ウーバーイーツの事故が増えている、と聞くのですが、こんな記事がありました。
こういうのって、ウーバーイーツが抱える構造的問題だとしか思わないんですが。
ウーバーの構造的弱点
ウーバーイーツの配達員は、ウーバーに雇われているわけではなくて、ウーバーと業務委託契約をした個人事業主です。
これがウーバーのメリットでもあり、デメリットでもあると思ってます。
雇われ労働者と個人事業主の大きな差は、自由に働けるかどうか。
雇われ労働者であれば、シフトで決められた時間は働く必要が出てくるが、個人事業主は契約の範囲内で自由に働ける。
今日はだるいから止めとこ←これが許されるのが個人事業主の特権です。
雇われ労働者なら、時給制で決まった賃金を出す必要があるけど、個人事業主なら完全成果報酬制にしてもよい。
これって良し悪しというか、テキトーに働いて決まった額が欲しい人なら、雇われ労働者のほうがいい。
頑張った分だけ賃金が上がる個人事業主は、稼ぎたい人にはメリット。
雇われ労働者と個人事業主だと、事故を起こしてしまった場合の扱いも変わります。
・雇われ労働者 ⇒ 職務中に起こした事故については、本人の重過失が無い限りは、会社が責任を負う
・個人事業主 ⇒ 原則として個人事業主自身が全責任を負う
雇われ労働者なら、職務中に起こした事故は、労働法関係で労働者の責任にすると問題が生じる恐れがあり、会社が全責任を負うのが基本。
個人事業主の場合、起こした事故の全責任は個人事業主本人が負う。
私も個人事業主ですが、責任が会社員よりも大きいと考えています。
全く違う業種ですが、損害賠償保険だったり、民間の労災など様々加入してます。
個人事業主の場合、労災も加入権限がありません。
そうすると自分で民間の労災を探して、加入するしかない。
最近ウーバーでも、事故に備えた保険を用意しているようです。
ただし一つだけ盲点があって、その適用範囲。
本プログラムは自転車・原付バイク・バイク・軽自動車を利用する Uber Eats 配達パートナーが、配達リクエストを受諾した時点から配達が完了、またはキャンセルされるまでの間に生じた事故に対して適用されます。
http://www.uber.com/jp/ja/drivse/insurance/
配達リクエストを受けて、飲食店に向かい、お客さんに届けるまでしか適用されません。
これについてはしょうがないです。
いわゆる【回送中】みたいな状態は、職務中ではないわけですね。
そこの線引きをしないと、プライベートで乗っているときも
といって、不正が頻発しますので・・・
なのでこれ以外に、自力で自転車保険に加入する必要があります。
ただし自転車保険の中には、業務として運転している状態を保険の適用外とするものも多い。
どこまでが業務なのか?という点で、注文待ちで回送中状態をどう捉えるのか?という問題も出てくる。
なので業務として自転車を運転する場合でも、保険が適用できるものを選ぶ必要があるかと。
記事にもあるように、一番の問題点は、ウーバー本部が事故対応できないこと。
個人事業主扱いなので、配達員と本部の間には雇用契約が無い。
業務委託契約なので、事故を起こしてもウーバー本部が関与できないというか、下手すると非弁行為(弁護士でもないのに代理業務を行う犯罪)になりかねない。
こういうのって、構造的弱点で、最初からわかっていたことなんじゃないですかね。
かといって雇用にすると
かといってウーバーの配達員を雇用契約にすれば、配達員が起こした事故は、全て本部対応しないといけなくなります。
雇用契約をしている配達員が起こした職務上の事故は、本部が全責任を負うので。
けど、雇用契約にすると、最低時給は支給しないといけない。
やる気が無い配達員なら、テキトーにプラプラして、時給だけ稼ぐことになってしまう。
要は頑張っても頑張らなくても時給が変わらなかったら、多くの配達員は頑張らないだろということ。
こういうのって矛盾だらけだと思うのですが、しょうがないんですよね。
配達員の運転がどれだけおかしくても、法的に本部が関与できない。
雇用ではなく、業務委託なので。
法的に関与できないというか、本当はガンガン関与して、運転マナーについては厳しくすべきなんですけどね。
こちらの記事でもコメントを紹介したように、
お客さんの評価は、早く届いたかどうかの一点なのと、報酬体系も【何件こなしたか】が勝負なので、信号無視してでも早く届けて次の仕事に取り掛かりたい奴が出てきやすい構造。
そういうわけで
まず思うことですが、ウーバーは法的な許可制度にしたほうが絶対にいいと思う。
自転車運送業として、ナンバープレート交付の許可制にする。
ナンバープレート交付の条件に、指定された保険の加入を必須にする。
そして個人事業主の業務委託契約のままで行くなら、ウーバー本部に弁護士を入れるとか、法的に事故対応を本部が出来る仕組みを作る。
本部に入れなくても、弁護士事務所への委託でもいいし、そもそも保険の【弁護士特約】を必須にするでもいい。
法的には、配達員が個人事業主なのはわかるんですが、事故に遭った被害者からすると、関係ないんですよね。
雇用関係の労働者だろうと、個人事業主であろうと。
ウーバーのカバンを持った、【ウーバーの配達員に起こされた事故】には変わりが無い。
だから事故の被害者も、本部対応してもらいたいんですよね。
素性が分からない一個人の配達員と交渉しても、このように逃げられる可能性が出てくる。
だから本部が対応できるような仕組みを作るしかないわけで。
本部が対応しない理由も、何となくわかります。
恐らくは、弁護士でもないのに代理業務を行ったということで、非弁行為になりかねないことも一つですし、本部が対応することで【労働者性がある】とみなされて、訴訟を起こされた場合に、みなし雇用だとされてしまう場合もある。
雇用だと認定されれば、最低時給の問題や、社会保険加入の問題も出てくる。
本部が対応窓口を設けないなら、せめて【相談窓口としての公式弁護士事務所】とか設けるべきなんじゃないですかね。
事故の被害者が、交渉できる窓口は設けるべきかと。
こういう被害はこれからも出てくると思うのですが、最初からある程度は想定されていることだと思うんですよね。
被害者が二重で被害にあっているようなものなので、本来は本部が対応すべきことなんですが、構造上の弱点なんでしょうね。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
高はしです
個人事業主は責任重いですからね~。そこんとこをキチンと理解するキッカケの意味もありそうです→登録制度化。
雇用下にあることの気楽さはご指摘のとおりで、でも皆があまり認識していない。
私は、もうすぐ定年がちらついてますが、家内の年金を考えたら、厚生年金制度のある雇用者の下にいることを選択するつもり。独立可能な資格は準備してますけど、ね。
法的な支援窓口も、これからはもっと必要になるでしょうし、各個人のリテラシ向上も求められそうに思います。
コメントありがとうございます。
おっしゃるように、個人事業主は無限責任ですので責任は重大です。
しかしそれに気が付いている人は、意外と少ない気もします。
あと、どうしても自営業って誰かに叱責されることもないので、一般常識から外れていく人も多いんですよね。
気をつけないと、といつも思ってます。
確かに自営の方々には、「人事部研修」なんてないですものね。
思い返せば、お世話になった受験ゼミの先生方は大概が個人事務所経営で、アクの強い変わった方が多かったですねぇ。
コメントありがとうございます。
個人事業主と、中小企業の社長さんは、ちょっと変わった方が多いのは事実です。
特に、一代で築き上げた社長さんとか、どうしても誰かに叱られることもないので、サラリーマン目線で見ると変わっている方は多い気がします。
という私も個人事業主なんですけどね。