先日の記事に少し補足。
そもそも自転車が通る左側端って??というところが不明瞭ですが、一応判例があると言えばあります。
ただし解説書だけを見たり、判例解釈を誤ったり、一文だけを取り上げてしまうと誤った解釈に陥るので、複数の資料等を元に検討します。
先におさらい
先日の件ですが、交差点付近の指定通行区分があるイエローラインのところは車両通行帯(109)ですが、それ以外のところは車線境界線(102)になっていることで確定してます。
そうなると車両通行帯が無い道路なので、18条1項の規定に基づいて自転車は左側端通行することになります。
第十八条 車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び原動機付自転車にあつては道路の左側に寄つて、軽車両にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、第二十五条第二項若しくは第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央若しくは右側端に寄るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。
道路交通法上、左側端がどこまでなのかについては定義がありませんが、道路左側の何分の1までならセーフとか、珍論が出ることも。
そんなの、道路幅次第でいくらでも変わるだろwとツッコミしたくなります。
今回のケースでは、車線境界線(102)で区切った片側2車線道路ですが、車両通行帯(109)ではないので、左側端=路肩を除いた道路左端を通行する義務があると言えますね。
路肩ギリギリというのも危ないので、実務上の話で言うと、この点線あたりが左側端の最大点ではないでしょうか?
みなし車両通行帯
複数車線の道路の場合、車両通行帯か、もしくは車線境界線で区切った道路のどちらかになります。
見分けがつかないのだから、車両通行帯として考えてもいいという人もいますが、それは本当に法的な根拠があるのかを検証します。
種類 | 番号 | 設置場所・意味 |
車線境界線 | 102 | 四車線以上の車道の区間内の車線の境界線を示す必要がある区間の車線の境界 |
車両通行帯 | 109 | 交通法第二条第一項第七号に規定する車両通行帯であること。車両通行帯を設ける道路の区間 |
※四車線以上というのは道路全体の話なので、片側2車線以上と同義。
つまり複数車線ある道路の場合、以下の二つのどちらかになります。
標示番号 | 設置者 | |
車線境界線で区切られた道路 | 102 | 道路管理者(国道であれば国道事務所、都道府県道であれば都道府県) |
車両通行帯 | 109 | 各都道府県の公安委員会 |
まあ、見た目は同じですw
道路交通法にこのような規定があります。
区画線であっても道交法上の道路標示とみなすものがあることになってますが、道路標識、区画線及び道路標示に関する命令の7条。
第七条 次の表の上欄に掲げる種類の区画線は、道路交通法(昭和三十五年法律第百五号。以下「交通法」という。)の規定の適用については、それぞれ同表の下欄に掲げる種類の道路標示とみなす。
区画線 |
道路標示
|
「車道中央線」を表示するもの | 「中央線」を表示するもの |
「車道外側線」を表示するもの(歩道の設けられていない道路又は道路の歩道の設けられていない側の路端寄りに設けられ、かつ、実線で表示されるものに限る。) | 「路側帯」を表示するもの |
車線境界線が含まれていないので、車線境界線で区切った道路を車両通行帯とみなすだけの根拠は特に無いですね。
強いて言うなら18条1項(車両通行帯がない道路でのキープレフト)については、以前も書いたように罰則が無いので、違反として取り締まることが不可能。
なのでこんな位置を走っていたとしても、注意指導しかできないということになります。
違反として取れないことを拡大解釈すると、車両通行帯とみなしても構わない・・・となるとは思いませんが。
昭和46年の国会議事録を見ると、車線境界線も車両通行帯としての意味を持たせるみたいな記述があるのですが、
第二条第二項、第百十条の二第三項から第七項まで等の規定は、道路法の規定に基づいて道路の管理者が設置した車道中央線、車線境界線、車道外側線等の区画線を中央線、車両通行帯、路側帯等を表示する道路標示とみなすこととするとともに、車両通行帯の設置、法定の最高速度をこえる最高速度の指定等現在も道路の管理者の意見を聞かなければならないこととされているもののほか、通行の禁止、横断歩道の設置等についても道路の管理者の意見を聞かなければならないこととし、さらに高速自動車国道または自動車専用道路における通行の禁止、追い越しの禁止等については道路の管理者に協議しなければならないこととする等道路の管理者等との関係について規定を整備しようとするものであります。
国会会議録検索システム
国会議事録を見ると、車線境界線を車両通行帯とみなす法改正を検討していた様子。
この当時はそういう法律だったけど改正されたのか、やっぱり思い直して修正したのかはよくわかりませんが、現状の法律では車線境界線を車両通行帯とみなす法律はない。
とりあえず今の法律では上で書いた通りなのと、警察庁の通達でも同じになっています。
法第2条第2項及び標識令第7条の規定により、「車道中央線」を表示する区画線は「中央線」を表示する道路標示に、「車道外側線」を表示する区画線(歩道の設けられていない道路又は道路の歩道の設けられていない側の路端寄りに設けられ、かつ、実線で表示されるものに限る。)は「路側帯」を表示する道路標示に、それぞれみなされるので、公安委員会の意思決定を要しない。
しかし、「車線境界線」及び「車道外側線」を表示する区画線(「車道外側線」を表示するものにあっては「路側帯」を表示する道路標示にみなされる場合を除く。)は、「車両通行帯」を表示する道路標示としての効果を持たせる必要がある場合には、公安委員会による「車両通行帯」設置の意思決定が必要である。
https://www.npa.go.jp/laws/notification/koutuu/kisei/kisei20170424.pdf
18条1項の解説書の説明や判例
18条1項には罰則が無いので判例自体も多くはありません。
解説書でも微妙に見解が割れています。
共通する概念としては、車は自転車が通行する左側端を空けた上で左側に寄るということですね。つまり自転車は左側端。
まずは執務資料道路交通法解説から見ていきます。
軽車両にあっては、歩道等と車道の区別のある道路では、車道の左端に近寄ってという意味であり、
野下文生、道路交通執務研究会、執務資料道路交通法解説、2018、p204
しかし、法20条の車両通行帯とは全く異質のものであるから、軽車両が自動車などの通行する部分を通行したからと言って通行帯違反とすることはできない。
野下文生、道路交通執務研究会、執務資料道路交通法解説、2018、p204
執務資料道路交通法解説では、自転車が左側端とは言い難い部分を通行しても、通行帯違反とすることはできないとしています。
ただこれについては表現方法としては不適切な上に、後述しますが矛盾したことを書いている。
執務資料の解説によれば、自転車がセンターラインギリギリの左側を通行していても、通行帯違反とすることは出来ないとなります。
つまりは、センターラインの左側であればどこを走っても違反ではないという意味になってしまう。
注:片側1車線道路の図
18条1項の規定は通行帯【風】であって通行帯ではないということを理由にしているようですが、この位置を自転車で走っていて後ろからパトカーが来て何の注意もされないということは考えにくい。
実際のところこの方って、警察に映像を見せて「左側端を通れ」みたいに言われた方だと思うのですが・・・
こんな位置を通行している自転車がいた場合には、法の理念から逸脱しているけれど罰則がないから取り締まり出来ないと表記するほうが正解ではないでしょうか?
違反ではないという表現は不正解で、違反ではあるが罰則がないと表記すべき。
執務資料では、車が左側端を通った場合に違反と言えるのかについては言及がありませんが、車についても18条1項では罰則が無いので、同様に違反となることはありません。
執務資料の記載、この項目については矛盾があるのですが、例えばこうなっています。
(5)「それぞれ当該道路を通行しなければならない」とは
自動車等は道路(歩道等と車道の区別がある道路においては、車道)の左側に寄って、軽車両にあっては道路(歩道等と車道の区別がある道路においては、車道)の左側端に寄って通行すべき義務を明示したものである。
野下文生、道路交通執務研究会、執務資料道路交通法解説、2018、p204-205
車の通行部分を自転車が通っても違反とすることは出来ないとしながらも、今度は自転車が左側端を通ることは【義務】だとしている。
(6)「ただし、・・・・・又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りではない」とは
本項ただし書きに規定する除外理由に該当する場合には、車両は、キープレフトの原則によらなくてよいという意味である。しかし、除外理由がやんだ場合は、直ちにキープレフトの原則にもどらなければならない。
野下文生、道路交通執務研究会、執務資料道路交通法解説、2018、p205
自転車が車の通行する部分を通行しても通行帯違反とすることは出来ないと書きつつも、除外理由が済んだら戻る義務(なければならない)があると書いている。
自転車は左側端を通行する義務があるし、除外理由が済んだら戻る義務があるけど、左側端以外を走っても違反ではありません!って凄い矛盾してますよね。
その解釈だと、結局のところ道路の中央から左側であればどこを走っても問題ないと解釈されうる恐れすら出てくるけど、除外理由が済んだら戻れ??どこに戻るの??
車の通行位置を走っても違反ではないけど、左側端を通行する義務があるし、除外理由が終わったら戻る義務があると書いている時点で、【車の通行位置を走ってもいい】or【左側端を通行する義務がある】or【除外理由が終わったら戻る義務がある】のどれかが間違いになる。
いったいお前は何を言っているんだ??というレベル。
第十八条 車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び原動機付自転車にあつては道路の左側に寄つて、軽車両にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、第二十五条第二項若しくは第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央若しくは右側端に寄るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。
【ただし・・・この限りではない】なので、追越し・右折するとき・その他やむを得ない事情(一般的には道路工事などを指します)の時だけ特別に許されていると解釈するものなので、除外理由が済んだら正しい位置に戻る義務を課している。
こういうところから考えれば、【通行帯違反とすることはできない】とする根拠は、単に18条1項に罰則が無いから違反を取れないだけと捉えるほうが自然。
左側端を通行する義務はあるし、除外理由が済んだら左側端に戻る義務があるけど、18条1項に罰則が無いので取り締まり出来ません!と書くべき。
これは過去の記事でも触れていること。
どの解説書でもそうですが、必ず正しいことを書いているわけでもない上に、一文だけピックアップすると意味を取り違える。
矛盾がある表現になっているので、とりあえずはほかの書籍や判例、国会議事録などを総合して考えないと意味が分からなくなるというか、執務資料の一文だけを恣意的に取り上げると間違いやすい。
【車の通行位置を走っても違反ではありません】というところだけ抜粋すると意味を間違うので、まともに文章を読める人であれば、間違ってもこの一文だけ取り上げたりはしないでしょう。
続いては違う解説書、注解道路交通法。
もっとも、厳密に述べるならば、「道路の左側」は「道路の左側端」を含むので、「道路の左側端に寄って通行する」ことは、「道路の左側に寄って通行する」こととなる。したがって、当該道路を軽車両が通行していない場合、自動車及び原動機付自転車は、道路の左側端に寄って通行することも差し支えない(もっとも、自動車や原動機付自転車は、軽車両に比べて走行速度も速いので、あまり左側端に寄り過ぎると交通安全上適切とはいえない)。
そもそも「キープレフト」の原則は、道路の中央部分を追越しのために空けておくという考え方によるものであり、道路の幅員が不十分な場合には、自動車等は相対的に左側端に寄ることになるであろうし、幅員が十分であれば、左側端側にそれなりの余裕を持って通行することとなろう。また、現実に軽車両が通行しているときは、自動車等は左側端に寄り難く、相対的に道路の中央寄りの部分を通行することになろう。このように「道路の左側に寄って」とは、あくまでも相対的な概念であり、具体的な場所が道路のどの部分を指すかは、道路の幅員及び交通状況によりある程度幅があるのである。
道路交通法研究会 注解道路交通法【第5版】、立花書房
つまり法解釈を厳格にすると、こういう解釈とは言い切れない。(図は片側1車線)
こっちが正解。
あくまでも相対的な概念だとしています。
さらに、左側には左側端も含まれるから、左側端を走る車がいても違反というわけでもないことに触れています。
自転車がいるのに左側端を車がそのまま進行すれば、衝突するだけなので中央寄りにならざるを得ないよねということも認めている。
この場合についても、違反ではない根拠って、結局は罰則が無いので違反として取り締まりできないというだけのこと。
明らかに不自然なほど左側端に寄って車が走っていれば、状況次第では注意指導する対象になりうるでしょうけど、罰則がない以上罰則は取れない。
さらに当時の国会議事録をみるとこうなっています。
先ほど御説明いたしましたキープ・レフトの原則は、これを徹底いたしますと、自動車であろうが、いま御指摘の原動機付自転車であろうが、すべて道路の左側を走るということに相なりますが、ただいま御指摘ありましたように、わが国におきましては、非常なたくさんの種類の車が走る混合交通といったような実態がございますので、キープ・レフトの原則をとるといたしましても、一応軽車両とそれ以外の車両、つまり自動車と分けて、軽車両は道路の一番左端を通る、それ以外の車両は、左端に寄ったところを通るという区分を考えております。御承知のように、通行帯と申しまして筋を引きました場合には、そういう軽車両用の通行帯を引く場合もございます。その場合には、軽車両は定められた通行帯を通る、それ以外の自動車はほかの通行帯を通る、かように相なっております。
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自転車は一番左端を通る、車はその横と解釈できる。
○川村委員 わかりました。
それから次に、この前委員から質疑があっておりましたが、十八条の規定であります。このキープレフトの問題はこれは原則でありまして、日本の道路の中にはこれを実施する道路はそうたくさんはない、こういうように裏から解釈しておいてよろしゅうございますか。
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○高橋(幹)政府委員 いわゆる交通混雑しております市街地の部面と、それから交通混雑していなくてもいわゆる道路の幅員等の状況で必ずしもこの原則が守られないといいますか、この原則どおりできないところの道路がわりあいに多いのではなかろうか、こういうふうに解釈していただいてけっこうです。
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あくまでも原則論に過ぎず、この通りに実施できない道路が多いのではないかと認めている。
次に判例を検討します。
ところで車両の通行区分をたてまえとして道路の左側部分の左側を通行するいわゆるキープレフトの原則に改めたものと解せられる道路交通法第一八条は、型と性能において異なる多種類の車両によるいわゆる混合交通の行われているわが国道路の現状に鑑み、第一項において、原則として、車両(トロリーバスを除く)は車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び原動機付自転車にあつては道路の左側に寄つて、軽車両にあつては道路の左側端に寄つてそれぞれ通行しなければならないと定め、例外の場合として追越しをするときなどを掲げている。そして同法第二七条は他の車両に迫いつかれた車両の注意義務を規定しているが、同条第二項は車両は車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き最高速度が高い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合においては第一八条の規定にかかわらず、できる限り道路の左側端によつてこれに進路を譲らなければならない。最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合において、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。と規定している。これらの規定を通覧すると、道路交通法第一八条第一項の自動車及び原動機付自転車の観念上の通行区分である「道路の左側に寄つて」とは道路の左側部分の左の方に寄つてという意味であり、具体的には軽車両が道路の左側部分に寄つて通行するために必要とされる道路の部分を除いた道路の部分の左はしに寄つてということであり、また前記法条の軽車両の観念上の通行区分である「道路の左側端に寄つて」とは路肩部分を除いた道路の部分の左はしに寄つてという意味であると解するを相当とする。
静岡地裁浜松支部 昭和42年(ワ)193号
https://daihanrei.com/l/%E9%9D%99%E5%B2%A1%E5%9C%B0%E6%96%B9%E8%A3%81%E5%88%A4%E6%89%80%E6%B5%9C%E6%9D%BE%E6%94%AF%E9%83%A8%20%E6%98%AD%E5%92%8C%EF%BC%94%EF%BC%92%E5%B9%B4%EF%BC%88%E3%83%AF%EF%BC%89%EF%BC%91%EF%BC%99%EF%BC%93%E5%8F%B7%20%E5%88%A4%E6%B1%BA
静岡地裁浜松支部の判例ですが、こういう事故です。
道路幅11mの道路で、原告車両が制限速度を超えて、センターラインを越えて追越しした。
その結果、対向車と衝突したという事故。
原告(オレンジ)の主張は、【相手方車両(青)がキープレフト違反があったのではないか、もっと左に寄れるはずなのに寄らずに通行し、キープレフトしていれば衝突事故は起きてないだろ?】ということで、青車両の過失を求めて起こした裁判です。
結論から言うと、青車両に過失は無いので、原告の請求を棄却するとなっています。
この判決では自転車の通行位置を明示しています。
【軽車両の観念上の通行区分である「道路の左側端に寄つて」とは路肩部分を除いた道路の部分の左はしに寄つてという意味であると解するを相当とする】なので、路肩を除いて左に詰めろということが自転車のキープレフトなわけです。
判決理由をみるとこのようになっています。
本件事故現場の道路の左側部分(舗装部分)の幅員は五・五〇メートルであることは既に認定したところにより明らかであるから自転車、荷車、馬車、牛車、リヤカーのような軽車両の通行に必要とされる道路の幅は約二メートルとみて、車体の幅が二メートル弱である青車両のような自動車の通行に必要とされる道路の幅は約二メートルとみるとき、青車両は道路中央線より約一・五〇メートル左側に寄つて通行すれば道路交通法第一八条第一項所定の「道路の左側に寄つて」という通行区分に違反しないこととなる。ところで既に認定したように青車両は本件事故当時道路中央線より左側に一メートルないし一・五〇メートル位入つたところを西進していて、しかも他の車両に追いつかれているような状況ではなかつたのであるから、青車両はキープレフトの原則に違反していなかつたものというべきである。
まあこれについては、以前も書いたようにキープレフトの法則ですね。
判例の読み方を理解していない人ってそれなりにいるように思うのですが、当たり前の話として、車は常に左側端2m分を空けて走行しろという意味ではありません。
この道路幅と車両幅などの前提条件の下で、青車両がキープレフト違反と言えるのか?を裁判所が判断しただけ。
5.5m幅の道路、車の幅が2m弱で、左に自転車通行分の2mを空けていることがキープレフト違反になるのか?というところが争点となっているわけですが、左側端2m空ける義務があるか無いかの話をしているわけではない。
逆に、これ以上左側端まで寄って車が通行していたら違反と言えるのか?というところについては一切触れていませんし(争点ではない上に、仮定の話をしても意味が無いので触れる必要も無いですが)。
赤車両が速度超過と、対向車の状況を十分確認しないまま追越ししたのが事故の本質。
ただこれも、判決文の意味を誤解すると、【自転車は左側端2mの中を通行すべき】とか【自転車の通行分として、左側端2mを空けるべき】などと恣意的解釈に陥る。
単にこの道路幅と車両の幅であれば、左側端2mを空けていても、車はキープレフト違反とは言えないというだけの判決です。
ただし一つの目安として自転車が通行する左側端というのは2m程度の範囲であるとも取れますが、この2mというのもこの道路幅と車両幅という前提があっての話。
意味がある表現としては、【軽車両の観念上の通行区分である「道路の左側端に寄つて」とは路肩部分を除いた道路の部分の左はしに寄つてという意味であると解するを相当とする】とする部分ですね。
ツイッターの件はこんな位置ですが、
18条1項は路肩部分を除いた左端に寄ってという意味だと法解釈になりますが、もっと寄れますよね。
18条1項には罰則が無いので違反として取り締まることはできないにしろ、法の概念に反していることは明らか。
後述しますが、この時代は道路幅が広いんです。
理由は後程。
ほかの判例だと、こういうのもあります。
各種車両の交通頻繁な箇所では、最高速度時速30キロメートルの原動機付自転車は、本条の立法趣旨を尊重し、軽車両同様できるだけ第一車線上の道路左側端を通行して事故の発生を未然に防止すべきである。
昭和48年1月19日 福岡地裁小倉支部
これについては詳細は不明ですが、自転車はできるだけ左側端を通行して事故の発生を予防すべきとも取れます。
【第一車線上の左端】とありますが、後述する道路構造が変更されたのは昭和45年、判例は昭和48年。
軽車両は第一車線の左端を通行するものだとしているのと同義ですね。
これも一つポイントがあるのですが、この文章では【すべき】という絶対的義務ではなく努力義務的な表現になっている。
18条1項は罰則が無い訓示規定だというところを明確にしているように思えます。
まあ、どちらも地裁判決なので判決の重みはありませんが、一定ラインの法解釈を示しているものと理解できます。
私も昨年まで訴訟をしてましたが、証拠として地裁判決を提出しても、全く重視されません。
裁判官の中には、判例とは最高裁判決のみを指すという原理原則を言う人もいますし。
ついでなので書きますと、判例があるとそれが神であるかの如く、全てだと誤解する人もいます。
日本国憲法76条3項では、
すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。
とあるのですが、日本は判例法主義ではなく制定法主義の国。
判例よりも法が優先します。
判例性を持つのは最高裁判決のみとも言われますが、最高裁であっても大法廷で判例変更というものがあります。
過去の最高裁判例とは違う見解を出すときには、大法廷で審議する決まりになっているのですが、最高裁の判例であっても覆すことができるという意味ですね。
下級審判例でもある程度は参考にはなりますが、同様の裁判が起こったときに全く違う判決が出ることもあるのが日本。
判例はありますか?判例はありますか?と聞いてくる人は、残念ながら根本的なところを理解していない可能性があります。
普通、ある主張に対して反論するときは、まともな人だと【判例はありますか?】と聞くのではなくて、【こういう判例であなたの主張は否定されていますね】と提示する。
判例が無い分野も普通にありますし、判例が無いと考えを曲げないという人がいたとしたら、ただの偏屈な人だと思えば良い。
さあここまで長くなりましたが、目も疲れてきたでしょうから下ネタでも入れますか!
やっぱりやめますw
真面目な話に戻ります。
解説書2つ、国会議事録、判例など総合的に考えてどう捉えるのが合理的なのか?
一つの解説書(執務資料道路交通法解説)の一文だけをみて、ほかの記述を無視して【軽車両が自動車などの通行する部分を通行したからと言って通行帯違反とすることはできない】というところだけ注目してガッツポーズするような短絡的な人はいないと思いますが、共通しているのは自転車は左側端だということ。
判例では自転車の左側端とは、【路肩を除いた左端に寄って】であって、【できるだけ第一車線の左側端を通行して事故の発生を防止すべき】ということも示されている。
執務資料道路交通法解説では、自転車が車の通行位置を通っても通行帯違反にすることが出来ないとありますが、それと同時に【車道の左端に近寄って】ともあるし、義務的な表現にもなっているので、矛盾がある記述になっている。
これの意味を考察すれば、18条1項に罰則が無いので事実上違反を取れないというだけのこと。
左側端の位置自体はある程度合理的に決まっているけど、そこを外れたとしても罰則が無いので事実上取り締まり不可能というだけの話。
実態論で言うならば、こんな位置にいる自転車にすら警察は注意もしませんからw(このケースでは恐らく、18条1項ではなく車両通行帯になる可能性が高そうですが)。
何か言いたそうな雰囲気は出てますが・・・自転車についてはそもそも罰則を適用するのは困難(事実上はほぼ100%が不起訴になる)なことを考えれば、面倒なことに関わらない警察官もいるでしょうし。
さらに言うと、18条1項の規定は国際条約に合わせる段階で出来た規定であることを考えても、国際条約の概念は【追い越される車両が端に寄る】なので、言うまでもなく。
ちなみに法27条の追いつかれた車両の義務は、自転車は適用除外とされます。
これ、なんで自転車が適用除外となっているのかを考察すると、自転車は実質左側端通行なので既に譲っていると解釈できると思います(私見です)。
上記全てを総合して考えれば、自転車は左側端に寄ることはまず確定ですよね。
左側端の範囲がどこまでなのかは明示されていないですが、判決の中では2mあれば十分とも取れるので、一つの目安としては左側端の範囲は、道路端から2m程度の範囲になりうるのですが、あくまでもこの2mについてはこの事故の前提条件の下での話なので、【路肩を除いて左端に寄る】というところが意味を持つ。
車の通行位置は道路幅により相対的に決まる上に、左側には左側端も含むから必ず左側端を空けておく義務までは課していないと捉えるのが自然かと。
けど結局のところ、18条1項には罰則が無いので、自転車だろうと車だろうと違反として取り締まることは不可能という限界も出ている。
こういうのって、一つの資料とか、一つの文章だけ見てそれを根拠にすると危険なので、複数の資料を検討することが大切。
矛盾する表現になっているのはちゃんと読めばわかると思いますが、矛盾する表現があるならばきちんと検証して、意味がある文章なのかどうかを判断することも大事。
二つの解説書、国会議事録、判例を検討していけば自ずと結論は導けますが、共通項として言えるのは自転車の左側端というのは路肩を除いた左端部分ですね。
国会議事録だと一番左側という表現。
これで左側端・・・だと思う人がいるのが凄い。
なので前の記事でも書いたように、左側端通行と言っても罰則が無いので、法の概念からは逸脱しているけど好き勝手にやってますという理論であればまだわかります。
好き勝手やっているけど、罰則も無いんだから悔しかったら捕まえてみろ!というなら、人としてはいかがなものかとは思いますが法律上はしょうがない。
けど見方によっては、煽り運転誘発走行になってしまうので、後続車のドライバーも自分を抑えるしかない。
【車両通行帯だから】というのであればとっくの昔に否定してますし、あの位置で左側端と言えないのも様々な資料や道交法での【左側端】の他条文をみていけばわかること。
次の項目では、道交法のほかの条文で【左側端】がどのように使われているのかも検討します。
意味を理解していないと
何だかおかしな理論を振りかざす人も正直いまして、法律の読み方を理解していないのかなと思うところもあるのですが。
例えばですが、昭和30年代の道路状況としてこういうのがあります。
https://www.city.miyazaki.miyazaki.jp/fs/3/8/4/2/5/1/_/384251.pdf
現行の道路交通法の基礎が出来たのは昭和39年。
恐らくこれ、旧道路交通法(昭和35年法律105号)時代ではないかと思われますが、昭和35年~38年まではキープレフトの概念が異なってました。
旧道路交通法
(並進する場合の通行区分)第十九条 当該道路の左側部分の 幅員が三メートルをこえる道路においては、自動車(自動二輪車及び軽自動車を除く。)及びトロリーバスは当該道路の中央寄り又は左側部分の中央を、自動二輪車、転自動車及 び原動機付自転車は当該道路の左側部分の中央を、軽車両は当該道路の左側端寄りを、それぞれ通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、第二十七条若しくは第四十 条第二項の規定により一時進路を譲るとき、第三十四条第一項、第二項若しくは第三項の規定により道路の左側若しくは中央に寄るとき、又は第四十条第一項の規定により道路の 左側に寄るときは、この限りでない。
イメージとしてはこんな感じですかね。
3m以上の道路が対象になってますが、3mでこんなムチャクチャな通行位置が出来るわけもない。
これが昭和39年以降だと、規定が変わっています。
変わった理由は、国際免許に関する条約への加入です。
現行の道路交通法
第十八条 車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び原動機付自転車にあつては道路の左側に寄つて、軽車両にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、第二十五条第二項若しくは第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央若しくは右側端に寄るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。
道路中央をなるべく空けるという内容に変更されています。
先ほど挙げた昭和30年代後半の道路ですが、
https://www.city.miyazaki.miyazaki.jp/fs/3/8/4/2/5/1/_/384251.pdf
なんか道路自体がやたら広く見えますよね。
この時代、道路構造令(=道路設計の手段に関わる法律)は幅員主義(道路幅で何とかする方法)を採用していたのですが、昭和45年に車線主義(車線を増やして交通の潤滑を図る)に変更しています。
道路幅で何とかしようとしていたものを、車線で区切る方向に持って行った。
ただまあこの画像、恐らく自転車が通行しているところは、旧道路交通法でいうところの【車両通行区分帯】なんじゃないかと思われます。
白線で区切ってあることからもその様子が伺い知れますが、現在で言うところの車両通行帯、自転車レーンに該当するものなのではないかと(詳細は不明です)。
旧道路交通法
国会議事録でもこれと思わしき内容は出ていますが、今でいうところの専用通行帯なのではないかと。
先ほど御説明いたしましたキープ・レフトの原則は、これを徹底いたしますと、自動車であろうが、いま御指摘の原動機付自転車であろうが、すべて道路の左側を走るということに相なりますが、ただいま御指摘ありましたように、わが国におきましては、非常なたくさんの種類の車が走る混合交通といったような実態がございますので、キープ・レフトの原則をとるといたしましても、一応軽車両とそれ以外の車両、つまり自動車と分けて、軽車両は道路の一番左端を通る、それ以外の車両は、左端に寄ったところを通るという区分を考えております。御承知のように、通行帯と申しまして筋を引きました場合には、そういう軽車両用の通行帯を引く場合もございます。その場合には、軽車両は定められた通行帯を通る、それ以外の自動車はほかの通行帯を通る、かように相なっております。
国会会議録検索システム
この時代、国会議事録でも明らかなようにキープレフトの原則が出来ない程度の道路幅が多く、かつ歩道未整備区間も多かったわけですが、18条1項のキープレフトの原則というのは、このように自転車は左側端、車は左側端を空けた上で左に寄ることとされています。
けど狭い道路では、左側端を空けたらセンターラインを越えてしまうわけで、この原則通りにできる道路は少ないとしています。
○川村委員 わかりました。
それから次に、この前委員から質疑があっておりましたが、十八条の規定であります。このキープレフトの問題はこれは原則でありまして、日本の道路の中にはこれを実施する道路はそうたくさんはない、こういうように裏から解釈しておいてよろしゅうございますか。
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○高橋(幹)政府委員 いわゆる交通混雑しております市街地の部面と、それから交通混雑していなくてもいわゆる道路の幅員等の状況で必ずしもこの原則が守られないといいますか、この原則どおりできないところの道路がわりあいに多いのではなかろうか、こういうふうに解釈していただいてけっこうです。
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※管理人注:原則通りに出来ないというのは、自転車の話ではなく車の話です。
立法趣旨としては、自転車の左側端を空けて車が左に寄ることで、仮想の通行帯風にしたかったわけですね。
けど道路幅などの問題から、その通りにできない道路は多いのではないかとしている。
なので上で挙げた昭和30年代の道路というのは、必ずしもこのように広い道路だったわけではないということがうかがい知れます。
そういう事情も理解していないと、古い画像だけ見て誤解しますし。
恐らくあの画像で出ている自転車通行場所は車両通行帯だと思うので、そもそもキープレフトは関係ないはず。
で、ここからが問題。
道路構造令が幅員主義から車線主義になって、車線を増やす方向になったわけですよ。
けど車線が増えたとしても、その道路が車両通行帯ではないならば、結局のところ自転車は左側端通行になる。
第十八条 車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び原動機付自転車にあつては道路の左側に寄つて、軽車両にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、第二十五条第二項若しくは第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央若しくは右側端に寄るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。
幅員主義から車線主義になっても、それは道路の作り方の法律であって、道路交通の方法を定めた法律ではない。
ここを理解していないと根本的に見誤る。
道路構造が変わったから18条1項が失効したわけでもないし。
片側2車線の車線境界線で区切られた道路の場合、車両通行帯ではないので、自転車は左側端を通行する義務がある。
左側端という用語が、道路交通法でどのように扱われているかについてはこちらの記事でも書きました。
法10条では、歩行者の通行区分について定めています。
第十条 歩行者は、歩道又は歩行者の通行に十分な幅員を有する路側帯(次項及び次条において「歩道等」という。)と車道の区別のない道路においては、道路の右側端に寄つて通行しなければならない。ただし、道路の右側端を通行することが危険であるときその他やむを得ないときは、道路の左側端に寄つて通行することができる。
例えば片側2車線道路で歩道が無い場合、10条(歩行者の通行区分)について検討します。
左側端に寄って通行も可能ですが、こんな位置を歩いていて左側端と言えますかね?
(歩行者だと仮定した場合で、歩道も路側帯もない場合)
左側端ギリギリまで詰める必要があるとは思いませんが、ある程度合理的に解釈できる左側端の範囲ってありますよね。
けど実態として、これがお咎め無しな理由は、前にも書いたように罰則がないからですよ。
18条1項には。
第1項の規定の違反行為については、罰則が設けられていない。これは、この規定による通行区分は、道路一般についての車両の通行区分の基本的な原則を定めたものであり、また、道路の状況によっては、道路の左側端又は左側といってもそれらの部分がはっきりしない場合もあるので、罰則をもって強制することは必ずしも適当ではないと考えられるからである。(従前の通行区分の基本的原則を定めた旧第19条の規定についても、ほぼ同様の理由により、同じく罰則が設けられていなかった。)。
道路交通法研究会 注解道路交通法【第5版】、立花書房
なので第1車線のど真ん中を通行している自転車がいても、違反として取り締まることは不可能。
中央線のすぐ左側を走っている自転車がいたとしても、センターラインを越えない限りは取り締まり不可能。
せいぜい注意止まり。
・道路構造令=道路の作り方の法律
・道路交通法=道路上での歩行者と車両のルールを決める法律
道路構造令で幅員主義から車線主義に変わっても、道交法(=車両などの取り締まり)については現状維持だったわけ。
しかも複数車線であれば車両通行帯というわけではなくて、車両通行帯と車線境界線で区切った道路の二種類がある。
車線主義になったから道交法が変わったわけではないんですよね・・・
どうもこのあたりを理解していない方がいるようだったので。
ただし、先ほど挙げた区画線を道路標示とみなす国会議事録は、昭和46年。
車線主義に変更されたのは昭和45年なので、この時代だと区画線で仕切った車線であれば、車両通行帯としての効力を持たせたかったのかもしれません。
【道路標識、区画線及び道路標示に関する命令】の改正履歴はわかるのですが、内容が見つからないので、なぜ国会議事録の内容と現在の法律がやや異なるのかまではちょっとわかりません。
改正内容はわかりませんが、現在の法律で検討します。
車線境界線で区切っただけの道路が車両通行帯として取り締まりされない理由は、一番わかりやすいのは一般道で車を走らせているとき。
高速道路では、第二通行帯をずっと走っていると、通行区分違反を取られますよね。
根拠は20条。
第二十条 車両は、車両通行帯の設けられた道路においては、道路の左側端から数えて一番目の車両通行帯を通行しなければならない。ただし、自動車(小型特殊自動車及び道路標識等によつて指定された自動車を除く。)は、当該道路の左側部分(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路)に三以上の車両通行帯が設けられているときは、政令で定めるところにより、その速度に応じ、その最も右側の車両通行帯以外の車両通行帯を通行することができる。
これが根拠になるので、車両通行帯であれば、追越しが終わったら第一通行帯に戻る必要がある。
一番目の通行帯を通れと書いてありますからね。
ところが一般道でここをずっと走っていても、
何のお咎めもないですよね。
理由は単純で、車両通行帯ではないからです。
単に車線境界線で区切っただけの道路という話。
こういう感じで追い越ししても、一般道ではお咎めも無いですよね。
車両通行帯であれば、追越しするときは右側の通行帯から追い越せとなってますが(法20条3項)、車両通行帯ではないからお咎めがないわけです。
第二十八条 車両は、他の車両を追い越そうとするときは、その追い越されようとする車両(以下この節において「前車」という。)の右側を通行しなければならない。
(中略)
4 前三項の場合においては、追越しをしようとする車両(次条において「後車」という。)は、反対の方向又は後方からの交通及び前車又は路面電車の前方の交通にも十分に注意し、かつ、前車又は路面電車の速度及び進路並びに道路の状況に応じて、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。
20条3項ではなく、28条4項が適用されるだけの話。
こっちについては追越しではなく追い抜きなので、問題ないですし。
実態として、一般道の場合には、交差点付近の指定通行区分されているあたりしか車両通行帯ではないことがほとんど。
警察に対して、こう質問すると全否定されます。
これ、当初は警察官がわかってないんだと思ってました。
けどそうではなくて、実態として自転車が通行できる一般道の場合、交差点付近しか車両通行帯になってない。
だから事実上、左側端しか通行できないというだけの話。
つまりは法律論を聞いたのに、実態論で返ってくるので話がかみ合ってないことに昨年気が付きました。
けどまあ、18条1項の左側端通行義務って罰則無いですからねぇ。
車両通行帯ではない道路で、左側端とはとても言い難い位置を走行していて、後続車がそれに怒ったというだけの話かと。
左側端という日本語と、道交法での左側端の使い方がどの条文でどのように使われているかを考えれば、この位置が左側端と言える人はある意味凄いなと。
道路の何分の1までならセーフとか、そんなルールはどこにも無いですしね。
4分の1ならセーフとか、3分の1ならセーフとか、片側4車線道路で車線境界線で区切っただけの道路だった場合、4分の1とか3分の1でも左側端と言い切れると思うのかな?
何分の1ならセーフとかいう人をみると、結局は左側端通行義務に罰則がないことから恣意的解釈しているだけ。
ツイッターの方、第一車線のど真ん中付近を走っているわけですが、この位置を道路の3分の1だから左側端だ!と謎理論を語りだす人もいます。
この場合、車両通行帯ではないので、路肩に近い白線は車道外側線。
車道外側線は単なる目安なので、車道となるのはセンターライン~歩道の縁石部分まで(対向車線は除く)になります。
路肩は除外するとしても、第一車線のど真ん中が3分の1の範囲と言えるのか?というところは、正確に計測していないので謎として。
正確な長さを計測していないので、あくまでも模式図として考えてください。
3分の1までなら左側端、という謎理論があるとします(あくまでも仮定)。
A,B,Cともに3分の1の範囲内と言えますが、全然違う場所を通行している。
そもそも18条1項が誕生した経緯は、東京オリンピックに向けて国際条約に加盟することで、国際免許の規定に合わせようとする段階で出来たものです。
追い越される車両が左に寄ることで、追越しやすくするもの。
本来は車両通行帯がある道路だけにこれを制定するだけでいいのですが、車両通行帯がない道路では自転車は左端に寄る、車は道路中央に寄るという規定だったので(旧道路交通法19条)、車両通行帯の有無で左に行ったり右に行ったりでわかりづらいのを解消したわけです。
この立法趣旨と概念で言うならば、自転車が自転車に追い越されるときも、左側端に寄っている先行車(法18条1項)に対し、後続車は右から追い越す(法28条1項)。
私見としてですが、左から自転車が追い抜き出来る余地がある程度に左側を空けているなら、それは左側端に寄って通行しているとは言えないんじゃないでしょうか?
もちろん、強引に左から追い抜くことの話ではなく、普通に左から追い抜き出来るかどうか。
法の趣旨や立法経緯をを考えれば、道路の何分の1だから左側端の範囲だ!という理論はなんら合理性がないことがわかる。
どちらにせよ、法令上も、解説書でも、判例でも、左側端は道路の何分の1という事実はないので、何分の1ならセーフというのは根拠がありません。
単なる感覚論。
解説書でもあるように、あくまでも仮想の通行帯【風】なので、明確な区分があるわけでもない。
だから罰則もないわけですが、罰則が無いから好き勝手やってますというだけのことなんじゃないですかね。
法の理念に反するのは明らか。
けどあのツイッターの件、ホントに不思議に思います。
車両通行帯なんだ!という主張を当初されていたと思ったのですが、そんなもんはとっくの昔に否定されている。
コロコロ主張が変わるので、何を根拠にしているのだろうかと。
さらに言うと、道路の左側端を走っていると追越しされる時に至近距離で危険だ!みたいな主張もされている。
今回の動画って、後方から至近距離でクラクション鳴らされたことについて文句があるようですが、煽り運転だと捉えていらっしゃるようなので、危険なことと捉えているようですよね。
危険なことだから激オコというなら、寄せて先に行かせれば済むんじゃないの??
危険性を避けたくて問題提起しているのか、単に煽り運転だとして無意味に第三者を晒したいだけなのか?
根拠も不明確だし、危険というキーワードに絞るなら矛盾するし、どうも意図が分からない。
道路標示を誤認した場合
次に、道路標示を車線境界線(102)ではなく、車両通行帯(109)と誤認した場合はどうなるのか?について検討します。
道路交通法は特別刑法に当たります。
刑法は38条の規定により、特別な規定がない場合には故意犯のみが処罰対象になります。
具体的に言うならば、器物損壊罪は壊す意思(未必の故意を含む)が無いと成立せず、過失として壊れてしまった場合には処罰されません。
具体例でいうなら、野球でホームランボールが車に当たって車のフロントガラスが大破しても、器物損壊罪にはならないですね。(ネットがないとか特別な事情がある場合は未必の故意になりうるかもしれませんが、刑事事件ではなく民事での賠償に留まるかと)
道交法は特別刑法なので、過失であろうと故意だろうと違反は違反として取り扱われます。
ただし結局のところ、車両通行帯だと誤認した場合でも、適用される条文は18条1項。
何度も書いているように、18条1項には罰則規定がありませんので、処罰対象ではありません。
こういうのもきちんと法律を理解していないと、道路標示を誤認した場合の判例があるのか!とか、逮捕されて裁判で争ってみせる!などと見当違いな方向に進みますが、罰則規定が無いので逮捕されることはあり得ませんし、判例があるはずもありません。
ただし左側端とは言い難い位置を通行していると警察官が認めた場合には、注意指導できますし、従わない場合には違うところで問題になる恐れもゼロではありません。
どちらにしてももし
知ってしまった以上は、知らなかったとか見間違えたという言い分はもう解消されましたしね!
見間違えていたとしても、正しい状態が分かった以上は左側端に行けば済みますもんね。
見間違えた・誤認したというなら、18条1項には罰則もありませんし、正しいことを知れば正しい位置に移動すれば済む。
同じ言い訳は二度と使えなくなるだけのこと。
話が捻じ曲げられている
後続車の振る舞いについても必ずしも正しいとは思いませんが、あれって根本的に理論が破綻している。
× | 車両通行帯だから、自転車は第一通行帯の中ならどこを走ってもいい。だから真ん中を走った。 |
〇 | 車両通行帯ではなく車線境界線で区切っただけの道路なので、左側端通行義務がある。しかし法18条1項には罰則が無いので、違反を承知で第1車線の真ん中を走った。 |
よく、複数車線道路は車両通行帯とみなしていいという理論があります。
これ、いろいろ調べてもイマイチ法的な根拠はわかりませんが、たぶん根拠って18条1項には罰則がないことなんじゃないですかね。
どの道、違反は取れない。
けどまあ、いろいろ見ていて思ったのですが、謎理論をかざして自己正当化しようとする人も世の中にいるんだなと思いました。
交通の方法に関する教則(道交法108条の28)で左側端を走れと書いてあるのも、あれも実態論の話だからああなっているんじゃないですかね。
しまいには教則だから法律ではないとか主張し出すわけですが、教則という名称に捉われるから意味を混同する。
あれは国家公安委員会告示。
告示の法規性を認めた判例なんてそれなりにあると思いますが。
ちなみにですが、私は何度も書いているように、道交法全てを守ることは不可能と思ってます。
代表的なのは自転車横断帯ですね。
法律上は、交差点を通行する場合に、交差点内もしくは付近に横断帯がある場合には通行義務があります(法63条の7)。
ただこれについては、警察庁が主導して撤去を進めている。
自転車で車道を通行していても、自転車横断帯がある交差点においては、自転車横断帯を通行しなければいけません。
この通行方法は、交差点を直進する自転車が、一旦、左折する様にして自転車横断帯に入るため、不自然かつ不合理であり、場合によっては、左折しようとする自動車と交錯するなどの危険な状況が生じていることから、現在設置している自転車横断帯の撤去を進めています。※ 自転車道が設置されている場合及び隣接する歩道に普通自転車の通行部分の指定がある場合等を除きます。
兵庫県警察-交通関係
左折するようになり危険だから撤去とある上に、現場レベルの警察官に聞くと車道を通行してきたなら守らなくても注意しないというので、事実上罰則がないことも加味して守りません。
残す方針の横断帯については、歩道から来る自転車のために残していると読み取れますし。
これも法を守っていないことになりますが、なにせ警察庁が危険だと言っているくらいなので守る必要性を感じない。
法律に抵触するけど、警察が事実上守らなくていいといっているもの(=車道走行の横断帯通行義務)。
法律に抵触する上に、警察が守るように指導するもの(=左側端通行義務)。
これはどちらも法律に反する行動ですが、その中身を考えれば意味合いが全く違うことには気が付きそうなもんです。
その違いを理解せずに一緒に考えるような人がいるとはさすがに思いませんが。
確かあのツイッターの人って、以前警察に行ったらもっと左側端を走れと言われた人だと思うのですが、そのあたりはわかりません。
法18条1項の左側端通行義務について、これもこんな位置を走っていたら問題になりますし、どの警察官に聞いてももっと左に寄るべきと言います。
法を守っているとは言い難いですが、罰則が無いので違反として取り締まることは不可能。
追越しされるときに危険だからブロックするというのは法の概念からすれば逸脱しているわけで、本来、法律通りで言うならば追越しする後車が安全な方法と速度をもって追越しするもの(法28条)。
けどそこを信頼していないからブロックするという考えなんでしょう。
まあ、ツイッターの人も、車両通行帯だからという理論だったのがどんどん変遷しているようですが、実態としてみるならば、18条1項には罰則がありませんので、違反として取り締まることは不可能。
なので後続車も、キレたら負けです。
おかしな位置を走る自転車がいたとしても、そこでキレて轢いてしまったりすれば当然犯罪になります。
以前同様のケースをツイッターで挙げていた方がいましたが、その方は警察に煽り運転だとして動画を見せたような話だったと思います。
しかし取り合ってくれなかったという結論だったと思いますが、それが全てなんじゃないですかね。
自転車は18条1項に反しても罰則がない。
後続車は通行位置がおかしい自転車に、危険回避のためにクラクションを使ったと評価できる余地があり、違法性が高いとは言えない。
車間距離についてはまあまあ微妙ですが、最終的に第2車線から追越ししているので、罰則を与えるほどの話でもない。
お互い様なんじゃないですかね。
どっちが悪いと言い切れるようなものではない。
おかしな追越しへの予防策
追越しは、後続車に責任があるわけですが(法28条)、安全な方法と速度を求めています。
最近はデイライトをすることで後続車に注意喚起しているケースも多いですね。
こういう工夫をすれば、おかしな追越しされることもほぼ無いですし(実感として)、ブロックするという考えは無いですね。
ちなみにですが、当サイトの記事で昨年12月以前のものの場合、複数車線=車両通行帯と書いてしまっているものがほとんどだと思います。
いづれ直さなきゃと思っていますが、実態として、一般道では車両通行帯なんて交差点付近のみだと思っていたほうがいいですよ。
もちろん、全ての交差点ではないです。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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