罪という枠組みに入れなくても達成できるのだし。

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