正しい車両通行帯の考え方と、自転車乗りは違反なのかについて検討。

先日も書いた件です。

読者様からこのようなメールを頂きました。 ネットサーフィンをしていてたまたま以下の記事を見つけました。 とあるツイッター動画...

ちょっと思うことがありまして。 ちょっと前にですが、読者様からこのようなものを教えてもらいました。 ツイッターの動画なんです...

片側2車線道路で、左第1車線のど真ん中付近を走行しているのですが、これが違反になるのかどうかについて検討します。

事実確認・法確認から

調べたところ、この道路は府道13号京都守口線の守口市内のようです。

・片側2車線道路
・左側端には自転車ナビマークがある

法的な意味をおさらいします。
①自転車ナビライン・ナビマークは法定外表示であり、その上を走る義務はないし、自転車レーン(自転車専用通行帯)でもない

②自転車の場合、法27条の追い付かれた車両の義務は適用除外である

先日の記事について、 一部法解釈に間違いがありました。 前回の記事で私が書いたことは、 車両通行帯ある道路(複...

(他の車両に追いつかれた車両の義務)
第二十七条 車両(道路運送法第九条第一項に規定する一般乗合旅客自動車運送事業者による同法第五条第一項第三号に規定する路線定期運行又は同法第三条第二号に掲げる特定旅客自動車運送事業の用に供する自動車(以下「乗合自動車」という。)及びトロリーバスを除く。)は、第二十二条第一項の規定に基づく政令で定める最高速度(以下この条において「最高速度」という。)が高い車両に追いつかれたときは、その追いついた車両が当該車両の追越しを終わるまで速度を増してはならない。最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ、かつ、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。
2 車両(乗合自動車及びトロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き最高速度が高い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路の右側端。以下この項において同じ。)との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合においては、第十八条第一項の規定にかかわらず、できる限り道路の左側端に寄つてこれに進路を譲らなければならない。最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合において、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。

第二十二条第一項の規定に基づく政令というのは、道路交通法施行令11条になりますが、軽車両の最高速度が定められていない以上、法27条は適用除外となります。

(最高速度)
第十一条 法第二十二条第一項の政令で定める最高速度(以下この条、次条及び第二十七条において「最高速度」という。)のうち、自動車及び原動機付自転車が高速自動車国道の本線車道(第二十七条の二に規定する本線車道を除く。次条第三項及び第二十七条において同じ。)並びにこれに接する加速車線及び減速車線以外の道路を通行する場合の最高速度は、自動車にあつては六十キロメートル毎時、原動機付自転車にあつては三十キロメートル毎時とする。

法定速度と制限速度の意味を誤解する人が多いのですが、こちらで解説しています。

これは前にも書いていることなんですが、 この記事、定期的に何を言いたいのかよくわからないコメントが来ます。 ...

③車両通行帯であれば、自転車は第一通行帯の中であればどこでもOK。車両通行帯でない場合は左側端しか通行できない。

(車両通行帯)
第二十条 車両は、車両通行帯の設けられた道路においては道路の左側端から数えて一番目の車両通行帯を通行しなければならない。ただし、自動車(小型特殊自動車及び道路標識等によつて指定された自動車を除く。)は、当該道路の左側部分(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路)に三以上の車両通行帯が設けられているときは、政令で定めるところにより、その速度に応じ、その最も右側の車両通行帯以外の車両通行帯を通行することができる。

車両通行帯でない場合には、左側端通行義務があります。

(左側寄り通行等)
第十八条 車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び原動機付自転車にあつては道路の左側に寄つて、軽車両にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、第二十五条第二項若しくは第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央若しくは右側端に寄るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。

(左側寄り通行等)
第十八条 車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び原動機付自転車にあつては道路の左側に寄つて、軽車両にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、第二十五条第二項若しくは第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央若しくは右側端に寄るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。

④複数車線道路の場合、車両通行帯の場合と、車線境界線で区切った道路の2種がある

種類番号設置場所・意味
車線境界線

102四車線以上の車道の区間内の車線の境界線を示す必要がある区間の車線の境界
車両通行帯

109交通法第二条第一項第七号に規定する車両通行帯であること。車両通行帯を設ける道路の区間

※四車線以上というのは道路全体の話なので、片側2車線以上と同義。

つまり複数車線ある道路の場合、以下の二つのどちらかになります。

標示番号設置者
車線境界線で区切られた道路102道路管理者(国道であれば国道事務所、都道府県道であれば都道府県)
車両通行帯109各都道府県の公安委員会

車両通行帯は法2条1項7号により、道路標示で示した部分となっています。

七 車両通行帯 車両が道路の定められた部分を通行すべきことが道路標示により示されている場合における当該道路標示により示されている道路の部分をいう。

道路標示は、公安委員会が決定することで効力を発揮するため(法4条)、道路管理者が車線境界線(102)を書いただけの道路は、単なる複数車線道路で車両通行帯ではありません。
公安委員会が決定により道路標示109を設置した場合のみ、車両通行帯となります。

以上が事実確認と法律のおさらい。
次に実例で検討していきます。

違反になるのか?

車両通行帯なのか?

この方の主張としては、車両通行帯だから第1通行帯の中ならどこでもOKという考えのようです。
そこで管轄署に、本件道路が車両通行帯なのかを確認しました。

結論から言いますと、交差点付近のおよそ30m程度は車両通行帯のところもあるが、それ以外は車線境界線で区切っただけの道路ということになります。

車両通行帯になっているのは、交差点付近の指定通行区分(左折マークなどがあるところ)が設けられた場所のみだそうです(このケースではイエローラインのところのみ)。

イエローラインがあり、指定通行区分(左折マークなど)がある場所だけが車両通行帯(109)で、それ以外は車線境界線(102)。

過去に某県警の本部でも確認したことがありますが、一般道(高速道路以外)の場合、全線が車両通行帯になっていることはまずあり得ない(絶対に無いかは保証できないが)。
交差点付近の指定通行部分のみが車両通行帯になるのが通常とのこと。

これについては本件の管轄署でも同意見でした。
一般道で、交差点付近以外で車両通行帯である事例を全く思いつかないと。(絶対にないと確約は出来ないとも言ってましたが)

ということで、交差点付近の指定通行区分がある場所だけは、道路標示109により車両通行帯となっているが、交差点付近以外は道路標示102による車線境界線を設けた道路となります。

種類番号設置場所・意味
車線境界線

102四車線以上の車道の区間内の車線の境界線を示す必要がある区間の車線の境界
車両通行帯

109交通法第二条第一項第七号に規定する車両通行帯であること。車両通行帯を設ける道路の区間

※四車線以上というのは道路全体の話なので、片側2車線以上と同義。

そのため、交差点付近以外では、自転車は左側端通行する義務がありますね。

ちなみに細かいことを書きますが、車両通行帯がある場合は、路肩近くの白線は車両通行帯最外側線になります。
車両通行帯が無い場合は、車道外側線となるのですが、車道外側線は規制表示ではないため、白線の外通行しても違反ではありません。
車両通行帯最外側線の場合、厳密に言うとラインの外側は通行区分違反となりますが、こんな細かいところまで自転車の違反を取ることは無いでしょう。

赤は違反ではないが、青は違反になる(厳密に解釈すると)。

左側端通行義務違反に問えるのか?

本件、交差点付近以外では左側端通行義務があります。

(左側寄り通行等)
第十八条 車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び原動機付自転車にあつては道路の左側に寄つて、軽車両にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、第二十五条第二項若しくは第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央若しくは右側端に寄るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。

道路交通法では、左側端がどこまでなのかが示されていません。
その上で、道交法では22ヵ所【左側端】という単語が登場しますが、【できる限り左側端】と【左側端】は異なるというのが一般的解釈なので(執務資料道路交通法解説など)、【できるかぎり左側端】を除外すると10ヵ所出てきます。

例えば法10条では、歩行者の通行区分について定めています。

(通行区分)
第十条 歩行者は、歩道又は歩行者の通行に十分な幅員を有する路側帯(次項及び次条において「歩道等」という。)と車道の区別のない道路においては道路の右側端に寄つて通行しなければならない。ただし、道路の右側端を通行することが危険であるときその他やむを得ないときは、道路の左側端に寄つて通行することができる。

例えば片側2車線道路で歩道が無い場合、10条(歩行者の通行区分)について検討します。
左側端に寄って通行も可能ですが、こんな位置を歩いていて左側端と言えますかね?


(歩行者だと仮定した場合で、歩道も路側帯もない場合)

18条1項では自転車の左側端寄り通行を求めていますが、法解釈上、道路上の危険が無い限度で、可能な範囲で左に寄ることと解釈されます。
道路上の危険というのは、路肩を指します。

歩道がある道路の場合、路肩も車道の一部になりますが、

路肩には側溝があったり、デコボコして危険なため、継続して通行するには適しません。
そのため路肩を除外した上で、可能な範囲で左側端に寄るとなると、せいぜいこの点線あたりまでになるかと。

せいぜい、この点線よりも外側じゃないですかね。
ナビラインは車道外側線からやや外気味に設置されているようですが、広めに左側端を見積もってもこの点線程度までかと。

あくまでも道路上の危険を避ける限度での話なので、追越し車両の危険を避ける意味は含まれません。
追越しについては、後続車に責任があるため、後続車の責任の範囲で安全な方法と速度が求められます。

(追越しの方法)
第二十八条 車両は、他の車両を追い越そうとするときは、その追い越されようとする車両(以下この節において「前車」という。)の右側を通行しなければならない。
2 車両は、他の車両を追い越そうとする場合において、前車が第二十五条第二項又は第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央又は右側端に寄つて通行しているときは、前項の規定にかかわらず、その左側を通行しなければならない。
3 車両は、路面電車を追い越そうとするときは、当該車両が追いついた路面電車の左側を通行しなければならない。ただし、軌道が道路の左側端に寄つて設けられているときは、この限りでない。
4 前三項の場合においては、追越しをしようとする車両(次条において「後車」という。)は、反対の方向又は後方からの交通及び前車又は路面電車の前方の交通にも十分に注意し、かつ、前車又は路面電車の速度及び進路並びに道路の状況に応じて、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。

この通行位置が左側端と解釈することは社会通念上もあり得ないので、18条1項の違反となります。
道路全体で見た場合にこの位置は8分の1の範囲だから、センターライン左側で見れば4分の1の範囲だから左側端だ!というトンデモ論を出す人もいるのですが、これは論点のすり替えそのもので、何分の1だからセーフという考え方はありません
そんな考え方だと、じゃあ片側3車線道路でも4分の1の範疇なら左側端なの??となるだけですし。

18条1項の左側端通行義務については、立法趣旨を検討すれば理解できるので後述します。

左側端という道交法上の規定を見ていくと、10条の歩行者の通行区分を見ても明らかなんじゃないですかね。
道路上の危険(路肩)を避けつつ、可能な範囲で左に詰めること=左側端通行

ただし問題なのは、18条1項には罰則規定がありません。

(左側寄り通行等)
第十八条 車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び原動機付自転車にあつては道路の左側に寄つて、軽車両にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、第二十五条第二項若しくは第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央若しくは右側端に寄るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。
2 車両は、前項の規定により歩道と車道の区別のない道路を通行する場合その他の場合において、歩行者の側方を通過するときは、これとの間に安全な間隔を保ち、又は徐行しなければならない。
(罰則 第二項については第百十九条第一項第二号の二)

警察官は注意指導することは出来ますが、罰則が無いので取り締まりに遭うことはありません。
注意指導に従わない場合は、また別の問題が生じますがそれは本筋ではないので省略します。

18条1項に罰則が無いのは理由があります。
この規定はキープレフトの原則と称されますが、なぜこの規定があるのかについて検討します。

これについてはこちらでも解説しています。

だいぶ前にも書いたのですが、検索しても出てこないw と思ったらこれか。 だいぶ前のことですが、片側一車線道路...

なぜ18条1項のキープレフトの原則があるかというと、昭和39年に道路交通に関する条約(ジュネーブ条約)に加入したことが理由。
国際免許に関わる条約ですが、昭和39年というと東京オリンピックの年でもあります。

ジュネーブ条約

第9条
1,道路において同一方向に進行する車両は、道路の同一の側を通行するものとし、その通行する側は、それぞれの国においてすべての道路について統一されていなければならない。ただし、一方通行に関する国内法令の適用は、妨げられないものとする。
2,運転者は、原則として、また、第7条の規定により必要とされるときは、次のことを守らなければならない。
(a)2の通行帯を有し、一方通行を行なうこととされている車道においては、自己が進行する方向に適応した側の通行帯において車両を運行すること。
(b)2を超える通行帯を有する車道においては、自己が進行する方向に適応した側の車道の端に最も近い通行帯において車両を運行すること。

第11条 運転者は、行き違うとき又は追い越されるときは、自己が進行する方向に適応した側の車道の端に出来る限り寄らなければならない。

これだけを見ると、車両通行帯がある道路での第一通行帯義務だけで十分だと思うのですが、このように説明されています。

以上のルールは、道路上を対向する車両同士の進路を分け、かつ、道路の中央部分を空けておくことで、①対向車同士の擦れ違いを円滑にし、②同一方向に進行する車両同士の追越しを容易にしようとするものである。

(中略)

「キープレフト」の原則を定めた条約9条第2項(b)に対応するためには、旧第19条及び第20条を廃止し車両通行帯の設けられた道路における通行区分を定める本法第20条第1項本文の規定を置けば足りるわけだが、そもそも道路の中央部分を追越しのために空けておくという「キープレフト」の考え方は、通行帯の設けられた道路に限らず、およそ道路一般に適用される普遍的な思想であったので、車両通行帯の設けられていない道路における「キープレフト」についても、旧第19条を改正する形で第18条の左側寄り通行の規定を置いたのである。

道路交通法研究会 注解道路交通法【第5版】、立花書房

18条1項のキープレフトの基本概念は、「道路の中央を空けておくことで追い越しをしやすくする」ということと、「自転車は左側端、車は左側端を空けた上で左に寄ることで追越ししやすくする」こと。
車両通行帯では追越しする車両は第二通行帯などから追越しでき、追い抜かれる車両は第一通行帯を通行するわけですが、その概念を車両通行帯がない道路にも適用しようということです。

国会議事録でも上で書いたような解釈となっています。

先ほど御説明いたしましたキープ・レフトの原則は、これを徹底いたしますと、自動車であろうが、いま御指摘の原動機付自転車であろうが、すべて道路の左側を走るということに相なりますが、ただいま御指摘ありましたように、わが国におきましては、非常なたくさんの種類の車が走る混合交通といったような実態がございますので、キープ・レフトの原則をとるといたしましても、一応軽車両とそれ以外の車両、つまり自動車と分けて、軽車両は道路の一番左端を通る、それ以外の車両は、左端に寄ったところを通るという区分を考えております。御承知のように、通行帯と申しまして筋を引きました場合には、そういう軽車両用の通行帯を引く場合もございます。その場合には、軽車両は定められた通行帯を通る、それ以外の自動車はほかの通行帯を通る、かように相なっております。

https://kokkai.ndl.go.jp/txt/104614720X02119640402/31

18条1項では、軽車両は左側端、車やオートバイは左側によってとなっていますが、車やオートバイについては自転車が通行する左側端を空けた上で左側によるものと解釈されています。

とはいえ、左側の範囲には左側端も含まれるため、道路幅によっては自転車の左側端分を空けることまでは求めていないわけです。

○川村委員 わかりました。
それから次に、この前委員から質疑があっておりましたが、十八条の規定であります。このキープレフトの問題はこれは原則でありまして、日本の道路の中にはこれを実施する道路はそうたくさんはない、こういうように裏から解釈しておいてよろしゅうございますか。

https://kokkai.ndl.go.jp/txt/104604720X04619640519/41

○高橋(幹)政府委員 いわゆる交通混雑しております市街地の部面と、それから交通混雑していなくてもいわゆる道路の幅員等の状況で必ずしもこの原則が守られないといいますか、この原則どおりできないところの道路がわりあいに多いのではなかろうか、こういうふうに解釈していただいてけっこうです。

https://kokkai.ndl.go.jp/txt/104604720X04619640519/42

※管理人注:原則通りに出来ないというのは、自転車の話ではなく車の話です。

18条1項に罰則が無い理由は、原理原則をそのまま適用できない道路もあるからということ。

左側端を空けた上で左側に車が寄るとなると、下手するとセンターラインを越えてしまう。

どこまでが左側端なのかが明らかではなく、かつ原理原則通りに出来ない道路幅もあるため、18条1項には罰則がありません。

立法趣旨、立法経緯から見ても明らかなように、18条1項の左側端通行の義務というのは、速度が速い車に追越しさせやすくする規定です。
追越しをブロックするために車線の真ん中を通行するのは、法に反するのは明らかですね。

第1項の規定の違反行為については、罰則が設けられていない。これは、この規定による通行区分は、道路一般についての車両の通行区分の基本的な原則を定めたものであり、また、道路の状況によっては、道路の左側端又は左側といってもそれらの部分がはっきりしない場合もあるので、罰則をもって強制することは必ずしも適当ではないと考えられるからである。(従前の通行区分の基本的原則を定めた旧第19条の規定についても、ほぼ同様の理由により、同じく罰則が設けられていなかった。)。

道路交通法研究会 注解道路交通法【第5版】、立花書房

なお、18条1項では刑事罰を課すことは出来ませんが、事故が起こった場合は過失になる可能性があります。

18条1項に関係する判例が一応あります。

各種車両の交通頻繁な箇所では、最高速度時速30キロメートルの原動機付自転車は、本条の立法趣旨を尊重し、軽車両同様できるだけ第一車線上の道路左側端を通行して事故の発生を未然に防止すべきである

昭和48年1月19日 福岡地裁小倉支部

ちなみに旧道路交通法(廃止)では、車両の優先順位が明確化されていました。

第18条 車両相互の間の通行の優先順位は、次の順序による。
1 自動車(自動二輪車及び軽自動車を除く)及びトロリーバス
2 自動二輪車及び軽自動車
3 原動機付き自転車
4 軽車両

追越しと追い抜きの違いがわからない方はこちらへどうぞ。

どうも二輪車の場合、追越しと追い抜きについて誤解が多いような気がします。 今回は法律上の、正しい追越しと追い抜きについて考察します。 追...

普通に自転車側の違反かと

本件を見ていくと、交差点付近のイエローラインが引かれた部分を除けば、道路標示は102(車線境界線)であって109(車両通行帯)ではありません。
そのため自転車には左側端通行の義務(18条1項)がありますので、自転車の違反がまず先行します。

それに対し、後続車は警音器を使用していますが、通行位置違反(左側端通行義務違反)を犯す自転車への注意喚起とみなせますので、違法性があるとまでは言えない。
というよりも、妨害しているのはむしろ自転車になってしまいます(通行位置が左側端ではないため)。
警音器の使用制限(法54条)は妨害運転罪の構成要素にもなりますが、妨害運転罪は妨害意思の立証が必要になるため成立しません。

第百十七条の二の二
十一 他の車両等の通行を妨害する目的で、次のいずれかに掲げる行為であつて、当該他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法によるものをした者
イ 第十七条(通行区分)第四項の規定の違反となるような行為
ロ 第二十四条(急ブレーキの禁止)の規定に違反する行為
ハ 第二十六条(車間距離の保持)の規定の違反となるような行為
ニ 第二十六条の二(進路の変更の禁止)第二項の規定の違反となるような行為
ホ 第二十八条(追越しの方法)第一項又は第四項の規定の違反となるような行為
ヘ 第五十二条(車両等の灯火)第二項の規定に違反する行為
ト 第五十四条(警音器の使用等)第二項の規定に違反する行為
チ 第七十条(安全運転の義務)の規定に違反する行為
リ 第七十五条の四(最低速度)の規定の違反となるような行為
ヌ 第七十五条の八(停車及び駐車の禁止)第一項の規定の違反となるような行為

車間距離についてはまあまあ微妙ですが、後続車も減速して様子を見ていることを考慮すると問題なしなのかと。

以上の理由から、本件を正しく法律に則って解釈すると、自転車側の左側端通行義務違反がまずあり、それに対し後続車は危険回避目的で警音器を使用したものと思われます。

18条1項には罰則がありませんし、本件では誰かが罪に問われる可能性は事実上ゼロなのかと。

しかしながら18条1項の左側端通行の義務については、立法趣旨から検討しても、車に追越しさせやすくする規定です。
その立法趣旨に反した走行なのは明らかですね。
18条1項の違反があることにより、違反を咎める後続車が警音器を使ったと評価すべきものかと。

<追記>
左側端の範囲について拡大解釈される傾向があるので、再検討しました。

先日の記事に少し補足。 そもそも自転車が通る左側端って??というところが不明瞭ですが、一応判例があると言えばあ...

一般道の車両通行帯について

ロード乗りの中では、複数車線=車両通行帯という認識になっていて、複数車線の場合は第一通行帯の中であればどこを通行してもいいと解釈する傾向にあります。

これ、以前も某県警本部の人に全否定されたことがあるのですが、話が噛み合わないことが多いです。

話が噛み合わない理由なんですが、警察が考えている車両通行帯と、ロード乗りが考える車両通行帯の間には大きな乖離があるからだと思われます。
警察の常識としては、一般道で車両通行帯がある場所なんて、指定通行区分されている(左折マークや右折マークがある)交差点付近限定。
それ以外は車線境界線で区切っただけの道路。

けどロード乗りの感覚って、複数車線=車両通行帯だと思いこんでいる

この乖離があるから話が噛み合わないんだと、昨年気が付きました。

まあ警察官も、車両通行帯だと誤認して取り締まりして大問題になっているくらいですからねぇ・・・

埼玉県警は20日、県内の交差点3カ所で必要な手続きを経ずに原付きバイクの2段階右折違反の取り締まりをしていた、と発表した。資料が残っている過去8年間で計342件あり、対象者に順次連絡を取って反則金の還付や点数抹消などをするという。

交通規制課などによると、3カ所は和光市と新座市の国道や県道の交差点。道路交通法では片側3車線以上の道路などで原付きバイクに2段階右折を義務づけているが、警察庁の交通規制基準によって、県警が違反を取り締まる際には県公安委員会が事前に道路の車線数などを認定している必要がある。3カ所はいずれも3車線だったが、その認定がされていなかった。

一方、このほか県内151カ所の交差点でも車線数が正しく認定されておらず、全容を調べている。

https://www.asahi.com/articles/ASP1N64N1P1NUTNB019.html

交差点だから必ず車両通行帯というわけでもない実例ですね。
そう考えると、一般道での車両通行帯なんて交差点付近のみだけど、全ての交差点ではないことは明らか。
この件は最高裁に非常上告され、取消になっています。

さいたま簡易裁判所は,平成23年4月21日,「被告人は,平成20年11月18日午後4時35分頃,埼玉県三郷市栄1丁目386番地2東京外環自動車道内回り31.7キロポスト付近道路において,普通乗用自動車(軽四)を運転して,法定の車両通行帯以外の車両通行帯を通行した。」旨の事実を認定した上,道路交通法120条1項3号,20条1項本文,4条1項,同法施行令1条の2,刑法66条,71条,68条4号,18条,刑訴法348条を適用して,被告人を罰金6000円に処する旨の略式命令を発付し,同略式命令は,平成23年5月7日確定した。
しかしながら,一件記録によると,本件道路は,埼玉県公安委員会による車両通行帯とすることの意思決定がされておらず,道路交通法20条1項の「車両通行帯の設けられた道路」に該当しない。したがって,被告人が法定の車両通行帯以外の
車両通行帯を通行したとはいえず,前記略式命令の認定事実は,罪とならなかったものといわなければならない。

最高裁判所第二小法廷 平成27年6月8日

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/208/085208_hanrei.pdf

 

道交法解説で定評がある執務資料道路交通法解説ではこのように解説されています。

車両通行帯は、公安委員会が本条1項の規定により車両通行帯とすることの意思決定を行い、標識令に規定する規制標示「車両通行帯」(109)を設置して行わなければならない(警察署長にはこの権限がない。)。したがって、右要件を欠く単なる白色の線で区切っただけでは車両通行帯とはならない。

また、道路管理者が設ける車線境界線は、外観が公安委員会の設ける車両通行帯境界線と同一であるが、標識令において車両通行帯とみなすこととされていないためこの法律上これらの車線境界線のある道路は外観が車両通行帯境界線と同一であっても、法第18条の車両通行帯の設けられていない道路における通行区分(キープレフト)に従うことになる(警視庁道交法)。したがって、実際上において混乱をさけるため、道路管理者と公安委員会の事前の協議が必要であると考えられる。

なお、公安委員会が車両通行帯を設けるときは、令第1条の2第4項に定める次の事項を遵守しなければならないことになっている。

野下文生、道路交通執務研究会、執務資料道路交通法解説(2018)、p209-210、東京法令出版

警察が言うには、車道通行時は左側端のみ、自転車レーン(普通自転車専用通行帯)がある場合はその中だけと言います。
交差点付近くらいしか一般道では車両通行帯ではないので、事実上としては左側端のみになるという解釈です。

事実上のこととしてまとめます。

通行位置例外意味根拠法
車道事実上、交差点付近以外では左側端しか走れない法18条、20条、省令、実態から
普通自転車専用通行帯がある普通自転車専用通行帯の中であればどこでもOK法20条
自転車道道路上に自転車道がある場合は、自転車道の通行義務がある法63条の3
路側帯歩行者の通行を妨げないような速度と方法で進行(一部通行不可の路側帯アリ)法17条の2
歩道原則不可法17条の1
自転車歩行者通行可の標識アリ原則徐行、歩行者優先法63条の4
13歳未満70歳以上法63条の4、令26条
普通自転車通行指定部分通行しようとする歩行者がないときは、歩道の状況に応じた安全な速度と方法法63条の4

自転車道の話はこちらへ。

自転車道関連の話は何度も書いていますが、道路に自転車道がある場合、自転車は自転車道の通行義務があります。 (自転車道の通行区分) ...

交差点付近は車両通行帯になっていることが多いので、だから左折専用レーンでこのように動いても違反にならないんじゃないですかね。

直前までは車線境界線なので左側端通行義務があるけど、交差点付近では車両通行帯になっているので、第一通行帯の中だとどこでもOKになる。
そう考えると、うまいこと出来ているなと思う。

先にも書いたように、18条1項(左側端通行義務)の立法趣旨は、速度が遅い自転車は左側端を走らせることで、速度が速い車が追越ししやすくするルールです。
ちなみに左側端に固定されているために、法27条の【追いつかれた車両の義務】が適用除外なんじゃないかと思います。

左側端に寄らずに走行している自転車は、車に対して【追越しするときは側方距離を取れ】なんて言えないですよね。
追越しやすくするためのルールなので、守ってない人がいくら言っても説得力がない。
こういうのって、対立構造になっても何も変わらないので、自転車は左側端に寄って通行することで、車が追越ししやすくする。
車は自転車の配慮に感謝し、側方間隔をきちんと取り、速度を抑えながら安全に追い越す。

これが本来の道交法の概念なのは明らかですね。
自転車が追越しさせにくくするために左側端に寄らなかったら、後続車の追越し方法に文句言える立場なのかは甚だ疑問。

こういうところも含めて、道路上ではお互い様なんですよ。
喧嘩売ってくる人に、何で優しくする必要があるの??

あんまりこういうことを書きたくないですが、自転車乗りが勝手な法解釈をしたがる原因って、あるサイトでの解説が原因じゃないかと思うときがあります。
いかにも権威ありげに書いているのですが、かなり間違いが多いのが現実。

例えば自転車横断帯についても、法的には通行義務があります。

結構前に読者様から指摘いただいていた件があります。 上記リンクにあるようにそういった横断帯は交差点...

けど多くのロードバイクは、自転車横断帯があっても車道のまままっすぐ進行します。
間違っても一度左折風に入って通行する人はいないかと。

あるところでは判例があるみたいに書いてますが、日本で最大規模の判例検索サイト(ウェストロージャパン)でもヒットせず、そもそも判例があるとは思えないんですよ。
だってこれ、自転車横断帯の通行義務はありますが、罰則が無いので。
より正確に書くと、警察官から横断帯を通行するように指示されたにもかかわらず、指示を無視した場合のみ罰則があります。

(交差点における自転車の通行方法)
第六十三条の七 自転車は、前条に規定するもののほか、交差点を通行しようとする場合において、当該交差点又はその付近に自転車横断帯があるときは、第十七条第四項、第三十四条第一項及び第三項並びに第三十五条の二の規定にかかわらず、当該自転車横断帯を進行しなければならない。
2 普通自転車は、交差点又はその手前の直近において、当該交差点への進入の禁止を表示する道路標示があるときは、当該道路標示を越えて当該交差点に入つてはならない。
(自転車の通行方法の指示)
第六十三条の八 警察官等は、第六十三条の六若しくは前条第一項の規定に違反して通行している自転車の運転者に対し、これらの規定に定める通行方法により当該自転車を通行させ、又は同条第二項の規定に違反して通行している普通自転車の運転者に対し、当該普通自転車を歩道により通行させるべきことを指示することができる。
(罰則 第百二十一条第一項第四号)

警察官がこんなものを指示することもあり得ないに等しい上に、自転車違反として切符を切られた人の起訴率って1%くらいしかありません。
そんなもんで高裁まで争うこと自体が想定できない。

なのでこういうのって、法的には横断帯の通行義務があるけど、事実上罰則が無いので従わないというのが正解。
危険を犯して左折風になるほうが怖いので。

ツイッターの件についても、車両通行帯だから第一通行帯の中なら問題ないという解釈は間違っていて、18条1項の左側端通行義務には罰則が無いから、違反を承知で好き勝手やってますというほうが正解なんじゃないでしょうか?

私の場合なら、道路上の人とは仲良くすることで安全性が高まると考えていますので、普通に左側端を通行します。
憎しみとか争いは、マイナスしか生まれないんですよ。
自転車乗りってルール無視とかマナー違反とかよく言われますが、安全性を高めるには、車の人から認めてもらうにはどうあるべきかを考えたほうがいいと思います。
対立構造は絶対に良くないので。

うちの近所は片側1車線で歩道もほぼ無いにもかかわらず、バスが3分に一本とか通るようなところなんですが、当然のように朝晩は渋滞します。 おか...

自転車ナビマーク・ナビラインについて

最後に自転車ナビマークについて。
法定外標示なので法的拘束力がないと言われます。

これについてはその通りなんですが、意味としては法律に規定されていないものは、何かを拘束することは無いというだけの話ですよね。
それと同時に、車両通行帯が無い道路の場合、自転車には左側端通行が求められています。
なので左側端に描いてあるナビマークは、ここが左側端の目安ですよと教えてくれているとも言えるので、法的拘束力はなくとも事実上の拘束力に近いものがあるのかなと考えます。

もちろん法定外標示なので、ナビマークのわずかに内側とかも左側端の範囲ですが。
たまにおかしな位置にナビマークがあることもあるので、そういうのは除外。

1年くらい前から車両通行帯については疑問があったのでいろいろ調べていましたが、結論から言うと、一般道で車両通行帯のあるのは、ほとんどが指定通行区分がある交差点付近のみと考えていいかと。(ゼロとは言いませんが)
これは交通関係部署の警察官の中では、たぶん当たり前のことなんだろうと思います。
だから警察に聞くと、【左側端のみ】というわけですが、これって結局のところ、事実上はそうなっているというだけなんでしょうね。

ということで車両通行帯ガーという理論は、基本的に無意味です。
第一通行帯だからどこでもOKというのは、事実上はほぼ成立しない(=交差点付近以外はほぼ存在しないに等しい)。

この件、違反でも構わないから裁判で争うなどと開き直ってしまうケースもあるのですが、そもそも18条1項には罰則が無く、刑事裁判になることはあり得ません。
最高裁まで争うんだ!とか言い出す人もいます。
裁判を経験して知っている人ならわかると思いますが、最高裁ってこういうのを取り扱う可能性はほぼゼロ。
日本は三審制とか言われますが、最高裁は高裁判決に憲法違反がある場合などしか上告を認めていない。
ほかにも上告理由は僅かにありますが、上告理由・上告受理申立理由に該当することなんてほぼないので、門前払いされるだけなんですけどね。

だから日本は実質二審制と言われるわけで。




コメント

  1. うえはらけんじ より:

    以前自転車が追いつかれた場合について質問したものです。
    いろいろ読んでいてどの記事にポストしたのかわからなくなってしまい、ここで失礼します。
    他の記事を読んで、自転車に最高速度が設定されていない、というように理解しました。

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      その通りです。
      ただしちょっと気をつけたほうがいいのは、【最高速度がない】というと語弊があるので、【法定最高速度がない】のほうが正解です。