ここ最近、電動キックボードの実証実験の報道が多いのですが、このようなものがありました。
土浦市真鍋の自転車道「つくば霞ケ浦りんりんロード」で18日、電動キックボードの走行実験が行われた。
自宅からバス停までの移動手段模索 電動キックボードで実証実験
ちょっと前に警察庁がパブリックコメントを実施していた件と関係しているのかと思ってみていたら、どうも違うようでして。
つちうらMaaSという実証実験です。

MaaS(マース)
MaaSというのは、モビリティ アズ ア サービスの略。
これが一体何なのかというと、
多少端折りましたが、国土交通省のページにはこのように書いてあります。
もう、これを読んでも何のこっちゃ?なんですが。
要は今まで、移動手段として電車、バス、タクシー、シェアサイクル、レンタカーなど様々なものを、ユーザーがそれぞれ予約するとか、時刻表を調べてバラバラになったものをユーザーが調べていた。
それぞれ別に支払いする必要もありました。
それに対し、MaaSでは一つのアプリで全てを管理して予約し、一つのアプリ内でお会計まで一括で出来るような仕組みのようです。
その移動手段の一つとして、電動キックボードを取り入れるための実証実験を、つくばりんりんロードでやっているというのが【つちうらMaaS】と呼ばれる実証実験のようです。
電動キックボードは、世界で普及しているモビリティであり、将来、ラストワンマイルの移動手段を担うことが期待されています。現在、電動キックボードは所定の要件を満たすことで原動機付自転車として公道の走行が可能ですが、自転車道の走行は認められていません。
今回、つくば霞ケ浦りんりんロード(自転車道)の一部区間を用いて、電動キックボードの活用可能性を探ることを目的として、すれ違い・追い抜き・並走等、様々な条件の下での安全性を確認する走行実験を実施します。
実験には、株式会社Kintone(本社:茨城県常総市)の電動キックボード「KINTONE MODEL ONE」を使用します。このキックボードは茨城県で製造されたメイドイン茨城モデルです。
本件実験を通じて、電動キックボードの活用可能性を探ってまいります。
ページが見つかりませんでした – 関東鉄道 | 地域のふれあいパートナー
つちうらMaaSでは、電動キックボード以外にも自動運転1人乗りロボなども実証実験しているようです。
一瞬混乱が
ちょっと前に警察庁のパブリックコメントで、特定レンタル事業者が貸し出す電動キックボードについて、速度15キロまでしか出ないものを対象に、ヘルメット不要、自転車道の通行可能にする特例措置が発表されていました。

これ自体も永久的にノーヘル・自転車道通行可能と決まっているわけではなくて、期限付きの実験段階です。
で、私が一瞬混乱したのは、警察庁がパブリックコメントで出していたものでは、確かに自転車道の通行可能措置が含まれているわけです。
ただし、道路交通法上の自転車道の話なので、いわゆるサイクリングロードは適用外のはず。
道交法上の自転車道は車道扱いなので、原則として歩行者は通行できません。
国道16号相模原の自転車道も、

道交法上の自転車道です。
いわゆるサイクリングロードについては、自転車歩行者道扱いのところが多い。
今回のつくばりんりんロードでの実証実験という報道を見て、何のこっちゃ??と一瞬混乱しまして。
簡単に言うと、警察庁のパブリックコメントの件と、今回のつくばりんりんロードでの実証実験は直接的に関係しているものではないようでした。
全くの別件です。
通行止め扱いでの実証実験
今回のつくばりんりんロードでの電動キックボードの実証実験ですが、クローズドの空間で行われています。
そのため、参加者以外は通行止め扱いです。
<通行止めについて>
・期間 令和3年2月15日(月)~令和3年2月20日(土)
・時間 9:00~16:00
・区間 別添資料のとおり(関東鉄道本社脇~つくば国際大学駐車場脇の区間)
・迂回路について:別添資料のとおり、迂回をお願いいたします。
https://www.ringringroad.com/news/4795/つくば霞ヶ浦りんりんロードは、つくばりんりんロードと霞ヶ浦自転車道などを一体とした総延長約180kmのサイクリングコースです。全国でも屈指の安全で快適に走行できる環境が整備されています。
まあ、明日で終了です。
こちらの記事でも出ているように、電動キックボードの運転者はヘルメットを被っています。

歩行者や自転車と共存できるか?みたいな形で、関係者と思われる歩行者や自転車をあえて配置しての実験ということでしょうか。
先ほど挙げた、警察庁のパブリックコメントに関わるレンタル事業者についても、
大学構内などを使って実証実験していて、それを公道に広げてという段階で警察庁の特例が認可されたという形。
ある程度クローズドな空間で実験して、その実績を引っ提げて今度は公道で実験したという形でした。
実際、第一弾の【速度20キロまで・自転車レーン走行可能実験】では、事故件数はゼロ。
なので次の段階で【速度15キロまで・ノーヘルOK・自転車道可能】という段階に進んでいます。

思うのですが
この手の電動キックボードですが、乗りたいとは全く思っていませんが、私としては結構評価しています。
というのも、現行法では原付扱いなので一定の保安基準やヘルメットなどを装着していないと、電動キックボードには乗れません。
ある意味では、電動キックボードを見たときに、現行法では厳しい制限が付いているともいえます。
どうしても見た目が、気軽に誰でも乗れそうな感じが出ているのに、実際の法規制は厳しいという。
こういう状態のときって、だいたいは無法者が出やすいと思うんですね。
どうせ見つからなきゃOKみたいな感覚で、歩道を爆走してみたり、ノーヘルで乗ってみたりなど・・・
フル電動自転車もそれに近い状態ですし。
その結果事故が起こった場合に、自賠責も未加入だったら被害者は泣き寝入りみたいな状態になる恐れすらあります。
支払い能力が無い奴なら、払えといっても払えませんし。
なので新しい法区分を作ることで、ハードルを下げながらも一定の規律を作ろうとしているのが今の段階です。
ただこれ、警察庁のパブリックコメント第一弾のときも思ったのですが、

警察庁が電動キックボードに対して、第一弾のパブリックコメントで出していた内容はこんな感じ。
・あくまでも原付扱い(なので免許など必須)
・特定レンタル事業者が貸し出す電動キックボードに限定
・時速20キロまでしか出ない
・自転車レーンを通行可能にする
大切なのは、これで永久に決定した法案ではなくて、期限付きの特例措置による実証実験なんですね。
いきなり法改正するのはマズイから、少しだけハードルを下げてみて実験結果を国に報告せよという扱い。
第一弾の実証実験で事故がゼロだったことを踏まえて、第二段に進んでいます。
・特殊小型自動車扱いにする
・特定のレンタル事業者が貸し出すものに限定
・時速15キロまでしか出ないものに限定
・ノーヘルOK
・自転車道の通行も可能
これも期限付きの特例措置で、あくまでも実証実験。
そして今回つくばりんりんロードでやっているのも、実証実験です。
警察庁のパブリックコメントについても、ちゃんとパブリックコメントの中身を見ないで報道だけしか見ていない人だと、永久に自転車レーンの走行が可能になると誤認してみたり、どの電動キックボードでも自転車レーンを走れると誤認してみたりする。
ちゃんと調べれば、マックスで20キロまでしか出ないもの限定(第一弾の場合)になっているとか、あくまでも期限付きの実験なことがわかる。
これについてもそうなんですが、

ちゃんと警察庁のパブリックコメントをみればわかるはずなのに、ノーヘルという単語だけに飛びついて、しかも期限付きの実験段階というところを見逃して懸念を示したりする。
政策関係を批判するなら、当然政策について調べてからやるのが筋なんですよね。
詳しく知りもせずに、根拠が無い批判を繰り出すだけなので。
で、こういう新しい乗り物が登場したときに、残念な意見だと思うのは、こういうもの。

事故が一件でも起きると大騒ぎして廃止すべきだと言い出す人もいたりします。
それを主張するなら、車も自転車もとっくの昔に廃止にしないといけない。
毎日のように死亡事故が全国各地で起きているのが、車、オートバイ、自転車ですから。
乗り物なんだから、事故が絶対に起こらないなんて想定がおかしいことに気が付いていない。
要はほかの乗り物と比較して、事故件数、事故での重症度などを総合的に判断して決めるべきもの。
事故が起きたらどうするんだ!と意見が仮にあったとして、そういう人ってなぜ同じ意見を車や自転車に向けないのだろう?と不思議に思うわけです。
大変な自己矛盾を抱えていることにすら気が付いていない。
既得権を守るためというなら話が分からなくも無いですけどね。
ロードバイクからすれば邪魔・・・という残念な見方も成り立ちますし。
公道の中で、様々な乗り物がお互いを尊重して仲良く使おうという精神が乏しいのかも。
ノーヘルOKにした件も、前にも書いたように、

見方を変えれば、クソ重いオートバイ用ヘルメットではなく、自転車用ヘルメットでもOKになったとしてプラスに捉えることも出来る。
こういうのは、自転車でも同じように、安全意識が高い人は自発的に被るし、不要だと思う人は被らない。

こういう層には朗報になる可能性もあるわけです。
まあ、ママチャリと同様に、被らない層のほうが多いでしょうけど、選択肢が増えたという捉え方もできるわけで。
ノーヘルだからダメみたいな考えも、柔軟性が乏しいなと思ったりします。
ちょっと発想を変えれば、むしろプラスにもなりうるチャンスなのに。


これって意味は同じでも、伝わり方は違う。
【ノーヘルOK】ではなく、【任意になるからどのヘルメットでもOK】と宣伝したらもっとよかった気がしますが、レンタル事業者が求めているのはあくまでもノーヘルの方向性のようですね。
これなんかも一応ヘルメット扱いのようですが、
原付に乗るときにこれを被っていたら、一発アウト。
けど電動キックボードがノーヘルOKになったときには、これでもいいことになるわけだし。
私が電動キックボードについて評価している点は、実証実験を繰り返して、新しいルール作りをしようとしている点。
警察庁のパブリックコメントでのレンタル事業者のものも、走行ログまで管理して実験していたわけですし。
もちろん、その実験の中身とボリュームについては検討されるべきだと思いますが、警察庁第一弾の実証実験は、走行距離2600キロで事故ゼロになっているので、評価できる話。
次の段階での実証実験で、さらに走行距離を重ねて、どういうトラブルが起こるのかについて検証していくわけですから。
なんでもそうなんですが、バカが乗れば危険性があるし、事故が起きます。
同課の発表によると、2人は昨年8月23日午前1時25~30分頃、少年4人と共にスクーター3台に分乗し、同市中区海岸通の大さん橋付近から同区野毛町までの約2・3キロの路上で信号無視など暴走行為をした疑い。
同課が信号無視に気づき、緊急走行で追跡していた。調べに対し、2人は容疑を認め、高校3年の少女は「パトカーとの戦いでテンションが上がった」と話したという。少年4人も昨年10~12月に同容疑で逮捕、書類送検されている。
Yahoo!ニュースYahoo!ニュースは、新聞・通信社が配信するニュースのほか、映像、雑誌や個人の書き手が執筆する記事など多種多様なニュースを掲載しています。
パトカーとの戦いという迷セリフを全国に撒き散らしたわけですが、信号無視すれば事故リスクは高まる。
こういうバカが一定数いるので、事故をゼロにという目標は目標にすぎず、事実上は達成不可能。
事故ゼロを目指すことは大切ですが、一定数いるバカと、過失による事故を防ぐことは不可能。
なので電動キックボードについても、事故件数や事故の重症度など総合的に判断した上で、正式に法制化して新しい区分になる可能性もあれば、実証実験で危険だと思われたら、現行法の原付の区分のままになる可能性もあるわけです。
あくまでも実験段階であることを見逃していると、本質が見えません。
新しいもの(法律)を作ろうとするときには批判が必ず起こるものですが、きちんと調べもせずに批判する人がいることが一番厄介なのかもしれません。
コロナ禍での密にならない移動手段としても有効になる可能性はありますし、高齢者向けに速度を抑えて、さらに転倒しにくい3輪のものもあるようですし。
批判するなら、ちゃんと調べてから批判するというのが大人のマナーでありモラルなんだろうなと思います。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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